🇬🇧 Iron Maiden (アイアン・メイデン)

ライブ盤

Live After Death (死霊復活)

1985年

 『パワースレイヴ』のツアーを収録したアイアン・メイデン初のライブ盤。初のライブ盤ということもあってか、評論本やレビューサイト等では本作が取り上げられることが多いものの、正直後年のライブの方が断然出来がよいと思っています。当時のベストとも呼べる選曲で演奏も優れていますが、音質の悪さが足を引っ張ります。全般的にギター高音とシンバルの破裂音がキンキンとして耳によろしくないですね(聴き進めていけば、さほど気にならなくなりますが)。またブルースの歌声も楽曲によっては少し調子が悪い印象。
 なおCDのディスク1(レコードのA~C面)が米国カリフォルニア公演、ディスク2(レコードD面)が英国ロンドン公演だそうです。公演で分けたのか、CDの分け目がどうにもバランスが悪いです。でも「Running Free」で一旦ライブが終わり「Wrathchild」で始まっているような感じなので、そういう意味では正しい切れ目で分けたのかな…。
 本作のラインナップはブルース・ディッキンソン(Vo)、スティーヴ・ハリス(B)、デイヴ・マーレイ(Gt)、エイドリアン・スミス(Gt)、ニコ・マクブレイン(Dr)。
 
 
 第二次大戦時の英国首相ウィンストン・チャーチル、彼の演説「Intro: Churchill’s Speech」と、そのまま流れ込むように続く「Aces High」の2曲でライブは開幕します。このオープニングが非常にスリリングで、この流れは『フライト666』にも受け継がれていますね。スティーヴのバキバキと唸るベースを中心に、疾走感に溢れる名曲です…が、ブルースの歌は高音が少し苦しそうな感じ。続く楽曲が「2 minutes To Midnight」で『パワースレイヴ』を踏襲した流れにワクワクさせられます。ザクザクと鋭利なギターが刻んできますが、キャッチーでノリの良い名曲ですね。そして名曲「The Trooper」。やや走り気味の演奏は、オリジナルを遙かに上回るスリルを生み出しています。エイドリアンとデイヴのツインギターの絡みも良いですね。ライブバンド、アイアン・メイデン。特にこの楽曲はライブで本領を発揮する気がします。「Revelations」は鈍重な感じがあるものの、それ故に途中の加速パートがスリリングで、重厚な装甲車や戦車が爆走するかのよう。「Flight Of Icarus」も重厚な演奏。でもメロディアスな歌は聴きやすいですね。そして、当時のメイデン最長曲「Rime Of The Ancient Mariner」。スリリングで疾走感のある序盤と、ゆったりとしつつも不穏な空気を纏った中盤、そして再び緊張感を高める終盤。緩急つけた構成力の高さで、13分という長さを感じさせず一気に聴かせます。続く「Powerslave」はオリエンタルの怪しげなメロディと鋭利なリフがカッコ良いですね。エイドリアンのギターソロも聴きごたえがあります。「The Number Of The Beast」ではブルースの高音が出ていないものの、切れ味抜群の演奏はスリリングで、疾走感に溢れるアツい演奏を繰り広げます。そして名曲「Hallowed Be Thy Name」。シリアスな序盤から疾走パートへ変わり、まくし立てるかのような演奏と歌でとてもスリリングです。また間奏ではブルースが会場を煽って歓声が沸き立ちますが、ライブ盤ならではの醍醐味で、聴いていて楽しくなりますね。そしてバンド名を冠した名曲「Iron Maiden」は勢いに満ち溢れています。ややラフな感じですが、スピード感が気持ち良いですね。続く「Run To The Hills」も疾走感が爽快。リズム隊が煽り立てるような印象です。そしてオリジナルよりも速い「Running Free」は、ニコのドラムがノリノリの気持ち良いリズムを生み出します。中盤はリズム隊だけが鳴り響く中、ブルースが観客と掛け合いをして遊んでいます。一体感があって、とても楽しそうです。

