🇯🇵 ALI PROJECT (アリ・プロジェクト)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

蟻プロジェクト時代

幻想庭園

1988年 Indies ※蟻プロジェクト名義

 ALI PROJECTは日本の音楽ユニットで、作編曲を手掛ける片倉三起也と作詞・ボーカルを務める宝野アリカの2人組。通称アリプロ。アニメ主題歌のタイアップ等で知られるアリプロですがキャリアは長く、1985年に蟻プロジェクト名義で活動を開始します。
 本作はインディーズデビュー作にして、蟻プロジェクト時代唯一のオリジナルアルバムです。一度廃盤になっており、「フラワーチャイルド」を加えた『幻想庭園+1』という名で再発された後もレーベルの倒産で再度廃盤に。その後ALI PROJECT独自で立ち上げたZAZOU Recordsでオリジナルバージョンが復刻されており、ファンクラブ会員限定通販で入手できます。

 オープニングを飾るのは「靑蛾月」。「せいがげつ」と読みます。鍵盤演奏はチープな音色ですが狂気を帯びていて、イントロから怪しげでスリリング。デペッシュ・モードのような影のあるシンセポップを展開しつつ、宝野の歌は終始ファルセット気味の囁くような声でフワフワとした浮遊感を与えます。「マリーゴールド・ガーデン」はリズム隊不在で、ピアノやフルートが優しく優雅な雰囲気を作ります。囁くような歌い方もクラシカルな感じ。続く「鏡面界 im Juni」もクラシカルというか映画のサントラのよう。但し優雅な歌を飾るのはオーケストラではなくピアノやシンセで、ちょっとチープでレトロな雰囲気。「アンジェ・ノワールの祭戯」が中々魅力的な1曲。ダークでスリリングなシンセポップ曲で、冷たく不穏なキーボードが一気に緊張を高めます。あどけなさの残る歌唱は妖しげな魅力を放ちます。「紅い睡蓮の午後」は冷たくもゆったりとした鍵盤をバックに、ウィスパーボイスで優しく歌います。夢心地の楽曲に心地良く浸っていると、終盤に不協和音のようなノイズのような演奏が一瞬入ってアクセントを加えます。そして本作のハイライト「桜の花は狂い咲き」。後にアレンジを施して再録され、いくつもバージョンがありますが、オリジナルはハードなギターが唸ってダンサブルな演奏を展開。そして何と言っても妖しげな和風のメロディ、これが魅力的で強く耳に残るんですよね。トリッキーなリズムを刻んだかと思えば、バンド演奏から突如ストリングスによるクラシカルな演奏へ切り替わって、そして再びバンド演奏へと戻っていく楽曲展開はプログレ的でもあります。「少女忌恋歌」では宝野があどけなくて可愛らしい歌唱を見せます。箏のようなシンセの音色が神秘的ですが、先の読めないトリッキーなリズムが意識を散らします。「パラソルのある風景」は実験的な演奏パートも含みますが、全体的にはバロックポップというか、少しレトロで跳ねるような曲調。可愛らしい歌もポップで心地良いです。「硝子天井のうちゅう」は透明感のある優しくアンニュイな歌声にゆったりと浸れます。透明感や浮遊感があり、鍵盤の音色も毒気なく澄んでいますが、終盤に少しだけ狂気を見せます。そして僅か2分の表題曲「幻想庭園」。ピアノが不協和音混じりに重厚な演奏を繰り広げます。シアトリカルにも聴こえる抑揚が強いメロディラインは、後のALI PROJECT特有の「黒アリ」楽曲の原型にも見えます(この楽曲にはそこまで仰々しさはないですが)。ラストの「Puppé Frou Frou」は実験的なインスト曲。無機質で不穏な音色はシンセポップっぽい気もするんですが、プログレのような不可解で実験的な側面も強く見られます。

 巽孝之 著『プログレッシヴ・ロックの哲学』で本作が紹介され、25周年ベスト『愛と誠』でも巽孝之が賛辞のコメントを寄せています。確かにプログレ的な楽曲もありますが、ダークなシンセポップ曲や、音色はチープですがクラシカルな楽曲も詰まっています。また宝野アリカのファルセット気味の声で優しく語りかけるような歌は、今のALI PROJECTとはだいぶ雰囲気が違いますね。

