🇦🇺 Dead Can Dance (デッド・カン・ダンス)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Dead Can Dance (エデンの東)

1984年 1stアルバム

 デッド・カン・ダンスはオーストラリアのメルボルン出身の音楽グループで、ブレンダン・ペリーとリサ・ジェラルドの男女2人組。本国ではそれほど人気は出ませんでしたが、英国ロンドンに移り4ADレーベルと契約、ゴシックロックや宗教音楽のような音楽でコアなファンの人気を獲得しました。
 バンド名はデカダンスをもじったのではなく、「死んでしまったものに息を吹き込む」という意味が込められているのだとか。「(以前は生きていた木の一部で)死んでしまった物質に、作り手が生命力を吹き込んだ芸術作品」という、ニューギニアの儀式用仮面をモチーフにした不気味なジャケット写真に、バンド名に込めた思いが表現されています。
 本作にはブレンダンとリサに加えて、ポール・エリックソン、ジェームズ・ピンカー、スコット・ロジャー、ピーター・ウルリッヒが演奏に参加しています。

 アルバムは「The Fatal Impact」でノイジーな轟音とともに幕開け。インストゥルメンタルで、怪しげな民族音楽的フレーズと無機質な打ち込みリズムビートという、相反する要素を組み合わせた不気味な演奏を展開します。音像のぼやけたサウンドも不気味な雰囲気です。「The Trial」は3拍子を刻みながら凄まじい緊張感を放ちます。最初期コクトー・ツインズのような暗黒の雰囲気に、エコーがかったブレンダンの歌が不気味に響き渡り、聴いていると追い詰められているような気持ちになります。「Frontier」はパーカッシブなサウンドが淡々としていて不気味な儀式のよう。そこにリサの美しい歌声が響きます。メロディは怪しげで、エキゾチックな雰囲気。後半に向かうにつれ緊張が増してきます。「Fortune」はデッド・カン・ダンス流のポジパンナンバー。ベースが際立つ疾走感ある演奏と、全体的に強いエコーのかかったサウンド、滑舌が悪く聞き取りづらいブレンダンの歌にジョイ・ディヴィジョンを想起させます。「Ocean」はリサのボーカル。ダークな演奏に、強いエコーのかかった歌で叫びます。とにかく不気味で、呪われそうな雰囲気。演奏も歌声も含めてコクトー・ツインズっぽいですね。
 アルバム後半の幕開けとなる「East Of Eden」は邦題のタイトルの由来ですね。ブレンダンがマイクを取ります。リズミカルな演奏とまったりとして憂いを帯びたギターが、暗いながらも安心感を与えてくれます。不気味な緊張に満ちた本作においては数少ない癒やし曲でしょうか。「Threshold」はノイジーなギターとプリミティブなドラムが緊張を高めます。リサのアンニュイな歌は個人的には好みですが、終盤はやや投げやり気味。「A Passage In Time」はダークサイケな演奏の中でグルーヴィなベースが際立っています。暗くてトリップ感のあるサウンドは不気味ですが、不思議とダンサブルで楽しさも内包しています。「Wild In The Woods」は演奏とブレンダンの歌が合わさって呪術的な雰囲気が漂います。ちょっとトリッキーなリズムパターンでフックを掛けてきます。ラスト曲「Musica Eternal」はエキゾチックな演奏に、強いエコーを掛けて楽器のようなボーカルが乗ります。霊的な浮遊感がある神秘的な楽曲です。

 なおリマスターに際して1st EP『Garden Of The Arcane Delights』の4曲を丸ごと収録しています。「Carnival Of Light」はプリミティブなパーカッションを中心とした演奏に、リサの憑依したかのような歌声が乗ります。部族の儀式に出くわしたかのような衝撃を受けます。「In Power We Entrust The Love Advocated」はブレンダンの歌う楽曲。異様な雰囲気の楽曲が多い中、この楽曲は比較的メロディアスで聴きやすいです。「The Arcane」は影のあるギターがメランコリックな気分を誘います。ブレンダンの憂いのある歌も含め、聴いているとどんどん沈んでいきそうです。「Flowers Of The Sea」は透明感のある演奏とリサの美しい歌声で秘境のような神秘性があります。パーカッションが部族の儀式のようで少し不気味ではありますが…。

 初期コクトー・ツインズ+ジョイ・ディヴィジョン+民族音楽といった趣。ジャケット写真が示すように、不気味で緊張が漂う作品です。

Dead Can Dance
Dead Can Dance
 
 
 類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。