 CDだとここからディスク2枚目(レコードだとD面=2枚目後半)。「Wrathchild」はスティーヴのメタリックなベースが強烈ですね。攻撃的なシャウトにポール時代の名残を感じさせます。「22 Acacia Avenue」はザクザクとカミソリのように鋭利なギターがスリリング。そしてマシンガンのようなドラムで圧倒したり、少し複雑な構成で楽しませてくれます。ブルージーな「Children Of The Damned」はオリジナルよりテンポが速くてスリリングです。また、ブルースのハイトーンボイスはこの楽曲では絶好調。続く「Die With Your Boots On」も疾走しまくりで爽快です。そして最後に「Phantom Of The Opera」。近年のライブ盤では聞けない名曲なので、本ライブ盤での聴きどころでしょう。3連符を駆使した緊迫感のあるサウンドに、攻撃的だけどハモリとかメロディアスな歌唱。リズムチェンジを交えてやや複雑な楽曲構成ですが、緩急つけてスリリングで、楽しませてくれます。
 
 
 内容はとても良いですが、音質の悪さが少し気になります。初ライブ盤ということで記念としては良いかもしれませんが、近年のライブ盤に優れた作品が多いため、個人的には本作は後回しで良いと思っています。

Live After Death
Iron Maiden
 
Rock In Rio (ライヴ・アット・ロック・イン・リオ)

2002年

 脱退したブルース・ディッキンソンが復帰してリリースした『ブレイヴ・ニュー・ワールド』。この作品のツアーを収録したのが本ライブ盤となります。ラインナップは前述のブルース・ディッキンソン(Vo)と、スティーヴ・ハリス(B)、デイヴ・マーレイ(Gt)、エイドリアン・スミス(Gt)、ヤニック・ガーズ(Gt)、ニコ・マクブレイン(Dr)。元々ライブバンドとして高い実力を持っていましたが、本作で完成したトリプルギター編成によって、老いるどころか更に磨きが掛かっていきます。むしろ、ライブに関しては本作から全盛期が始まったといっても過言ではないくらい、脂の乗ったライブ盤を次々とリリースすることになります。またブラジルのファンによるとてもアツい歓声も、本ライブをより楽しいものにしてくれています。観客動員数は約25万人だとか。凄まじい!
 
 
 ディスク1枚目の「Intro (Arthur’s Farewell)」から大歓声で、「The Wicker Man」で楽曲が始まると会場のテンションが既に最高潮です。ギターやベースがゴリゴリと刻み、ドラムもとてもパワフル。ブルースはガラ声ですが高音はしっかり出ており、またサビでは会場の大合唱がはっきり聞こえるので鳥肌が立ちます。とてもカッコ良い。続く「Ghost Of The Navigator」は憂いのあるイントロ部分から手拍子と大合唱が。ブラジルのファンは本当アツいですね。哀愁と緊迫感を放つこの楽曲はシリアスな雰囲気で、かつリズムチェンジを多用しておりとてもスリリングです。「Brave New World」はゆっくりしたパートと加速パートを交互に展開しながら、メロディアスな歌を披露します。続いて「Wrathchild」はダーティな雰囲気。ブルースは吐き捨てるかのような攻撃的な口調で、サビ部分は会場も一緒にシャウトしています。そして名曲「2 minutes To Midnight」では切れ味の鋭い、それでいて爽快な演奏を繰り広げます。そしてキャッチーな歌メロは会場も一体となって歌いますが、これがとてもアツいです。そして手拍子に導かれて始まる「Blood Brothers」は、憂いのあるメロディをじっくりと聴かせますが、サビは合唱もありアツい。静と動の対比が鮮やかです。またエモーショナルなギターが染み入りますね。11分近い大曲「Sign Of The Cross」はブルース不在時のブレイズ・ベイリー時代の楽曲。でも本ライブでのブルースの歌声の方が正直しっくりきます。重厚でシリアスな楽曲で、終盤はリズムチェンジの嵐。迫力があります。加速とやや減速を織り交ぜた疾走感に溢れる「The Mercenary」を挟んで、最高の名曲「The Trooper」。ブルースの声より大きいんじゃないかという会場の大合唱に、人気っぷりが見て取れます。疾走しまくりの爽快な楽曲でディスク1枚目が終了。

