🇮🇹 Arti & Mestieri (アルティ・エ・メスティエリ)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Tilt (ティルト)

1974年 1stアルバム

 イタリアのトリノ出身のプログレ/ジャズロックバンド、アルティ・エ・メスティエリ。ジジ・ヴェネゴーニ(Gt/Synth)、ジョヴァンニ・ヴィリアール(Vn/Vo)、アルトゥーロ・ヴィターレ(Sax/Cl)、マルコ・ガレージ(B)の4人が所属していたバンドに、1973年フリオ・キリコ(Dr)が合流。後にベッペ・クロヴェッラ(Key)が加わって、翌1974年にアルティを結成します。その後アルティ・エ・メスティエリへと改名。バンド名は「芸術家と職人」と意味で、「Arti E Mestieri」や「Arti + Mestieri」と表記したりします。
 本作『ティルト』はアルティ・エ・メスティエリのデビュー作ながら、圧倒的な演奏力の高さを見せつける傑作に仕上がりました。ジジと、パオロ・トファーニの共同プロデュース。

 オープニング曲「Gravità 9,81」は初っ端からスリリングな演奏を展開。その後はヴァイオリンやキーボードがメロディアスな旋律を聴かせ、途中からサックスがリード。その間バックではベースがうねり、そして非常に手数が多いドラムがどんどんと緊張を高めています。とてもスリリングで聴きごたえがあります。続く「Strips」は哀愁漂うメロディをメロトロンやヴァイオリンが引き立てます。そしてジョヴァンニが甘く優しい歌声で、イタリア語の歌を穏やかに聴かせます。歌が終わると美しくも物悲しい旋律が切ない気分にさせます。僅か1分半の「Corrosione」ですが、メロウなサックスが郷愁を誘います。そして音量大きいベースの存在感が凄い。「Positivo/Negativo」はアコギとヴァイオリンが牧歌的な雰囲気を描きますが、ベースがやけに骨太な印象。憂いを帯びたビブラフォンを響かせた後は突如として疾走し、スリリングな演奏バトルを繰り広げて圧倒します。カッコ良い。一転して「In Cammino」はサックスが穏やかで落ち着いた雰囲気に変えます。スローでゆったりとした時間が流れますが、2分過ぎた頃から重厚感が増し、その後はリズムチェンジの嵐。疾走したり、3拍子の躍動感ある演奏を聴かせたり、落ち着いたりまた走ったり。先が全く読めません。
 アルバム後半は1分強の小曲「Farenheit」で幕開け。美しいピアノの旋律にクラリネットが絡んで憂いを見せます。バンド演奏が加わると急に忙しい感じになりますね。そして「Articolazioni」は13分以上の大作。序盤からダークで緊張溢れる展開。メランコリックな旋律で切なさを誘うと、疾走開始して手数の多すぎるドラムが焦燥感を煽ります。ずっと疾走ではなくリズムチェンジが頻繁で、せせこましく次へ次へと切り替わります。いつの間にかボーカルパートが始まっていたり、仰々しくダークな演出で悲壮感を掻き立てたり。7分過ぎから散発的に爽快な疾走パートが訪れますが、これも1回1回が長く続かず、ゆっくり楽しむ間も無く次へ次へ。笑 とにかく落ち着きがないのですが、逆に何が起こるかわからないスリルがずっと続くんですよね。最後に表題曲「Tilt」。これだけは唯一難解な印象で、無機質でノイジーな電子音を鳴らしながら、バックでメロトロンが不気味な音色を響かせています。

 リズムチェンジが頻繁で緩急富んでおり、先の読めないスリリングな演奏に圧倒されます。散逸的ですがキャッチーだったりメロディアスなフレーズは多く、楽しめると思います。

Tilt
Arti E Mestieri
 
 
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