🇬🇧 Electric Light Orchestra (エレクトリック・ライト・オーケストラ)

レビュー作品数: 5
  

スタジオ盤

A New World Record (オーロラの救世主)

1976年 6thアルバム

 エレクトリック・ライト・オーケストラ、通称ELO。イングランド出身のロックバンドで、前身のバンド「The Move (ザ・ムーブ)」から1970年に改名して活動開始。1970年代米国で最も多くのヒット曲を送り出したバンドです。
 メンバーはプロデューサーも務めるジェフ・リン(Vo/Gt/etc.)を中心に、この時点のラインナップとしてはベヴ・ベヴァン(Dr)、リチャード・タンディー(Key)、ケリー・グロウカット(B)、ミク・カミンスキー(Vn)、ヒュー・マクダウェル(Vc)、メルヴィン・ゲイル(Vc)。大所帯で、文字通りオーケストラですね。ロックとクラシックの融合を図ったような楽曲が並びます。
 原題はミュンヘンオリンピックの中継でのテロップ「世界新記録」から取ったそうですが、邦題はジャケットアートからでしょうか。UFOのような円盤はELOのシンボル的な存在として、後のジャケットでも幾たび登場します。

 オープニング曲「Tightrope」は、イントロからストリングスによって壮大な演出がなされています。ストリングスはややダークな雰囲気があるものの、歌メロはポップで明るく聴きやすいですね。続く「Telephone Line」はシングルとして大ヒットした楽曲です。美しいコーラスワークに彩られた、物悲しい雰囲気のバラードです。「Rockaria!」はロックとアリアの融合曲。女性の美しい声をかき消すように現れる陽気なロックンロール。爽快な1曲で、個人的には本作ではこれが一番好みです。「Mission (A World Record)」は神秘的でしっとりとした、哀愁が漂う楽曲です。構成が複雑でプログレ的ですが、メロディアスな歌は聴きやすいです。
 アルバム後半は「So Fine」で幕開け。タイトルどおり明るい雰囲気で、小気味良いサウンドが爽快です。「Livin’ Thing」も明るくて、コーラスワークがポップ。ストリングスが聴きやすさを増幅させていますね。哀愁漂う小曲「About The Clouds」を挟んで、ハードなギターがメリハリを生み出す「Do Ya」。ギターはハードですが、ストリングスによって和らげられ、また歌はキャッチーです。ラスト曲は「Shangri-La」。優しい雰囲気の楽曲で、ゆったりと浸ることができます。歌詞にビートルズの「Hey Jude」が出てきます。

 ポップな楽曲が並ぶ作品で、流して聴くだけでも心地良い作品です。ELOはこの後もポップ化が進み、名盤を生み出すことになります。

A New World Record
Electric Light Orchestra
 
Out Of The Blue (アウト・オブ・ザ・ブルー)

1977年 7thアルバム

 予約だけで400万枚以上を達成した大ヒット作です。レコード時代は2枚組だった大作で、CD化に際して1枚になったものの、全17曲70分のボリューム。本作もバンドリーダーのジェフ・リンによるプロデュースで、全曲の彼による作曲です。なお7人のオーケストラ編成での最後の作品となりました。
 宇宙船のジャケットアートは日本の画家、長岡秀星によるもの。スペイシーな本作にピッタリのジャケットです。

 レコード時代でいうA面はポップで明るい楽曲が並びます。オープニングを飾る「Turn To Stone」はストリングスが効果的に使われていて、ポップ感覚溢れる爽やかな名曲です。続く「It’s Over」は哀愁漂うメロディアスな1曲です。メロディラインが美しく、またラストの渋い歌声も良い。「Sweet Talkin’ Woman」は加工された声やコーラスワークによって、スペイシーで浮遊感のある楽曲です。とてもキャッチーで聴きやすい。「Across The Border」はドラムを中心に、緊張感に溢れ疾走するイントロ。演奏パートはとてもスリリングですが、歌が始まると一気に明るく弾け、ポップさ全開。メリハリのある1曲です。

 B面は少しひねていて、でもポップな楽曲揃い。「Night In The City」は不穏なストリングスに始まり、情景がコロコロと変わる楽曲です。オシャレさとハードさと怪しさが混在していてカオス。「Starlight」はスペイシーなサウンドに少し怪しさも混ぜながら、ゆったりとメロディアスな歌を展開します。「Jungle」は賑やかなパーカッションやSEによって、ジャングルの喧しくて蒸し暑い雰囲気が伝わってきます。ダークな雰囲気の短いインストゥルメンタル「Believe Me Now」を挟んで、「Steppin’ Out」は優雅な雰囲気でメロディアスな1曲です。ケリー・グロウカットのベースが心地良い。