 ディスク2枚目は10分近い「Dream Of Mirrors」で開幕。シリアスだけどメロディアスな楽曲でじっくりと聴かせますが、終盤に突如急加速。バスドラムが強烈に響く疾走曲に変貌します。続く「The Clansman」も9分長の大曲で、これはブレイズ時代の楽曲。序盤は湿っぽく哀愁が漂いますが、突如力強い楽曲に変わります。ギターソロや大合唱パート等も良いですね。「The Evil That Men Do」はメロディアスなイントロから一気に加速して駆け抜けていきます。哀愁を伴う疾走曲ですが、メロディはキャッチーさもあって聴きやすいです。そして超名曲「Fear Of The Dark」はまるでサッカー観戦のような、観客が一体となった大合唱がとにかく凄い。歌のないパートは「オオオオー オオオオー」、もちろん歌メロパートはブルースと一緒に歌うので、会場の一体感に鳥肌が立ちます。そして欠かせない定番曲「Iron Maiden」。ガラ声でドスの利いた歌声が響きます。中盤のちょっとした音響の乱れ(?)を除けば、勢いに満ち溢れていて楽しい楽曲です。一旦ここでライブが終了し、大歓声とともに会場のメイデンコールが始まります。
 そしてアンコールで「The Number Of The Beast」。序盤は少しテンポ遅めの演奏で、ブルースのハイトーンシャウトを迎えます。その後はメタリックで荒々しい演奏がスリリングですね。続いて手拍子に迎えられて「Hallowed Be Thy Name」。荘厳で緊迫感に満ちた楽曲ですが、ただ聴かせるだけでなく、間奏での合唱や歓声など観客側との一体感も楽しいですね。そしてラストのどこまでも伸びるブルースの歌声が圧巻です。パンキッシュな「Sanctuary」は、途中で会場を「Left! Right!」と煽って、観客も歓声で答えます。最後に「Run To The Hills」。ニコのリズミカルなドラムに合わせて手拍子で気分が高揚します。そしてサビではブルースが歌うのに合わせて、メンバーと会場の大合唱。これがとても感動的なんです。最後の最後に泣かせてくれます。
 
 
 2枚組116分の大ボリューム。演奏の質、ブルースの声の調子が良いだけでなく、ブラジルのファンのアツい歓声が臨場感を生む、素晴らしいライブ盤です。アイアン・メイデンは優れたライブ盤が多くハズレがないので、本作から手に取っても良いかもしれません。

Rock In Rio
Iron Maiden
 
Flight 666 (フライト666)

2009年

 2008年のライブツアーを収めたドキュメンタリー映画のサウンドトラックが本作です(実質ライブ盤です)。ワールドツアーの各地の模様を収録しているので、繋がった1つのライブではなく単曲の寄せ集めになっている点が唯一のデメリットですが、それでもほぼ違和感なく聴き通せます。更に選曲はベストとも言える内容です。また、超名曲「The Trooper」は幕張メッセ公演というのが嬉しいですね。ラインナップはスティーヴ・ハリス(B)、ブルース・ディッキンソン(Vo)、デイヴ・マーレイ(Gt)、エイドリアン・スミス(Gt)、ヤニック・ガーズ(Gt)、ニコ・マクブレイン(Dr)。トリプルギターによる分厚いサウンドで、往年の名曲がスリリングに演じられます。
 なおジャケット写真に写った「エド・フォース・ワン」と呼ばれるジェット機を操るのはブルース。彼はボーカリストであるだけでなくパイロットでもあり、このチャーター機に機材やスタッフを乗せて各地を飛び回っています。13ヶ国、距離にして7万km。凄いエネルギッシュですね。
 
