🇬🇧 David Bowie (デヴィッド・ボウイ)

レビュー作品数: 31
  

スタジオ盤①

デビュー~初ヒット

David Bowie (デヴィッド・ボウイ)

1967年 1stアルバム

 デヴィッド・ボウイは英国出身のアーティスト兼俳優で、本名はデヴィッド・ロバート・ヘイウッド・ジョーンズ。1947年1月8日生まれ、2016年1月10日没、享年69歳。作品によって音楽性を多様に変化させるため、カメレオンのような音楽性とも言われています。本当に多才な人で、グラムロックと呼ばれる時期が最も有名なものの、その時期以外にも数多くの名盤をリリースしています。トータル売上枚数は1.4億枚以上と言われています。
 マイク・ヴァーノンによりプロデュースされたこのデビュー作は、発売当初全く話題に上がりませんでした。デラムレコードと契約しましたが、シングル3枚いずれもヒットせず解雇という憂き目にあっています。そんな経緯もあってか、もしくは契約の関係か、2015年から始まったリマスターBOXシリーズでもこの1stアルバムは省かれています。

 オープニング曲は「Uncle Arthur」。牧歌的な楽曲で、こじんまりとしていますが陽気な雰囲気が伝わります。ボンボン鳴るベースが心地良いです。続く「Sell Me A Coat」は甘くポップな1曲。遠くで鳴るホーンとリズミカルなドラムが印象的です。ホーンやオルガンがノリの良い「Rubber Band」を挟んで、「Love You Till Tuesday」はドライブ感のある爽快な1曲で、特にデック・ファーンリーのベースが良い。ストリングスやグロッケンの味付けも、地味な楽曲にキャッチーさを作り出しています。「There Is A Happy Land」を挟んでアップテンポ曲「We Are Hungry Men」。オルガンが鳴る少しサイケなこの楽曲、勢いがあって聴きやすく、また演劇的な一面も印象的です。そしてゆったりとしたポップ曲「When I Live My Dream」で前半が終了。
 レコードでいうB面、アルバム後半は「Little Bombardier」で幕開け。ワルツを刻むこの楽曲は、ストリングスの優雅さと、アコーディオンの陽気な雰囲気を合わせ持っています。「Silly Boy Blue」は派手なプレイではないのにリズム隊がやけに際立つミックスで、華やかなホーンや歌メロよりも目立ってる気がします。アコギ主体の牧歌的な「Come And Buy My Toys」を挟んで、コミカルでノリの良い「Join The Gang」が続きます。ホンキートンクピアノが軽快です。終盤はややカオス。少しひねた感じのポップ曲「She’s Got Medals」はサイケ色が強く、当時のサイケデリックロックの流行が窺えます。「Maid Of Bond Street」はアコーディオンが陽気な雰囲気で、個人的にはヨーロッパの赤レンガの街並みをイメージします。ラスト曲「Please Mr. Gravedigger」は雨音のSEが響き渡ります。効果音以外はボウイの歌だけ。実験的な楽曲ですが、雨の中ひとり歌いながら歩いているかのようで、そこまで奇異な感じではありません。

 全体的にアコースティックな雰囲気の作品です。才能を開花させた後の傑作群に比べると、本作は地味な印象は否めません。但しポップセンスの片鱗か声質のおかげか、BGMとして聞くには心地良いです。

David Bowie
Dave Bowie
 

David Bowie / Space Oddity (スペイス・オディティ)

1969年 2ndアルバム

 本作は2ndアルバムですが、実質的な1stアルバムとして扱われています。英国では当初『David Bowie』(1stアルバムと内容は違いますが同名タイトル)、米国では『Man Of Words/Man Of Music』と名付けられた本作は、1972年にRCAレコードが権利を買い取って『Space Oddity』と改題されて今に至ります。なお、今後デヴィッド・ボウイと長らく関わることになるトニー・ヴィスコンティがプロデュース(表題曲のみガス・ダッジョンがプロデュース)し、全曲がデヴィッド・ボウイの作です。

