🇺🇸 Blondie (ブロンディ)

レビュー作品数: 7
  

スタジオ盤

Blondie (妖女ブロンディ)

1976年 1stアルバム

 ロック界のマリリン・モンローことデボラ・ハリー擁する、米国ニューヨーク出身のバンド、ブロンディ。ニューウェイヴを代表するバンドで、全世界でトータル4000万枚以上を売り上げています。NYパンクシーンから出てきたバンドですが、本国より先に豪州や英国でヒットし、逆輸入で米国でもヒットしたそうです。マドンナをはじめ後発の女性アーティストに大きな影響を与えました。
 1974年にデボラはガールズロックバンド「スティレットーズ」を結成、そのバックバンドを務めたクリス・シュタインと意気投合してブロンディを結成します。バンド名は、デボラがトラックの運転手に「Hey, Blondie! (よお、金髪の姉ちゃん)」と声をかけられたことから。本作のラインナップはデボラ・ハリー(Vo)、クリス・シュタイン(Gt)、ゲイリー・バレンタイン(B)、ジミー・デストリ(Key)、クレム・バーク(Dr)。なお、デボラは本作でのデビュー時31歳と遅咲きでした。プロデューサーにはリチャード・ゴッタラー。

 「X Offender」で幕開け。デボラのポエトリーリーディングから軽快で躍動感のある演奏が始まるパワーポップです。勢いある演奏に乗る歌メロもキャッチーで聴きやすいです。オルガンの音が少しレトロな感を醸し出しています。「Little Girl Lies」は陽気なギターに、ご機嫌に歌うベースが心地良い。これも少しレトロな雰囲気が漂いますが、リズミカルでノリが良く、聴いていると身体が自然とリズムを取り始めます。「In The Flesh」はシングルカットされ、豪州で2位のヒットを飛ばしました。ゆったりとした楽曲で、1976年という時代の割に随分古っぽい雰囲気。意図的にレトロっぽくしてるんでしょうね。デボラの優しく囁くような歌声は心地良いですね。「Look Good In Blue」は渋く古臭い雰囲気で、そこにビヨンビヨンと唸るシンセだけが真新しさを加えます。そして後半はテンポアップ。「In The Sun」はノリノリの楽曲で、サーフロックを高速化したようなパンク曲ですね。緊張感が漂うものの、リズミカルなので聴いていて結構楽しいです。デボラはここではドスの利いた声で力強く歌います。「A Shark In Jets Clothing」はメロディアスな楽曲。シンセやオルガンなど彩り豊かな鍵盤が、レトロな楽曲に独自性を加えます。リズム隊が刻む心地良いビートが良い感じ。終盤テンポアップして煽り立てます。
 レコードでいうB面、アルバム後半は「Man Overboard」で開幕。少し陰があるというか、どことなく怪しげな雰囲気。比較的分厚いコーラスが特徴的です。「Rip Her To Shreds」はミドルテンポの、グルーヴ感のあるリズミカルな楽曲。メンバーがコーラスしているのか、賑やかなサビは楽しいですね。「Rifle Range」はダイナミズム溢れるドラムが、ブルージーな楽曲に躍動感を加えます。ベースもよく歌いますね。反復するメロディや怪しげなハミングなど、デボラの歌に中毒性があります。デボラの力強いシャウトで始まる「Kung Fu Girls」は軽快に疾走するパンク曲。演奏は速いものの全体的に明るい雰囲気で、キャッチーなメロディも中々魅力的です。ラスト曲「The Attack Of The Giant Ants」は躍動感あるドラムソロで始まりベースとリズムギターが絡み、オルガンが加わるというイントロで高揚感を煽ります。メロディはあっさりしてて演奏重視な楽曲ですね。中盤には火事か事故か(巨大アリの襲撃?)、不穏な空気を効果音で演出するというアートロック的な側面もあります。

 1960年代に回帰したような、レトロで懐かしい雰囲気。それでいて少し速めのパンキッシュな仕上がりです。古臭いんだけどノリノリで、聴いていて楽しい作品です。

Blondie
Blondie
 
Plastic Letters (囁きのブロンディ)

1977年 2ndアルバム

 前作のあとゲイリー・バレンタイン(B)が脱退。クリス・シュタイン(Gt)がベースを弾いているほか、サポートとしてフランク・インファンテ(B)が参加しています(後にギタリストとして加入)。前作同様リチャード・ゴッタラーのプロデュース。前作同様1950年代~60年代の楽曲をベースとしつつ、パンキッシュでノリの良い演奏で楽しませてくれます。ジャケット写真も好みです。