 
 ディスク1枚目は、インドのムンバイ公演より「Churchill’s Speech」「Aces High」で開幕。『死霊復活』の流れを汲む名オープニングですね。大歓声で迎え入れられて始まるスリリングなイントロからアツくなります。ブルースの声も良く出ていますね。音質も良く、パワフルで迫力の演奏がくっきりと聴けます。続いて豪州メルボルン公演「2 minutes To Midnight」。バキバキ唸るスティーヴのベースをはじめとしたノリの良い演奏と、ブルースのキャッチーな歌と会場への煽りで、一緒に口ずさみたくなりますね。シドニー公演の「Revelations」は会場のコールはノリノリで、聴かせる部分と煽る部分がはっきりしていますね。やや鈍重な感じの曲調ですが、疾走する間奏がスリリングです。そして幕張メッセでの「The Trooper」。トリプルギターの細かく刻むイントロ、バタバタと煽るドラムとメタリックなベースによる強靭なリズム隊、そしてブルースに煽られ会場の大合唱。最高の楽曲ですね。ブルースとエイドリアンのデュエットが聴ける「Wasted Years」はメキシコのモンテレイ公演より。続いて米国ロサンゼルス公演の「The Number Of The Beast」。超ハイトーン部分は流石に届いていないものの、ブルースの声の調子は良いし、メタリックで疾走感に溢れる演奏は迫力満点です。メキシコシティでの「Can I Play With Madness」はドライブ感のある1曲。リズムチェンジを多用しつつも、シンセの活用やキャッチーなメロディで聴きやすいですね。そしてアイアン・メイデン屈指の大曲「Rime Of The Ancient Mariner」は米国ニュージャージー公演より。ズッズズ ズッズズ…と重厚ながら力強く進むかのような序盤、そしてリズムチェンジし3連符中心に。緊迫感を高めた後に訪れる怪しげな静寂、そして再び高まる緊張。終盤にもトリッキーなリズムを挟んできます。14分弱という長さを感じさせない構成力と、高い演奏力による再現。素晴らしいですね。

 近年は中南米で高い人気を誇るアイアン・メイデン。違法DLや海賊盤の多かった中南米への対策としてこの地域で重点的にライブを行った結果、数多くの新規ファンを獲得したのだとか。ディスク2枚目はそんな中南米公演が中心です。まずはコスタリカ・サンホセでの「Powerslave」で開幕。オリエンタルな雰囲気を纏ったスリリングなイントロから魅了されます。歌も怪しげな雰囲気ですがキャッチーで、更に会場のコールで盛り上げるのでゾクゾクします。続いてブラジル・サンパウロでの「Heaven Can Wait」。疾走感が素晴らしいですね。「オオオー オオオオオーオ」のコーラスが印象的です。人気曲「Run To The Hills」はコロンビア・ボゴタ公演より。ドライブ感のある楽曲に、サビでは会場の大合唱。やはりライブならではの楽しみですね。そして超名曲「Fear Of The Dark」はアルゼンチンのブエノスアイレス公演。歌詞のないイントロ部分から既に会場の大合唱で、とにかく盛り上がり方が凄くて鳥肌が立ちます。緩急ついた楽曲構成も相変わらずスリリングですね。そしてチリ・サンティアゴ公演より定番曲「Iron Maiden」。ブルースは少し枯れ声ですが、それでも高音がよく出ること。勢いのある演奏も合わせて楽しませてくれます。メンバー紹介から始まる「Moonchild」はプエルトリコのサンフアン公演より。アコギで静かに始まり、エレキギターに変わって盛り上がるさまは鳥肌ものです。ギターはヘヴィながらも浮遊感がありますね。続いてブラジル・クリチバでの「The Clairvoyant」はメタリックなベースソロから始まります。スティーヴのベースは相変わらず存在感抜群ですね。本編はギターオーケストレーションが美しい1曲です。最後はカナダ・トロント公演の「Hallowed Be Thy Name」。荘厳なイントロに引き締まりますね。そしてどんどんスリリングになっていく演奏、ブルースの煽りに盛り上がる歓声。ライブのラストも素晴らしい名曲でカッコ良く締め括ります。
 