 表題曲「Space Oddity」は、映画『2001年宇宙の旅 (原題:Space Odessey)』に触発された楽曲でしたが、本作がリリースされた1969年はちょうどまさに米国でアポロ11号が人類初の月面着陸を成功させた年で、それも合わさってヒットしました。楽曲の歌詞ではトム少佐という架空の宇宙飛行士が描かれ、管制官と通信不能になって1人静かに宇宙を彷徨うトム少佐が歌われています。1980年に発表する『スケアリー・モンスターズ』でトム少佐が再登場し、そこで衝撃の事実が判明するのですが、それは『スケアリー・モンスターズ』のレビューで記載します。アコギ主体ですが、メロトロンが楽曲をうまく盛り上げています。なおメロトロンは後にイエスで活躍するリック・ウェイクマンによるもの。続く「Unwashed And Somewhat Slightly Dazed」は序盤アコースティック寄りですが、中盤からはエレキギターが主導しハーモニカも鳴り響くブルージーな楽曲に変わります。「Letter To Hermione」は囁くような歌声と、優しいアコースティックサウンド。派手さはないものの、柔らかな癒し曲ですね。そして10分近い大曲「Cygnet Committee」。全体的に暗い雰囲気ですが、程よいエコー処理等によりサイケのような浮遊感も持ち合わせています。終盤に向けてゆっくりと盛り上がっていきますが、そこに至るまではやや冗長な印象。
 アルバム後半に入り、キャッチーな楽曲「Janine」。ボウイの歌い方が少しダンディな感じです。牧歌的で夢心地のような「An Occasional Dream」を挟んで、ストリングス全開のアレンジがなされた「Wild Eyed Boy From Freecloud」。そして「God Knows I’m Good」はアコースティックな楽曲で、こじんまりとした編成で牧歌的なポップ曲を届けます。最後の「Memory Of A Free Festival」は序盤静かな雰囲気ですが、中盤サイケデリックでカオスなパートを挟むと、そこからはひたすら同じフレーズを反復。コーラスが分厚くて、祝福するかのような印象を受けます。

 表題曲「Space Oddity」が素晴らしく、逆に言えばそれ以外はさほどパッとしない作品ではあります。祝福するかのようなラスト曲とか、良い曲もあるんですけどね。アコースティックで牧歌的で、聴き心地はよい作品です。ただ、本作を手にするのは、他の名盤をひと通り聴いたあとでもよいかと思います。

David Bowie (Aka Space Oddity) (2015 Remastered Version)
David Bowie
 

グラムロック時代

The Man Who Sold The World (世界を売った男)

1970年 3rdアルバム

 本作は、米国では1970年、本国英国では1971年にリリースされました。後の「The Spiders From Mars (ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ)」の前身となる「Hype (ハイプ)」という名のバックバンドを結成、本作の制作にも関わってきます。盟友ミック・ロンソンをギターに迎え、またプロデューサーも兼任したトニー・ヴィスコンティはベースを担当、ドラムにはミック・ウッドマンジー。また、私生活ではマリー・アンジェラ・ バーネット(後にアンジー・ボウイ)と1970年3月に結婚するデヴィッド・ボウイ。こういった変化も本作の制作に大きな影響を与えたことでしょう。しかしスターダムを駆け上るデヴィッドとアンジーはすれ違い、酒やドラッグにおぼれながら最終的に1980年に離婚することに…。
 全曲がデヴィッド・ボウイの作ですが、バックバンド、特にギターのミック・ロンソンによって表現力が向上しました。全体的にややハードロック寄りの仕上がりとなっています。佳曲揃いですが、個人的にはオープニング曲と表題曲のインパクトが強烈で、この2曲目当てのアルバムという感じです。