 レコードC面は「Concerto for a Rainy Day (雨の日のコンサート)」と名付けられていて、全曲が繋がって組曲のようになっています。雷鳴のSEが轟く「Standin’ In The Rain」で開幕。少しダークな雰囲気があり、シンセサイザーやストリングスが入り乱れて複雑な構成はプログレ的。4分強の楽曲ですが、もっと長い時間が経っているように感じられる、濃密で壮大な楽曲です。そのまま続く「Big Wheels」は影のある楽曲です。サビへの盛り上げ方はドラマチックで感動的。終盤のストリングスの演出も良いですね。スペイシーなシンセサイザーのあと途切れず続く「Summer And Lightning」では再び雷鳴が轟きます。その後は晴れやかな歌が広がりますが、時折シンセサイザーや雷鳴のSEがメリハリを生みます。リズムチェンジを多用し、プログレハード的な仕上がりです。そしてELOの代表曲と言える「Mr. Blue Sky」。陽気なリズムに乗せて、ビートルズのような雰囲気のポップ曲を展開します。コーラスワークもとてもキャッチーで聴きやすい。何気に場面転換がいくつもあるんですよね。

 D面はアルバムの総まとめといった位置づけでしょうか。「Sweet Is The Night」ポール・マッカートニーのよう。少し哀愁のある、メロディアスな楽曲です。「The Whale」はスペイシーなインストゥルメンタル。SFチックな効果音が交錯しながら、徐々にキーボードを中心にメロディを作り出していきます。続く「Birmingham Blues」はブルースと言いつつ、ハンドクラップもあって陽気な雰囲気です。あまりブルージーな渋さはないかも。アコギがメリハリを生み出します。ラスト曲は「Wild West Hero」。最後に相応しくしっとりと始まり、そして壮大になっていきます。コーラスワークも美しい。中盤はヘヴィな展開。

 前作よりもポップさが増し、名曲が数多く収録されています。曲数が多いですが、一気に聴かずにレコード時代のように区切って聴くと、この作品に入りやすいのではないでしょうか。

Out Of The Blue
Electric Light Orchestra
 
Discovery (ディスカバリー)

1979年 8thアルバム

 当時大流行していたディスコをELO流に解釈した作品で、「Disco (ディスコ)」と「Discovery (発見)」をかけたタイトル。なおストリングスのメンバーを解雇して本物のオーケストラを採用。またシンセサイザーにシフトし、そうしたことで大成功を得た作品です。初の全英1位、また全米でも5位を記録しました。ラインナップはリーダーのジェフ・リン(Vo/Gt/etc.)、ベヴ・ベヴァン(Dr)、リチャード・タンディー(Key)、ケリー・グロウカット(B)。

 「Shine A Little Love」は個人的にはELOで1、2を争う名曲。煌びやかで、そしてタッタカタッタカとリズミカルなイントロに始まり、とてもキャッチーなメロディが展開されます。「ユシャララバマライ! (You shine a little love on my life)」の反復が心地よく耳に残り、思わず口ずさんでしまいます。華やかなシンセとストリングスが目立ちますが、低音を支えるベースもなかなか良い。続く「Confusion」もキラキラしていますね。美しいコーラスワークによって、メロディアスな歌を引き立てます。浮遊感のあるサウンドですが、ベースやティンパニ等の低音がサウンドを引き締めます。「Need Her Love」はゆったりとした楽曲です。前2曲のような華やかなシンセはなく、これまでのELOらしくストリングスがリードします。時折見せるギターが良い味を出しています。続く「The Diary Of Horace Wimp」ビートルズっぽいメロディで、どことなく「Strawberry Fields Forever」に似てます。ジェフ・リンがビートルズマニアだそうで多大な影響を受けているのでしょう。ポップで聴きやすいです。
 レコードでいうB面は「Last Train To London」で開幕。とてもファンキーなベースと、キャッチーなストリングス。サビの歌メロはどこかで聴いたことがありますが、人気曲なのでどこかで流れていたのかもしれませんね。「Midnight Blue」はゆったりとしたメロディアスな楽曲です。囁くような優しい歌声です。続く「On The Run」は本作中唯一シングルカットされなかった楽曲だそうです。…ということは他の楽曲は全てシングルカットされたという恐ろしい完成度。この楽曲もノリが良く、シングルカット出来そうなクオリティです。メロディアスな「Wishing」を挟んで、ラスト曲「Don’t Bring Me Down」は、ELOで初めてストリングスを使用しなかった楽曲だそうです。力強いドラムがリードするノリの良いロックンロールで、コーラスやシンセによってキャッチーな仕上がりです。

 ポップな楽曲揃いで取っつきやすく、そして名曲の宝庫。ELOの最高傑作候補の一つで、次作とも甲乙つけがたいです。

Discovery
Electric Light Orchestra
 
Time (タイム)

1981年 9thアルバム

 時間をテーマにしたコンセプトアルバムです。元々2枚組の構想があったようですが、レコード会社側の圧力で1枚ものとしてリリース。ストリングスは大幅に減らし、シンセサイザー中心のポップサウンドに完全シフト。商業主義に走ったと批判も強かったようです。全英1位を獲得しましたが、米国では前作ほど振るわず、人気に翳りが出始めました。