 
 ブルースお得意の煽り文句「Scream for me, ○○(地名)! (俺に向かって叫べ!)」で色々な地名が出てくるので、そこで様々な公演のベストテイクを揃えたものだと気づくものの、まるで一つのライブのようにほぼ違和感なく聴き通せます。そして本作はアイアン・メイデンのベスト選曲なので、入門にも向いているかもしれませんね。素晴らしい名盤です。

Flight 666
Iron Maiden
 
En Vivo! (エン・ヴィーヴォ!~ファイナル・フロンティア・ライヴ)

2012年

 アイアン・メイデンは数多くのライブ盤をリリースしており、名ライブ盤も多いです。正直言えばスタジオ盤より近年のライブ盤の方がクオリティが高く、その中でも個人的にアイアン・メイデンの最高傑作だと思っている作品がこの『エン・ヴィーヴォ!~ファイナル・フロンティア・ライヴ』です。スティーヴ・ハリス(B)、ブルース・ディッキンソン(Vo)、ニコ・マクブレイン(Dr)に加え、デイヴ・マーレイ(Gt)、エイドリアン・スミス(Gt)、ヤニック・ガーズ(Gt)のトリプルギター編成という『ブレイヴ・ニュー・ワールド』から続く最強の布陣です。
 近年のスタジオ盤ではかなりの好盤『ファイナル・フロンティア』。この作品に伴うライブツアーから、チリのサンティアゴ公演を収録したものが本ライブ盤になります。実はこのツアーで来日予定があって、私もチケットを取っていたのですが、ライブの2日前に東日本大震災が起こってしまい公演は中止に。しかしライブは中止となったものの、日本の復興を祈るメンバーのコメントには励まされたものです。そして5年後には来日を果たしてくれました(残念ながら私は参戦できなかったですが)。
 
 
 本作は2枚組で、ディスク1枚目のオープニングは「Satellite 15」。始まる前から会場の熱気が凄いです。緊迫感のあるイントロで、ドラムが強烈。ブルースの歌が始まると会場のコールも盛り上がります。そしてパワフルな「The Final Frontier」に繋ぎます。サウンドはヘヴィだけれどもノリは良く、更に会場が合唱するくらいのキャッチーなメロディも兼ね備えています。そのまま流れ込むように「El Dorado」へ。スティーヴのバッキバキのメタリックなベースがとにかく強烈です。凄まじい緊張感を保ちながら、ぐんぐんと進むような勢いに満ちています。ここまで『ファイナル・フロンティア』からの選曲でしたが、続いて定番曲「2 minutes To Midnight」。アップテンポで爽快な名曲で、サビメロの大合唱も含めてライブの醍醐味を味わえます。そして序盤は静かで神秘的な「The Talisman」で、会場の熱狂を一旦鎮めます。でも中盤からは激しい楽曲に変貌。凄まじい緊張感で「聴いてひれ伏せ!」とでも言うかのような迫力があります。続く「Coming Home」はヘヴィなバラード。哀愁漂うメロディを、重厚なサウンドで彩ります。「Dance Of The Death」は9分に渡る大曲で、近年の楽曲ではトップクラスのクオリティです。高い構成力を見せつける1曲で、序盤はスローテンポでじっくり聴かせますが、中盤からは強烈な印象に残るリフの嵐。鳥肌が立ちます。そして始まるアイアン・メイデン屈指の超名曲「The Trooper」。イントロからゾクゾクしっぱなしです。硬質なベースがバキバキ唸りを上げ、勢いのあるドラムと、分厚いトリプルギター。シンプルながらキャッチーな歌メロも合わせて一気に駆け抜けます。「The Wicker Man」も疾走感に満ち溢れた1曲。サビでスピードを落としますが、キャッチーな歌メロにスポットライトを当てるかのようです。そしてサビが終わるとまた駆け抜けていく。ここでディスク1枚目が終了します。