 そのオープニング曲「The Width Of A Circle」ですが、いきなり8分に渡る大曲です。陰鬱なメインフレーズが印象的で引き込まれます。ロンソンのギターのみならず、ヴィスコンティのボンボン鳴るベースも魅力です。ハードロック的でもプログレ的でもある楽曲で、ノリが良くなってきたかと思えば陰鬱なメインフレーズが顔を出し、楽曲に影を落とします。ボウイの歌はときに耽美な印象を与えます。「All The Madmen」はハードな楽曲ですが、リコーダーの音色やボウイの気だるい歌が独特の柔らかさを加えます。後半はムーグシンセやコーラスワークが華やかに彩ります。続く「Black Country Rock」は、歌唱がT・レックスのマーク・ボランを真似ていると言われているそう。ノリの良い楽曲で、特に縦横無尽に動き回るベースが印象的です。「After All」はゆったりとした楽曲。囁くようなアンニュイな歌の合間に、ダンディな低音ボーカルを挟みます。
 レコードB面、アルバム後半は「Running Gun Blues」で開幕。裏声気味のヘタウマなボーカルですが、アップテンポで楽しめる楽曲です。続いて「Saviour Machine」はヘヴィな演奏を展開。ただ、ボウイの気だるい歌唱が浮遊感を加えてヘヴィさを中和します。「She Shook Me Cold」はブルージーな楽曲で、やけに粘着質で気色悪い歌い方をしています。終盤は即興的な演奏バトルが繰り広げられるのでスリリングですね。そして表題曲の「The Man Who Sold The World」は、精神病院に入院した兄を見舞った時のことを歌った曲です。陰鬱なフレーズを反復するギターが妙に耳に残ります。ボウイの気だるいボーカルは憂いを帯びていて、終盤はエコーがかかって妖しげな色気を出しています。全体的にダウナーな雰囲気ですが、繰り返し聴きたくなる魅力があります。米国のオルタナティヴロックバンドニルヴァーナがカバーしたことで有名ですね。ラスト曲は「The Supermen」。力強い演奏に幻覚的なコーラスワーク。サビでは伸びやかなボウイの歌も印象的。

 1970年代のデヴィッド・ボウイのラインナップは本当に名盤尽くしなのですが、本作はグラムロック時代の幕開けを飾る名盤です。
 なお、ソファに横たわる妖艶な女に扮したボウイが印象的なジャケットについては色々とゴタゴタがあったようで、ジャケット差し替えだなんだで数多くのパターンが存在。ボウイの作品中最もジャケットアートの種類が多いのだとか。

The Man Who Sold The World (2015 Remastered Version)
David Bowie
 

Hunky Dory (ハンキー・ドリー)

1971年 4thアルバム

 前作『世界を売った男』と同時進行で制作されたようですが、前作がかなり陰鬱な印象であるのに対し、本作はかなり明るくてキャッチーな印象で取っつきやすい作品となっています。トニー・ヴィスコンティがT・レックスの要請で一旦離れることになり、本作はケン・スコットとデヴィッド・ボウイの共同でプロデュース。バックバンドはミック・ロンソン(Gt)、ウッディ・ウッドマンジー(Dr)、そしてベーシスト枠にはトレヴァー・ボルダー(B)が参加。またイエスのリック・ウェイクマン(Key)もレコーディングに参加しています。
 化粧をしたデヴィッド・ボウイのジャケットも印象的ですね。音楽性よりルックスで括られる、グラムロックを代表する1枚でしょう。
 
