🇬🇧 John Paul Jones (ジョン・ポール・ジョーンズ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Zooma (ズーマ)

1999年 1stアルバム

 「ジョンジー」の愛称で知られるレッド・ツェッペリンのベーシスト、ジョン・ポール・ジョーンズ。本名はジョン・ボールドウィンといい、イングランド出身の1946年1月3日生まれ。1964年頃からセッションミュージシャンとして活躍し、セッションで知り合ったジミー・ペイジとともにレッド・ツェッペリンを結成。レッド・ツェッペリン在籍中や解散後も、セッションミュージシャンとして多くのアーティストの作品に参加しています。
 本作はジョーンズ初のソロ作品になります。キャリアも35年くらい経つのにこれが初のソロというのも驚きですね。セルフプロデュースとなる本作は全編インストゥルメンタルで、硬質なベースを前面に押し出しつつもバラエティに富んだ楽曲を展開します。何名かのゲストミュージシャンを招いていますが、ジョーンズ自身のマルチプレイヤーとしての才能を活かし、ベースだけでなくマンドラ(マンドリンの一種)や一部楽曲でギター、オルガンやストリングスアレンジ等も行っています。

 アルバムは表題曲「Zooma」で幕開け。カモメの鳴き声や風の吹くような音がしたかと思えば、そこからゴリゴリとメタリックな10弦ベースが炸裂します。全体的にノイジーで、途中加わるギターも呻き声のよう。そんなノイズに埋もれない、輪郭のはっきりしたベースとリズミカルなドラムが心地良いグルーヴを生み出しています。「Grind」は地を這うように重たく、空間を震わすように轟くグルーヴィなベースが強烈です。ヘヴィさに加えて、グワングワン揺さぶりサイケデリックで幻覚的でもあります。「The Smile Of Your Shadow」は前2曲とは違って穏やかな楽曲で、マンドラの繊細でアコースティックな音が印象的。序盤は陰鬱ですが、徐々に温もりを感じさせてくれる音へと変わります。後半ベースがベインベインと鳴る頃には民族音楽的な雰囲気になっており、田舎の少し賑やかな光景を想起させます。「Goose」はノイズの洪水のようなSEで始まると、突如硬質なベースが響くメタリックな楽曲へと変わります。ジョーンズのベースがカッコ良いのは勿論ですが、本作の大半の楽曲でドラムを叩くピート・トーマスのビートも中々魅力的です。続く「Bass ‘N’ Drums」はデニー・フォンハイザーがドラムを担当。ベースとドラムだけのセッション風の楽曲で、ここでのジョーンズのベースはご機嫌で温もりを感じさせてくれます。かと思えば「B. Fingers」ではゴリゴリとしたベースがメタリックなリフで蹂躙してきます。でも凄まじいグルーヴに満ちていて、重たいしノイジーなのに意外と楽しげな雰囲気です。中盤からはガチャガチャと雑音も加わって更にノイジーに。笑 「Snake Eyes」は7分半の大曲。スローテンポでブルージーな感覚が漂いますが、モダンな音なのとベースが強調されたアレンジで古臭さは感じないですね。ストリングスによって少しエキゾチックな雰囲気を漂わせ、中盤からはオルガンを響かせて旧き良きロックを少し想起させます。終盤はストリングスだけで展開しますが、緊張感を煽ってくるため中々スリリングです。「Nosumi Blues」はキンキンとノイジーなソロを長々展開しますが、これはベース・ラップスチールギターという楽器だそうです。ブルージーで、本作では唯一古臭さを感じる楽曲だったり。後半からはドラムやベースが加わって賑やかになります。ラスト曲は「Tidal」。躍動感に溢れる楽曲で、メタリックなベースと跳ねるようなドラムを中心に勢いで聴かせます。時折トリッキーなリズムで楽しませる、爽快な1曲でアルバムを締め括ります。

