🇺🇸 Jimi Hendrix (ジミ・ヘンドリックス)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

Are You Experienced? (アー・ユー・エクスペリエンスト?)

1967年 1stアルバム ※The Jimi Hendrix Experience (ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス) 名義

 日本ではジミヘンの愛称で知られるジミ・ヘンドリックス。本名ジェームズ・マーシャル・ヘンドリックス、1942年11月27日生まれ、1970年9月18日没(享年27歳)。米国ワシントン州シアトルの出身。史上最高のロックギタリストとして称えられた彼は、右利き用のギターを左向きに抱えたり、ギターを歯で弾いたり破壊したりと、数多くの伝説を残しています。
 英国に渡り、ノエル・レディング(B)、ミッチ・ミッチェル(Dr)をメンバーに加えて自身のバンド、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスを結成。3枚のオリジナルアルバムをリリースして、1969年に解散。その後バンド・オブ・ジプシーズを結成も翌1970年初頭に解散。その後同年9月に、酒と睡眠薬の摂取が原因で吐瀉物により窒息死したと言われています。
 彼の死後も残された音源を纏めた新作オリジナルアルバムが出たり、権利関係が複雑なジミ・ヘンドリックス。本作もややこしくて、まずオリジナルは英国で録音され英国でリリース。そこには最強の名曲「Purple Haze」や、「Hey Joe」等の既発シングルは含まれていません。追って米国でもリリースされ、それはジャケットも収録曲も異なります(米国盤には「Purple Haze」等が収録)。CD化に際して、両者に足りてない楽曲とその他の楽曲がボーナストラックとしてそれぞれ追加され、曲順は違うもののようやく同じ楽曲が並びました。…そんな経緯を持つ本作ですが、私が持っている音源が英国オリジナル盤にボーナストラックを加えたCD音源なので、これをレビューします。プロデューサーはチャス・チャンドラー。

 英国オリジナル盤の1曲目は「Foxy Lady」。シンプルなのに印象に残るヘヴィなギターリフ。しかしジミはギタリストとしての才能だけでなく、色気のあるボーカルもとても魅力的なのです。音はスカスカですが強烈なインパクトを与える本楽曲は、後のハードロックにも大きく影響を与えたことでしょう。続く「Manic Depression」はミッチの強烈なドラムプレイが聴けます。ギターリフもシンプルですが印象的。続く「Red House」はブルージーな1曲。ノエルのベースが渋く響きます。ノリの良いロック曲「Can You See Me」を挟んで、「Love Or Confusion」は歪んだサイケデリックなギターによって、グワングワンと揺さぶり、不思議な浮遊感を生み出しています。「I Don’t Live Today」はノイジーな楽器がスリリングな演奏を繰り広げます。サイケからハードロックへの移行期といった感じです。
 レコードでいうB面は「May This Be Love」で開幕。渋くてブルージーなサウンドに乗せ、ジミの歌は優しいです。そして名曲「Fire」。レッド・ホット・チリ・ペッパーズもカバーした楽曲です。ドタバタとせわしないドラムに縦横無尽に動き回るベース、そしてギターソロもご機嫌。歌メロもキャッチーで聴きやすいです。「Third Stone From The Sun」はジャジーで渋カッコ良いリズム隊に乗せ、加工された声がSEのように使われるインストゥルメンタル。実験的なギターは、宇宙遊泳しているかのような不思議な浮遊感を作り出します。7分近くあり、サウンドも含めて後のプログレッシヴロックに影響を与えたであろう作風です。一転して「Remember」は歌メロが主体の楽曲です。どこかまったりとした感があります。オリジナルのラスト曲「Are You Experienced?」はテープの逆回転を用いているそうで、独特のノイズや違和感のあるサウンドが特徴的です。

 以降はCD化に際して追加されたボーナストラックです。「Hey Joe」はジミのデビューシングル。ブルージーな演奏もさることながら、渋い歌声がとても魅力的な1曲です。「Stone Free」はノリの良い1曲で、ファンキーな雰囲気。激しいギターソロを聴くことができます。そしてジミ・ヘンドリックス最強の超名曲「Purple Haze」。ギターソロは非常にシンプルなのに恐ろしくカッコ良くて、イントロの最初の一音からゾクッとします。ハードロックが存在しなかった時代にハードロックの基礎を作った偉大な楽曲です。唸るベースや、ドタバタ激しいドラムも良いですね。渋くも疾走感が爽やかな「51st Anniversary」を挟んで、ゆったりとしてブルージーな「The Wind Cries Mary」。ギターが渋くてカッコ良いです。最後は「Highway Chile」でノリの良いロックンロールを奏でて終わり。

 正直サウンドの古臭さは否めませんが、心に強烈に訴えかける楽曲がいくつかあります。また実験的なアプローチは後のロック界に多大な影響を与えたであろうことは間違いありません。アイディアの宝庫で、一度は聴いておきたい作品です。特に「Purple Haze」は必聴です。

Are You Experienced?
The Jimi Hendrix Experience
 
Axis: Bold As Love (アクシス: ボールド・アズ・ラヴ)

