🇦🇺 AC/DC

レビュー作品数: 10
  

AC/DC紹介動画

動画にまとめていますので、ぜひご視聴ください!

 
 

スタジオ盤

ボン・スコット時代

High Voltage (ハイ・ヴォルテージ)

1976年 1stアルバム

 オーストラリア発の世界的なハードロックバンド、AC/DC。エーシーディーシーと読みます。全世界で2億枚以上を売り上げるモンスターバンドです。英国スコットランド出身でオーストラリアへ移住してきたヤング兄弟、兄マルコム・ヤング(Gt)と、弟アンガス・ヤング(Gt)を中心に結成されました。特にアンガス・ヤングはボーカル以上に人気の高い、バンドの顔とも呼べるギタリストです。デビュー当初のメンバーは流動的でしたが、本作リリース時のラインナップは上述のヤング兄弟に加え、ボン・スコット(Vo)、マーク・エヴァンス(B)、フィル・ラッド(Dr)の5人でした。

 さて本作ですが、オーストラリア盤として発売された1st『High Voltage (ハイ・ヴォルテージ)』(1975年)と2nd『T.N.T.』(1975年)の楽曲を内包した、コンピレーションアルバム兼インターナショナル盤1stとなります。タイトルはオーストラリア盤1stと同じく『ハイ・ヴォルテージ』。立ち位置がややこしい作品です…。
 マルコムとアンガスの兄ジョージ・ヤング、そしてハリー・ヴァンダの2人による共同プロデュース。この布陣は1stアルバムから6th『パワーエイジ』、そしてライブ盤『ギター殺人事件』まで続きます。

 ヤング兄弟のみで作った「Can I Sit Next To You Girl」を除き、全曲がヤング兄弟とボン・スコットの共作です。1曲目の「It’s A Long Way To The Top (If You Wanna Rock ‘N’ Roll)」で、縦ノリのロックンロールが展開されます。珍しくバグパイプが鳴り響く1曲ですが、これはボンが吹いているのだとか。続いてギターリフがカッコいい「Rock ‘N’ Roll Singer」、そしてスローテンポですがブルージーな「The Jack」も、ライブの定番で人気曲です。そして本作のハイライトは何と言っても「T.N.T.」。耳に残るカッコいいギターリフに「オイ!オイ!オイ!」のノリの良いコール。「TNT!ダイナーマイッ!」と分かりやすい歌メロ。どこをとっても素晴らしいですが、ライブになると更に勢いとノリが増し、観客のコールも含めてより素晴らしい出来になります。ラスト曲で表題曲の「High Voltage」でノリ良く締めますが、これもギターリフがカッコいい。一緒に歌いたくなる楽しい1曲です。

 ブルースに根差したハードロックで、アンガス・ヤングの刻むギターリフがとてもカッコいい。楽曲はミドルテンポ中心で特別早くはないけれども、縦ノリのロックンロールで自然と首を振りたくなる。そんな楽曲のスタイルは本作からずっと一貫していて「偉大なるマンネリ」とも言われます。

High Voltage
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Dirty Deeds Done Dirt Cheap (悪事と地獄)

1976年 3rdアルバム

 インターナショナル盤では2ndアルバムですが、オーストラリア盤でカウントすると3rdアルバムになります。次作以降のカウントを見るに、公式はオーストラリア盤でカウントするようです。オーストラリア盤とインターナショナル盤では2曲が異なっています。本レビューはインターナショナル盤のレビューになります。

 全曲がヤング兄弟とボン・スコットの共作です。ここから『地獄のハイウェイ』収録曲まで全曲がこの3人の作曲です。
 表題曲「Dirty Deeds Done Dirt Cheap」が秀逸です。ヘヴィなギターリフも魅力的ですが、なんといってもタイトルを連呼するボン・スコットの歌がキャッチーで、一緒に歌いたくなります。また、疾走曲「Rocker」もとても良い。ミドルテンポな楽曲が並ぶ中で、めちゃめちゃ疾走するこの曲は倍速くらいに感じます。歌詞は中学英語ですが、このノリの良さは非常に楽しいです。なおオーストリア盤では収録されず、インターナショナル盤で2曲差し替えられたうちの1曲です。そしてライブの定番曲「Problem Child」。ギターリフがカッコいいだけでなく、リズミカルなドラムに乗せられて足でリズムを刻んだり、首を振ったりと、身体が勝手に動きませんか?笑 AC/DCはこういう、無意識に人を動かすノリの良さがあります。ミドルテンポで、ギターリフだけで1曲作り上げるこれら楽曲は、脳よりも身体の方がその魅力を受信しているように思います。