 オープニングを飾るポップな「Changes」はボウイの代表曲のひとつです。「チェッチェッチェッチェ、チェーンジズ」のフレーズがとてもキャッチーで、思わず口ずさみたくなるような楽曲ですね。何かのCMで起用されていた気がします。歌詞では「違う人間へと変わるんだ」と決意を表していて、グラムロックのヒーローとして台頭していくボウイを予告するかのようです。また私生活でも大きな変化があり、父親になる不安を宇宙人の侵略に例えた2曲目「Oh! You Pretty Things」に見られます。息子の誕生直前に書かれたこの楽曲は、キャッチーなメロディが魅力の良質なポップ曲です。そして1971年に生まれた息子ダンカン・ジョーンズは、後に映画監督として名を馳せることになります。のちにアンジーと離婚後、ダンカン・ジョーンズの親権はデヴィッド・ボウイが引き取ることとなりました。「Eight Line Poem」はブルージーなギターを中心とした楽曲で、まったりした雰囲気です。そして前半の山場で本作のハイライト「Life On Mars」は、ピアノとストリングスで彩られた壮大なバラードです。妖艶な歌唱が魅力的な本楽曲は、あまりのメロディの美しさに涙が出そうになります。これも初期の代表曲に挙げられることが多いですね。PVでは化粧をしてケバケバしいボウイが歌います。笑 「Kooks」はポップな1曲。3分に満たない楽曲ですが、牧歌的な雰囲気が心地良いです。続いて「Quicksand」はアコギやピアノが中心ですが、ストリングスで盛り上げています。ゆったりとしていて中々メロディアスです。
 アルバム後半に入り、「Fill Your Heart」はピアノが軽やかなノリの良い1曲。ストリングスやサックスなど賑やかで明るい雰囲気です。続いて後半のハイライト「Andy Warhol」。実験的でサイケデリックなSEの後、アコースティックギターでシンプルな楽曲が奏でられますが、ボウイの歌うキャッチーなメロディが耳に残ります。アンディ・ウォーホルへの憧れがあったようですね。「Song For Bob Dylan」はバイク事故でしばらく隠遁していたボブ・ディランへ向けた歌です。少し哀愁のあるメロディを歌いますが、演奏には躍動感がありますね。「Queen Bitch」はヴェルヴェット・アンダーグラウンドのルー・リードへ捧げた楽曲。歌は抑揚がないですが、鋭利なギターが際立つ少しパンキッシュな演奏でリードします。最後の「The Bewlay Brothers」は陰のあるメロディで、哀愁のギターがしんみりとさせます。ラストのコーラスは少し不気味。

 「Changes」や「Life On Mars」といった名曲を収録。ポップセンスに溢れており、明るい楽曲も多くて入門向きの作品だと思います。

Hunky Dory (2015 Remastered Version)
David Bowie
 

The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars (ジギー・スターダスト)

1972年 5thアルバム

 デヴィッド・ボウイの最高傑作であるとともに、ロック史に残る大名盤です。個人的にもとてもお気に入りの1枚です。
 発売当初は『屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群』という邦題だったそうですが、現在では『ジギー・スターダスト』となっています。グラムロックを代表する名盤として名高い本作は、架空の宇宙人ロックスター「ジギー・スターダスト」の成功と没落を描いたコンセプトアルバムです。また『世界を売った男』の頃から続くバックバンド「ハイプス」は「ザ・スパイダーズ・フロム・マーズ」を名乗り、ミック・ロンソン(Gt)、トレヴァー・ボルダー(B)、ウッディ・ウッドマンジー(Dr)のメンバーでボウイをサポート。また、前作同様ケン・スコットがプロデューサーに就きました。ロン・デイヴィスのカバー曲「It Ain’t Easy」を除く全曲ボウイの作。
 ファッションデザイナーの山本寛斎によって作られた奇抜なライブ衣装の数々、そして奇抜なメイクとパフォーマンス。またLGBTが世界に認知されるずっと前のこの頃に、ボウイは自身がバイセクシャルであることを公言しています。妻アンジーの離婚後の証言ではローリング・ストーンズのミック・ジャガーとデヴィッド・ボウイが寝たとかなんとか。今でこそ偉大なロックスターとして称えられるボウイですが、当時はカウンターカルチャーの象徴としてカルト的な人気を誇っていました。

