🇺🇸 Devo (ディーヴォ)

レビュー作品数: 9
  

スタジオ盤①

デビュー

Q:Are We Not Men? A:We Are DEVO! (頽廃的美学論)

1978年 1stアルバム

 米国オハイオ州出身のロックバンド、ディーヴォ。ニューウェイヴ勢の中でも特に影響力が大きかったバンドです。バンド名のDevoとは「De-Evolution (退化)」の略です。アメリカ社会の機能不全や群集心理などを根拠に、人間は進化し続けるのではなく退化し始めたという考えが込められているのだとか。1973年に実質的なリーダーのマーク・マザーズボウ(Vo/Key/Gt)と、ジェリーことジェラルド・キャセール(Vo/B/Key)を中心に結成しました。マークとジェリーに加えてマークの弟ボブ・マザーズボウ(Gt)(通称ボブ1号)、ジェリーの弟ボブ・キャセール(Gt/Key)(通称ボブ2号)という親族と、血縁関係のないアラン・マイヤース(Dr)のラインナップ。
 本作は西ドイツで制作され、巨匠ブライアン・イーノがプロデュースしたほかデヴィッド・ボウイも制作に関わっています。ひねくれポップ全開で中々インパクトのある名盤に仕上がりました。アルバムタイトルはH.G.ウェルズの『モロー博士の島』からの引用だとか。

 オープニングを飾る「Uncontrollable Urge」はノリの良いパンキッシュなロックンロール。ハイテンションで「イェーイェーイェーイェー」と楽しげですね。リフや楽曲展開がレッド・ツェッペリンの「Misty Mountain Hop」に似てる気がします。終盤には無機質な機械音が加わります。続く「(I Can’t Get No) Satisfaction」ローリング・ストーンズの超名曲を大胆なアレンジでカバー。単調でミニマルながらもファンキーな演奏は抜群のグルーヴで、特にジェリーの弾くベースが気持ち良いです。でもメロディのない歌は原曲とは大きくかけ離れていますね。「Praying Hands」はややひねたイントロから高揚感を煽ります。シンセサイザーを用いてスペイシーというかふざけた感じがします。ファンキーな演奏に乗る変なメロディが中々面白く、途中から加速して畳み掛け、そしてまた元のメロディに戻るという緩急ある展開が癖になるんです。そして「Space Junk」は駆け足で勢いのある楽曲です。アランのドラムがドコドコドコと爽快ですね。「Mongoloid」はベースが重低音を鳴らし、弾けるようなドラムにスペイシーなシンセサイザーの味付けが良い。おふざけで楽しそうな演奏と裏腹に、歌は気だるげでやる気がなさそうです。「Jocko Homo」は淡々としているのに、独特のリズム感覚で妙に耳に残ります。変な感覚に戸惑っていると後半はリズムチェンジし、明るい雰囲気へと変わっていきます。でも楽曲構成がかなりめちゃくちゃで、それも大きなフックになっているんですよね。
 アルバム後半は「Too Much Paranoias」で幕開け。力強い演奏はハイテンションで緊張感が漂います。とてもスリリングですが、中盤の実験的な演奏でちょっと息抜き。終盤にまた緊張を高めます。「Gut Feeling / (Slap Your Mammy)」はメロウなギターが哀愁を感じさせますが、じっくり浸らせまいとばかりにリズム隊がどんどんテンポを上げていきます。鍵盤も絡んで爽快な演奏に様変わり。インストゥルメンタルかと思いきや、2分過ぎた辺りからマークの歌が始まります。ベースが縦横無尽に暴れ回り、疾走感に溢れてスリリングです。「Come Back Jonee」はチッチキチッチキ刻むアランのドラムが焦燥感を煽ります。ギターリフが耳に残る爽快な疾走曲で、「ジャーニー ジャーニー」のコールもキャッチーですね。「Sloppy (I Saw My Baby Gettin’)」はギターがキャッチーなメロディを奏でますが、歌はコミカルな感じ。パンキッシュな演奏ですが、途中でテンポダウンしてはまた持ち直して疾走する展開が面白いです。最後の「Shrivel-Up」は音の鳴らし方が実験的な印象。歌も変なメロディだし怪しさ満点ですが、テンポも良く躍動感のある演奏は楽しいんですよね。

 「何だこれ?」という楽曲が詰まっていて、とても楽しいです。コミカルな雰囲気ですが、意外に演奏はタイトでしっかりしています。後半に疾走曲が並び、アルバムが進むほどテンション高い印象です。

