🇬🇧 Blur (ブラー)

編集盤

Blur: The Best Of (ザ・ベスト・オブ)

2000年

 デビュー10周年を記念してリリースされたブラー初のベスト盤です。『レジャー』から『13』までの楽曲に加えて新曲が1つ収録されています。ベスト盤にしては出来が良い印象ですが、この選曲はファン投票によって決められたのだとか。デフォルメされたメンバーイラストが可愛らしいこのジャケットアートは、現代美術家ジュリアン・オピーの作。

 本作は「Beetlebum」で開幕。グレアム・コクソンのヘヴィなギターリフがカッコ良く、そのリフと少しずれたように乗るデーモンの気だるい歌が印象的。続くのが「Song 2」で、『ブラー』のオープニング2曲の流れが再現されていて嬉しいですね。「Woo-hoo」の叫びとともにニルヴァーナばりのグランジロックを展開。とてもクールです。「There’s No Other Way」ストーン・ローゼズを想起させる、マッドチェスターの影響が色濃いグルーヴィなダンスロックです。ストリングスに彩られた「The Universal」は優美でまったりとした印象。楽器はゴージャスですが効果的に使われていて、くどさはなく心地良いです。「Coffee & TV」はグレアムの歌う1曲。小気味良いアコースティックサウンドに、アレックス・ジェームズのベースが映えます。そしてブリットポップの本領を発揮した名曲「Parklife」。ノリの良いキャッチーな楽曲で、デイヴ・ロウントゥリーの軽快なドラムにハンドクラップが心地良い。俳優フィル・ダニエルズのナレーションと掛け合う歌メロはどこかひねていて癖になります。牧歌的な「End Of A Century」は、優しくポップなメロディが魅力的なバラード。ビートルズにも通じるポップセンスを見せます。続く「No Distance Left To Run」は一転してブルージーでメロウな楽曲。渋いギターに囁くような歌声でじっくり聴かせます。「Tender」は8分近い楽曲で本作最長の1曲。広大な大地が目に浮かぶような、ゆったりとした曲調とゴスペル隊の分厚いコーラスが印象的です。そしてブリットポップ期の名曲「Girls & Boys」。ダンサブルな楽曲ですが、デーモンの歌はヘロヘロだし奇妙なメロディでやみつきになります。所々茶化すような演出も面白いですね。続く「Charmless Man」もパンチの効いたキャッチーなサウンドに、「ナナナナ ナーナナー」の分かりやすいサビメロがポップで良いですね。「She’s So High」はデビューシングル。分厚くエコーをかけたコーラスやギターによって、サイケデリックで浮遊感に溢れています。陽気な楽曲「Country House」オアシスとシングル対決を繰り広げた1曲。ブリットポップの狂騒に疲弊する要因になった楽曲なので、本人達はあまり好んでいないようです。古い映画のサントラのような、レトロな仕上がりの「To The End」を挟んで「On Your Own」。荒く実験的なサウンドですが、メロディはポップな楽曲です。このチグハグ感がブラーらしいというか…グレアムのギターがハードやシリアス方面に行こうとするのを、デーモンの歌(曲によってはキーボードも)が茶化すような感じの構図で生まれる奇妙なポップさ。続く「This Is A Low」はゆったりとしていて、哀愁の漂う1曲。程よいエコー処理で浮遊感もあります。そしてブリットポップの幕開けを告げた名曲「For Tomorrow」。ほどよく哀愁を纏ったポップな楽曲で、キャッチーなメロディが魅力的。何気に力強いベースも印象に残ります。最後は初出の「Music Is My Radar」。パーカッションを主体としたシンプルなサウンドに歌が乗ります。徐々に楽器が加わって賑やかになっていきますが、その雰囲気は非西欧的。そして終盤は実験的でスリリングな演奏が繰り広げられるので、デーモンの聞き慣れた歌声がなければブラーとは思えません。挑戦的な1曲ですね。

 選曲が良いことと、オリジナルアルバム自体がバラエティ豊富でアルバムの流れをそこまで強く意識させる作品ではないこともあり、本作はベスト盤特有の楽曲順の違和感はあまりなくて比較的自然に聴けます。そのためブラーの入門盤向きですね。ブラーの最初の1枚には『パークライフ』をオススメしたいですが、それと本作でメインどころは割と押さえられるのではないかと思います。

The Best Of Blur
Blur
 
 

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