1967年 2ndアルバム ※The Jimi Hendrix Experience (ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス) 名義

 前作から僅か半年でリリースされた、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの2ndアルバム。実験的な色合いが強い作品です。飛び抜けた1曲には欠くものの、バラエティ豊かな楽曲で楽しませてくれます。

 実験的なインストゥルメンタル「EXP」で幕開け。会話からノイズに変わり、ノイズがヘッドフォンの左右を行き来します。続く「Up From The Skies」はミッチ・ミッチェルのジャジーでノリの良いドラムを中心に、ジミ・ヘンドリックスのサイケデリックなギターが揺さぶってきます。「Spanish Castle Magic」はヘヴィなリフが強烈な楽曲。ドラムも激しく、ハードロックの原形がここにあります。「Wait Until Tomorrow」はとてもファンキーな楽曲で、ノエル・レディングの強烈なベースを軸に、陽気なギターなど抜群のグルーヴ感です。ファルセットを多用した歌も陽気です。「Ain’t No Telling」もグルーヴ感が強烈。バタバタ忙しいドラムにグルーヴィなベース。ギターもキンキン唸り、勢いに圧倒されます。僅か2分足らずなのが勿体ない。「Little Wing」はエリック・クラプトン率いるデレク・アンド・ザ・ドミノスをはじめ数多くのアーティストにカバーされた名バラードです。ブルージーなサウンドに乗せてメロディアスな歌を聴かせます。でも2分半でフェードアウトし終わってしまい、物足りない感もあります。続く「If 6 Was 9」は後にデビューするブラック・サバスのような、ヘヴィなリフが印象的。ギター以上にベースが強烈です。後半は即興演奏的なカオスな展開で、縦横無尽に暴れ回るベースや強烈な浮遊感を生み出すサイケ全開のギター、好き勝手に叩くドラムがスリリングな演奏を展開します。
 アルバム後半は「You Got Me Floatin’」で始まります。陽気でノリの良いファンキーな1曲です。続く「Castles Made Of Sand」はジミの渋い歌をフィーチャーしたメロディアスな楽曲です。ノエルがボーカルを取るノリの良いロック曲「She’s So Fine」を挟んで、メロディアスな「One Rainy Wish」。ブルージーでゆったりとしたサウンドは心地良く、ジミの歌に浸ることができます。終盤は幻覚のような音が激しく迫ります。「Little Miss Lover」はファンク曲。グルーヴ感抜群のベースが非常に強烈で、カッコ良いです。ミクスチャーロックのルーツかもしれませんね。ラスト曲「Bold As Love」はメロディアス。ブルージーなサウンドで聴かせます。

 実験的な楽曲群はメロディアスだったりファンキーだったり。突出した楽曲はないものの、バラエティ豊富でなかなか楽しい作品です。

Axis: Bold As Love
The Jimi Hendrix Experience
 
Electric Ladyland (エレクトリック・レディランド)

1968年 3rdアルバム ※The Jimi Hendrix Experience (ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス) 名義

 ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス名義のラストアルバムで、ジミ・ヘンドリックス在命時最後の作品でした。チャス・チャンドラーと不仲になり、本作はジミがプロデュース。またノエル・レディングも本作では既にいくつかの楽曲で不参加で、後に脱退してしまいます。
 ちなみにオリジナルの英国盤は大勢のヌード女性が写っているジャケットでしたが、ジミがこのジャケットを嫌い、米国盤はジミが写ったジャケットになっています。CD化に際して米国盤ジャケットで統一されました。

 当時はレコード2枚組の大作でした(CD化では1枚)。レコード時代の1枚目、A面のオープニングは「…And The Gods Made Love」。サイケデリックで不可思議な、短いインストゥルメンタルです。続いてR&B風のコーラスが特徴的なゆったりとした「Have You Ever Been (To Electric Ladyland)」。そして「Crosstown Traffic」は目の覚めるようなカッコ良いリフに導かれた、ノリの良いロックンロールです。ファンクを取り入れてグルーヴ感が抜群で、躍動感があります。そして本作のハイライト「Voodoo Chile」。15分の大作です。ミッチ・ミッチェルの緩急あってスリリングなドラムや、渋くブルージーなジミのギター。ゲスト参加したトラフィックのスティーヴ・ウィンウッドによる、唸りを上げるハモンドオルガンも魅力的です。即興演奏で混沌としたこの楽曲は、次に何が飛び出すのかわからないスリルがあります。この路線を継承したのがレッド・ツェッペリンらなんだろうなと思います。
 レコードB面に入り、ノリの良い疾走曲「Little Miss Strange」。この楽曲ではノエルがリードボーカルを務めます。まったりとしたメロディアスな「Long Hot Summer Night」を挟んで、アール・キングのカバー曲「Come On (Part I)」。疾走感が心地良い、ノリノリのロックンロールで、ギターが金切音をキンキンと鳴らします。楽しい1曲ですが、このミックスが少し苦手だったり…。「Gypsy Eyes」はメロディがキャッチーでポップ。リズム感が心地良い。次曲「Burning Of The Midnight Lamp」もそうですが、どこか不安定で幻覚的なサウンドを聴かせます。