Q:Are We Not Men? A:We Are DEVO!
(Deluxe Remastered Edition)
Devo
 
Duty Now For The Future (生存学未来編)

1979年 2ndアルバム

 ディーヴォは、1st『頽廃的美学論』のリリース翌月から本作の制作を開始。ストック曲が大半で、1976年頃のライブで既に披露されていたのだとか。本作ではデヴィッド・ボウイらを手掛けたケン・スコットがプロデューサーに就きました。シンセサイザーを用いてミニマルを多用。シンセポップ/テクノポップの隆盛にも影響を与えています。但しシンセポップというほどシンセが前面に出てる訳ではなく、あくまでバンド演奏が主体で、そこにスペイシーなシンセを加えたようなイメージでしょうか。

 「Devo Corporate Anthem」はマーク・マザーズボウ作の短いインストゥルメンタルで、シンセサイザーソロです。壮大なメロディをチープな音色で奏でます。続く「Clockout」ではアラン・マイヤースの疾走ドラムにジェラルド・キャセールの爆音ベースが暴れ回り、とてもスリリングでカッコ良いです。緊張感と勢いに満ちていますが、ふざけたシンセサイザーなどお遊び要素も見られます。「Timing X」もマーク作の短いインストゥルメンタル。シンセサイザーがミニマルなフレーズを反復します。独特のリズム感覚が耳に残り、ヤミツキになりそうです。「Wiggly World」では再び緊張を高め、アランの力強くてパタパタと忙しないドラムが焦燥感を煽ります。ビームを放つかのようなスペイシーな音色のシンセが特徴的。独特の感覚ですが、キーの高い歌を聴いてみるとロックンロールが軸にありそうです。「Blockhead」は重低音を響かせたギターリフとうねるベースが心地良い。演奏は低血圧気味というか淡々と重低音を刻みますが、歌はキーの高さからかテンション高めな印象で、後半はメンバーによる野太いコールが面白いです。「Strange Pursuit」はテンポの速いコミカルな楽曲です。キレがあってノリの良いダンサブルなビートを刻み、おどけたシンセやどこかズレた歌で変な感覚に仕上げます。ひねくれていますが、キャッチーなので耳に残るんですよね。魅力的な楽曲です。そして「S.I.B. (Swelling Itching Brain)」は無機質なシンセや抑揚のない歌により、どこか閉塞感のある暗い未来像を描くかのようです。でも人力ドラムに人間の温もりを残していますね。
 ここからアルバム後半に突入。「Triumph Of The Will」は後半オープニングにしては重厚(なのにチープ)な印象。ずっしりとしたドラムに、チープな音色のシンセが重厚な雰囲気を作ります。貫禄を感じさせる歌い方ですが、歌はそんなにうまくないというギャップも。笑 続いて「The Day My Baby Gave Me A Surprize」はイントロこそ引き締めますが、それも束の間、スローダウンして気だるく進行します。力強いドラムにピコピコシンセが中々気持ち良いですね。リズムチェンジを多用し、気付くと終盤はノリノリです。なおPVでは白い上下服に銀の3Dメガネという奇抜な衣装も話題になったそうです。「Pink Pussycat」は這うようなギターやベースがグルーヴを与え、シンセが茶化すかのよう。そして裏声なのか加工したのか変な歌声はコミカルでインパクトがあり、ひねていますが妙にキャッチーです。そして「Secret Agent Man」はジョニー・リヴァースのカバー曲。原曲は1966年リリースなのですが、ディーヴォの独自色が強いのか、オールドロックの影を全然感じさせません。ギターが低音で淡々とリズムを刻み、チープなシンセがSF風味に味付け。演奏は緊張感があってスリリングですが、歌はヘロヘロというギャップも面白いです。「Smart Patrol / Mr. DNA」はキレのあるリズムビートと、ギター&ベースの作る重低音が緊張を高めます。お遊びシンセが緩衝材になっていますが、中々スリリング。後半は急加速して、勢い溢れる楽曲へと様変わり。早口でまくし立てるような歌で、マークとジェリーが掛け合いを繰り広げます。ラスト曲「Red Eye」はバタバタとしたドラムにダイナミズムを感じます。勢いに満ちて弾けるようなパンキッシュな演奏ですが、ヘタウマな歌はやる気なさそうにも聞こえます。