 アルバムはまったりとした「Fan Mail」で開幕。1960年代に傾倒した前作に引き続き、この楽曲も1978年という時代にしては少し古い雰囲気ですが、ジミー・デストリの彩り豊かな鍵盤だけは少し新しい雰囲気を加えます。デボラ・ハリーの歌は心地良いものの、ラストでドスの利いただみ声を聴かせます。続く「Denis」はランディ&ザ・レインボウズのカバー曲ですが、オリジナルとは性別を入れ替えています。これが全英2位の大ヒット。ノリの良い演奏に乗せて「デニー デニー」と連呼する歌はキャッチーで耳に残ります。クレム・バークのドコドコ叩くドラムも軽快で気持ち良いですね。「Bermuda Triangle Blues (Flight 45)」はまったりとした雰囲気で始まりますが、アンニュイな歌が終わるとオルガンをはじめアグレッシブな演奏に驚かされます。そしてまたまったりモードに戻るという。「Youth Nabbed As Sniper」はイントロから不穏な雰囲気が漂い、煽り立てるような速い演奏を展開。ですが歌が始まると、ちょっとダークな雰囲気はあるもののキャッチーで親しみやすい印象です。ドタバタドラムも爽快。全体的にクールでカッコ良いですね。「Contact In Red Square」は高速ロックンロール。僅か2分のパンキッシュな楽曲ですが、軽快に鳴るムーグシンセにイエス(『トーマト』の頃)を想起させたり。メロディラインもキャッチーだし、終盤吐き捨てるように歌うデボラの歌も魅力的です。「(I’m Always Touched By Your) Presence, Dear」はほのぼのとして優しくポップな楽曲ですが、後半どんどん盛り上がって勢いづいていきます。「I’m On E」はシンプルかつパンキッシュな高速ロックンロール。ベースが結構際立っていますね。煽り立てるようなテンポですが、歌はキャッチーで楽しいです。
 アルバム後半は「I Didn’t Have The Nerve To Say No」で幕開け。これもパンキッシュで勢いがありますが、そこにゴスペル的な要素もうまく取り込んで、攻撃性はほどほどに親しみやすさに溢れています。間奏のベースソロがアツい。続く「Love At The Pier」は旧き良きロックンロールをやや速めに仕立てています。思わず踊り出したくなるようなノリノリのリズムに、溢れる爽快感。「No Imagination」は哀愁漂う楽曲。ピアノとデボラの歌がメランコリックで感傷的な気分を誘いますが、終始暗いかと言えばそうでもなく、リズミカルな演奏のおかげか心地良く聴ける場面も。「Kidnapper」は1950年代くらい?のロックンロール風。グルーヴィな演奏にノリノリの歌で、古臭いんだけど楽しいです。「Detroit 442」はパンキッシュな楽曲。デボラの歌もだみ声でかなり攻撃的だし、ダイナミックなドラムをはじめ勢いに溢れています。カッコ良い。最後の「Cautious Lip」はサイケデリックで幻覚的な雰囲気です。スペイシーな鍵盤が浮遊感を生み出し、デボラの歌はとても気だるげ。そして終盤狂ったように加速し、混沌とした空気の中でシュタインのギターソロだけが輪郭のはっきりした演奏を繰り広げています。

 バラエティに富みつつ前作よりパンキッシュな仕上がりです。ニューヨークパンクの名盤ですね。

Plastic Letters
Blondie
 
Parallel Lines (恋の平行線)

1978年 3rdアルバム

 プロデューサーに新たにマイク・チャップマンを迎えますが、彼の意向を受けて当時最先端のディスコ音楽を取り入れた名曲「Heart Of Glass」を収録。これがシングルカットされ、全英・全米1位の大ヒット(その他数ヶ国でも1位を獲得)、ブロンディ人気に火が付きました。「Heart Of Glass」だけでなく、アルバムも全英1位・全米6位を記録する大ヒットとなり、2008年までに全世界で2000万枚以上を売り上げているブロンディの代表作です。
 前作でベースを担当したフランク・インファンテが加入していますが、その後ナイジェル・ハリスンがベーシストとして加わり、フランクはギターに持ち替えることに。メンバーラインナップはデボラ・ハリー(Vo)、クリス・シュタイン(Gt)、フランク・インファンテ(Gt)、ナイジェル・ハリスン(B)、ジミー・デストリ(Key)、クレム・バーク(Dr)。