 ベースが前面に出た、ベーシストとしてのジョン・ポール・ジョーンズを堪能できる作品です。ここまでベースがゴリゴリ唸る作品はあまりないんじゃないでしょうか。カッコ良いです。

Zooma
John Paul Jones
 
The Thunderthief (ザ・サンダーシーフ)

2001年 2ndアルバム

 ジョン・ポール・ジョーンズのソロ2作目。ベースだけでなく、いくつかの楽曲でボーカルに挑戦してみたり、ギターやマンドリン、シンセやオルガンに筝など、マルチプレイヤーとしての才能を活かして多彩な楽器を聴かせます。本作もジョーンズ自身によるセルフプロデュース。
 ジャケットアートは可愛らしくて少し気が抜ける感じですが、前作よりリラックスして聴ける楽曲も増えたので親しみやすさを表現しているのかもしれませんね。

 オープニング曲は「Leafy Meadows」。前作の延長にあり、ゴリゴリしたベースが中心のクールなインストゥルメンタルです。ギターソロはキング・クリムゾンのロバート・フリップによるもので、時に妖しさを帯びつつ、時にメタリックな音で緊張感を加えます。カッコ良い。続いて表題曲「The Thunderthief」。雷のSEで始まり、ダイナミズムのあるドラムとドライブ感のあるベースが演奏を繰り広げます。メタリックで緊張感に満ちた演奏はカッコ良く、終盤の鍵盤はプログレにも通じます。ジョーンズの歌が聞けますが、抑揚を抑えて声に若干エフェクトをかけているので上手いのか下手なのかわかりません。ですが、あくまで演奏メインで聞かせる感じです。7分に渡る「Hoediddle」はエレキマンドリンをフィーチャーしたインスト曲。最初の3分はややエキゾチックなフレーズのマンドリンソロを聴かせます。そこからバンド演奏が加わり、躍動感に満ちた楽曲へ変わります。時折トラッドのような親しみやすさも見せたり、楽しい楽曲です。「Ice Fishing At Night」は美しいピアノソロでゆったりと癒してくれる楽曲です。ジョーンズの歌も穏やかで優しく、聴いていて心地良いです。「Daphne」はテル・ブライアントの叩くリズミカルなドラムが心地良く、テンポはゆったりしつつもノリノリな印象です。メインフレーズをひたすら反復しながらも、シンセを用いたりグルーヴィなベースソロがあったり色々聴きどころがありますね。「Angry Angry」は疾走曲。若干プログレっぽい楽曲が何曲か続きましたが、これはストレートでパンキッシュです(ギターソロがあるからパンクよりはハードロック?でも歌唱はパンクっぽい)。ブイブイとメタリックなベースにヘタウマで攻撃的な歌が乗る、勢い溢れる爽快な楽曲です。「Down To The River To Pray」はトラッドのアレンジ。アコースティックで牧歌的なサウンドが自然溢れる田舎の風景を想起させます。続く「Shibuya Bop」はメタリックで攻撃的なベースが強烈に煽り立てます。メタリックでグルーヴィな西洋的サウンドで楽しませたかと思えば、筝を弾いて東洋的な雰囲気も醸し出したり、オルガンで不協和音を響かせアヴァンギャルドな感じを出したりします。詰め込みすぎでカオスですが、躍動感がありスリリングなリズム隊がこの混沌をうまく纏め上げています。「Freedom Song」はトラッド風のアコースティックな演奏にヘタウマな歌を聴かせます。民謡っぽいですね。

 前作よりもバラエティ豊かで、ジョーンズの引き出しの多さを物語っています。優しくリラックスできる曲もあれば、前作のようにベースが前面に出たメタリックな曲もあり、楽しめる作品になっています。ジョーンズの歌も味があって良い感じ。

The Thunderthief
John Paul Jones
 
 

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 本家バンド活動。ベースだけでなく鍵盤や弦楽器など幅広く演奏し活躍しました。

 
 
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