🇦🇺 AC/DC

ライブ盤

If You Want Blood You've Got It (ギター殺人事件 ~AC/DC流血ライヴ)

1978年

 AC/DCの醍醐味はライブにあり。スタジオ盤でも迫力満点ですが、それを更に上回るライブの迫力と熱気は凄まじいです。
 本作は『パワーエイジ』までの楽曲を収録した、ボン・スコット時代の大傑作ライブ盤です。

 最初の「Riff Raff」の歓声から熱狂具合が凄まじく、会場の熱気が伝わってきます。アンガス・ヤングのギターリフが鳴ると手拍子で迎え入れられます。うねるベースもカッコいいし、ボンのボーカルも絶好調。ノリが良くて、身体が自然とリズムを刻みます。スタジオ盤より音の通りが良くて聴きやすく、スタジオ盤を上回る迫力は流石ライブバンドです。続く「Hell Ain’t A Bad Place To Be」もイントロから迫力のギターリフ。このド迫力の演奏に全く見劣りしないパワフルなボンの歌唱も凄まじいです。ノリの良いロックンロール「Bad Boys Boogie」では、間奏で即興演奏込でやけに長くなっています。でもグルーヴ感が気持ち良いからか、いつまででも浸れそうです。終盤のギターソロもカッコいい。スローテンポですが、リズミカルで身体を動かしたくなる「The Jack」。観客の大合唱も、ライブならではでとても楽しいです。アンガスのギターソロは聴き惚れます。テンポアップして「Problem Child」。タイトに刻むドラムを中心に、非常に心地のよいノリを作り出しています。AC/DCのノリの良いロックンロールは、聴いてるとヘドバンしたくなりません?笑 そして「Whole Lotta Rosie」は、怒濤のアンガスコールで凄まじいハイテンション。そのコールのとおり、アンガスの弾くあまりにカッコいいギターリフに圧倒されます。アンガスとマルコムの兄弟によるギターの掛け合いや、ボンの迫力の歌唱など聴きごたえ満点で、本作のハイライトです。続く「Rock ‘N’ Roll Damnation」、これまで聴いた他の楽曲にも似たようなギターリフはありましたが、それも魅力的に聴こえるのは良い意味でのマンネリズムでしょう。バックボーカルも含めて歌われるメロディはキャッチーです。気持ちの良いロックンロール「High Voltage」では、ボンが観客を煽って会場が熱気に包まれます。正にハイ・ボルテージ。そしてこの熱狂はラストに向かって更に高まります。疾走曲「Let There Be Rock」では爆裂するようなメタリックな音の塊が迫ってきて、圧倒されます。そしてボンの歌の間は地を這うようなベースと、急かすようなドラムが煽ります。アウトロでは音階を刻むギターソロがカッコいい。そしてラスト曲「Rocker」でも高いテンションとスピード感で気持ちの良いロックンロール。感情が先行して歌がやや破綻気味ですが、尋常じゃないテンションの高さに、聴く人を大満足させます。

 ロックンロールの楽しさをこれでもかと伝えてくれる、非常に楽しいライブ盤です。AC/DCの入門盤としても良いかもしれません。ハードロック界でも屈指の名ライブ盤でしょう。
 本作はあまりに出来の良いライブ盤ですが、名盤『地獄のハイウェイ』の直後ボン・スコットは亡くなってしまうため、超名曲「Highway To Hell」をライブで聴けないのが残念でなりません…。

If You Want Blood You’ve Got It
AC/DC
 
Live (ライヴ)

1992年

 ブライアン・ジョンソン時代のライブ盤で、『レイザーズ・エッジ』のツアーを収めたものになります。主要な楽曲だけピックアップした1枚組の1CDエディションと、完全版となる2枚組のコレクターズエディションが出ておりますが、後者をレビューします。ちなみに2種類のエディションを出す関係か、複数の公演からそれぞれ最高の演奏を選んだからなのか、全曲がフェードイン・フェードアウト処理がされています。中身は最高のライブなのに、その熱狂が分断される点だけが唯一残念なところでしょうか。逆に自分好みのプレイリストを作るには向いているかもしれませんね。
 名プロデューサー、ブルース・フェアバーンによるプロデュース作。
 
 
 1枚目は「Thunderstruck」で開幕。会場のアンガスコールに迎え入れられ、クリス・スレイドのドラムに始まりアンガス・ヤングのリードギターが響きます。そこに「サンダー」コールでとてもアツい。マルコム・ヤングのヘヴィなリフや、ブライアン・ジョンソンの終始シャウトのボーカルも凄まじいです。続く「Shoot To Thrill」も鳥肌が立つほどのリフのカッコ良さ。印象的なリフを作らせたらアンガスの右に出る者はいませんね。クリフ・ウィリアムズのベースもうねる。そしてAC/DCで1番の名曲「Back In Black」。このリフを聴くと身体が勝手にヘドバンを始めてませんか?笑 縦ノリのリズム感が抜群に心地良く、その迫力もスタジオ盤を遥かに凌駕しています。語彙を失ってしまいますが、とにかく最高としか言いようがありません。続いて鋭いリフを中心とした「Sin City」や、タイトなドラムとキャッチーなメロディが魅力的な「Who Made Who」と、縦ノリの気持ち良いロックを展開します。「Heatseeker」ではテンポを上げて、爽快なロックンロールを展開。続く「Fire Your Guns」も同様に疾走ロックンロール。どこまでも陽気で、元気をくれるバンドだと実感します。15分近い「Jailbreak」では、冒頭3分ほどアンガスがギターソロで観客を煽ります。ボーカリストよりもギタリストが人気というAC/DCならでは。本編も即興的な演奏を加えて楽しませてくれます。「The Jack」はスローテンポで、ヘヴィでブルージーな楽曲を展開。渋いです。続く「The Razors Edge」は彼らの中では少し異端でしょうか。哀愁がうっすら漂う、重苦しくて緊張感のあるサウンド。陽気なロックンロールの中でこの楽曲が作品を引き締めます。「Dirty Deeds Done Dirt Cheap」ではまた縦ノリの楽しいロックンロールを展開。キャッチーなサビは一緒に歌いたくなりますね。メロディ重視の「Moneytalks」で一旦ディスク1枚目は終了。