 オープニング曲「Prologue」は短いインストゥルメンタル。スペイシーなサウンドを展開し、そのまま途切れず「Twilight」が始まります。この「Twilight」を聴いてドラマ『電車男』を思い浮かべた方は世代が近いかもしれませんね。一度聴いたら忘れられないキャッチーなイントロから、ポップな歌メロが始まります。心地良い疾走感があり、またELOの武器である美しいコーラスワークを活かしていて、シンセの華やかな味付けのなかでもとても爽やかな印象です。続く「Yours Truly, 2095」はもろにテクノポップな1曲で、加工されたボーカルも相まってバグルスを想起させます。コンピュータサウンドのようなキーボードが特徴的。「Ticket To The Moon」は哀愁漂う美しい1曲で、本作では「Twilight」に次ぐ名曲だと思っています。ビートルズマニアのジェフ・リンですから、タイトルは「Ticket To Ride」を意識したのでしょうか?(たまたま?) メロディはどことなく「Yesterday」に近い気もします。コーラスワークによって哀愁のメロディを引き立てます。切ない名曲です。続く「The Way Life’s Meant To Be」はアコギが心地良い。前曲の切なさから立ち上がるかのような、少し哀愁は漂いつつも晴れやかな雰囲気で、後半に向かうにつれて力強くなっていきます。メロディラインがとても素敵。「Another Heart Breaks」はインストゥルメンタル。神秘的な雰囲気で、浮遊感が漂います。
 アルバム後半は「Rain Is Falling」で幕開け。雷鳴のSEが鳴り不気味…なのは最初だけで、メロディアスなバラードが続きます。雨音を表現したかのようなシンセはキラキラしています。続く「From The End Of The World」は生々しいドラムのバチの音と、唸るベースが輪郭をはっきりさせますが、シンセはフワフワしています。少し怪しくて神秘的な楽曲です。南国を想起させるゆったりとして陽気な雰囲気の「The Lights Go Down」を挟んで、テクノポップ全開の「Here Is The News」。チープなシンセからダンサブルなサウンドが展開されます。どことなく緊迫感の漂う1曲ですが、続く「21st Century Man」でその緊迫感を和らげます。コーラスワークが美しい。シングルカットされ大ヒットした「Hold On Tight」は、目の覚めるほどハキハキした楽曲。ピアノとシンセが主導する、陽気なロックンロールです。アルバムの締めとなる「Epilogue」は、分厚いコーラスによって荘厳な雰囲気。最後にSFチックな効果音が流れておしまい。

 コンセプトアルバムのためアルバムの流れが自然で纏まっており、またキャッチーな楽曲も多い名盤です。前作と甲乙つけがたい最高傑作候補です。

Time
Electric Light Orchestra
 
 

編集盤

All Over The World: The Very Best Of Electric Light Orchestra (ベリー・ベスト・オブ・ELO)

2005年

 ELOはいくつもベスト盤が出ていますが、たまたま手に取ったのがこれでした。名盤『アウト・オブ・ザ・ブルー』と見間違う紛らわしいジャケットに間違えたとか、そんなまさか…笑 ELOはシングルヒットが多く、全曲がジェフ・リンによる作曲のポップな作風で一貫しており、ベスト盤でもそれほど違和感なく入れるのが嬉しいところです。
 全20曲、CD1枚ものです。日本盤ではドラマ『電車男』のテーマとなった「Twilight」が追加されていますが、収録時間の関係で元々入っていた「West Wild Hero」が外されています。この2曲だったら断然「Twilight」の方がよいので、個人的には日本盤がオススメです。

 本項では日本盤をレビューします。
 オープニングを飾る「Twilight」はシンセサイザー全開で華やか。コーラスに彩られたキャッチーなメロディです。個人的にはELOで1、2を争う名曲だと思っています。続く2曲目「Mr. Blue Sky」は海外盤のオープニング曲。ELOの代表曲で、ビートルズのようなポップセンスを感じます。ノリの良いドラムのリズムが心地良い。ストリングスが目立ちますが、ストリングス専門メンバーがいるという文字通りオーケストラなバンドでした。「Evil Woman」を挟んだ後は、「Don’t Bring Me Down」から「Confusion」までしばらく名盤『アウト・オブ・ザ・ブルー』と『ディスカバリー』からの選曲が続きます。本作全体でもこの2枚の名盤からそれぞれ4曲ずつ(日本盤だと『アウト・オブ・ザ・ブルー』からは3曲)がピックアップされているので、本作の後はこれらオリジナルアルバムへ進むと良いでしょう。その中では「Shine A Little Love」「Turn To Stone」が突出した名曲だと思います。『タイム』からは軽快なロックンロール「Hold On Tight」が採用。続いてストリングスが主導する「Livin’ Thing」「Telephone Line」は『オーロラの救世主』からの選曲。本ベストのタイトルに選ばれた「All Over The World」は『ザナドゥ』より採用された、陽気な雰囲気の1曲です。その後も1970年代から1980年代前半の楽曲が並びますが、「Alright」だけは唯一2001年発表の『ズーム』からの採用。

 ポップな楽曲に溢れた作品で、ELO入門盤にも適した作品です。

ベリー・ベスト・オブ・ELO
Electric Light Orchestra
 
 
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