 「Hanging On The Telephone」はパワーポップグループのザ・ナーヴスのカバー曲。爽快でパワフルなバンドサウンド、口ずさみたくなるメロディラインなど、オープニングを飾るに相応しい勢いに満ちたキャッチーな楽曲です。デボラの歌は後半になるにつれて、だみ声というかソウルフルな色合いが強くなってきます。続く「One Way Or Another」もノリの良い楽曲です。キレのあるギターにグルーヴ感のある演奏は心地良い。これもだみ声が利いていますね。「I’m gonna get ya, get ya, get ya, get ya」の連呼が耳に残ります。「Picture This」はほのぼのとした温もりのある楽曲。デボラの歌唱も前2曲と比べて比較的柔らかい印象です(熱が入るとだみ声気味になるみたいですね)。「Fade Away And Radiate」は強いエコーのかかったドラムが空間に響き渡ります。ドラムと歌だけで始まりますが、そこからバンドサウンドが加わります。陰のある楽曲で、哀愁が漂っていますね。泣きのギターもしんみりと感傷的な気分にさせます。続いて「Pretty Baby」は躍動感のある楽曲。ですが跳ねるような演奏に比べると歌はじっくり聴かせる感じで、エコーがかった歌に分厚いコーラスでゴスペルっぽい印象です。遊んでいるようなシンセで始まる「I Know but I Don’t Know」は、ギターが結構ハード。ひたすら反復するフレーズはヘヴィですが耳に残ります。ベースソロもあったり演奏はカッコ良いのですが、メンバーが歌うボーカルはヘタで笑ってしまいます。
 アルバム後半は「11:59」で幕開け。イントロはパンキッシュですが、歌はそんなに攻撃的ではないですね。ノリが良い楽曲です。ジミーの彩り豊かな鍵盤も聴きどころです。続く「Will Anything Happen?」もテンポの速い楽曲で、旧き良きロックンロールをパンク風にしつつ、シンセやオルガンでカラフルに彩っています。ノリが良くて爽快ですね。「Sunday Girl」は明るい雰囲気でポップな良曲。デボラは優しい歌唱でキャッチーなメロディを歌います。リズミカルな演奏も中々良い感じ。そしてブロンディの代表曲「Heart Of Glass」。1975年頃に「Once I Had A Love」という名で原型は出来上がっていましたが、マイク・チャップマンの意向でディスコサウンドを取り入れて大ヒット。クレムの叩くリズムビートが爽快で、ジミーがスペイシーなシンセで飾り立てます。そして、デボラは終始ファルセット気味の高音キーで歌っています。ダンサブルで心地良い名曲ですね。続いて「I’m Gonna Love You Too」はロックンローラーのバディ・ホリーのカバー曲。初っ端から飛び出すような躍動感で、爽快なロックンロールを奏で歌います。ハンドクラップやわかりやすいメロディで楽しませてくれます。ラスト曲「Just Go Away」も明るい雰囲気。力強いデボラの歌唱に合わせて、メンバーの野太いコールのようなコーラスが楽しそうな雰囲気を伝えてくれます。

 一部にパンク色も残しつつ、バラエティに富んだ楽曲で楽しませます。ブロンディの代表作ですので、まずは本作からどうぞ。

Parallel Lines
Deluxe Collector’s Edition (CD+DVD)
Blondie
Parallel Lines
Blondie
 
Eat To The Beat (恋のハートビート)

1979年 4thアルバム

 前作の大ヒットを受けてマイク・チャップマンをプロデューサーに続投、メンバーラインナップも前作に引き続きの顔ぶれです。前作同様ディスコナンバーあり、またレゲエも取り込んでみたりとバラエティに富んだ作品となりました。前作よりもハードポップ寄りというか、音のメリハリも効いていますね。本作も全英1位を記録しています。