 ディスク2枚目は「Blood Brothers」で開幕。不気味なワルツを刻みながら、どんどん力強くなっていきます。迫力に圧倒されます。続く「When The Wild Wind Blows」は哀愁が漂い、聴き浸ってしまいます。中盤に入ると雰囲気が変わり、また終盤はバキバキしたベースに魅せられます。そして次曲からは定番曲のオンパレードで、ライブ終盤に向けて盛り上がりを見せます。まずは「The Evil Man That Men Do」でタッタカタッタカと、アイアン・メイデンの十八番となるギャロップ奏法で、重厚ながらも軽快に駆け抜けます。メタリックなベースは心底カッコ良い。超名曲「Fear Of The Dark」ではイントロから既に会場の大合唱。ダウナーなサウンドなのに盛り上がり方が半端じゃないです。ブルースの、会場を煽りながらのダークな歌もカッコ良い。そして序盤を終えてヘヴィな疾走サウンドに変貌するとスリル倍増。リズムチェンジの多様もあって、この素晴らしい名曲はいつ聴いても痺れます。そしてバンド名を冠した「Iron Maiden」。ブルースが会場を煽り、トリプルギターが絡み合って始まる…これも素晴らしい名曲ですね。流石に終盤だからか疲れも見えるものの、楽曲自体のパワーで牽引します。続いて「The Number Of The Beast」。流石の人気曲で、序盤の語り部分すら観客が口ずさんでいるのが聞こえるんですよね。メタリックなベースと歌が始まり、楽曲の緊張感もどんどん高まる。そしてブルースのハイトーンボイスが会場に響く!ここからは疾走曲で駆け抜けます。実に素晴らしい。「Hallowed Be Thy Name」では鐘の音が鳴り響きます。そして激しい楽曲に変貌すると終始スリリングな展開に。間奏パートでも会場を煽っているのか、時折歓声が沸き上がります。最後を飾るのは「Running Free」。力強いドラムとバキバキのベースがノリの良いリズムを生み出します。リズミカルなサウンドに乗るキャッチーな歌を会場と掛け合う展開も良い。また、歌の合間にメンバー紹介も行っています。
 
 
 2枚組108分の大ボリュームですが全く飽きの来ない構成で、最後までダレずに駆け抜けます。会場が白熱していて臨場感に溢れているので、時間さえあれば一気に通しで聴ける作品です。最強のライブバンド、アイアン・メイデン。この1作でもその凄さを体感できます。

En Vivo!
Iron Maiden
 
Maiden England '88 (メイデン・イングランド '88)

2013年

 元々1994年のライブ盤『メイデン・イングランド』を、改題して再発。更に楽曲をいくつか追加したものが本作『メイデン・イングランド ’88』だそうです。『第七の予言』のライブツアーの模様を収録し、1988年のイングランドのバーミンガム公演が収められています。2枚組作品で、トータル100分のボリュームです。本ライブのラインナップはスティーヴ・ハリス(B)、ブルース・ディッキンソン(Vo)、デイヴ・マーレイ(Gt)、エイドリアン・スミス(Gt)、ニコ・マクブレイン(Dr)。マイケル・ケニー(Key)がサポートとして参加しています。
 ジャケットに描かれたエディがカッコ良くて、アイアン・メイデンのジャケットアートでも屈指の出来だと個人的には思います(全般ダサいというご意見があったとしても、それもごもっともだと思います)。
 
