🇺🇸 Eagles (イーグルス)

ライブ盤

Hell Freezes Over (ヘル・フリーゼズ・オーヴァー)

1994年

 解散時のメンバーであるグレン・フライ(Vo/Gt)、ドン・ヘンリー(Vo/Dr)、ドン・フェルダー(Gt)、ジョー・ウォルシュ(Vo/Gt/Key)、ティモシー・B・シュミット(Vo/B)の5人で再び結集し、1994年にイーグルス再結成。そして本作はスタジオ新録4曲と、MTVのライブ演奏11曲の混在する変則ライブ盤です。
 ちなみにタイトルは1980年のドン・ヘンリーのコメント「The band would play together again when Hell freezes over. (地獄が凍ったときにバンドを再開する=バンド再結成は決して起こり得ない)」が由来だそうです。慣用句「when Hell freezes over (決して起こり得ない)」と言っていた再結成が起きたので『Hell Freezes Over (地獄が凍った)』というタイトルにしたのだとか。

 まずは新曲が並びます。「Get Over It」はハードなロックンロールで、勢いのあるサウンドにドン・ヘンリーのしゃがれた歌が乗ります。ノリノリでカッコ良いです。「Love Will Keep Us Alive」はティモシーの歌う優しい楽曲。アコギが中心の穏やかな印象です。グレンの歌うまったりとした「The Girl From Yesterday」を挟んで、ドン・ヘンリーの哀愁を帯びた歌で魅せる「Learn To Be Still」が続きます。
 ここからはMTVのライブ録音。アコギが心地良い「Tequila Sunrise」でまったりとリラックス。マンドリンも綺麗な音色を奏でています。そして超名曲「Hotel California」のアコースティックアレンジ。イントロのギターはとても美しく、また哀愁たっぷりのドン・ヘンリーの渋い歌声が胸に染み入ります。続く「Wasted Time」も渋い歌が切なくなります。そして哀愁を引き立てるピアノやストリングスも実に美しい。そして、ジョーがボーカルを担当する「Pretty Maids All In A Row」。シンセにより優美な音色を奏でます。続いてティモシーが歌う「I Can’t Tell You Why」。AOR的でメロウなサウンドで、落ち着いた雰囲気の楽曲をまったりと聴かせます。「New York Minute」はドン・ヘンリーのソロ作より。キラキラとしたシンセに落ち着いた円熟味のある歌を披露。そして素晴らしき名バラード「The Last Resort」。ピアノと渋い歌声の、シンプルなのにあまりに美しいメロディ。そして徐々に楽器が増えて盛り上がっていきます。終盤なんて鳥肌ものの美しさで、心に響く名曲ですね。続く「Take It Easy」はこのライブで数少ないアップテンポ曲ですが、少し不安定さが目立ちます。グレンの歌は少しラフな印象だし、ドラムも若干覚束ない箇所が。コーラスの美しさは見事ですけどね。「In The City」も明るいトーンで、R&B風のコーラスワークが印象的です。「Life In The Fast Lane」はロック色が強く躍動感がありますね。ノリがよいので、できればライブ中盤くらいで流れを変えて欲しかったところですが…。そして最後は名バラード「Desperado」。哀愁の歌メロと、ピアノやストリングスが美しいのは言うまでもないですね。そしてこのライブだとベースも際立っていて、楽曲を引き立てています。

 ライブはさすが名曲揃いです。ただ、ゆったりとした楽曲が多くてメリハリに欠ける印象があります。円熟味があるので、じっくり聴き浸る感じですね。AORが好きな方にはオススメしたい作品です。

Hell Freezes Over (25th Anniversary Edition)
Eagles
 
 

編集盤

Their Greatest Hits 1971-1975 (イーグルス・グレイテスト・ヒッツ 1971-1975)