 名盤は「Five Years」で開幕。静かに始まりを告げ、途中からストリングスやコーラスも加わり徐々に盛り上がっていきます。聴いていると一緒に気分が高揚していきます。盛り上がる部分ではボウイの感情が篭りすぎて、泣き叫ぶかのようにメロディを外しているのも一興(元々そこまで上手くはないですけどね)。続く「Soul Love」も淡々とした出だしから、じわじわ盛り上げます。時折ロンソンがハードなギターを聴かせ、またボウイのサックスも良い感じ。「Moonage Daydream」はゆったりと魅力的な歌メロを聴かせ、ストリングスやピアノで優美に引き立てます。ギターは全体的にハードですが、アウトロの夢心地のような浮遊感のあるソロは惹き込まれます。そして本作のイライト「Starman」。これがボウイ屈指の素晴らしい名曲で、アコギでシンプルな音を奏でて徐々に盛り上がるのですが、キャッチーながらも日本人好みの哀愁を帯びたメロディがとても良いのです。美しいメロディをストリングスが引き立て、そしてサビ後のメロディアスなギターもぐっとくるものがあります。映画『オデッセイ (原題:The Martian)』でもここぞという場面で使われていて感動しました。そして次曲「It Ain’t Easy」はカバー曲で、これだけはアルバムの流れの中で少し違和感を抱きますが、これもまた印象に残る楽曲ではあります。このワンクッションを挟んで次の良曲へバトンタッチ。
 レコードでいうB面、本作の後半は「Lady Stardust」で始まります。T・レックスのマーク・ボランに向けた歌だそうで、ボウイがしっとりとしてメロディアスな歌を聴かせます。ロンソンの弾くピアノが、この美しいメロディを引き立てていますね。続いて「Star」は躍動感のある楽曲。軽快なピアノとは対照的に、ギターがハードに仕上げます。そして疾走曲「Hang On To Yourself」が続き、アルバムの流れは加速。ウッドマンジーのリズミカルなドラムに、よく動き回るボルダーのベース、ロンソンのバッキングによってキレのあるサウンドを演出。抜群のノリで爽快な1曲です。続く「Ziggy Stardust」は一旦トーンを落とし、ボウイのメロディアスな歌をじっくり聴かせます。これがまた良いメロディなんです。「Suffragette City」は軽快なロックンロールで、ここで再び勢いづきます。ハードな演奏をシンセやピアノが賑やかに飾り立て、煽り立てるかのようなパンキッシュな演奏と歌がとても爽快。そして一転、「Rock ‘N’ Roll Suicide」では一気にトーンを落とします。静かに始まり、後半に向かうにつれて盛り上がりを見せます。どんどんとヒステリックになり悲痛な叫びを上げるボウイのボーカルが強烈なインパクトを残し、そして最後にストリングスが締め括りフィナーレ。

 シンプルながら美しいメロディの宝庫。アルバムの流れも実に自然で、心地よい世界に浸ることができます。
 前半はゆったりした曲でスロースタート、後半はしっとり聴かせる楽曲もあるもののエンジンがかかってくるという流れです。休日の朝の快適な時間を、本作を聴きながら過ごすのがとても好みです。

The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars (2012 Remastered Version)
David Bowie
 

Aladdin Sane (アラジン・セイン)

1973年 6thアルバム

 この時期のボウイは、ミック・ロンソンと共同でルー・リードの『トランスフォーマー』のプロデュースに関わる一方、交流のあったイギー・ポップのバンド、ストゥージズの『ロー・パワー』のミックスにも関わっています。自身の作品もコンスタントにリリースしており、1970年代のボウイは才能が溢れに溢れていたようです。
 前作が架空のロックスター、ジギー・スターダストを描いたコンセプトアルバムであるのに対し、本作はジギー・スターダストになりきって制作されたアルバムでした。ジャズ畑のピアニスト、マイク・ガーソンが参加しています。ギターをはじめ荒々しさを増すなか、マイク・ガーソンの自由奔放で狂気的なピアノが楽曲に良いアクセントを与えており、そしてサックスも結構目立っています。グラムロックを代表する名盤の一つです。
 また、アメリカでの制作の中で新しいペルソナ「アラジン・セイン」が生まれました。茶髪に染めて逆立てた髪に稲妻マーク、このジャケットは非常に有名ですね。とてもカッコ良い。この稲妻マークはナショナル(現パナソニック)の炊飯器のマークにヒントを得たのだそうです。そして本作でついに初の全英1位を獲得します。

