🇨🇦 Avril Lavigne (アヴリル・ラヴィーン)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

Let Go (レット・ゴー)

2002年 1stアルバム

 アヴリル・ラヴィーンはカナダ出身のシンガーソングライターです。1984年9月27日生まれ。グランジ的なダークな雰囲気の楽曲も多いですが、「パンクプリンセス」とも呼ばれパンクのイメージも強いことから、本サイトではパンクジャンルで扱います(当初はオルタナで扱ってました…汗)。
 本作は弱冠17歳でのデビュー作にして、全世界で2000万枚を売り上げる大ヒット。日本国内でも200万枚以上売り上げています。特に1stシングル「Complicated」の大成功によるところも大きいように思います。それと可愛らしいルックスも人気の理由のひとつでしょうね。本作はL.A.リードのプロデュース。

 オープニング曲は「Losing Grip」。しっとりとした低いトーンで始まり、サビで一気に爆発。グランジ寄りのディストーションの利いたギターがとてもヘヴィです。サポートミュージシャンの演奏もあるのですが、ポップなイメージをもって臨むと火傷する、彼女の懐の広さを見せつけてくれる楽曲です。続いて大ヒットシングル「Complicated」。アコギを中心としたシンプルなサウンドに乗せて、ポップでメロディアスな歌を披露。年相応の可愛らしさを感じます。邦楽しか聴かない人でも違和感なく聴ける1曲でしょう。「Sk8er Boi」はパンキッシュで軽快な楽曲です。ポップで聴きやすいですね。一転して「I’m With You」はしっとりとしたバラード曲。アヴリルのメロディアスで悲しげな歌唱が切なさを感じさせます。「Mobile」は少し哀愁が漂いますが、ポップでメロディアスです。続く「Unwanted」は歪んだギターが非常にヘヴィ。静と動の対比が強烈で、全体的に陰鬱な雰囲気です。カッコ良い。「Tomorrow」はアコギ中心のシンプルなサウンド。コーラスワークによって心地良い浮遊感があります。続く「Anything But Ordinary」は歌を重視したメロディアスな楽曲。とても聴きやすく、程よく哀愁が漂います。「Things I’ll Never Say」はアコギの音色が牧歌的。キャッチーで、ほんのり湿っぽい歌も安らぎを与えてくれます。そして「My World」はシンプルなサウンドに爽やかなメロディで、エンディング向きの楽曲です。下手に飾ることなく、シンプルなメロディがとても良く、個人的には本作で一番好みです。「Nobody’s Fool」ではラップを披露しますが、全編ラップではなく、サビではメロディアスな歌を展開します。「Too Much To Ask」は陰鬱な雰囲気で、でも優しい。そしてラスト曲「Naked」も陰鬱でダークな雰囲気。メロディアスな歌がたまりません。

 邦楽しか聴かない人にも受け入れられやすい、メロディアスな楽曲が多いです。バラエティに富んだ作品で、弱冠17歳という年齢からは驚くほどの完成度の高さです。

Let Go
Avril Lavigne
 
Under My Skin (アンダー・マイ・スキン)

2004年 2ndアルバム

 前作よりもダークさとヘヴィさを増した作品で、個人的には最高傑作。プロデューサーにはドン・ギルモア、レイン・マイダ、ブッチ・ウォーカーらが名を連ねます。本作も大ヒットし、全世界で800万枚以上を売り上げました。
 美人なジャケット写真も素敵ですね。なお本作のいくつかの楽曲で死を暗示するような歌詞があったり、他にもいくつかの根拠を例に「2003年に本物のアヴリル・ラヴィーンは亡くなっていて、以降影武者メリッサ・ヴァンデラにすり替わっている」という陰謀論も出回っています。当然本人は否定していますが。笑