幻想庭園
ALI PROJECT
 

改名&メジャーデビュー

月下の一群

1992年 1stアルバム

 蟻プロジェクトは東芝EMIと契約し、シングル「恋せよ乙女〜Love story of ZIPANG〜」でメジャーデビューを果たします。またデビューに際してALI PROJECTへ改名しました。作編曲は片倉三起也、作詞とボーカルは宝野アリカという2名体制はずっと変わらず続きますが、一部外部ミュージシャンを起用したり、演奏機材も充実してきたのか、メジャー化してサウンドが洗練された印象です。

 オープニング曲「メガロポリス・アリス -MEGALOPOLIS ALICE-」はおどろおどろしい雰囲気が漂います。囁くような歌唱は冒頭ラップ風で抑揚がなく、そこから耽美な歌へと変わっていきます。毒のあるファンタジー風の演奏ですが、歌詞はSFっぽいですね。優美なヴァイオリンソロで始まる「ビアンカ」はリズムトラックの無いクラシカルな雰囲気の楽曲です。跳ねるような演奏とふわっとしたそよ風のような歌唱で、純真無垢な雰囲気の楽曲を心地良く聴かせます。続く「薔薇色翠星歌劇団」は3拍子のゆったりとしたリズムに乗せて、静かにメランコリックな歌を囁きます。アコーディオンがレトロな雰囲気。ファルセットを活用した美しい歌に浸れます。「マダム・ノワール – Madame Noir」は雰囲気をガラリと変え、ダークでドラマチックな演奏を繰り広げるスリリングな楽曲に。程良く疾走感のある演奏は鍵盤が蠢くリズムを刻み、派手なシンセサイザーが華やかに彩ります。宝野の歌はアンニュイで色気を纏っていて魅力的。「空宙舞踏会」は打ち込みのリズムに加えて、メロウで落ち着いた演奏を展開。歌は囁き声ですが、時折ポップなメロディを聴かせます。アコーディオンが特徴的な「木洩れ陽のワルツ」は古い映画のような、レトロな雰囲気のワルツを奏でます。一転して「堕ちて候」は打ち込み全開のダンスナンバー。一部歌詞が「桜の花は狂い咲き」そのままで、件の楽曲を取り入れてダンスリミックスにしたような印象を抱きます。色気のある声で歌うメロディは和風ですが、テクノポップ的な演奏とのミスマッチが印象に残ります。ちなみに大竹しのぶが歌っているバージョンがCMに起用されたのだとか。続くデビューシングル「恋せよ乙女〜Love story of ZIPANG〜」も和風の香りがする歌詞とメロディにダンス色の強い打ち込み演奏が特徴的で、妖しげな雰囲気を醸し出します。そして「月光浴」は子守唄のように穏やかで、ドリーミーな楽曲です。ハープの音色が心地良い。最後の「楽園喪失 – Paradise Lost」は少し暗いトーンのピアノをバックに、宝野の美しい歌唱がどこか霊的な雰囲気を纏っています。ヴァイオリンが「もののけ姫」っぽい感じ。

 独特のメロディ運び、クラシカルな楽曲やダンス色の強い打ち込み楽曲など、ALI PROJECTの特徴が既に表れています。

月下の一群
ALI PROJECT
 
DALI

1994年 2ndアルバム

 前作から1年と2ヶ月を空けて発表されたALI PROJECTの2ndアルバムです。本作と『月下の一群』、『星と月のソナタ』の3作品は東芝EMIからのリリースで、長らく入手が難しかったようですが、2009年にリマスタリングのうえ再発されています。