 シンセを活用して、ひねくれポップな楽曲に磨きがかかっています。1stに負けず劣らず、こちらも面白い名盤です。

Duty Now For The Future
(Deluxe Remastered Edition)
Devo
 

シンセポップ化と商業的な成功

Freedom Of Choice (欲望心理学)

1980年 3rdアルバム

 本作ジャケット写真でメンバーが被っている、ファンからは「うんこ帽」とも呼ばれる赤い段々帽は「エナジードーム」という名のアイテムです。ジャケットでは銀のスーツを着ていますが、この「エナジードーム」を被って黄色いつなぎを着た、どこかズレたSF的な衣装に興味を持ってディーヴォを聴き始めました。笑 ファッションも突飛な音楽も強烈なインパクトを持つバンドだと思います。またこれらファッションを印象づけるPVは、ディーヴォの宣伝部長のジェリーことジェラルド・キャセールが手掛けます。
 さて本作ですがセルフプロデュースに臨み、ロバート・マルグーレフを共同制作者として迎えています。ディーヴォ最大のヒット曲「Whip It」を収録しています。

 アルバムは「Girl U Want」で幕開け。金属質でイントロは無機質な質感ですが、ファンクのような楽しいリズムを刻みます。そしてすぐさま加速して、軽快でノリの良い楽曲を展開します。歌もキャッチーで耳に残りますね。名曲です。続く「It’s Not Right」はシンセサイザーがピコピコと響き、テクノポップ全開。ですがアラン・マイヤースのドラムは力強くて、バンド感があるのもディーヴォのサウンドの魅力でしょう。そしてヒット曲「Whip It」。やはりこれが一番良いですね。疾走感溢れるリズムビートに鞭打つような破裂音、耳に残るミニマルな低音の反復、そしてマーク・マザーズボウのコミカルでポップな歌。どれもがキャッチーな名曲です。「Snowball」はチープなシンセサイザーが時にピコピコ、時にメロディアスなフレーズを奏でます。テクノポップ的ですが、アランが細かく刻むドラムも爽快ですね。続く「Ton O’ Luv」は勢いのある演奏で、ちょっとひねた感覚ですがリズミカルな演奏で楽しませます。そして表題曲「Freedom Of Choice」。イントロの機械的なパーカッションや歪んだギターにインダストリアルな感覚も少し取り入れつつ、テクノポップ的な楽しさも持ち合わせています。相変わらずリズミカルで躍動感あるビートに支えられ、歌もポップですね。
 アルバムはここから後半に突入。「Gates Of Steel」は、スペイシーなシンセサイザーと躍動感溢れるドラムにより爽快な印象で幕開け。でもヘヴィなギターによって少しシリアスでスリリングな感覚も増してきます。マークの甲高い声がスリリングな演奏に映えますね。「Cold War」はタイトルとは裏腹におちゃらけた感じ。リズミカルでノリの良い演奏に乗せて、キャッチーな歌メロを展開します。「Don’t You Know」は独特のリフが耳に残りますね。ひねた感じのメロディですが、テンポ速めでノリも良く、ヘンテコなのに楽しめる楽曲です。2分強の短さが若干物足りないです。続く「That’s Pep!」は跳ねるようなビートにキャッチーなギターリフで高揚感を煽ります。身体が自然とリズムを刻みたくなるような、リズミカルな演奏で楽しませてくれます。そして「Mr. B’s Ballroom」はキレのあるビートに乗せ、シンセサイザーで鮮やかに彩ります。メロディも悪くないのですが、それ以上に強烈なダンスビートで楽しませる佳曲ですね。最後は「Planet Earth」で、これも勢いがあってノリの良い楽曲です。序盤はソリッドなギターを聴かせますが、それでもやはりディーヴォはリズム隊が強い。ノリの良いビートでグイグイと牽引してくれます。

 ひねた感覚も残しつつ、キャッチーで聴きやすい楽曲が揃っています。アルバム通してノリが良く、ディーヴォの入門盤としてオススメできます。

Freedom Of Choice
(Deluxe Remastered Edition)
Devo
 
New Traditionalists (ニュー・トラディショナリスツ)