 「Take Me Away」で開幕。全体的に哀愁が漂う楽曲で、サビのサウンドはヘヴィでダークなハードロックです。エヴァネッセンスっぽい雰囲気を感じますが、元エヴァネッセンスのベン・ムーディーが本作の制作に関わっており、その影響もあるかもしれませんね。カッコ良い楽曲です。続く「Together」はアヴリルの力強い歌唱が強烈で、ヘヴィなサウンドに負けない強い存在感を放ちます。耳に残るメロディも良いです。続く「Don’t Tell Me」は邦楽にも通じる切なげなメロディ。前2曲ほどではありませんが、やはりサビではヘヴィなギターが響き渡ります。「He Wasn’t」はパンキッシュな疾走曲。軽快なリズムに乗せて「Hey! Hey!」と煽ってきます。爽快ですね。「How Does It Feel」では一転して、スローテンポでシンプルなサウンド(サビは比較的豪華ですが)。でもメロディが良くて、じんわりと来ます。「My Happy Ending」は出だしやサビ部分がノイジーですが、一気に静かになって歌メロをフィーチャーします。静と動の対比が強烈で、そしてメロディアスな歌も素晴らしい。続く「Nobody’s Home」の哀愁漂うメロディは切なくなります。分厚い音とコーラスによって、なんとなく浮遊感というか音の海に浸るような感覚に陥ります。「Forgotten」は不気味な静けさから始まります。そして徐々にヘヴィさを増し、サビはノイジー。不気味な雰囲気のヘヴィメタル曲ですね。続く「Who Knows」もダークで陰鬱なハードロック。でもメロディアスな歌は聴きやすいですね。「Fall To Pieces」はアコギでしっとりと始まり、徐々にヘヴィさを増していきます。続く「Freak Out」もノイジーながらも比較的シンプルなサウンド。ハキハキとした歌はとてもメロディアスで切ない。メロディがとても良い1曲です。最後の「Slipped Away」はピアノをバックにしっとりと歌い、サビでは盛り上がります。メロディアスな楽曲の詰まった1枚でした。

 前作のメロディセンスはそのままに、サウンドはグランジやメタル色を増してかなりヘヴィになりました。全体を覆う哀愁も良く、名盤だと思います。

Under My Skin
Avril Lavigne
 
The Best Damn Thing (ベスト・ダム・シング)

2007年 3rdアルバム

 2006年に同郷カナダのパンクバンドSUM 41のデリック・ウィブリーと結婚(2010年には離婚してしまいますが…)。そんな結婚相手の影響もあったのか、本作はポップパンク色が強い作品に仕上がっています。ジャケットも非常にパンキッシュですね。
 私がアヴリル・ラヴィーンに触れた最初の作品がこれでした。キャッチーで若々しい仕上がりだけど、前2作のようなメロディの良さは薄れ、軽くて勢い任せのサウンドになったこともあり、飽きがくるのも早かったというのが正直なところです。

 オープニング曲「Girlfriend」は彼女の代表曲で、アヴリル・ラヴィーンと言えばこの曲でしょう。全米1位獲得シングル。煽り立てるような、勢いに溢れたポップパンク曲で、よくテレビ等でも流れていました。耳に残りやすい楽曲ですが、歌詞は「あなたの彼女好きじゃない 私の方があなたの彼女に相応しいわ」と図々しくて挑発的な内容です。続く「I Can Do Better」は疾走感のあるドラムやメタリックなベースなど、前曲以上にパンク色が強いです。挑発的で嘲笑的な笑い声も耳に残ります。「Runaway」は歌い方が一本調子な感じもしますが、少し哀愁を漂わせた歌メロはメロディアスです。表題曲「The Best Damn Thing」はライブでの掛け合いを意識したのか、ノリの良いサウンドとハンドクラップに乗せて煽り立てるように歌います。サビでは軽快に疾走。続く「When You’re Gone」では一転してピアノやアコギが美しい、しっとりとしたバラード曲。後半はストリングスに彩られて壮大になっていきます。「Everything Back But You」はパンク曲。勢いで一気に駆け抜けるタイプの疾走曲です。続く「Hot」はヘヴィなイントロから一気にスカスカのサウンドに。サビではまたノイジーでヘヴィなギターが襲います。どことなく哀愁漂う楽曲です。「Innocence」はシンプルなサウンドに陰鬱なメロディ。勢い任せの楽曲の多い本作において、純粋にメロディで勝負した楽曲です。2曲続いたダークな雰囲気を吹き飛ばす「I Don’t Have To Try」は、早口でまくし立てる疾走パンク。強烈なノリの良さがある反面、メロディは弱いです。アヴリルの野太い叫びも聴けます。笑 続く「One Of Those Girls」「Contagious」は、旦那のデリック・ウィブリーがギターとベースで参加。どちらも軽快なポップパンク曲です。ラスト曲はメロディアスなバラード曲「Keep Holding On」。パンク曲満載の本作ですが、最後は彼女のメロディを活かした楽曲で締めます。

