🇬🇧 Def Leppard (デフ・レパード)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Pyromania (炎のターゲット)

1983年 3rdアルバム

 イングランドのハードロックバンド、デフ・レパード(通称LEPPS)。最初デフレ・パレードだと読み間違えていました…。NWOBHMムーブメントの中でアイアン・メイデンとともに成功した新鋭バンドの1つですが、彼らはヘヴィメタルバンドとして見られることを嫌っているそうです。
 1977年に前身となるアトミック・マスを結成。その後バンド名を「Deaf Leopard (耳の聞こえない豹)」に改名するも、後に今の綴り(Def Leppard)に変更。結成直後はいくつかメンバー変更があったようですが、ジョー・エリオット(Vo)、ピート・ウィリス(Gt)、スティーヴ・クラーク(Gt)、リック・サヴェージ(B)、リック・アレン(Dr)のラインナップで1980年に『オン・スルー・ザ・ナイト』でデビュー。2ndアルバム発表後にピート・ウィリスは解雇され、代わりにフィル・コリン(Gt)が加入しました。そうして制作された本作は、AC/DCなどを手掛けたロバート・ジョン・ “マット” ・ラングによりプロデュースされました。全米2位を獲得し、この年だけで600万枚(最終的には1000万枚以上)の大ヒットを記録。デフ・レパードの出世作となります。ちなみに原題の『Pyromania』とは放火癖とか放火狂という意味。

 アルバムは「Rock! Rock! (Till You Drop)」で開幕。強烈なギターリフにシャウト重視のエリオットの歌唱など、AC/DCにも通じるかも。オープニングに相応しいアップテンポ曲です。続く「Photograph」はシングルヒットしたデフ・レパードの代表曲。印象的なギターリフからドラムが加わるイントロの展開からアツい。キャッチーなメロディで、特にサビでの、美しいコーラスワークを駆使してほんのり哀愁を漂わせた歌メロはとても素晴らしいです。美しく伸びやかな歌メロの裏で、サウンドを引き締めるメタリックなベースもカッコいい。ライブの歓声で始まる「Stagefright」は爽快な疾走曲で、本作中最も速い1曲です。ドライブ感抜群で、オープニング向きの1曲です。続く「Too Late For Love」は哀愁漂うダークでヘヴィな1曲。サウンドは重たいですが、歌はメロディアスで、特に「too late」を繰り返すコーラスワークはとても美しいです。「Die Hard The Hunter」は序盤の哀愁漂うアルペジオが美しいのですが、そこからアップテンポ曲に様変わり。中盤から終盤にかけてのツインギターの絡みが素晴らしく、哀愁と緊張感が漂います。
 アルバム後半は「Foolin’」で幕開け。全体的に哀愁漂う1曲で、美しいアコギのアルペジオからメロディアスな歌メロへと繋ぎます。でも歌メロはキャッチーなんですよね。続いて歌を重視した「Rock Of Ages」を挟み、シリアスで緊迫感漂う「Comin’ Under Fire」。哀愁を纏ったアルペジオが美しく、また歌メロが始まるとベースとドラムのリズム隊が力強くバックをサポート。歌は緊迫感があります。続いて「Action! Not Words」は対照的で、明るい雰囲気のあるアップテンポ曲。ラストの「Billy’s Got A Gun」は終始響くメタリックなベースが印象的なミドルテンポの1曲。歌ではメロディアスなコーラスワークを存分に聴かせます。

 キャッチーでメロディアスな楽曲が詰まった名盤です。特に「Photograph」は出色の出来で、まずはこれを目当てに聴いてみても良いかと思います。

Pyromania (Deluxe Edition)
Def Leppard
 
Hysteria (ヒステリア)

1987年 4thアルバム

 全米ではLAメタルが猛威を振るう中で、英国ハードロックの意地を見せたデフ・レパードの大ヒットアルバムです。現在までに全米で1200万枚以上、全世界で2000万枚以上を売り上げています。本作は全英1位を早々に獲得し、発表から約1年かけて全米1位をも獲得。そして7つのシングルがヒットし、最終的に3年近くチャートインし続けたそうです。
 本作が発表された1987年というのはハードロック界の大当たり年で、ホワイトスネイクの『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』やガンズ・アンド・ローゼズの『アペタイト・フォー・ディストラクション』などの名盤がいくつも生まれた充実の1年でもありました。

 1984年末にリック・アレン(Dr)が事故で左腕全切断となる大きな悲劇に見舞われましたが、メンバーの意向もあって、アレンはハンデを負いながらもドラマーを継続。またシモンズ社が両足と右腕だけで演奏できるようカスタマイズした電子ドラムを提供。アレンをメンバーが支えるような形で制作された本作は、ミドルテンポの楽曲が中心となっています。洗練されたサウンドと、親しみやすいメロディ、透明感のある美しいコーラスワークが印象的。メロディアスな楽曲が揃っていて聴きやすい作品です。前作同様ロバート・ジョン・ “マット” ・ラングのプロデュース。
 ちなみに1枚物レコードの中では、収録時間が最も長いロックアルバムだったようです。1980年代半ばはレコードからCDへの移行期でした。