 2枚目は「Hell’s Bells」で開幕。亡きボン・スコットに捧げた、ギターが刻む重苦しいフレーズを観客が合唱していて鳥肌が立ちます。やはり名曲ですね。続く「Are You Ready」はヘヴィなサウンドながらもポップな雰囲気で、前曲の重苦しさを少し紛らします。縦ノリのロックンロール「That’s The Way I Wanna Rock ‘N’ Roll」で爽快さを取り戻し、「High Voltage」も軽快なノリで楽しませてくれます。観客との掛け合いもアツい。「You Shook Me All Night Long」もキャッチーな縦ノリロックンロール。似たような楽曲が並ぶものの、やはりこれがAC/DCの真骨頂で、醍醐味でもあります。アンガスコールが響き渡る「Whole Lotta Rosie」はイントロからスリリングな1曲。スタジオ盤よりスピード感が増していてゾクゾクします。ギターリフがあまりにカッコ良い。続く「Let There Be Rock」もスタジオ盤を遥かに上回るスピードで暴れ回りますが、即興を交えて原曲の2倍の長さに。笑 とてもスリリングです。「Bonny」は民謡をアレンジしたギターインストですが、観客が合唱。そしてそのまま続くのは名曲「Highway To Hell」。一緒に歌いたくなるキャッチーなメロディと、グルーヴ感のあるサウンドは最高です。「T.N.T.」はアンコール曲でしょうかね?印象的なギターリフが作り出す、原曲を遥かに上回るノリの良さ。自然と身体が動き出し、一緒にコールしたくなります。そしてそのまま続くラスト曲は「For Those About To Rock (We Salute You)」。比較的ゆったりめの楽曲にメリハリを付けるのは響き渡る大砲の音。そこから一気に疾走するんだから非常にスリリングです。
 
 
 スタジオ盤を遥かに上回る出来で、AC/DCがライブバンドだと証明する素晴らしい作品に仕上がっています。『ギター殺人事件 ~AC/DC流血ライヴ』とも甲乙つけがたい、最高のライブ盤です。ベスト盤的な位置づけで、入門盤として聴いても良いかもしれません。

左:2枚組のCollector’s Edition。本レビューはこちらになります。完全版。
右:1枚組で、主要な楽曲がピックアップされて1枚に収められています。入門向け。

AC/DC Live: Collector’s Edition
AC/DC
Live
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編集盤

Iron Man 2 (アイアンマン2)

2010年

 映画『アイアンマン2』のサウンドトラックです…が、中身は実質AC/DCの初ベスト盤。AC/DCはベスト盤をリリースしていませんが、本作がその役割を担っています。
 オーストラリア盤2nd『T.N.T.』(1975年)から、当時の最新作『悪魔の氷』(2008年)までの作品から満遍なくセレクトされていて、かつボン・スコット時代とブライアン・ジョンソン時代のどちらも網羅。選曲者のAC/DC愛を感じる作品です。楽曲は新旧入り乱れていますが、サウンドプロダクションの違いはあるもののさほど違和感のない並び。AC/DCは「偉大なるマンネリズム」とも評されますが、デビューから40年近く経ってもストイックに音楽のスタイルを変えずに楽曲を制作しています。アンガス・ヤングのリフメイカーとしての才能が素晴らしく、彼のギターリフを中心に楽曲が組み立てられています。全曲が縦ノリの気持ちの良いロックンロールです。

 名曲「Shoot To Thrill」で開幕。強烈なリフを中心としたサウンドに乗せてブライアンが終始シャウトする、パンチ力のある楽曲です。続く「Rock ‘N’ Roll Damnation」はボン時代の楽曲。このようにブライアンとボンの楽曲が入り乱れて選曲されていますが、違和感なく聴けるんですよね。どちらも偉大なボーカリストだと思います。「Back In The Black」「Thunderstruck」といったブライアン時代の超名曲はしっかり押さえられているし、ボン時代からは「T.N.T.」「Let There Be Rock」「Highway To Hell」等の超名曲を収録。もちろん他の楽曲も名曲揃いです。また「Let There Be Rock」(1977年)と「War Machine」(2008年)で収録時期に30年以上の開きがありますが、違和感がほとんどありません。むしろダークな雰囲気の「The Razor’s Edge」(1990年)が少し異色という印象を抱くくらいでしょうか。全編が気持ちの良いロックンロールで、自然と身体がリズムを取り始める楽曲ばかりです。

 基本となる名曲は押さえられていると思います。強いて言えば「Hells Bells」と「Whole Lotta Rosie」が欲しかったところでしょうか。でも名目上はベスト盤ではなくてサウンドトラックだから仕方ありませんね。十分すぎるくらいの選曲だと思います。
 オリジナルアルバムをどれから始めるか悩んでいるようであれば、入門作として本作から入っても良いでしょう。

Iron Man 2
AC/DC
 
 
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