🇯🇵 BUMP OF CHICKEN (バンプ・オブ・チキン)

編集盤

BUMP OF CHICKEN I[1999-2004]

2013年

 カップリングベスト『present from you』を2008年にリリースするも、長らくベスト盤は出してこなかったBUMP OF CHICKEN。満を持してリリースされた本作はシングルA面曲に加えてアルバム曲からもセレクト。但しメンバーは「自分たちでは選べない」とし、スタッフが選曲したのだそうです。同日に『BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]』もリリースされ、この2作品でオリコン週間1位2位を独占しました。

 名曲「ガラスのブルース」で幕開け。パンキッシュな演奏は粗削りだし、藤原基央の歌も正直ヘタなのですが、それを吹き飛ばすくらいに優れたメロディと歌詞が魅力的。思わず口ずさみたくなります。「くだらない唄」はノイジーな演奏に、爽やかでメロディアスな歌メロが乗ります。かすれた歌声が哀愁を誘います。「ランプ」はグルーヴ感のある演奏に乗るキャッチーなメロディラインが魅力的。歌詞も印象に残ります。続く「K」は黒猫を歌った名曲です。疾走感があり、静から動へとどんどんヒートアップするアツい展開。そして歌詞で描かれる物語には涙。ここまではインディーズ時代で正直演奏も歌もヘタですが、訴求力はメジャーの楽曲を上回ると思います。名曲揃いです。
 ここからはメジャー。デビューシングル「ダイヤモンド」は小気味良いアコギとリズミカルな演奏で始まりますが、途中グランジばりにノイジーなギターをかき鳴らしています。そして「天体観測」はBUMP OF CHICKENを一躍有名にした代表曲で、カラオケ等でも定番ですね。キャッチーなメロディと躍動感のある演奏は耳に残ります。「ハルジオン」は一見冷めているようですが、サビでは熱い歌唱を聴かせます。演奏面では切れ味のあるギターも良いですが、直井由文のゴリゴリベースが特にカッコ良いです。「Stage of the ground」は高揚感を煽るイントロから爽快。升秀夫の叩くダイナミックなドラムが躍動感を演出します。メンバーの友人に子どもが生まれ、その子の名前の漢字が歌詞に散りばめられているのだとか。「スノースマイル」は包み込むような幻想的なサウンドや、コーラスワークが特徴的。温かい楽曲です。「ロストマン」はエンディング向きのスケール感のある楽曲。「破り損なった 手造りの地図」で始まるサビメロはドラマチックで印象的です。そして名曲「sailing day」。疾走感がありキレのある演奏は爽快で、メロディもキャッチー。また『ONE PIECE THE MOVIE デッドエンドの冒険』の主題歌として、大海原への船出をイメージさせる夢溢れる歌詞も魅力的ですね。続く「アルエ」はインディーズアルバムからのカットシングルで、本作ベストの流れで聴くとこれだけ音が粗削り。イントロは「sailing day」にも通じますね。パンキッシュな演奏は拙いですが、良い楽曲なんです。歌詞はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイのことを歌っており、キャッチーで耳に残る名曲です。そして次曲「オンリー ロンリー グローリー」で洗練された音が戻ってきます。笑 勢いに満ちて疾走感がある楽曲で、これでもかと詰め込んだ早口な歌詞も爽快。「オンリー ロンリー グローリー」という語感の良いフレーズを歌うサビメロも印象に残ります。ラストは「車輪の唄」で、個人的にはBUMP OF CHICKENにハマるキッカケになった思い出深い1曲です。マンドリンが鳴る小気味良くて陽気な演奏とは対照的に、甘酸っぱい青春している歌詞は切ないです。

 そしてベスト盤でも恒例の隠しトラックが入っています。「faraway」は10分近い空白の後に始まります。メンバー4人全員がソプラノ、アルト、テナー、バスパートをそれぞれ2回、計32回録音してできた合唱なのだとか。笑

 個人的にはBUMP OF CHICKENが最も輝いている時期の楽曲が詰まっていて魅力的なベスト盤です。

BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]
BUMP OF CHICKEN
 
BUMP OF CHICKEN II[2005-2010]

