🇬🇧 Judas Priest (ジューダス・プリースト)

レビュー作品数: 5
  

スタジオ盤

British Steel (ブリティッシュ・スティール)

1980年 6thアルバム

 イングランドのバーミンガム出身のヘヴィメタルバンド、ジューダス・プリースト。1980年頃に起きたNWOBHMムーブメントに乗って一気に知名度を上げましたが、バンドの歴史は古く、1969年にFreightというバンド名で結成し翌年ジューダス・プリーストに改名、1974年にデビューしています。NWOBHMに乗っかったベテラン勢では最も成功したバンドです。黒の革ジャケットに飾り鋲という、多くの人が思い浮かべるようなヘヴィメタル・ファッションでパフォーマンスを行ってきた先駆者がジューダス・プリーストでした。
 結成時から金銭的に困窮していた状態が長く、そのせいもあって初期のメンバーは流動的だったようです。本作リリース時のメンバーは、ロブ・ハルフォード(Vo)、K・K・ダウニング(Gt)、グレン・ティプトン(Gt)、イアン・ヒル(B)、デイヴ・ホーランド(Dr)。
 ジューダス・プリーストは「メタルゴッド」の愛称でも親しまれますが、それは本作収録の「Metal Gods」に由来しています。本作の制作にはトム・アロムがプロデューサーに就きました。トム・アロムは本作から11th『ラム・イット・ダウン』までプロデューサーを務めますが、2018年の最新作『ファイアーパワー』で再び担当。

 疾走感のある「Rapid Fire」で始まります。ドタバタとせわしなく叩くドラムに、ツインギターがヘヴィなリフを奏でます。ロブの歌は、後のシャウト気味のスタイルを知っていると少し大人しい印象。でも爽快感のある楽曲です。続く「Metal Gods」はバンドの愛称にもなりました。ミドルテンポで、やや引きずり気味の重たいサウンド。サビの方がヴァース(AメロBメロ)よりもトーンが低く、盛り上がるべきところで盛り下げるような独特な雰囲気。一聴しただけでは良さがわかりづらい曲ですが、何度も聴くとこの楽曲の虜になります。終盤の金属音が特徴的。そして本作のハイライト「Breaking The Law」。ヘヴィながらもキャッチーなイントロのギターリフから惹き込まれます。疾走感がたまりません。これもサビでトーンを落とすという展開ながら、キャッチーさは抜群で、タイトルの連呼は耳に残ります。「Grinder」はミドルテンポで、ザクザクと刻むリフがカッコいい。メロディも独特なポップさがあります。「United」はバキバキのベースと、エコー処理を施したドラムがサウンドの中心です。歌メロを重視した楽曲で、ライブでの合唱を意識したかのようです。
 レコードではここから後半。「You Don’t Have To Be Old To Be Wise」で幕を開けます。ストレートなロックですが、前半の個性的な楽曲群に比べると少し影が薄い印象。「Living After Midnight」はノリの良いリズムを刻むドラムが心地良い。コーラスに彩られた歌メロは爽やかポップな感じで聴きやすいです。「The Rage」はベースソロから始まるイントロ。また独特な楽曲を持ってきたなと驚かされますが、歌が始まると哀愁漂うメロディに惹き込まれます。ラストは疾走曲「Steeler」。印象的なヘヴィなリフで、終始この楽曲を貫き通します。
 なお、CDリマスターに際して「Red, White & Blue」と「Grinder」のライブ録音が追加されています。ライブ録音以外のボーナストラックは要らない派なのですが、ジューダス・プリーストの追加ボーナストラックは結構良いものが多いのです。「Red, White & Blue」はユニオンジャックの色でしょうか。ギターオーケストレーションをバックに、国歌のように歌うこの楽曲はなかなか痺れます。

 癖のある独特的な楽曲群が並びますが、良くも悪くも個性の強烈な楽曲が多くて取っつきやすいと思います。実はジューダス・プリーストをいくつか聴いて一番最初に好きになった作品がこれでした。

British Steel (30th Anniversary Edition) (CD+DVD)
Judas Priest
 

Screaming For Vengeance (復讐の叫び)

1982年 8thアルバム

 ジューダス・プリーストの最大のヒット作『復讐の叫び』。全米チャートで最大17位を記録しました。
 ジャケットに描かれているのは機械鳥ヘリオン。オープニング曲にもなっていますね。そして、この頃からジャケットのダサさに磨きが掛かっていきます…。