 突出した楽曲は上述の3曲くらいで、楽曲に多少の良し悪しはあるものの、全編を通したノリの良さは安定しています。

Dirty Deeds Done Dirt Cheap
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Let There Be Rock (ロック魂)

1977年 4thアルバム

 本作リリースの頃、オーストリアでは既に人気を掌握していました。また英国ではパンク全盛期でハードロック逆風の時代でしたが、AC/DCはパンク勢にも好まれ、英国でも人気を獲得。1970年代を生き残り、ハードロックのスターダムを登ります。そんな本作は初期の傑作の一つだと思います。なお、本作までオーストリア盤とインターナショナル盤で収録曲が異なっています。本レビューはインターナショナル盤の方になります。
 ライブのように臨場感のあるサウンドプロダクションで、聴きやすくスリリングな出来です。

 ノリの良いロックンロール曲「Go Down」で幕開け。
 そして爆裂するような音の塊が迫る名曲「Let There Be Rock」。メタリックなサウンドがめちゃめちゃカッコいい。これ、PVを見るとよくわかりますが「Let There Be Light (光あれ)」という聖書の一節をもじってロック誕生の喜びを歌っているんですね。アンガス・ヤングが頭に天使の輪っかをつけながらヘドバンするPVはとてもユニークです。この楽曲では1955年にチャイコフスキーに天啓がありロックが生まれたと歌っています。何故チャイコフスキー?と思いましたが、ロックンロールミュージシャンのチャック・ベリー「Roll Over Beethoven」の歌詞からの引用らしいです。ロックがいつ生まれたかの議論はありますが、この楽曲の主張は1955年のようですね。
 次の楽曲「Bad Boys Boogie」も強烈なパンチ力があります。続いて「Problem Child」、前作にも収録されていた楽曲ですね。「Hell Ain’t A Bad Place To Be」、これもギターリフが主導するカッコいい1曲です。
 そしてラスト曲「Whole Lotta Rosie」、これがたまらなく強烈な1曲でライブの定番です。イントロのギターリフからとてもカッコよく、間奏のギターソロも強烈。非常にノリの良いロックンロールです。歌詞はボン・スコットの趣味が表れた1曲ですが、歌詞に出てくるロージーはスリーサイズが42/39/56インチ(106/99/142cm)、体重は19ストーン(120kg)だといいます。そんな豊満なロージーが最高だぜと歌う1曲です。歌詞の内容もインパクトありますね。ボンの歌唱も耳に残ります。

 あまりに突出した名曲と、水準以上の楽曲が並ぶ初期の傑作です。

Let There Be Rock
AC/DC
 
Powerage (パワーエイジ)

1978年 5thアルバム

 ジャケットに描かれた叫んだ顔が、バナナマン日村みたいに見えたりもするのですが(私だけ?)、このジャケットは次作に次いでTシャツでよく見かける気がします。

 前作から本作の間にメンバーチェンジがあり、マーク・エヴァンス(B)が解雇され、クリフ・ウィリアムズ(B)が後任として加入。このメンバーチェンジのお陰か、前作よりベースの主張を感じられるようになった気がします。前作がかなりライブ感があるというか、メタリックなサウンドプロダクションでしたが、メタリックな楽曲は少し控えめな印象です。ジョージ・ヤング、ハリー・ヴァンダの共同プロデュース体制最後の作品です。

 1曲目の「Rock ‘N’ Roll Damnation」からノリが良く、気分を明るくさせてくれます。哀愁とは無縁の陽気なロックンロールを量産するAC/DCは、聴いていると前向きな気分になります。そして本作のハイライトは間違いなく「Riff Raff」だと思います。メタリックなギターリフに、メロディなんてないボン・スコットの歌唱、中盤のベース、どこをとっても素晴らしい。前作の「Let There Be Rock」的なものを感じます。また次曲「Sin City」もギターリフがカッコいいだけでなく、中盤のベースとドラムだけのパートもなかなか痺れるんですよね。アップテンポ曲では終盤の「Up To My Neck In You」も印象的です。