 オープニング曲は「Woman」。イントロから力強いサウンドで惹き込まれます。少し影のあるヘヴィなサウンドですが、メロディアスな歌はキャッチーで聴きやすいです。続く「Rocket」はプリミティブなパーカッションとベースが作る独特のリズムが特徴的。リズム感が独特だからか、歌メロもなんとなくひねたポップ感を見せます。デフ・レパードの十八番であるコーラスワークが存分に活きています。「Animal」は明るい楽曲で、一緒に歌いたくなるキャッチーさがあります。「Love Bites」は全米1位を獲得した名バラード。しっとりと哀愁漂う歌を聴かせます。サビに向かってのメロディアスな展開や、サビの重厚なコーラスは美しいです。力強いドラムが炸裂する「Pour Some Sugar On Me」を挟んで、キャッチーな楽曲「Armageddon It」。前半パートでは最も好みの1曲です。爽やかなロック曲で一緒に歌いたくなるキャッチーさもあるのですが、「海女下痢で 海に出れねぇ 今朝も下痢で」という有名な空耳のせいで、聴くたびこの空耳を思い出して笑ってしまいます。本当にこの空耳どおり聞こえるので強烈なインパクトがあります。
 レコードB面、アルバム後半の幕開けは「Gods Of War」。イントロとアウトロに、タイトルを連想させる戦争のようなSEが入っています。コーラスワークにより彩られたメロディアスな歌は、前曲にも似た雰囲気です。続いてアップテンポの「Don’t Shoot Shotgun」。ビート感のあるドラムとキャッチーな歌メロが爽快さを生み出しています。続く「Run Riot」は前曲よりスピードを増した、本作では数少ない疾走曲です。アルバム後半に疾走曲を持ってくることでダレるのを防ぐアルバム構成。そして2曲のアップテンポ曲に続くのは、歌メロを重視したバラードで表題曲「Hysteria」。これが本作最高の1曲で、個人的にはデフ・レパードの楽曲で最も好きです。淡々としているようで、じわじわと盛り上げる美しいメロディは、聴けば聴くほどその魅力を増して虜になります。心にじんわり広がっていく感じがします。「Excitable」はハードでメリハリの効いたサウンドが爽快なアップテンポ曲。やはりコーラスのおかげでキャッチーな印象です。ラストはメロディアスな「Love And Affection」でしっとりと締めます。

 ドラマーのリック・アレンが事故で片腕を失うというハンデを負いながら、むしろアレンのビート感のあるドラムをフィーチャーしたかのように楽曲が組み立てられ、そのサウンドからメンバーの仲間意識を強く感じます。
 ミドルテンポの楽曲が中心ですが、7つのシングルヒットを生み出したことからも分かるとおり素晴らしい名曲揃いで、ハードロック界でも屈指の名盤です。必聴!

Hysteria
(30th Anniversary 3CD Deluxe Edition)
Def Leppard
Hysteria
(30th Anniversary)
Def Leppard
 
Adrenalize (アドレナライズ)

1992年 5thアルバム

 前作『ヒステリア』のあと、バンドはセルフプロデュースを決めて制作を開始。しかしスティーヴ・クラークのアルコール依存が重症化。クラークにリハビリの猶予を与えたものの、1991年にはアルコールと鎮痛剤と抗うつ剤の同時摂取が原因でクラークが亡くなってしまいます。クラークの後任は結局見つけられず、フィル・コリンがクラークのパートも含めてギターを弾いています。またロバート・ジョン・ “マット” ・ラングのエンジニアを担当していたマイク・シプリーをプロデューサーに抜擢してアルバムは完成しました。
 グランジ旋風が巻き起こりハードロック/ヘヴィメタルバンドが大苦戦を強いられる1992年という時代において、本作は26ヶ国で1位を獲得するという『ヒステリア』を超えるチャートアクションを見せました。最終的な総売上は『ヒステリア』に劣るものの、全世界で700万枚以上売り上げるという大成功を得て、クラークへの追悼盤となりました。

 オープニング曲は「Let’s Get Rocked」。ミドルテンポのノリの良い楽曲です。かなりポップで、キャッチーなサビメロは耳に残ります。「Heaven Is」は縦ノリのサウンドに乗せて、コーラスワークによってとても明るい歌メロ。爽やかで心地良いです。ノリの良いアップテンポ曲「Make Love Like A Man」を挟んで、「Tonight」は湿っぽいバラード。哀愁が漂うダークな曲調ですが、コーラスは美しいのです。そして7分に渡る重厚な「White Lightning」は、亡きクラークに捧げた楽曲なのだとか。全体的に陰鬱でヘヴィなサウンドはそのためでしょうか。「Stand Up (Kick Love Into Motion)」も哀愁が漂います。暗い雰囲気を、無理に明るく吹き飛ばそうとするかのような切なさが感じられます。アップテンポのロックンロール曲「Personal Property」を挟んで、バラード曲「Have You Ever Needed Someone So Bad」。コーラスワークがとても美しく、間奏のギターも切なさを助長します。ベタですが良い楽曲です。そして「I Wanna Touch U」ではパンチの効いたドラムに、底抜けに明るい雰囲気。コーラスに彩られたキャッチーなメロディが爽快で、耳に残ります。ラストの「Tear It Down」はノリノリのロックンロール。元気を貰える1曲でアルバムを締めます。

 メロディアスで聴きやすい佳曲が揃っているので、前作『ヒステリア』が大好きな人は手に取ってみても良いでしょう。前作よりも収録時間が短く、手軽に聴けます。ただ、強烈な1曲には欠く印象です。大きな成功を得たものの『ヒステリア』の二番煎じ的な評価も多く、個人的にもその印象は否めません。

Adrenalize (Deluxe Edition)
Def Leppard
 
 
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