2013年

 『BUMP OF CHICKEN I [1999-2004]』と同日にリリースされたベスト盤で、こちらはオリコン週間2位を記録(もう一方が1位)。なお藤原基央の誕生日である4月12日に2作同時リリースされました。幼稚園から顔馴染みという藤原基央(Vo/Gt)、増川弘明(Gt)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の4人。誕生日に楽曲を贈ったり、『orbital period』や本作のように記念日を祝うようなリリースをしたりと、心底仲良しなのだと伝わってきますね。その『orbital period』を境に私はBUMP OF CHICKENを追いかけるのをやめてしまっていたので、「R.I.P.」以降の楽曲は本作で初めて聴きました。

 アルバムは「プラネタリウム」で幕を開けます。穏やかで優しい曲調と、手作りプラネタリウムというどこか懐かしさのある歌詞がノスタルジーを感じさせます。そしてBUMP OF CHICKEN最強の名曲「カルマ」はゲーム『テイルズ オブ ジ アビス』のテーマ曲。高揚感を煽るパンキッシュで騒がしい演奏はインディーズ時代のようで、それでいて演奏は大きく上達しました。キャッチーなメロディに乗る歌詞はゲームの世界観とシンクロしています。ゲームを最後まで進めてから「カルマ」を聴くと実はゲームの壮大なネタバレを含んでいたのだと気付き、鳥肌が立ちます。「supernova」はアコースティックで穏やかな1曲。同じフレーズを繰り返しながら徐々に盛り上がっていきます。「ギルド」は2004年の『ユグドラシル』のアルバム曲ですが、2006年の映像作品『人形劇ギルド』に位置づけて本ベストに収録。気だるげに歌う歌は「人間という仕事」に疲れてやるせなさが漂います。炭鉱で働くかのような金属音も印象的。そして「涙のふるさと」は本作では「カルマ」に次いで魅力的な楽曲だと思っています。どこかで聴いたような印象的なギターリフで始まり、そしてメロディアスな歌は感情たっぷりで切ない…。「会いに来たよ 会いに来たよ 君に会いに来たんだよ」のフレーズは口ずさみたくなります。「花の名」は映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の主題歌。スローテンポな楽曲で、アコギでしっとり始まり、じわりじわり盛り上げて壮大になっていきます。ただ個人的にはBUMP OF CHICKENにこの壮大さは求めてなくて、あまり好みではなかったり…。続く「メーデー」は私がBUMP OF CHICKENに求める疾走感が表れた良曲です。初期のように勢いに満ちていて、それでいて洗練された演奏、そしてキャッチーなメロディも魅力的です。藤原の歌唱がちょっと優しすぎるかなとは思いますが(笑)、清涼飲料水のような爽やかさがあります。「R.I.P.」は藤原のアカペラの後に疾走曲が繰り広げられます。升のドラムがカッコ良い。終盤のギターはザクザクしていますが中盤までは大人しく、優しい歌唱も少し物足りなさがあります。「Merry Christmas」はイントロこそ鈴の音やコーラスでクリスマス気分ですが、歌が始まるとアコギ弾き語りで素朴な印象に。そこからトラッド風味の演奏によって牧歌的な雰囲気が加わります。都会を離れて田舎でこじんまりとクリスマスを祝うような感じ。そして「HAPPY」は久々にオルタナ色強い楽曲で、『ユグドラシル』あたりに合いそう。少しヘヴィな演奏はワクワクさせ、またメロディラインも中々良い感じ。「魔法の料理 〜君から君へ〜」はアコースティックで優しく語りかけるような楽曲。7分近くて本作では最長ですが、ちょっと冗長かも。「モーターサイクル」は「乗車権」のようなメロディラインや緊迫感がなんとなく似ています(件の楽曲よりはキャッチーですけどね)。ギターのカッティングや、トリッキーなリズム隊など演奏が結構面白いです。最後の「宇宙飛行士への手紙」は透明感というか浮遊感があり、明るいメロディと合わさって希望に溢れています。サウンドで魅力的な宇宙を表現しているのでしょう。

 隠しトラック「くちびる」。藤原以外のメンバーが歌うアコースティックな楽曲で、メロディがスピッツっぽい。

 拙くても尖っていて勢いで楽しませてくれた初期とは異なり、ここで聴ける楽曲は洗練されたものの丸くなった印象は否めません。いくつか突出して光る楽曲はあるものの、聴いていない時期の楽曲が半分くらいあることもあって愛着は薄いです。

BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]
BUMP OF CHICKEN
 
 

