🇬🇧 Blue Murder (ブルー・マーダー)
レビュー作品数: 1
スタジオ盤
1989年 1stアルバム
シン・リジィで名を上げ、その後ホワイトスネイクに加入して大傑作『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』に大きく貢献したジョン・サイクス。デヴィッド・カヴァーデイルとの衝突からホワイトスネイクを解雇されてしまいますが、キャリアを積んだサイクスが立ち上げた自身のバンドがブルー・マーダーとなります。メンバーは二転三転しボーカリストも辞めてしまったため、結局サイクスがギターとボーカルを兼任、トニー・フランクリン(B)とカーマイン・アピス(Dr)のメンバーで始動しました(サポート扱いでニック・グリーン(Key))。プロデューサーにはボブ・ロック。
メンバーのキャリアを考えるとスーパーバンドなのですが商業的には成功せず、ただ日本ではそれなりに知名度がある、いわゆる「ビッグ・イン・ジャパン」なバンドです。
「Riot」で開幕。静粛なキーボードから突如アピスのドラムが炸裂。フランクリンのベースも強烈な存在感を放ちます。そしてサイクスのギュインギュインと唸るギターと、彼がやるはずではなかったにせよボーカリストとしても恵まれた声質。でもデヴィッド・カヴァーデイルに歌って欲しかった…なんて考えてしまいます。続く「Sex Child」はホワイトスネイクの「Still Of The Night」やレッド・ツェッペリンのよう。『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』はこの俺が作ったんだぜ!的なメッセージを感じます。ヘヴィでキャッチーなロックンロールサウンドに乗せて、コーラスを活用したメロディアスな歌はどこか色気がありますね。カオスな中盤を挟んで、リズムチェンジしてノリ良く終盤へ。8分近い「Valley Of The Kings」はパーカッションが神秘的な雰囲気を作り、その後どっしりとしたミドルテンポのロックを展開。派手ですがメロディアスですね。「Jelly Roll」はアコギで爽やかに始まり、中盤から力強いドラムが躍動感を生み出します。サイクスのボーカルは中々ソウルフル。人気の高い楽曲みたいです。そしてバンド名を冠した「Blue Murder」。アピスのドラムが特に強烈な1曲で、テクニックとド派手なサウンドでごり押しする楽曲です。でもバンド名を冠する割にはメロディは少し弱いかも。続く「Out Of Love」はメロディアスなバラード。サイクスの歌が切ない。くどいくらい反復しますが、メロディが良くて涙を誘います。「Billy」は疾走感に溢れる爽快な1曲。フランクリンのベースが凄まじく暴れ回ります。「Ptolemy」はド派手な楽曲で、サイクスのギターがギュインギュイン唸る。わざとらしさに笑ってしまいます。ラスト曲は「Black-Hearted Woman」。これは非常にカッコ良いです。ザクザクと高速で刻むリフ。そして疾走感に溢れつつ、コーラスを駆使した歌は激しくもメロディアス。演奏は楽しめるし、歌もなかなか良い。
『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』のようなゴージャスさですが、凄いんだけれども、どこか垢抜けない感じがあります。テクニックが先行してメロディが少し弱いからでしょうか?ここにデヴィッド・カヴァーデイルが居たらもっと凄いものが出来たんじゃないか、そんな思いも頭の片隅にあるので、本作を正当に評価できていない気はします。
関連アーティスト
『サンダー・アンド・ライトニング』に参加し、ジョン・サイクスの名を上げました。
ジョン・サイクスが『スライド・イット・イン』(USリミックス盤)と『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』に参加。
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