1976年

 イーグルスの初期ベスト盤『イーグルス・グレイテスト・ヒッツ 1971-1975』。ベスト盤としては世界で最も売れたアルバムで、全世界で4100万枚以上も売り上げており、本国米国ではマイケル・ジャクソンの『スリラー』に次ぐ歴代2位の売り上げを誇る作品です(米国だけで3800万枚以上)。カラッとして陽気で、それでいながら哀愁のあるアメリカンロックを聴くことができ、名バラードも多いです。楽曲は『イーグルス・ファースト』から『呪われた夜』までのアルバムから選出されています。
 本作の素晴らしいところは、ベスト盤にありがちな「色々詰め込みすぎて長い」「選曲に難あり」「質の異なるヒット曲ばかりを詰め込むからアルバムの流れが不自然」などの不満要素が一切ない点でしょう。10曲43分のサクッと聴ける短い時間の中に、日本人に人気の高い「Take It Easy」や「Desperado」であったり、「One Of These Nights」や「Take It To The Limit」といったイーグルスの初期の名曲だけが濃縮して詰め込まれていて、それでいながらオリジナルアルバムのように自然な流れで聴くことができるという素晴らしい作品なのです。

 代表曲「Take It Easy」で幕開け。軽快なギターが心地良い陽気な楽曲で、グレン・フライが伸びやかな歌声で歌うキャッチーなメロディも魅力たっぷりです。「気楽にいこうぜ」と歌う、晴れた日の外出にもってこいのカラッとして爽やかな1曲ですね。続く「Witchy Woman」は怪しげな雰囲気の楽曲ですが、メロディは耳に残ります。ドン・ヘンリーの渋い歌声は魅力的で、またメンバーによるコーラスワークも美しい。「Lyin’ Eyes」はアコースティックで晴れやかな雰囲気。メロディアスな歌が優しいサウンドによく合っていて、とても心地良いです。続いて軽快なアップテンポ曲「Already Gone」。カラッとして陽気なロックンロールで、ドン・フェルダーのご機嫌なギターが爽快です。晴れやかな曲にグレンの歌声がよく似合う。そして名バラード「Desperado」。多くの日本人アーティストもカバーしている、馴染み深いバラードですね。ドン・ヘンリーの渋い歌声が哀愁を誘います。ピアノとストリングスが楽曲を引き立て、途中加わるドラムやコーラスがドラマチックに盛り上げます。実に美しい。
 アルバム後半に入り、怪しげな名曲「One Of These Nights」。ランディ・マイズナーのグルーヴ感のあるベースが印象的。そして歌が始まるとR&B色の強い黒っぽいコーラスが、耳に残るキャッチーなメロディで魅了します。「Tequila Sunrise」はまったりとして穏やかな楽曲で、スライドギターとグレンの歌が癒してくれます。オレンジ色のカクテルのテキーラサンライズと、情事明けの朝焼けを掛けているのだそう。そして名バラード「Take It To The Limit」。ランディがボーカルを取る楽曲では最高の出来です。メロディアスな歌をストリングスが彩り、とても美しい。ドン・ヘンリーのドラムも良い仕事をしてるんですよね。続く「Peaceful Easy Feeling」はアコギとハミングが心地良い、穏やかでメロディアスな楽曲です。シンプルながらメロディが良くて癒されます。そして最後にバラード曲「Best Of My Love」。イーグルスは本当に良い曲が多いですね。ドン・ヘンリーの渋い歌声で魅了します。

 名曲の詰め合わせで当然ながら捨て曲はなく、それどころかベスト盤なのにアルバムの流れも完璧という、文句なしの大傑作です。
 本作の直後に大名盤『ホテル・カリフォルニア』がリリースされたことから、本作がこれだけの名ベスト盤でありながら、『ホテル・カリフォルニア』と1曲も被らないのです。このベスト盤を聴いた後でも『ホテル・カリフォルニア』を聴く楽しみが残る(またはその逆)という貴重なベスト盤なのです。笑 そのため、イーグルスはいくつかベスト盤を出しているものの、オールタイムベスト等を聴くよりも、本作と『ホテル・カリフォルニア』をセットで聴くという聴き方をおすすめします。

Their Greatest Hits 1971-1975
Eagles
 
 
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