 アルバムは「Dreaming」で開幕。爽やかなアップテンポ曲で、クレム・バークのドラムが爽快。デボラ・ハリーの歌はエコーを強めにかけていることもありますが、だみ声をやや抑えてキャッチーなメロディを際立たせています。「The Hardest Part」はナイジェル・ハリスンのグルーヴィなベースがブンブン響き、クレムのダンスビートがよく効いている楽曲です。メリハリのある楽曲で、前曲よりもパワフルな歌唱も印象的。「Union City Blue」も力強い楽曲ですが、ジミー・デストリのドリーミーな鍵盤がこのパワフルな楽曲に幻想的な雰囲気を加えます。ややメランコリックなメロディも心地良くて、聴けば聴くほど楽曲の虜になります。「Shayla」はメロディアスなバラード。伸びやかな歌声でしっとりと聴かせます。そして表題曲「Eat To The Beat」。パンキッシュで爽快な楽曲で、ノリノリの演奏に乗せ、デボラの歌は弾けるような躍動感に満ちています。勢いがあってキャッチーなので、アルバム全体を引き締めてくれますね。続く「Accidents Never Happen」も焦燥感を煽るスリリングな楽曲。前曲とは異なり歌は抑圧気味ですが、リズム隊は結構弾けています。アウトロが中々クールでカッコ良い。
 アルバム後半はレゲエ曲「Die Young Stay Pretty」で幕開け。クレムの叩くノリの良いレゲエのリズムビートに、ジミーのオルガンの味付けが良いアクセントになっています。中々の良曲ですね。続く「Slow Motion」はポップな1曲。エコーの強く効いたプロダクションは1980年代なのですが、楽曲の雰囲気はブロンディの得意とするオールディーズ風。デボラの歌も魅力的です。そして人気曲「Atomic」。大ヒット曲「Heart Of Glass」の系譜を継ぐディスコナンバーです。ノリノリなリズムビートとは対照的に、ギターは結構ブルージーで渋い雰囲気を醸し出しており、歌はメランコリックな印象。間奏にはベースソロをフィーチャーしています。「Sound-A-Sleep」は囁くような歌声とドリーミーな演奏で、まったりと穏やかな子守歌のような印象。「Victor」は発狂するかのようなデボラの歌が強烈です。アルバムで一番穏やかな前曲との対比もあり、同じバンドとは思えないですね。リズミカルな演奏や狂ったような歌は、ライブのような即興的で臨場感のある雰囲気を出しています。そしてラストは爽快な疾走曲「Living In The Real World」。勢いに溢れており、かつ楽曲が進むにつれて更にスピーディな印象に。デボラの歌もかなりアグレッシブです。

 クレムのドラムが前面に出た、全体的にパワフルな仕上がりです。1970年代末の作品ですが、音の鳴り方は良くも悪くも1980年代ですね。初期はオールディーズに回帰することで意図的にレトロさを出していてそれが魅力になっていましたが、本作は当時主流のサウンドプロダクションが故に、ちょっと古臭いというか時代を感じさせる印象になっています。よく聴けば名曲が詰まっているんですけどね。

Eat To The Beat
Blondie
 
Autoamerican (オートアメリカン)

1980年 5thアルバム

 1980年作の映画『アメリカン・ジゴロ』にて、提供した楽曲「Call Me」が全米・全英ともに1位を獲得する大ヒット。しかしアメリカを描くコンセプトアルバムとしての側面を優先し、ブロンディ最大のヒット曲「Call Me」をあえて収録しないというこだわりを見せます(2001年リマスター時にボーナストラックとして収録されることになりました)。そんな本作は全英3位、全米7位を記録。そして本作からは当時最先端のラップを導入してファンクやディスコと融合させた楽曲「Rapture」がシングルヒットし、全米チャート1位を獲得した史上初のラップ曲となりました。ラップやジャズなど音楽的な挑戦をしつつ、全体的には大人びた作りに仕上がっています。