1981年 4thアルバム

 前作の成功を受けてセルフプロデュースで制作した本作は、シンセサイザーがより前面に出たものとなり、ディーヴォで初めてドラムマシンが使われました(一部楽曲のみ)。メンバーと役割分担はそれぞれマーク・マザーズボウ(Vo/Key/Gt)、ジェリーことジェラルド・キャセール(Vo/B/Key)、ボブ1号ことボブ・マザーズボウ(Gt/Key)、ボブ2号ことボブ・キャセール(Gt/Key)、アラン・マイヤース(Dr)。メンバーは変わりませんが役割が重複してよくわかりませんね。汗
 本作では新しい退化アイテムが登場します。ジャケット写真でメンバーが被っているカツラは「ニュー・トラディショナリスト・ポンプ」と呼ばれ、ジョン・F・ケネディの髪型を模したものだそうです。

 オープニング曲「Through Being Cool」は本作のリードシングル。ディーヴォの歌詞に込められたメッセージを理解していない新規ファンを攻撃する内容になっているようです。リズミカルなビートと鮮やかなシンセサイザーがノリノリで楽しげに演奏しますが、歌は抑揚がなく淡々としています。「Jerkin’ Back ‘N’ Forth」はダンサブルなドラムに加えて、シンセベースがグルーヴ感を生み出します。歌よりもダンスビートや演奏全般に意識がいきますね。とてもノリが良くて爽快です。続く「Pity You」はシンセベースが軸を作ります。バックではギターとおふざけなシンセが楽曲を飾り、歌もちょっとおどけた感じがあります。「Soft Things」はイントロからわざとらしいシンセサイザーが華やかさを演出し、パーカッションとともにドラムマシンで連打。ノリの良いサウンドで楽しませます。時折声を加工したコーラスが入りますが、シンセと相まって近未来的な感じ。続いて「Going Under」はダンサブルなリズムビートが気持ち良いですね。でもビートは淡々と反復し、デジタルな効果音と抑揚の少ない歌によって無機質さも出しています。
 後半は「Race Of Doom」で幕開け。力強くて若干緊張感が漂う演奏に、キャッチーな歌が特徴的な楽曲です。分厚いシンセによって重低音を響かせ、そしてダンサブルです。「Love Without Anger」はシンセがそこまで分厚くなく、リズミカルな演奏で楽しませてくれるので、前作までに近いアプローチです。電動ドリルのような効果音がアクセントとして面白いです。続く「The Super Thing」はタイトなドラムが気持ちの良いビートを刻みます。シンセや歌メロはややシリアスな雰囲気を纏っています。そして「Beautiful World」は華やかさの中に若干の緊張が張り詰めます。ノリは良いけど、どこか憂いを帯びていてメロディアス。間奏のギターソロも味がありますね。ラスト曲は「Enough Said」。分厚いシンセに躍動感あるビートで、カラフルかつポップな演奏を繰り広げます。

 強烈なビートが牽引するノリの良いシンセポップを繰り広げますが、これまでのようなおふざけ感や奇抜なアプローチが減りました。シンセポップとしては高品質なのですが、前3作に比べ驚きが少なく若干物足りなさを感じるのは贅沢でしょうか。笑

New Traditionalists
(Deluxe Remastered Edition)
Devo
 
Oh, No! It's Devo (オー・ノー! イッツ・ディーヴォ)

1982年 5thアルバム

 ディーヴォに対する批評的なレビューで「ファシスト」とも「ピエロ」とも言われたことに対し、「ファシストのピエロが作るアルバムはどのように聞こえるだろうか」という問いに答える作品を作ろうと決心。クイーン等を手掛けたロイ・トーマス・ベイカーをプロデューサーに迎えて本作を制作しました。よりシンセポップ化・デジタル化が進み、ドラムも電子化、ギターは後退。シンセよりギターが目立っていた初期サウンドを好む一部のファン離れを起こしたそうです。

