🇬🇧 All About Eve (オール・アバウト・イヴ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

All About Eve (イヴの序曲)

1988年 1stアルバム

 イングランドの出身のバンド、オール・アバウト・イヴ。紅一点のジュリアンヌ・リーガン(Vo)と、ティム・ブリッチェノ(Gt)らを中心に1984年に結成しました。リズム隊の脱退に伴い、1985年にアンディ・カズン(B)、1987年にマーク・プライス(Dr)が加入。この4人のラインナップで、元ヤードバーズのポール・サミュエル=スミスをプロデューサーに迎え、セルフタイトルとなる本作でデビューします。ちなみにバンド名は1950年の映画『All About Eve (邦題: イヴの総て)』より。
 ゴシックロックのような陰鬱でダークなサウンドを下地にブリティッシュトラッドをブレンドした音楽性で、ニューウェイヴ界隈だけでなくプログレ界隈からも支持されているバンドです。

 オープニング曲は「Flowers In Our Hair」。少し靄のかかったような、それでいてドライブ感のあるサウンド。特にベースがグルーヴ感抜群です。そしてジュリアンヌの儚く初々しい歌声が美しい。憂いのあるメロディラインは一昔前の邦楽のようで、古臭くも少し懐かしい感じがします。「Gypsy Dance」は8分の6拍子のリズムに乗せて、ヴァイオリンの美しい音色が印象的。メロディは暗鬱ですが、日本人受けしそうな哀愁があります。「In The Clouds」で更に暗鬱さが増し、それでいて神秘的でもあります。幻想的なサウンドですが、唯一ドラムが力強く響き渡ります。終盤は浮遊感に溢れていて心地良いです。続いて「Martha’s Harbour」は全英10位獲得のシングル曲。影のあるアコギの音色がしんみりとした気分にさせます。湿っぽい英国の香りが漂います。美しいコーラスワークで始まる「Every Angel」はネオアコ調のアップテンポ曲。コーラスがキャッチーさを引き立てており、取っつきやすくて聴き心地の良い楽曲です。続く「Shelter From The Rain」で再び暗鬱で憂いを帯びた楽曲に戻ります。ダークですが、儚い歌声のお陰か心地良さを感じます。ちなみにデュエット相手はザ・ミッションのウェイン・ハッセイ。また、ティムのギターソロも味がありますね。「She Moves Through The Fair」はアカペラ曲で、ゆったりとジュリアンヌの歌声に聴き浸ることができる1曲です。この人の声質は大きな武器ですね。そして「Wild Hearted Woman」はアコギとエフェクターを効かせたエレキがとても魅力的な1曲。湿っぽくて暗いものの、そのサウンドはどこか優しい感じがします。そして焦がれるような歌唱も魅力的ですね。切ない気分にさせてくれます。8分の6拍子のリズムで揺られる「Never Promise (Anyone Forever)」も暗鬱ですね。リズミカルですが、憂いのあるメロディは曇天や雨空を連想させます。「What Kind Of Fool」はイントロのピアノが冷たい印象ですが、アコギが加わると温もりを得られます。メランコリックなメロディは優しくもある。そしてラスト曲「In The Meadow」。繊細なギターと儚い歌声が、強い哀愁を生み出します。終盤の緊迫感に満ちたティムのギタープレイは、特に胸にぐっときます。

 暗いんだけども儚くて繊細で、そして美しい。英国特有の湿り気を有した名盤です。

All About Eve
All About Eve
 

Scarlet And Other Stories (スカーレット・アンド・アザー・ストーリーズ)

1989年 2ndアルバム

 前作同様のラインナップで、ジュリアンヌ・リーガン(Vo)、ティム・ブリッチェノ(Gt)、アンディ・カズン(B)、マーク・プライス(Dr)、そしてプロデューサーにポール・サミュエル=スミス。なお、恋仲だったジュリアンヌとティムが本作制作中に破局し、ティムは本作で脱退してしまいます。
 可愛らしいジャケットが魅力の本作。私はこのジャケットに惹かれて、オール・アバウト・イヴを聴いてみました。ジュリアンヌの儚い歌声と締めっぽいメロディは素晴らしくて、結局購入。ジャケ買いしても間違いのない、高クオリティな名盤です。

 「Road To Your Soul」で幕開け。メロディアスな楽曲で、儚い声質ながらもサビメロで力強く歌う、そんなジュリアンヌの歌声が魅力的です。サウンドも繊細ですが、サビメロでは力強いサウンドで支えます。続く「Dream Now」は8分の6拍子で刻む、陰鬱で憂いのある1曲。これもとても魅力的で、哀愁のメロディラインに乗せて歌う、メランコリックな歌声が切ない気分になります。「Gold And Silver」はバスドラと少しハードなギターが効いた、ハードでブルージーなサウンド。でも渋さを上書きするジュリアンヌの歌声は繊細ですね。続いて表題曲「Scarlet」はアコギ主体の1曲で、重なり合うギターサウンドがとても心地良い。派手さは無いものの、柔らかくて温もりを感じられます。そして名曲と名高い「December」。これが実によいのです。冷たく影のあるサウンドからサビメロに向かって盛り上がっていき、ジュリアンヌのメランコリックで儚い歌声が、切なさを引き立てます。サビでの「Remember December~」の語感もよく耳に残りますね。また終盤の、ティムの泣きのギターも心に訴えかけてきます。素晴らしい1曲です。一転して次曲「Blind Lemon Sam」はフォーキーなアコギ曲。前半の楽曲群と異なり、哀愁はあまりないかも。続く「More Than The Blues」も彼らにしては明るいですね。牧歌的な雰囲気で、温もりに溢れています。そして「Tuesday’s Child」でまたダークさを見せます。緩急ついた構成や、また間奏も少しテクニカルな感じでアルバム全体にメリハリをつけてくれます。「Pieces Of Our Heart」は幻想的な1曲。繊細なアコギも魅力的ですが、やはり美しい歌声に魅了されますね。「Hard Spaniard」はマークのドラムを中心に緩急ついた楽曲構成が印象的。後半のアンディのベースも、聴いているとぐるぐると目が回るかのよう。「The Empty Dancehall」は強烈な哀愁が漂うメロディがただただ美しい。「Only One Reason」もしっとりとして陰鬱ですね。ですが中盤からハードロックサウンドに変わります。ゴシックメタルほどではないですが、やや大仰なこの楽曲はメタルファンにも訴えるかもしれません。ラスト曲「The Pearl Fishermen」はアコギ1本のシンプルなサウンドにジュリアンヌの歌声が響きます。美しい1曲です。

 前作よりもアコースティック/トラッド色が強まりました。相変わらず繊細で湿っぽいサウンドに、儚くて美しい歌声は健在です。聴けば聴くほど魅力を増す名盤だと思います。

Scarlet And Other Stories
All About Eve
 
 
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