🇺🇸 Billy Joel (ビリー・ジョエル)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

The Stranger (ストレンジャー)

1977年 5thアルバム

 米国ニューヨーク州出身のミュージシャン、ウィリアム・マーティン・”ビリー”・ジョエル。1949å¹´5月9日生まれ。幼少期からピアノに触れて育ち、高校中退後にハッスルズやアッティラというバンドで活動をしていたそうです。アーティー・リップに才能を見出されて『コールド・スプリング・ハーバー』でソロデビュー。しかし録音速度を上げられ不本意な内容だった上にヒットにも恵まれず、元々持っていた鬱病が悪化しロサンゼルスへ移住しています。2年後に『ピアノ・マン』で再デビューを果たすとヒットを飛ばし、そこから順調に売り上げを伸ばしていきました。
 本作はビリー・ジョエルの出世作です。フィル・ラモーンによってプロデュースされた本作は全米2位を記録し1000万枚を売り上げました。また「素顔のままで」の邦題で知られる「Just The Way You Are」はビリーのキャリアの中でも最大級のヒットとなりました。

 オープニング曲は「Movin’ Out (Anthony’s Song)」。ギターのせいか少しシリアスで緊迫した感覚を持ちつつも、ビリーの歌声は聴きやすく、メロディアスでキャッチーな印象もあります。間奏のサックスが奏でるメロディも切なげで魅力的ですね。続く表題曲「The Stranger」はピアノイントロに哀愁の口笛が切ない気分にさせます。魅力的な口笛が終わるとロック調へと変貌。ファンキーなギターとリズム隊が心地良いグルーヴを生み出し、そこに乗っかるリズミカルな歌はオシャレな雰囲気ですね。最後に、イントロ同様に口笛と美しいピアノで締めます。そして名バラード「Just The Way You Are」。甘くてメロディアスなビリーの歌声がとても魅力的なAOR楽曲です。日本人好みのメロディですね。演奏はまったりとしたボサノバ調で、歌をうまく引き立てています。また、アクセントとして入る色っぽいサックスの音色が大人びた雰囲気を増長。魅力的な名曲です。「Scenes From An Italian Restaurant」は7分半に渡る変化に富んだ楽曲。電子ピアノにメロディアスな歌を乗せて始まります。メロウなサックスにストリングスが優雅な雰囲気を作ったあとはテンポアップし、軽快な曲調にソウルフルな歌を聴かせます。賑やかになって、そして早口気味のポップでご機嫌な楽曲に。そのまま終盤までご機嫌な雰囲気で進みますが、最後は少しテンポを落とし、じっくり聴かせてフィナーレ。
 後半は「Vienna」で開幕。ゆったりとしたメロウなサウンドに、伸びやかなビリーの歌はポップセンスに溢れています。間奏で加わるアコーディオンが味があって良い。続く「Only The Good Die Young」は牧歌的でご機嫌な楽曲。小気味良いアコギとリズミカルなパーカッション、そして歌うようなベースがノリの良い演奏を展開します。オルガンやホーンが時折賑やかして陽気ですね。「She’s Always A Woman」はアコギとピアノが優しく穏やかな音色を奏でます。歌はポップですが、どこか憂いを帯びています。「Get It Right The First Time」は手数の多いドラムと、独特のフレーズを奏でるベースが印象的。リズムに気を取られているとどんどん盛り上がってサンバのような陽気さに。ビリーの歌はポップで、時折ソウルフルです。ラストはメロディアスな「Everybody Has A Dream」。とてもソウルフルな歌で、サビでは分厚いコーラスでじっくりと聴かせてくれます。同じメロディを反復しながら壮大に盛り上がって充実感のあるラストを迎えた後、「The Stranger」のフレーズを引用して、哀愁のピアノと口笛をアウトロに奏でて終了。

 優れたポップセンスを発揮し、魅力的な楽曲の数々。世間的にも高い評価を得ており、オススメできる作品です。

The Stranger (30th Anniversary Legacy Edition) (2CD)
Billy Joel
The Stranger
Billy Joel
 
52nd Street (ニューヨーク52番街)

1978年 6thアルバム

 前作に引き続きフィル・ラモーンによってプロデュースされた本作は全米1位、そしてビルボードの年間でも1位を獲得する大ヒットとなりました。前作の大ヒットの恩恵もあったでしょうが、名曲が揃っていて、日本でも人気の高い「Honesty」が入っているのが大きなポイントですね。
 ちなみに1982年に世界で初めて商業用CDで発表されたのが本作だそうです。ここからレコードが徐々にCDに置き換わっていくんですね(最近はCDの凋落とレコードの再評価が進んでいますが)。

