🇺🇸 Iggy Pop (イギー・ポップ)
レビュー作品数: 2
スタジオ盤
1977年 1stアルバム
「パンクのゴッドファーザー」の異名を持つ米国ミシガン州出身のアーティスト、イギー・ポップ。本名はジェームズ・ニューエル・オスターバーグ・ジュニア。1947年4月21日生まれ。ガレージロックバンド、ストゥージズのフロントマンとして活躍しました。メンバーのヘロイン中毒によりストゥージズは解散。イギー自身もヘロイン中毒に侵されていましたが、友人であるデヴィッド・ボウイが救いの手を差し伸べ、イギーは再起を図ります。
本作はイギーのソロ第1弾。デヴィッド・ボウイのプロデュース作で、作曲面でも大きく貢献しています。ストゥージズでは咆哮というか叫び散らす歌い方でしたが、ソロでは地の低音を活かして渋く歌います。デヴィッド・ボウイが作曲を手伝っているからか、イギーの地声が似ているからか、デヴィッド・ボウイ色を強く感じさせる楽曲群が並びます。
オープニングを飾る「Sister Midnight」では少し音の悪さもあるものの、ストゥージズ時代のように叫ばずに、低音でしっかり歌うイギーの姿が見られます。またベースの自己主張も強く、聴きどころでもあります。続く「Nightclubbing」はひたすら淡々としていますが、間奏では歪んだギターが不協和音的な感じで耳に残ります。アップテンポの「Funtime」は、徐々に楽曲が盛り上がるのに、抑揚のない歌が不気味さを感じます。そして本作のハイライトは「China Girl」。後にデヴィッド・ボウイ自身もセルフカバーしてヒットする楽曲です。イントロに少しだけ異国の香りを与えているのはトイピアノ。ビブラフォンじゃないのね。タイトルに「China」と冠しているものの、音楽的にはそこまで東洋的な要素はなくて、純粋にメロディアスな1曲として楽しめます。また、メロディアスなサックスが美しい「Tiny Girls」も聴き心地が良いですね。ラスト曲「Mass Production」はゆったりとしたテンポでひたすら同じメロディの反復。その上をシンセサイザーやギター等の楽器が歪みに歪んでぐにゃぐにゃとしたサウンドを奏でます。歌よりもサウンドにインパクトがあります。
次作に比べると暗い印象がありますが、「China Girl」など名曲もあり、なかなかに良作です。
ちなみに本作とデヴィッド・ボウイの『ヒーローズ』。ジャケット写真のポーズが似ていますが、どちらもドイツの画家エーリッヒ・ヘッケルの『Roquiarol』という作品からインスパイアされたのだそうです。
1977年 2ndアルバム
ジャケットにはニッコリ笑うイギー・ポップ。笑顔が表しているように、前作に比べると明るくて聴きやすいです。ヘロイン中毒に陥っていた苦難の時代から一歩抜け出せたのでしょうか。
本作も前作に引き続きデヴィッド・ボウイのプロデュース。なおイギーもデヴィッド・ボウイの『ステイション・トゥ・ステイション』ツアーに同行したり、『ロウ』にバッキングボーカルとして参加したりと相互に協力し合える友人関係を築き上げていました。
オープニングを飾る表題曲「Lust For Life」。ラフなサウンドに仕上がっているものの、とてもノリの良いイントロから気分を明るくさせてくれます。イギーの歌もキャッチーで聴きやすく、タイトルの連呼は妙に耳に残ります。荒っぽいサウンドがガレージロック風な「Sixteen」を挟んで、これまたノリの良い「Some Weird Son」。緊迫感がありヘヴィなサウンド。間奏のギターソロもまた荒っぽいのですが、メロディがキャッチーなので緊迫感のわりに聴き心地が良いです。ギターの刻むメロディが独特で印象に残る「The Passenger」は、サポートとした参加したリッキー・ガーディナー(Gt)の作。そしてデヴィッド・ボウイ自身もセルフカバーした「Tonight」。コーラスによって豪華なオープニングから流れ込むように、メロディアスな楽曲が始まります。これも耳に残る名曲です。
アルバムは後半に入り、「Success」では賑やかなコーラスが印象的です。続いてムーディな演奏をバックに激しい歌を展開する「Turn Blue」は、感情が表に出すぎていてメロディについていけていない感じがしますが、佳曲だと思います。少しシリアスさを加えたスピード感のある「Neighborhood Threat」、そしてラスト曲「Fall In Love With Me」ではシンプルながらパワフルなドラムが惹きつけます。
名曲が多く、とても聴きやすい本作。ストゥージズ時代よりも取っつきやすく、イギー・ポップ入門におすすめです。
関連アーティスト
フロントマンとして活躍。1974年に解散。
友人であり、『イディオット』と『ラスト・フォー・ライフ』のプロデュースを担当。
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