 レコード時代では2枚目、C面にあたるパートに突入。歌もあるもののプログレの萌芽を感じます。実験的な即興演奏が主体の「Rainy Day, Dream Away」を挟んで、14分近い大作「1983… (A Merman I Should Turn To Be)」。即興演奏が繰り広げられますが、前半の大作「Voodoo Chile」とは違って難解な印象。ダウナーな歌に関しては怪しくも妙な心地良さを感じます。そしてアウトロ的な「Moon, Turn The Tides… Gently Gently Away」に繋いでC面は終了。
 続いてレコードでいうD面。「Still Raining, Still Dreaming」はイントロから強烈なパンチ力。サイケなサウンドで、加えてステレオの左右を行き来するミックスが頭を揺さぶってきます。ノリが良いハードな「House Burning Down」に続き、「All Along The Watchtower」はボブ・ディランのカバー。本家ボブ・ディランも大絶賛したアレンジだそうで、激しいリズム隊に、哀愁を伴い感情豊かなギターなど聴きごたえがあります。そしてラストは「Voodoo Child (Silent Return)」。ヘヴィでトリップ感のあるギターが特徴的な1曲で、パワフルな歌唱も魅力的ですが、部分的に聴き心地の悪さを感じるミックスが苦手です…。

 大ボリュームの1作でトータル76分。そこにはハードロックやプログレの原形が見られます。但し難解な楽曲があったり、またいくつかの楽曲ではミックスの悪さからくる、奥歯がむず痒くなるような不快感があったりと、実は世間でいうほどの名盤とは思えなかったり…。「Voodoo Chile」のような素晴らしい楽曲もあるんですけどね。

Electric Ladyland
The Jimi Hendrix Experience
 
 

編集盤

Experience Hendrix: The Best Of Jimi Hendrix (エクスペリエンス・ヘンドリックス~ベスト)

1997å¹´

 全20曲、トータル73分半のベスト盤。タイトルが示すとおり、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス名義での活動が主で、バンド・オブ・ジプシーズ名義での楽曲は含まれていません。
 邪道だとは思いますが、ジミ・ヘンドリックスはこのベスト盤が最高だと思うのです。これ1枚だけでも有名どころはひととおり網羅していますしね。

 「Purple Haze」で開幕。ギターリフが有名なジミヘンの代表曲ですね。イントロの一音から魅力的なこの楽曲を最初に持ってきたのは良い判断だと思います。ミッチ・ミッチェルの激しいドラムもアツい。疾走曲「Fire」で更にテンションを上げていきます。ノエル・レディングのグルーヴ感のあるベースがカッコ良いです。「The Wind Cries Mary」で渋くブルージーなサウンドに乗せてもメロディアスな歌を聴かせます。デビューシングル「Hey Joe」を挟んで、ボブ・ディランのカバー曲「All Along The Watchtower」。哀愁漂う1曲で、感情剥き出しの泣きのギターが魅力的です。ファンキーな「Stone Free」や、R&B風のキャッチーな「Crosstown Traffic」と続いた後は、ヘヴィなリフが印象的な「Manic Depression」。ノリの良さもあって楽しい1曲です。続いて数多くのアーティストにカバーされたバラード「Little Wing」。メロディが良いのですが、あっという間に終わってしまうので、少し物足りない感のある楽曲です。「If 6 Was 9」はヘヴィメタルばりに重苦しいリフがカッコ良い。中盤からは即興的な演奏が繰り広げられ、混沌としつつもスリリングです。「Foxy Lady」は、目の覚めるような強烈なリフがとてもカッコ良い1曲。色気のあるジミのボーカルも魅力的です。メロディアスな「Bold As Love」や「Castle Made Of Sand」、ブルースロック全開の渋い「Red House」などが並びます。続く「Voodoo Child (Silent Return)」は荒々しいギターが強烈な1曲。ジミの熱のこもった歌唱も魅力的です。ここから4曲はジミの死後に発表された楽曲が並びます。まずはファンキーな「Freedom」。グルーヴ感抜群で、ファンクとロックをうまく融合したノリの良い1曲です。「Night Bird Flying」はパーカッションが陽気な1曲で、やや変則的なリズムで注意を引きます。まくし立てるようなギターが印象的。続く「Angel」は歌メロが魅力的な楽曲で、私はロッド・スチュワートのカバーで知りました。個人的には歌メロの良さをより引き立てているロッド・スチュワートに軍配が上がりますが、ジミのオリジナルは終盤の焦燥感のあるギターに痺れます。ノリの良い「Dolly Dagger」を挟んで、最後にウッドストックのライブより「Star Spangled Banner」。米国国歌のカバーですが、ベトナム戦争への批判から爆撃音などをギターで表現したという名演です。強烈に歪んだ暴力的なギターが強いインパクトを与えます。

 ジミ・ヘンドリックスの入門盤に最適なベスト盤です。内容的にも満足で、個人的にはこれ1枚で十分だったり…。

Experience Hendrix: The Best Of Jimi Hendrix
Jimi Hendrix
 
 
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