 オープニングを飾る「Europa」はストリングスの不協和音で幕開け。重厚でダークな雰囲気に満ちた、オーケストラによるほぼインストゥルメンタルです。スケール感のある演奏を聴かせた後、終盤でノイズとデボラ・ハリーのナレーションが入ります。そして次曲「Live It Up」はクレム・バークのダンスビート、ナイジェル・ハリスンの歌うように跳ねるベースがノリの良い演奏を繰り広げます。ですがジミー・デストリのスペイシーなシンセによって浮遊感や近未来感も感じさせます。歌があまり乗れてない(?)アンマッチな感じも中々クセになりそうです。続く「Here’s Looking At You」はサックスやストリングスがメロウな雰囲気を作ります。ジャジーで大人びた演奏と、ハスキーで色気のある歌声で魅了する、レトロな映画のBGMっぽいオシャレな楽曲ですね。そして雰囲気を一気に変えて、レゲエグループのパラゴンズのカバー曲「The Tide Is High」。ホーンを多用して賑やかで、そして音色豊かなパーカッションによりトロピカルな空気を醸し出します。ゆったりと心地の良いレゲエ曲ですね。「Angels On The Balcony」はわざとらしいピコピコサウンドと煽り立てるようなドラムによって無機質で不気味な雰囲気。そしてイントロぶつ切りの後は雰囲気を変えて、メランコリックな歌を程よいテンポで聴かせる楽曲になります。「Go Through It」は疾走感のあるドラムと派手なホーンでキャッチーなメロディを聴かせます。ちょっと派手かも。
 アルバム後半は「Do The Dark」で開幕。ディスコ調のノリの良いリズムビートですが、エキゾチックで怪しげなシンセがアクセントを加えます。アンニュイで色気のあるデボラの歌も中々魅力的です。そして名曲「Rapture」。ファンキーでグルーヴ感に満ちたベースやリズムギターが強烈ですね。デボラの歌はファルセット気味でふわふわしています。そして中盤ではラップを披露。バックで流れるファンキーな演奏に乗せられ、とても気持ちの良い楽曲です。サックスはオシャレだし、ギターソロはカッコ良いし、ハンドクラップもノリノリで爽快です。「Faces」はジャジーでしっとりとした楽曲。ファルセット気味だとアンニュイで、地声だとハスキーな歌声が色っぽいですね。そこにメロウなサックスによる味付けが良い感じ。続く「T-Birds」はイントロから勢いに溢れ、高揚感を煽ります。ポップなのですが、強めのエコーを効かせた演出がやや過剰装飾な感じがして、初期のようなシンプルなアレンジが恋しくなります。そんな初期楽曲の雰囲気を残すのが次曲「Walk Like Me」。躍動感のあるリズム隊、ちょっとレトロなギターに、デボラのパワフルな歌唱。シンプルなのですが、初期ブロンディの味が前面に出た佳曲です。そしてさざ波のようなイントロからラスト曲「Follow Me」が始まります。優しく諭すような歌い方で、またドリーミーな鍵盤もあってゆったり癒してくれます。

 荒削りなバンドサウンドは息を潜め、ホーンやストリングスなど豪華な演奏陣と円熟味のある楽曲の数々。デボラの表現力も向上し、パワフルなだみ声よりもファルセット気味の色気ある歌唱が占める割合が多い印象です。アルバムの完成度は高いのですが、ブロンディらしさは薄れたかも。

Autoamerican
Blondie
 
The Hunter (ザ・ハンター)

1982年 6thアルバム

 前作の後、メンバーのソロ活動などを挟んで発表された本作。「エベレストを探検、狩猟、追跡する」というテーマになっているのだそう。しかしアルバムはこれまでのような商業的成功を得られず、本作をもって一度解散することになります。メンバーは『恋する平行線』より続くデボラ・ハリー(Vo)、クリス・シュタイン(Gt)、フランク・インファンテ(Gt)、ナイジェル・ハリスン(B)、ジミー・デストリ(Key)、クレム・バーク(Dr)のラインナップに、プロデューサーにはマイク・チャップマン。ジャケット写真のデボラの髪型に時代を感じますね。