 楽曲群は前後の作品と比べても似たり寄ったりで、評価は最初に聴いたかどうかだったり好みの問題もあるかと思います。全編を通したノリの良さは健在で、いくつかのキラーチューンがあります。

Powerage
AC/DC
 
Highway To Hell (地獄のハイウェイ)

1979年 6thアルバム

 あまりに有名なジャケットはTシャツの定番で、AC/DCを知らない人でも見かけたことがあるのではないでしょうか。これまで発売されていなかった米国で初めて発売されたのが本作で、AC/DCの出世作となりました。プロデューサーはこれまでと変わりロバート・ジョン・ “マット” ・ラング。

 全曲がアンガス、マルコムのヤング兄弟とボン・スコットによる作曲。オープニングを飾る表題曲「Highway To Hell」があまりに素晴らしい。ボン時代最高の1曲だと思います。ボンの歌うキャッチーなメロディは一緒に歌いたくなりますね。そして印象的なギターリフ、そしてタイトなリズム隊も素晴らしい。ハードロックファンの間で、葬式にかけたい曲としてレッド・ツェッペリンの「Stairway To Heaven」とタメを張る人気曲です。天国への階段を登るのか、地獄のハイウェイをかっ飛ばすのか。笑 続く「Girls Got Rhythm」でもそのノリの良さは保たれ、ボンのシャウト気味のボーカルは爽快ですが、ヒステリックな感じもします。「Walk Over You」では印象的なギターリフ一本で丸々1曲作っています。アンガス・ヤングは天才的なリフメイカーだと思います。テンポは本作最速の「Beating Around The Bush」でアルバム前半は終了。
 アルバム後半は「Shot Down In Flames」で始まります。リフはシンプル極まりないのに、聴いていると自然と身体がリズムを刻みます。ギターリフもカッコいいんですが、この心地良いノリを生み出しているのはタイトなリズムを刻むドラムによるところも大きいと思います。やはりカッコいいギターリフ一本で作曲された「If You Blood (You’ve Got It)」、これも捨てがたい名曲です。

 ボン・スコット時代の最高傑作として挙げられることも多い作品です。世界的な成功を目前にした1枚となりますが、そんなAC/DCに悲劇が襲います。1980年2月、ボン・スコットが大酒を飲んだ後に急死してしまい、ボンの遺作となってしまいました。バンドは進退を迫られることになります。

Highway to Hell
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ブライアン・ジョンソン時代

Back In Black (バック・イン・ブラック)

1980年 7thアルバム

 前作『地獄のハイウェイ』で人気を獲得した矢先にボーカルのボン・スコットが急死してしまい、バンドは大きな選択を迫られます。そしてバンドが選んだ答えは解散ではなく継続でした。新たなボーカリストにブライアン・ジョンソンを迎えて制作された本作は、黒塗りで喪に服したようなジャケット。ボンの追悼盤的な意味合いをもってリリースされた本作は世界的な大ヒットを収め、全世界で4200万枚以上売り上げました。これはマイケル・ジャクソンの『スリラー』に次ぐ世界2位の売上枚数です(ピンク・フロイド『狂気』に次ぐ3位という説もあり)。