サウンドトラック

SONG FOR TALES OF THE ABYSS

2006年 ※MOTOO FUJIWARA名義

 本作は藤原基央の唯一のソロ作です。名作ゲーム『テイルズ オブ ジ アビス』のサウンドトラックとして発表されました。ゲームスタッフと入念な打合せのうえ、ゲームの主題歌「カルマ」を制作。そこに藤原が「作品全体で主題歌を表現したい」と希望し提案したことから、ゲーム内BGMの一部の制作も担当することになりました(それが結果重要な場面のBGMを担うわけですが)。英語タイトルの楽曲はよく読むと「カルマ」の一節です。
 なお本作は藤原が制作に関わった楽曲を纏めたものですが、これとは別にゲーム内BGMを纏めた『テイルズ オブ ジ アビス オリジナル・サウンドトラック』というサントラも出ています。

 「譜歌 〜quartet〜」は文字どおりストリングス四重奏。2番でキーを上げると優雅な印象になります。「meaning of birth」は「カルマ」のオーケストラアレンジで、ファン人気の高い名曲。ドラマチックで鳥肌が立ちます。主人公ルークが、ラスボス戦手前にアッシュと一騎打ちを行う場面でこの曲が流れるというのも最高にアツいんです。オリジナルであるアッシュと、そのクローンである主人公ルークが生まれた意味をかけて激突する、タイトルにはそんなゲーム内のテーマも表れています。「promise」は「カルマ」をストリングスでゆったりとしつつ、パイプオルガンが荘厳な雰囲気を放っています。「time to raise the cross」はラスボス戦その1で「abyss」のアレンジ。ダークで神秘的な雰囲気から一変、躍動感のあるパーカッションと流麗なフルートが焦燥感を煽ります。ドラマチックな良曲です。「in between 1 and 0」は「カルマ」のアレンジで、少しノスタルジックでセンチメンタルな雰囲気。「a place in the sun」は確かラスボス戦その2。勇壮ですがメロディは若干弱いです。そして「mirrors」は「カルマ」の鉄琴アレンジ。メランコリックでとても切ないです。それにしても「カルマ」は本当に良いメロディで、色々なアレンジがあるものの、どれもしっくりきます。「finish the promise」はラスボス戦その3で最終曲。スリリングかつ壮大な楽曲で、後半にはオーケストラアレンジの「譜歌」が流れたりアツい展開です。そして「譜歌 〜song by Tear〜」はヒロインのティア(CV:ゆかな)が歌う名曲。ゆかなは私が大好きな声優だったので起用は嬉しかったですね。1番は儚い声で歌うアカペラ、2番は賛美歌のようなチャーチオルガンが加わり、歌声にもエコーがかかって厳かな雰囲気です。ゲームではこのメロディが7つの短いフレーズに分割されていて、ゲームを進行するとこの7つのフレーズが揃って本楽曲(ゲーム内では「大譜歌」と呼ばれる詠唱魔法)が完成するという仕掛けがされていました。「promise 〜live〜」は「カルマ」のストリングスアレンジで、哀愁漂う旋律は込み上げてくるものがあります。そのまま途切れず続くのが名曲「カルマ」。これはBUMP OF CHICKENのバンド演奏がそのまま使われています。「ガラス玉ひとつ落とされた 追いかけてもうひとつ落っこちた」はオリジナルルーク(現アッシュ)と、そのコピーである主人公ルークを指し、その後の歌詞も2人の関係を示しています。そしてラストの「僕らはひとつになる」はエンディングシーンとシンクロするという…。単なるタイアップではなくまさに『テイルズ オブ ジ アビス』の核心に迫る楽曲で、とても胸熱なのです。そして「abyss」は『テイルズ・オブ・ジ・アビス』のタイトル画面で流れる楽曲。ひんやりとして神秘的な雰囲気です。ラスト曲「譜歌 〜solo〜」はヴァイオリンソロで奏でられます。美しい。

 名作ゲームを彩る名曲群。核となる楽曲は主に「カルマ」、「譜歌」、「abyss」の3曲で、あとはこれらのアレンジや発展させたものになります。でもどれも魅力的なんですよね。
 ゲームをやっていると、これらの音楽が更に楽しめると思います(ネタバレを含んでしまいましたが)。

SONG FOR TALES OF THE ABYSS
MOTOO FUJIWARA
 
 
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