 「Orchid Club」で開幕。民族音楽的なドラムに幽玄な雰囲気のシンセ。演奏と歌が合わさって、神秘的でエキゾチックな印象を抱きます。でも全然ブロンディらしくないですね。続く「Island Of Lost Souls」はトロピカルな雰囲気漂う、陽気でリラックスできる楽曲です。少しホーンが過剰な感じもしますが、レゲエを取り入れたノリの良いリズムで楽しませます。ナイジェルの刻むベースが心地良い。「Dragonfly」もトロピカル風味ですが、デボラの歌うメロディに哀愁があるからか、前曲よりはやや緊張感が漂います。時折強いエコーのかかったナレーションが入り、若干まくし立てるような印象を受けます。「For Your Eyes Only」は映画007用に書いた楽曲でしたが、残念ながら採用されず。シリアスな雰囲気で、ファルセット気味に歌うデボラの歌や演奏には哀愁が漂います。ですが時代を反映している音というか、今聞くとかなり古臭い印象を抱きます。「The Beast」はハードなギターが際立つ1曲。ファンキーで跳ねるようなリズムに対してギターがメリハリをつけます。歌にはあまりメロディがありませんが、ノれる演奏がカッコ良いです。
 アルバム後半は「War Child」で幕開け。勢いがあり緊張感に満ちた楽曲で、アルバム前半のコレジャナイ感を一気に吹き飛ばします。ギターはソリッドだしドラムは焦燥感を煽るし、デボラのパワフルな歌唱など全体的にハードな印象ですが、ファンキーなベースが作り出す躍動感が爽快です。サックスソロも洒落ていますね。「Little Caesar」はレゲエのリズムに華やかなホーンが目立ちます。ノリは良いのですが、歌に切れ味がなく若干冗長な印象を抱くのが残念です。続く「Danceway」はキャッチーな楽曲。躍動感に満ちたノリの良いビートに、オルガンの(良い意味で)若干古びた音色、そしてキャッチーな歌メロなど魅力たっぷり。ただデボラの歌はこれまでよりキレがない気がします。「(Can I) Find The Right Words (To Say)」は音の鳴らし方こそ時代に迎合したものの、初期のようなレトロポップな雰囲気が漂います。どこか懐かしい感じ。そして「English Boys」もまたオールディーズ風な楽曲ですね。終始ファルセット気味に歌い、ギターやキーボードがドリーミーな音色を奏で、優しく癒してくれます。ラストの「The Hunter Gets Captured By The Game」はザ・マーヴェレッツのカバー曲で、オリジナルは1966年発表。音数少なくシンプルな楽曲で、ゆったりとしてリズミカル。ギターソロは渋いんですが陽気な印象も受けます。

 アルバム前半はトロピカルだったり新しい音楽を取り入れたものの、個性を失って平凡になった印象。後半でブロンディらしさが出てきてようやくエンジンがかかりますが、全編通してデボラの切れ味が悪くパワーが弱い気がします。

 難病にかかった相方クリスの看病にあたることに決めたデボラは、1982年にブロンディの解散を決めました。1997年にはブロンディは再結成を果たし、その後もいくつかの作品を発表しています。

The Hunter
Blondie
 
 

編集盤

Greatest Hits (グレイテスト・ヒッツ)

2002年

 ブロンディのベスト盤はいくつもリリースされていますが、選曲的にこれが一番良さそうだったので本作を購入しました。ラスト曲以外はデビューから1982年の解散までの楽曲で構成されていて、ラスト曲「Maria」だけは再結成後の楽曲ですが、これも全英1位を獲得した人気の高い1曲です。
 本作はブロンディの中で最初にデジタルリマスター化されたベスト盤かつ、バンド側が公式に承諾した最初のベスト盤なのだとか。私はたまたま選曲で決めて手に取ったものの、バンド側としても聴いてほしいベスト盤はこれだったみたいですね。