 ミック・ロンソンのヘヴィなギターとガーソンの軽快なピアノが絡み合うロックンロール「Watch That Man」で開幕。リズム隊も力強くて、オープニングからノリノリです。歌メロは口ずさみたくなるほどキャッチーで、そしてボウイの歌をサポートするコーラスワークも加わり華やか。グラムロックの名曲です。続く表題曲「Aladdin Sane (1913-1938-197?)」は、ときに不協和音を刻む、美しくも狂気じみた奔放なガーソンのピアノがとにかく強烈。このピアノによって退廃的な雰囲気が作り出されていて、妖しい魅力を放っています。サックスの味付けも良いですね。ちなみに副題についた年号は世界大戦の前年を指しており、ベトナム戦争の終焉から第三次世界大戦が始まるという暗示だそうです。「Drive In Saturday」は一転して、ゆったりとしてメロディアスな楽曲です。サックスの音色が渋い。「Panic In Detroit」はノリの良い楽曲。印象的なフレーズを刻むヘヴィでルースなロンソンのギター、音階を刻むトレヴァー・ボルダーのベース、そしてリズミカルなパーカッションがノリノリな雰囲気を作ります。ウッディー・ウッドマンジー(Dr)だけでなく、次作でウッドマンジーに代わるドラマーのエインズレー・ダンバー(Perc)も叩いているそうです。そしてボウイの歌はヒステリック気味。続いて「Cracked Actor」はヘヴィで気だるいロックンロール。ブルージーな色合いを残しながらかなりヘヴィなサウンドです。
 アルバム後半のオープニングは「Time」。ヘヴィなサウンドに乗るピアノが狂った雰囲気を加えます。ボウイの歌は演劇的でわざとらしい感じ。後半のメロディアスなギターがしんみりとさせます。「The Prettiest Star」は優しい歌メロが魅力で、サックス等のメロウなサウンドがメロディを引き立てます。そしてローリング・ストーンズのカバー「Let’s Spend The Night Together」。イントロは狂っていますが、歌が始まるとノリの良いロックンロールに。パタパタとしたウッドマンジーのドラムが勢いをつけてくれます。原曲に比べてかなり速くアグレッシブで、原曲以上の魅力を放っています。「The Jean Genie」はT・レックスっぽいですね。ノリの良いミドルテンポ曲で、リズミカルで心地良いですが、ほどよく気だるい印象です。そしてラストの「Lady Grinning Soul」は退廃的な雰囲気が印象的。ときに美しく哀愁のメロディを弾き、そしてときに何かが憑依したかのような狂気的なガーソンのピアノが強烈なインパクト。ラストは泣きのギターがピアノに絡んでいき、切ない余韻を残しつつアルバムを締めます。

 荒々しさの中にピアノの美しさと狂気。退廃的な雰囲気が漂います。メロディの美しさで魅せた前作に比べると、本作はこのメリハリやノリの良さが本作のポイントでしょうか。とても魅力的な作品です。

Aladdin Sane (2013 Remastered Version)
David Bowie
 

Pin Ups (ピンナップス)