 オープニング曲「Time Out For Fun」から愉快な楽曲を展開します。ミニマルなシンセサイザーに、抑揚のない無機質な雰囲気のボーカル(楽曲が進むと歌もノリノリです)。力強い電子ドラムは時代を感じさせますが、ノリの良いビートで楽しませます。続く「Peek-A-Boo!」もダンサブルで、弾けるようなサウンドが爽快。強烈なビートで踊りたくなります。歌もシンセサイザーもコミカルでアホっぽい雰囲気で楽しい。「Out Of Sync」はミニマルなフレーズを弾くシンセが何重にも重なり、ノリの良いビートと合わさって中毒性のあるサウンドを繰り広げます。チープな音ですが、ピコピコとスペイシーな演出も好みです。「Explosions」はアラン・マイヤースによる電子ドラムが特に強烈。チキチキとハイハットを刻んで高揚感を煽り、強烈なドラムで跳ねるようなビートを演出。とても爽快です。続いて「That’s Good」も楽しげな雰囲気。ダンサブルな楽曲をシンセサイザーが明るく彩り、そして歌もポップです。
 アルバム後半は「Patterns」で開幕。イントロから憂いが漂います。リズムビートはダンサブルで躍動感に溢れているのですが、歌は少しメランコリックで切なさを感じさせます。「Big Mess」は金属のお椀を叩くようなコツコツとした音が終始バックでリズムを刻みます。シンセやドラムがやみつきになる中毒性を持っていて、中々爽快。続く「Speed Racer」はスペイシーなシンセで茶化したり、ドスの利いた声や裏声を駆使しておふざけ感を出して楽しませます。演奏自体は単調ですが、耳に残ります。そして「What I Must Do」ではダンスビートに乗せて、ピコピコおふざけシンセと愛嬌のある歌が明るく楽しい空気を作り出します。これもノリが良いですね。「I Desire」はハンドクラップのようなビートが気持ち良いですね。淡々としていますが、アクセントとして入るオルガンのような音が良い感じ。最後の「Deep Sleep」はキャッチーなシンセサイザーで幕開け。楽曲の3分の1くらいを占める長いイントロはスペイシーかつ躍動感に満ちています。歌も弾けるようなポップさがあって魅力的ですね。

 前作よりも楽しげな雰囲気で、ディーヴォの特徴でもある力強いビートが活きるシンセポップに仕上がりました。ダンサブルな楽曲ばかりで割とワンパターンですが、聴いていて楽しめる好盤です。

オー・ノー! イッツ・ディーヴォ
(紙ジャケットCD)
Devo
 
Shout (シャウト)

1984年 6thアルバム

 本作はサンプラー活用に重きを置いたシンセポップアルバムで、マーク・マザーズボウ(Vo/Key)ではなく、ジェリーことジェラルド・キャセール(Vo/B/Key)が多くの楽曲のリードボーカルを務めていることも特徴です。ですが商業的には失敗し、本作の後ディーヴォは4年間の休止期間に入ります。またドラムマシンや電子機器の使用増により役割が減ったことを不満に思ったアラン・マイヤース(Dr)が1986年に脱退。そのため本作はアラン在籍時最後の作品となりました。

 ファンファーレのようなイントロとともに表題曲「Shout」で幕開け。シンセサイザーは派手で華やかですが、リズム隊は電子ドラムに金属音が加わってインダストリアルな感覚も持ち合わせています。エフェクトのかかったコーラスがアメコミっぽいイメージを抱きます。「The Satisfied Mind」は躍動感溢れるリズムビートが爽快な、ダンサブルな楽曲です。派手でわざとらしいシンセが時代を感じますね。「Don’t Rescue Me」はシンセのミニマルなフレーズの反復と力強いビートでノリの良さを生み出しています。続く「The 4th Dimension」はアランのドラム音量が大きく、リズムビートを強調した楽曲ですね。下手すると歌よりもドラムの方が目立っているかもしれません。ジェリーの歌はダンディな良い声で爽やかに歌っています。「C’mon」はダンサブルですが、少し哀愁や切なさを感じさせます。間奏でのボブ・マザーズボウのギターがアクセントとして良い感じ。
 後半に入り、「Here To Go」は明るい楽曲です。ラララララララ…を連呼するコーラスが特徴的ですね。続いて「Jurisdiction Of Love」はメリハリのあるビートとシンセサイザーが強烈。音色も様々で、インダストリアルっぽさもあったり、間奏ではアジアンテイストも薄っすら感じさせます。「Puppet Boy」は小気味良く刻むシンセが心地良いノリを生み出しています。掛け合いを繰り広げる歌はコミカルな雰囲気で、演奏も楽しげです。続く「Please Please」は細かく刻むドラムがリズミカルです。歌も演奏も明るい雰囲気ですが、ドラムが楽曲を引き締めてスリルを生み出しています。そしてラスト曲は「R U Experienced?」と表記されていますが、ジミ・ヘンドリックス「Are You Experienced?」のカバーです。スペイシーなイントロにダンサブルなリズムビートと、演奏には原曲の面影はありませんが、恍惚に浸るような歌に原曲の要素を僅かに残しています。

 相変わらずダンスビートは強烈なのですが、歌メロが弱い印象。マークがあまり歌っていないことも影響しているのか、歌があまり入ってこないんですよね。

Shout
Devo