 クレム・バークの躍動感あるドラムが弾ける「Dreaming」で幕開け。デボラ・ハリーの歌は憂いを帯びていて、勢いのある爽快な演奏に比べるとメロディアスな印象を受けます。全体的にキャッチーでオープニングに向いた楽曲で、掴みはバッチリです。続く「Call Me」は映画『アメリカン・ジゴロ』のタイアップを果たして大ヒットした楽曲です。適度にハードでパンチの効いた演奏に力強く歌うボーカルが爽快で、耳に残るキャッチーな歌は口ずさみたくなります。ジミー・デストリのシンセサイザーソロも印象的ですね。「One Way Or Another」はキレのある骨太なギターリフで幕開け。クリス・シュタインとフランク・インファンテのギタリスト2名体制の役割分担はよくわかりませんが、分厚いバンド演奏はブロンディの魅力でもありますね。そして演奏も勿論カッコ良いのですが、この楽曲はデボラの歌も強烈に耳に残ります。だみ声で歌う「I’m gonna getcha getcha getcha getcha」の連呼が強いインパクト。「Heart Of Glass (Special Mix)」はブロンディの大ヒット曲で、ディスコを取り入れています。ノリの良いダンサブルな楽曲とファルセット気味の浮遊感溢れる歌が魅力的です。本作のSpecial Mixにより、『恋の平行線』収録バージョンよりも短めになっていますが、演奏パートは気持ち長めになっているような。続いて「The Tide Is High」はジャマイカ出身のザ・パラゴンズのカバー曲。トロピカル風味のレゲエ曲で、パーカッションやホーンがまったりとしたリゾート気分を提供してくれます。そしてブロンディのデビューシングル「X Offender」。勢いのあるパンキッシュな楽曲で、最初はNYパンクシーンから出てきたパンクバンドだったんですよね。ジミーのオルガンの味付けが、やや古臭くも親しみやすさを作り出してて良い感じ。メロディもキャッチーで耳に残ります。「Hanging On The Telephone」はパワーポップバンドのザ・ナーヴスのカバー。適度にハードな演奏とドスの利いた声で歌うメロディはキャッチーで爽快です。後半に向かうにつれてどんどんだみ声はパワフルでソウルフルになっていきます。カッコ良い。「Rip Her To Shreds」は音数少なめのシンプルな楽曲です。鍵盤が無かったらスッカスカですが、ピアノやシンセなど鍵盤で隙間を良い具合に埋めていますね。サビでの合唱が爽快。「Rapture (Special Mix)」はラップ曲としては初めて全米1位を獲得した楽曲で、これが名曲なのです。ラップ曲とは言うものの全編ラップではなく中盤にフィーチャーされている程度で、ファルセット気味の浮遊感溢れる歌メロパートと地声で歌うラップパートの対比は印象的。そして、ナイジェル・ハリソンのベースをはじめグルーヴィなファンクサウンドがノリノリでとてもカッコ良く、そこにサックスが加わりオシャレな雰囲気をも醸し出しています。「Atomic」はイントロから勢い溢れるディスコナンバー。哀愁のギターが渋くてちょっと古臭く、煌びやかなシンセとは対照的ですね。パワフルな歌はメロディアスでもあり、少し切ない気分を誘います。続く「Picture This」は牧歌的な楽曲です。歌も優しく始まりますが、盛り上がるにつれて力が入るとどんどんだみ声になっていくという。笑 ほのぼのとしていてポップなメロディが魅力的です。「In The Flesh (Special Mix)」はドリーミーなサウンドと囁くような歌声の優しいワルツ。ゆったりと癒してくれます。「Denis」はランディ&ザ・レインボウズのカバー曲で、「デニーデニー」の連呼が耳に残ります。クレムのドコドコ叩くドラムが爽快。ポップなメロディの「(I’m Always Touched By Your) Presence, Dear」もドタバタしたドラムが爽快で、楽曲が進むにつれて勢いづき、どんどんヒートアップしていきます。「Union City Blue」はメランコリックでメロディアスな楽曲です。鍵盤やギターがドリーミーな音色を奏でますが、デボラの力強い歌は哀愁に満ちたメロディで、切なさを誘います。「The Hardest Part」はナイジェルのベースがブンブン唸り、クレムのドラムも力強いビートを刻みます。パンチの効いた、パワフルでノリの良い楽曲ですね。ホーンが華やかな「Island Of Lost Souls」はトロピカル風味の陽気な楽曲です。パーカッションが印象的ですね。「Sunday Girl (Special Mix)」はリズミカルな演奏が心地良い、ポップで可愛らしい1曲。優しい歌メロは聴いていると温もりを感じます。そしてラスト曲「Maria (Radio Edit)」は再結成後のブロンディがリリースした第1弾シングルで、全英1位のカムバックヒットとなりました。アルバムでは『ノー・エグジット』に収録。イントロからギターが緊張を高め、躍動感のあるドラムが炸裂。デボラの歌は円熟味を帯びて落ち着いていますが、サビはボーカルの表現力もあってドラマチックな仕上がりです。キャッチーなメロディは全盛期にも負けず劣らずで、魅力的な名曲でアルバムを締め括ります。

 オリジナルアルバムから満遍なく収録された楽曲の数々は名曲揃い。とても出来が良いのですが、逆にこれを聴いてしまうとオリジナルアルバムは『恋の平行線』と『恋のハートビート』だけでも十分な気がしてしまいます。
 なおジャケットは2種類存在し、US盤/日本盤がモノクロ基調のメンバー写真、UK盤が赤い背景の少しレトロなメンバー写真になっています。お好みでどうぞ。

Greatest Hits (UK盤)
Blondie
Greatest Hits (US盤)
Blondie
 
 
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