 プロデューサーは前作同様にロバート・ジョン・ “マット” ・ラング。全曲がアンガス、マルコムのヤング兄弟と、新加入のブライアンによる作です。
 暗い鐘の音で始まる「Hells Bells」でゾクッとします。ボンへの鎮魂歌なのでしょう。暗い雰囲気ではありますが、しかしノリの良い1曲です。ボンは力強い歌唱を見せた名ボーカリストでしたが、パワフルな歌唱ではブライアンも負けていません。続く「Shoot To Thrill」もギターリフがカッコ良く、タイトなドラムが身体を動かさせます。疾走感が非常に心地の良い1曲です。続く「What Do You Do For Money Honey」では、どこまで出るんだろうという強烈なハイトーンボイスに圧倒されます。キャッチーな歌メロの「Givin The Dog A Bone」を挟んで、影のあるギターが印象的な「Let Me Put My Love Into You」
 そしてアルバム後半に入り「Back In Black」。AC/DCの最高傑作であるだけでなく、ハードロック界でも5本の指に入る超名曲。あまりにカッコいいギターリフ、ただただこの一言につきます。何故こんなにシンプルなのに、こんなにもカッコ良くて耳に残るのでしょうか。聴いていると自然と体がリズムを刻んでしまう素晴らしい1曲です。そして続く「You Shook Me All Night Long」も、メロディアスで耳に残る1曲です。「Have A Drink On Me」を挟んで、ギターリフが印象的な「Shake A Leg」。そしてラストにはロックンロールは騒音公害じゃないと歌う「Rock And Roll Ain’t Noise Pollution」。ロックンロールは大音量で聴いて楽しんでなんぼですね。
 評するのに語彙力がないのがもどかしいですが、とにかくカッコいい曲のオンパレードです。

 ボン・スコットの追悼盤として、少し影のある楽曲も多い本作。しかし悲しみに暮れる訳ではなく、ロックのパワーで悲しみを振り払おうという前向きな姿勢が楽曲に表れている気がします。そして、とにかく素晴らしいギターリフの宝庫であり、ヘドバンをしたくなるような縦ノリのロックンロールの宝庫です。ハードロック史上屈指の大名盤です。

Back in Black
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The Razors Edge (レイザーズ・エッジ)

1990年 12thアルバム

 ドラマーにはクリス・スレイドが加入し、スタジオ盤では彼の唯一の参加作となりました。ボン・ジョヴィを手掛けたことで有名なブルース・フェアバーンがプロデューサーに就きました。
 米国だけで700万枚以上を売り上げ、全米2位獲得と、商業的にも大成功した作品です。

 「Thunderstruck」で開幕。アンガス・ヤングの細かく刻むギターに始まり、「サンダー!アアア アーアア アーアア」のコール。ヘドバンしながら一緒に歌いたくなる強烈な求心力があります。一度聴いたら忘れられない、とてもキャッチーなこの楽曲はAC/DCでも人気の高い楽曲で、個人的にも3本の指に入る名曲だと思っています。非常にカッコ良い。続く「Fire Your Guns」はクリスのドラムが複雑なリズムを刻みますが、すぐさま縦ノリの爽快なロックンロールに変貌。疾走感に溢れ、ブライアン・ジョンソンのシャウト気味のボーカルも絶好調です。シンプルなリフが妙に耳に残ります。「Moneytalks」はメロディアスでポップな1曲。一緒に歌いたくなるようなメロディは心地良いです。そして表題曲「The Razors Edge」は彼らにしては珍しく、ダークでほんのり哀愁が漂います。凄まじい緊張感に溢れていて、陽気な楽曲群の中では異彩を放ち、アルバムを引き締めます。でも縦ノリのリズム感は健在。ヘヴィなギターリフが響き渡る「Mistress For Christmas」を挟んで、ノリの良いロックンロール「Rock Your Heart Out」。AC/DCの楽曲を聴いていると身体が自然とリズムに合わせて動き出すんだから不思議です。爽快な1曲です。
 アルバム後半は「Are You Ready」で幕開け。ミドルテンポのどっしりとしたヘヴィなサウンドに、キャッチーなコーラスに支えられた歌メロ。1980年代的なヘヴィメタル曲ですね。遅くてヘヴィなサウンドの「Got You By The Balls」を挟んで、縦ノリのリズムが気持ち良い「Shot Of Love」が続きます。キャッチーで歌メロ重視の「Let’s Make It」を挟んで、「Goodbye & Good Riddance To Bad Luck」は「Hells Bells」にどことなく似た雰囲気。でも「Hells Bells」には届かないかな…。ラスト曲「If You Dare」は少しトリッキーなリズムを刻む楽曲で、シンプルだけど強烈なギターリフで勝負する彼らにしては珍しいタイプの楽曲です。

 全体的にキャッチーな仕上がりです。アルバム後半は少し失速気味ですが、前半は名曲が固まっています。特に「Thunderstruck」は必聴の名曲。

The Razors Edge
AC/DC