 ポップパンク全開の作品です。ポップパンク作品としては中々の出来ですので、パンク好きにはオススメできる作品ですね。但し、前2作の路線を知ってから聴くと軽くなった印象が強いです。

The Best Damn Thing
Avril Lavigne
 
Goodbye Lullaby (グッバイ・ララバイ)

2011年 4thアルバム

 契約を巡りレーベル側と対立があり、前作から4年のブランクを経てリリースとなりました。なおリリースまでの間にデリック・ウィブリーと離婚、そんな経緯もあってか本作ではポップパンク路線から退きました。また、ロック色も薄れ、演奏よりも歌をフィーチャーしたポップスに仕上がっています。

 開幕「Black Star」から美しいピアノの音色で始まります。僅か1分半ですが、綺麗な音色と美しい歌声に癒されます。続く「What The Hell」は前作の「Girlfriend」路線を引き継いだポップパンク曲です。ノリの良い1曲で、とてもキャッチーなので本作の取っ掛かりに良いでしょう。ただ本作でこの路線の楽曲はこの1曲だけという…。悲しげな歌をフィーチャーした「Push」を挟み、「Wish You Were Here」はアコギ主体の比較的シンプルなサウンドに美しいメロディ。しっとりとした湿っぽい雰囲気でメロディアスです。ファンキーな楽曲に乗せてラップを披露する「Smile」を挟んで、「Stop Standing There」はシンプルなサウンドで爽やかな雰囲気。ハンドクラップも爽やかさを助長します。ですが、どことなく切なさを感じます。「I Love You」も切ない歌です。歌唱力の向上もあって、シンプルな演奏で歌をしっとり聴かせます。続く「Everybody Hurts」は哀愁漂うアコギの音色が美しい。影のあるメロディアスな歌が魅力で、コーラスワークによって浮遊感があります。本作では最も好みです。「Not Enough」は優しい音色から徐々に激しくなっていきます。サビでは感情的な歌唱が響きます。優しい雰囲気の「4 Real」を挟んで、メロディラインが魅力的な「Darlin」。アコギでシンプルな演奏で歌を聴かせますが、徐々にストリングス等で盛り上がっていきます。終始シンプルな演奏でも良かったですが…。「Remember When」はピアノを中心にメロディアスな歌を展開します。ラストに向けて壮大になっていきます。ありきたりな展開ですが良い楽曲だと思います。ラストは「Goodbye」。ファルセットにより透明感のある美しい声が響き渡ります。極上の癒し曲でアルバムを締めます。

 ロックやパンクから遠ざかってしまったので、激しい演奏を期待していた人には残念かもしれません。切ない歌を聴かせるポップス作品で、メロディアスな楽曲が並びます。但し印象の薄い楽曲もいくつかあり、もう少しメリハリが欲しかったです。正直1回聴けば十分かなぁ…。

Goodbye Lullaby
Avril Lavigne
 
 
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