 「サロメティック・ルナティック」はストリングスを活用した大仰な演奏に乗せて、宝野アリカが色気に満ちた甘美な歌を展開。演奏はシンフォニックな雰囲気ですが、歌い方によるものかメロディ故か和風っぽい雰囲気を感じさせます。続く「嵐ヶ丘」は2ndシングル。程良い疾走感にゴシックでダークな雰囲気を放ちます。後の黒アリに通じる音程の起伏の激しい楽曲ですが、歌唱には後年のようなドスの利いたダークさは無くて、ファルセットも時折用いた歌は優美で艶っぽいです。オルゴールで始まる「雪のひとひら」は映画のサントラのようなクラシカルなサウンドを展開。演奏に合わせて、宝野の歌も囁くように優しいです。「ダリの宝石店」はテクノポップ的なシンセや残響音が強調されたドラム、どこか歌謡曲アイドルっぽいアンニュイな歌声なんかが1980年代的な雰囲気です。でもダークさが満ちていて、効果音も織り交ぜた楽曲は一筋縄ではいかず、中々魅力的な楽曲です。「Virtual Fantasy」はビートが効いたダンスチューン。加工されたボーカルやノイズなど機械的というかデジタルな感じ。でも楽曲の核の部分はアリプロらしくゴシックでダークな雰囲気です。「小夜啼鳥」はナイチンゲールと読むそう。ファルセットを用いた歌は美しいですが、アンビエントやエレクトロニカあたりを取り入れた演奏は神秘的でありつつ無機質な不気味さが同居していて、不安な気持ちになります。ヴァイオリンソロから始まる「ヴェネツィアン・ラプソディー」はファルセットを多用した、メランコリックな歌が魅力的な楽曲です。大仰なストリングスにリズミカルなドラムが高揚感を掻き立て、でも歌は耽美で憂いに満ちていて、美しさと哀愁にため息が出てしまいます。そして「星降る夜の天文学-BEDSIDE ASTRONOMY-」は可愛らしい歌唱や躍動感のある演奏も含め、少し時代を感じさせますが明るくポップな感じです。グルーヴ感のあるベースやパッと弾けるようなコーラスが中々爽快。ヴァイオリンが主導する優雅なストリングス楽曲「月光の橋 (instrument)」を挟んで、オーケストラが仰々しく飾る「オフェリア遺文」。宮殿で聴いているかのような優雅さを持ち、ファルセット気味に歌う優美な歌唱も含めてクラシカルな印象です。

 前作同様、クラシカルな楽曲にエレクトロニカが混ざります。「嵐ヶ丘」や「ヴェネツィアン・ラプソディー」が魅力的ですね。

DALI
ALI PROJECT
 
星と月のソナタ

1995年 3rdアルバム

 『月下の一群』と『DALI』に収録された楽曲を再録しつついくつかの新曲を加えた、やや変則的なバラード集です。編集盤っぽいですが、オリジナルアルバム扱いのようです。新録曲は「冬物語」と「彼と彼女の聖夜」、また本作がアルバム初収録となるシングルとC/W曲が数曲あります。

 アルバムは「雨のソナタ〜La Pluie〜」で幕開け。ドリーミーなイントロを経て、ピアノをバックに宝野アリカのアンニュイで落ち着いた歌声が優しい。まったりムードでメロディアスな歌を聴かせます。「ビアンカ」はヴァイオリンソロから始まるクラシカルな雰囲気の楽曲で、ふわっと跳ねるような優しい曲調と歌が特徴的です。純真無垢な感じ。「舞踏会の手帖」は3拍子のワルツに乗せて、ウィスパーボイスで憂いを帯びたアンニュイな歌を披露。楽曲はクラシカルな雰囲気ですが、片倉三起也の扱う楽器はデジタルというかエレクトロニカ的です。続く「雪のひとひら」は憂いを増して、メランコリックで色気を感じます。サビメロは優雅ですね。ドリーミーでメロウな「空宙舞踏会」を聴かせると、続いて「薔薇色翠星歌劇団」。3拍子の演奏に乗せて静かな歌をじっくり聴かせます。アコーディオンが特徴的ですね。最初は音数少なくシンプルですが、サビメロに向けて楽器が増えてドラマチックになります。美しいピアノイントロで幕を開ける「冬物語」は、アンニュイな宝野の歌声がたまらなく魅力的です。アコースティックなバンド編成+キーボードといった感じの楽器編成で、クラシックでもエレクトロニカでもなく彼らにしては割と珍しいですが、変に凝っていない分、純粋にメロディや歌声の美しさで聴かせる良曲です。「月光浴」はゆったりとしてドリーミーな楽曲。子守唄のような心地良さがあります。続く「彼と彼女の聖夜」は美しいコーラスワークで幕を開け、澄んだ声で歌うクリスマスソングです。透明感があって綺麗です。ラストの「共月亭で逢いましょう」はオルゴールのイントロを経て、ゆったりと深みのある歌声を聴かせます。クラシカルな演奏は神秘的で自然を感じさせます。

 宝野の透き通る歌声が活きる、優美でまったりとした楽曲に癒やされます。一方でダークでスリリングな要素はほぼ無いため、アルバムを引き締める楽曲が無く冗長な印象を抱きます。

星と月のソナタ
ALI PROJECT
 

 
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