 オープニング曲は「Big Shot」。キレのあるギターで幕を開け、グルーヴ感のあるちょっとファンキーなリズムと歌が始まります。語感が良く、キャッチーで耳に残りますね。スティーヴ・カーンの弾くギターも中々魅力的です。そしてビリー・ジョエル屈指の名曲「Honesty」。日本でも人気の高い名バラードですね。魅力は何と言ってもメロディの美しさ。ビリーは渋い低音ボイスと甘い高音ボイスを使い分けて、このメロディアスな歌に浸らせてくれます。しっとりとしたピアノとストリングスが、歌を最大限に引き立てます。大好きです。続く「My Life」も名曲。軽快で跳ねるようなリズムとピアノがご機嫌な気分。メロディもとてもキャッチーで、口ずさみたくなりますね。聴いていると出掛けたくなるような、ポップで開放感に溢れています。「Zanzibar」は少しシリアスな雰囲気が漂います。少しピリピリとした空気に力強い歌声。時折見せる哀愁がしんみりとしています。終盤、ジャジーなドラムとベースに乗せてトランペットソロを聴かせてくれます。これがカッコ良いのですが、吹いているのはジャズミュージシャンのフレディ・ハバード。
 レコード時代のB面、アルバム後半は「Stiletto」で幕開け。渋いサックスから指パッチンが聞こえるリズミカルな演奏が始まります。全体的にジャジーな雰囲気で、時折唸るオルガンの味付けが良いですね。ビリーの歌はちょっとソウルフルな感じ。「Rosalinda’s Eyes」はマリンバとビブラフォン、そしてパーカッションがトロピカルな雰囲気を醸し出します。歌もまったりとしていてリラックスできますね。「Half A Mile Away」は華やかなホーンで開幕。ノリが良くご機嫌で、歌もキャッチーです。続く「Until The Night」はじっくり聴かせる楽曲。普段よりかなり低音の渋い声を聴かせますが、サビでは聞き慣れた力強い歌声を披露。またサビではストリングスで壮大に盛り上げます。終盤の魅力的なサックスとその後の多幸感のある大サビで、聴き終えた後の余韻も至福です。最後に表題曲「52nd Street」。ジャジーでソウルフルな楽曲ですが、前曲の方がエンディング向きな感じもします。

 オープニング3曲が突出していますが、それ以外にも良曲が並ぶ名盤です。ビリー・ジョエルは数作品しか聴いていませんが、その中でもリピート頻度の高いお気に入りの1枚です。

52nd Street
Billy Joel
 
 

編集盤

Greatest Hits Volume I & Volume II (ビリー・ザ・ベスト)

1985å¹´

 ビリー・ジョエルのベスト盤で、入門にも最適な作品です。年代順に並んでおり、Disc1は「Greatest Hits Volume I 1973-1977」、Disc2は「Greatest Hits Volume II 1978-1985」と名付けられています。『ストレンジャー』(9曲入り)から6曲も入っており、彼の代表作はやはり『ストレンジャー』なのでしょう。
 中古CDショップでもよく見かけるジャケットですが、日本では1985年のオリコン洋楽アルバムチャートで13週連続1位を獲得したそうです。日本での人気の高さが窺えますね。日本盤と海外盤で曲目が微妙に異なるようで、名曲「Honesty」の入った日本盤をオススメします。
 