 
 ディスク1枚目は「Moonchild」で開幕。壮大な序盤から突如テンポアップして疾走曲に変貌します。スティーヴの硬質なベースは1曲目から絶好調でバッキバキ鳴っていますね。ギターのハーモニーも美しい。そして終わるとメイデンコールが鳴り響き、そこにシンセとギターによる重厚なイントロの「The Evil That Men Do」が始まります。主張の強いベースはバキバキいってて笑ってしまうほど。ブルースの歌に合わせて会場も合唱していて、臨場感に溢れています。ギターソロも良い感じ。「The Prisoner」はヘヴィなリフですが、リフの合間に歓声が沸き立ちます。テンポアップしてくるとノリが良く爽快です。少し地味な「Still Life」を挟んで、疾走感のある「Die With Your Boots On」は、ひたすら連呼される「If you’re gonna die」が強烈に耳に残ります。コーラスも含めてなんか楽しそうですね。ミドルテンポの「Infinite Dreams」は、重厚なサウンドにどこか哀愁漂うメロディ。リズムチェンジを交えた複雑な構成も聴きごたえがあります。「Killers」はポール・ディアノ時代からの珍しい選曲。変速を交えた複雑な楽曲構成で、ギャロップ奏法で駆け抜けるようなサウンドに乗せて、ポールより格段上の表現力を持つブルースが激しい歌を披露します。続く「Can I Play With Madness」はアカペラで始まり、キャッチーな歌メロを展開。でも疲れているのか歌は少し不安定です。演奏は好調で、プログレばりに複雑な演奏を難なくこなします。「Heaven Can Wait」も複雑な楽曲です。序盤はキャッチーでポップな感じで、中盤は「オオオ~」というコーラスが印象に残ります。また、エイドリアンのギターソロが素晴らしくて聴き入ってしまいます。「Wasted Years」もキャッチーなサビメロが特徴的。メロディアスな楽曲を並べてライブは後半へ。

 ディスク2枚目、ライブ後半は「The Clairvoyant」で始まります。金属質なベースとドラムのコンビが力強く支え、ツインギターが歌うようにメロディを奏でます。ブルースのキャッチーな歌メロも良いですが、楽曲構成は複雑でスリリングです。そして個人的に本作のハイライトとなる「Seventh Son Of A Seventh Son」。この楽曲大好きなのですが、他のライブ盤では聴けないので、本作を手に取る理由はこの1曲の存在が大きいです。10分に渡る壮大な大作で、テクニカルで複雑な展開にワクワクします。歌は観客へ振っているのか疲れているのか、少し手抜きのように感じる部分もあるものの、そんなのは些細なことと言わんばかりに、凄まじい緊張感に満ちた演奏に圧倒されます。中盤は静かながらもゾクゾクするほど緊張が張り詰め、7分半あたりから一気に畳み掛けてきます。ただただ凄い…。そしてここからはライブ定番曲のオンパレードで締めにかかります。まずは「The Number Of The Beast」をぶちかまします。ブルースの歌は少し苦しそうですが、演奏はド迫力。続く「Hallowed Be Thy Name」は序盤パートが手拍子で盛り上がっています。テンポアップしてからの展開は流石で、勢いでごり押ししてきます。終盤の間奏パートでは観客を煽っているのか、歓声が沸き立ちます。そしてラスト曲はバンドのテーマ曲たる「Iron Maiden」。疲れでやや荒っぽいですが、楽曲そのものの魅力で十分カバーしています。
 ここからはアンコール。休憩が取れたのか、エネルギーを取り戻して「Run To The Hills」。ギャロップ奏法で爽快なリズムを生み出します。勢いづいたところで「Running Free」へ。リズム隊がしっかりとした土台を作り、ノリの良いリズムに乗せて観客と掛け合うなどのアドリブを加える、フリーダムで楽しい1曲です。最後に「Sanctuary」。声域の狭いポール時代の楽曲なので、声域の広すぎるブルースは疲れていても余裕そうです。演奏も最後まで迫力があります。
 
 
 個人的に大好きな『第七の予言』からの選曲が多くてお気に入りのライブ盤です。不満と言えば、定番曲の「The Trooper」がセットリストに入っていないことくらい。笑 スティーヴ・ハリスのベースが特に強調されていて凄まじい迫力なので、ベース好きな人にもオススメできます。

Maiden England ’88
Iron Maiden
 
 

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 ブルース・ディッキンソン(Vo)のソロ活動。

 
 
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