1973年 7thアルバム

 『ジギー・スターダスト』に人格を取り込まれることを恐れたデヴィッド・ボウイは、前作アラジン・セインのツアー後に突如ジギー・スターダストをやめる宣言をし、ファンだけでなくスタッフやサポートメンバーを仰天させました。バックバンドのスパイダーズ・フロム・マーズも本作を最後に解散することになります。ボウイの作品に貢献してきたミック・ロンソンもボウイのもとを離れ、再び共演を果たすのは1990年代と、だいぶ先のこととなります。なおスパイダーズ・フロム・マーズもメンバーチェンジを行い、ドラマーがウッディー・ウッドマンジーからエインズレー・ダンバーに代わっています。ダンバーは後にジャーニーやホワイトスネイク等で活躍するドラマーです。
 ジャケットにボウイと一緒に写った女性はモデルのツイッギー。プロデューサーには前作に引き続きケン・スコット。
 本作はボウイのキャリア唯一の全編カバーアルバムです。ボウイが親しんできた1960年代楽曲のカバーで固めています。私はほとんど原曲を知らないので原曲との比較どうこうでは語れないのですが、恐ろしいほど高水準のボウイのオリジナルアルバム群と比べるとイマイチな印象は否めません。良い楽曲もあるんですけど、比較対象が悪すぎた…。

 プリティ・シングスの「Rosalyn」で開幕。勢いのあるロックンロールで、結構攻撃的な歌唱ですね。ダンバーのドラムが良い感じ。ゼムの「Here Comes The Night」は速くなったり遅くなったり緩急のある楽曲。ボウイの吹くサックスがアクセントになっています。「I Wish You Would」はヤードバーズのカバー。まくし立てるような歌と、淡々としつつキンキンとした音を立てるギター特徴のロックンロールです。続いてシド・バレット時代ピンク・フロイドの「See Emily Play」。サイケデリックな楽曲ですが、これは良い具合に消化出来ている印象です。ボウイのダンディな歌に加えてスパイダーズ・フロム・マーズのメリハリのついた演奏もあり、原曲よりも好みです。狂う部分は狂っていますしね。続いてザ・モージョーズの「Everything’s Alright」。怪しげなイントロで始まりますが、そこからノリノリのロックンロールを展開。時折交える怪しげなフレーズがアクセント。「I Can’t Explain」はザ・フーのカバー。ヘヴィなサウンドですが、トーンはそこまで重くはなく、歌メロで魅せます。サックスによる味付けも印象的。
 後半はイージービーツの「Friday On My Mind」で幕開け。キャッチーなメロディを歌いながら徐々にエンジンがかかってくる楽曲で、盛り上がる部分では怒り狂うかのように激しい。耳に残る良曲です。「Sorrow」はマージービーツのカバー。ストリングスが優美な、ポップな楽曲です。続いて、ロックンロールでノリの良い「Don’t Bring Me Down」はプリティ・シングスのカバー。そしてヤードバーズの「Shapes Of Things」はキャッチーなサビメロが印象的。歌うようなトレヴァー・ボルダーのベースや、後半のツインギターが良い感じ。「Anyway, Anyhow, Anywhere」はザ・フーのカバー。キャッチーな歌メロですが、サウンドは荒くてパンキッシュ。ダンバーのドラムソロが印象的です。最後にキンクスの「Where Have All the Good Times Gone」でキャッチーな歌を聴かせて終了。

 全てが悪いというわけではなく所々にいいなと思う場面もあるのですが、1970年代のデヴィッド・ボウイの作品はどれも恐ろしいほど傑作揃いのため、普通な仕上がりの本作はそれらと比べるとイマイチな印象を強く持ちます。

PinUps (2015 Remastered Version)
David Bowie
 

Diamond Dogs (ダイアモンドの犬)