 
 Disc1は代表曲「Piano Man」で幕開け。ピアノマンのタイトルどおりピアノ伴奏は鳴っていますが、ノスタルジックな音色を奏でるハーモニカやアコーディオンの方が印象的だったりします。メロディはとてもポップで聴きやすく、8分の6拍子の心地良いリズムに揺られながら優しい歌に癒されます。「Captain Jack」は少しブルージーなロック曲。鳴り響くオルガンが時代を感じさせます。「The Entertainer」はアコギをかき鳴らしてカントリー調の牧歌的な楽曲ですが、場違いなシンセがスペイシーな音色を奏でます。ほのぼのした良曲なのにシンセだけが浮いている…。「Say Goodbye To Hollywood」はライブバージョンだそうです。ポップな歌メロを優雅なストリングスが彩るスタイルはELOを想起させます。続く「New York State Of Mind」はビリーの歌をフィーチャーしたメロディアスな楽曲。ピアノと歌だけで始まり、途中から楽器が増えてジャジーで大人びた雰囲気に。色気のあるサックスソロも魅力的で、静かにゆったりと浸れる1曲です。イーグルスの「Wasted Time」にも似てるかも。
 ここからは『ストレンジャー』にも収録された楽曲群が並びます。まずは名曲「The Stranger」。イントロとアウトロでの哀愁のピアノと口笛が印象的ですが、歌が始まると意外にファンキーでグルーヴ感に満ち溢れています。「Scenes From An Italian Restaurant」は7分半の楽曲ですが、この時間の中にドラマが詰まっていて、聴きやすさは保ちつつも目まぐるしく場面転換します。ゆったり優雅に始まったかと思えば、テンポアップしてソウルフルに、そして小気味良くポップに。最後にテンポを落としてじっくりと壮大に聴かせます。続くバラード「Just The Way You Are」。ボサノバ調のゆったりと優しいリズムに、甘い歌声で聴かせるメロディアスな歌がとても魅力的です。色気のあるサックスもメロウで良い。AORの名曲ですね。「Movin’ Out (Anthony’s Song)」は少しシリアスな雰囲気が漂っめいます。そしてメロディアスなサックス、これがとても魅力的なんです。切ないフレーズが耳に残ります。牧歌的でご機嫌なロックンロール「Only The Good Die Young」を挟んで、憂いを帯びてメロディアスな「She’s Always A Woman」でDisc1は終了。

 Disc2は「My Life」で開幕。跳ねるように軽快な演奏に、飛び抜けてキャッチーなメロディがとても魅力的なポップ曲です。耳に残るメロディは口ずさみたくなりますね。「Big Shot」はキレのあるギターで始まり、ファンクっぽいリズムとソウルフルな歌が心地良い。語感が良くて癖になりますね。そして名バラード「Honesty」。ビリー・ジョエル一番の名曲だと思っています。ソウルフルな低音ボイスと甘い高音ボイスを使い分けて、メロディアスで感傷的な歌を聴かせてくれます。歌を引き立てるピアノやストリングスも良い。そんな歌に浸っているとガラスの割れる音で「You May Be Right」へ。ノリが良くてカラッとしたロック曲ですね。旧き良きロックンロールに回帰していて中々味があります。続く「It’s Still Rock And Roll To Me」もシンプルなロックンロール。音数は少ないですがノリが良く、心地よく揺さぶってくるので、自然と身体がリズムを刻み出します。「She’s A Got A Way」はしっとりとした楽曲。ピアノ弾き語りでメロディアスな歌を聴かせます。なおライブ録音で、最後の拍手で気付かされます。「Pressure」は1980年代ニューウェイヴっぽい感覚が漂います。歌は少しシリアスな雰囲気ですが、キャッチーなメロディラインとチープなシンセが、シリアスさを和らげてくれるので聴きやすい。ポップでほのぼのとした空気の漂う「Allentown」を挟んで、スケール感のある「Goodnight Saigon」。最初は淡々としていますが、同じメロディを反復しながら徐々に盛り上がっていきます。後半ではストリングスと分厚い合唱が展開され、壮大な印象を与えて終わります。続く「Tell Her About It」は飛び抜けてキャッチーで、良い意味で1980年代の王道を往くポップソングですね。思わず手拍子したくなるリズミカルな演奏と華やかなホーンが印象的で、派手ですが魅力的な1曲です。「Uptown Girl」は全英1位を獲得した大ヒット曲。とてもキャッチーなポップソングで、リズミカルな演奏もワクワクさせてくれます。「The Longest Time」はアカペラ曲。指パッチンとハモリが心地良い楽曲です。「You’re Only Human (Second Wind)」はダンスポップ曲。ゴージャスなシンセと、強烈なグルーヴを放つリズミカルな演奏が心地良く揺さぶってきます。R&Bっぽいコーラスも華やかな印象を強めます。ラストの「The Night Is Still Young」もシンセは派手ですが、メロディアスでじっくり聴かせます。ワールドミュージック要素も取り入れて、神秘的な雰囲気も漂っています。
 
 
 初めてでも比較的聴きなじみのある楽曲が聞けるかもしれません。良質ポップ曲が揃った作品で、ベスト盤派はこれだけでも十分かも。

ビリー・ザ・ベスト
Billy Joel
 
 
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