1974年 8thアルバム

 グラムロック最後の作品だとか、グラムロックを脱した作品だとか、そのジャンル分けは人によって様々。スパイダーズ・フロム・マーズと袂を分かつ変化はあるものの音楽性は次作よりグラムロック時代に近く、また眼帯をしたハロウィン・ジャックという新たなキャラクターを演じるスタイルはグラムロックに位置づけても良いのではないかと思っています。なお本作のレコーディング前後くらいに拠点を米国に移しました。
 ジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』をテーマにしたコンセプトアルバムを目指したものの、遺族から許可が下りず、コンセプトを少し変えて発表したのが本作でした。半人半獣のジャケットが不気味ですね。退廃的な世界観を表現したアルバムは少し暗い雰囲気を纏ったロックンロールアルバムに仕上がっています。デヴィッド・ボウイのセルフプロデュース作で、ボウイ自身が楽器を演奏しているものも多いようです。参加ミュージシャンはマイク・ガーソン(Key)、ハービー・フラワーズ(B)、エインズレー・ダンバー(Dr)やトニー・ニューマン(Dr)など。

 元々コンセプトアルバムなので一部の楽曲が繋がっていたりします。気味の悪い咆哮で始まる「Future Legend」は短いナレーションを加えて、最後は歓声とともに次曲「Diamond Dogs」へ繋がります。このタイトル曲はロックンロールナンバーで、ボウイの吹くサックスが賑やかなサウンドに仕立てます。適度な気だるさが気持ち良く、メロディもキャッチーですが、加工されたボーカルを含めてどこか不気味な雰囲気を醸し出しています。ここから3曲は組曲になっていて、まずは「Sweet Thing」。不協和音に始まり、まったりとした演奏にボウイがメロディの美しい歌を披露。全体に漂う退廃的な空気を保ちながら続く「Candidate」は、この暗鬱で不穏な空気を払拭するかのように徐々にテンポアップして盛り上がっていきます。狂気を交えながら最高潮まで盛り上がると、「Sweet Thing (Reprise)」でサックスが再び退廃的な雰囲気に引き戻します。美しい歌が終わるとノイジーで異様な緊張が漂う、とても不穏な空気に。そのまま始まる本作のハイライト「Rebel Rebel」。行進するかのようなリズムで、ひたすら反復される単調でエッジの効いたギターリフ。この印象的なギターはボウイが弾いています。歌も含めて耳に残るキャッチーさと、パンクのような攻撃性を持つ名曲です。
 アルバム後半はバラード曲「Rock ‘N’ Roll With Me」に始まります。ガーソンのピアノが美しく、またダンディな低音ボーカルとキャッチーな中高音ボーカルを使い分ける歌で魅せます。コーラスワークも良い。続いて退廃的な「We Are The Dead」で静かに暗い雰囲気に。電子ピアノの音は綺麗なのにこんなにも不穏なのは暗い歌のせいでしょうか。バンド演奏が歌を引き立てながら、どんどん闇深くなっていく感じです。そしてドラマチックな「1984」は痺れる名曲です。焦燥感を煽るような不穏な感じと、キャッチーでメロディアスな歌を引き立てる仰々しいストリングスのアンバランス感。ボウイの感情たっぷりの歌は魅力だし、演奏は鳥肌が立つほどスリリング。とにかくカッコ良い楽曲です。続く「Big Brother」は小説『1984』の独裁者の名で、コンセプトとしての使用を遺族に却下されたものの、前曲と合わせてその名残でしょうか。ホーンを用いた渋いサウンドに、ソウルフルな歌唱。次作のテーマであるアメリカンソウルへの接近が見られます。そのまま途切れず続くラスト曲「Chant Of The Ever Circling Skeletal Family」はあまりに狂気じみた感じ。洗脳されたのか、最後の最後には壊れた機械のように「Bro bro bro bro…」と連呼して終わります。あまりに不気味なのですが、レコードだと無限に再生され続ける仕掛けが施されているようです。だから「Ever Circling」なんですね。

 サウンドプロダクションのせいか少し取っつきにくさも感じるものの、退廃的な雰囲気は魅力的で、また佳曲揃いの名盤です。

Diamond Dogs (2016 Remastered Version)
David Bowie