 オープニングは「The Hellion」と「Electric Eye」の2曲のメドレーです。これがヘヴィメタル史上最高のオープニングとも呼ばれています。1分に満たない短いインストゥルメンタル「The Hellion」を導入パートに、そのまま途切れず「Electric Eye」に繋ぐという演出は、後のメタルバンドのお手本とされました。でもあまりに高い評価に期待値が上がりすぎて、個人的に「Electric Eye」がそこまで好みでなかったために、本作の良さがわかるのに時間が掛かりました…。今聴いても「Electric Eye」の加工された声がイマイチ苦手なのですが、演奏はとてもカッコ良いです。続く「Riding On The Wind」もイントロのドラムから突如始まるヘヴィなリフがあまりにカッコ良く、前2曲にも劣りません。疾走感が気持ち良いです。「Bloodstone」ではテンポを少し落として、ミドルテンポで骨太なヘヴィメタルを展開。歌は結構キャッチーです。続く「(Take These) Chains」は哀愁漂うメロディアスな楽曲。アメリカナイズされたキャッチーさと、英国的な湿っぽさが良い具合にバランスが取れている気がします。「Pain And Pleasure」は一見キャッチーですが、リズムの取り方というか歌の乗せ方が個性的で、癖が強いです。
 アルバム後半は表題曲「Screaming For Vengeance」で幕開け。聴く人を煽り立てるようなドタバタドラムに乗せて、ヘヴィなリフを刻みながら疾走します。ロブ・ハルフォードの歌は終始シャウト気味で、勢いに圧倒されます。間奏の、哀愁漂うギターソロが切なくもアツい。とてもカッコ良い名曲です。続く「You’ve Got Another Thing Comin’」はテンポはそこそこですが、とてもノリの良いサウンド。歌もポップで聴きやすいです。「Fever」は哀愁漂う楽曲です。しっとりと始まりますが、徐々に力強さを増していきます。最後は「Devil’s Child」。縦ノリのサウンドに、ロブのブライアン・ジョンソン似の歌い方、バックボーカルとの掛け合いなど、とてもAC/DCっぽい1曲です。
 なお2001年のCDリマスター時に「Prisoner Of Your Eyes」と「Devil’s Child」のライブ録音が追加されています(その後の30周年エディションはもっと追加されています)。この「Prisoner Of Your Eyes」が素晴らしい1曲なのです。強烈な哀愁を纏ったダークな1曲で、オリジナルの「Devil’s Child」で締めるよりもラストに相応しく、重厚な雰囲気でアルバムを締めてくれます。

 ヘヴィメタルの教科書的な作品で、ジューダス・プリーストの最高傑作に挙げられることも多いです。個人的には最高傑作は『ペインキラー』に譲りますが、本作も名曲が揃っていますので、ジューダス・プリースト入門にどうぞ。

Screaming For Vengeance (Special 30th Anniversary Edition) (CD+DVD)
Judas Priest
 

Defenders Of The Faith (背徳の掟)

1984年 9thアルバム

 ジャケットに描かれているのは機械獣メタリアン(Metallian)。ダサすぎるジャケットは、ダサジャケに溢れ返るヘヴィメタル界の作品群でもワースト1を狙えるレベルではないかと思っています…。ジャケットを嫌って手に取るのが数年遅れたことをここに告白します。笑 中身は素晴らしい出来で、本当にジャケットで損をしている作品だと思います。

 オープニング曲「Freewheel Burning」から気持ち良いくらいに疾走。ドラムの音が1980年代という時代を感じさせます。後半でのロブ・ハルフォードの早口パートが、ただでさえ速いのに更に加速するの?という驚きを与えてきます。クサいギターソロもカッコ良い。続く「Jawbreaker」も鋭利なギターがザクザクと切り込んできます。哀愁を纏ったダークな雰囲気の疾走曲で、強烈な緊張感に圧倒されます。「Rock Hard Ride Free」も少し影のあるメロディアスな楽曲ですが、サウンドはアメリカナイズされていて聴きやすいです。そして本作のハイライト「The Sentinel」。重厚でダークなイントロから惹き込まれます。そして突如疾走曲に変貌してそのまま突き抜けますが、強烈な哀愁を感じます。K・K・ダウニングとグレン・ティプトンによる、時にユニゾンし時にバトルするツインギターの掛け合いもカッコ良い。壮大な1曲です。ここまでの前半4曲の流れはあまりに素晴らしいです。
 アルバム後半は「Love Bites」で開幕。完璧な前半4曲に比べると一気に落ちる気がしますが、個性的な楽曲で、妙な中毒性があります。続く「Eat Me Alive」は怪しくダークな雰囲気で疾走する楽曲。高速ギターソロも良い。メロディアスな「Some Heads Are Gonna Roll」のあと、「Night Comes Down」で哀愁のバラードを聴かせます。デイヴ・ホーランドによる、ゆっくりだけども力強く踏み締めるかのようなドラムが強烈な「Heavy Duty」から、メドレーのように表題曲「Defenders Of The Faith」へ繋ぎます。歓声をバックに、コーラスによって荘厳な雰囲気を演出しながらアルバムを終えます。

 全体的に哀愁が漂うメロディアスな作品です。特にアルバム前半の流れは圧巻で、ダサジャケで受け付けなかった人も中身は聴いて欲しいと思います。

Defenders Of The Faith (Special 30th Anniversary Deluxe Edition) (3CD)
Judas Priest
 

Painkiller (ペインキラー)

1990年 12thアルバム

 デイヴ・ホーランド(Dr)が脱退し、スコット・トラヴィスを後任ドラマーに迎えています。これまでのトム・アロムの手を離れ、クリス・タンガリーディスを新たなプロデューサーに迎えてジューダス・プリーストとの共同プロデュース。「第二のデビュー」とも言われており、パワーメタル路線に音楽性ががらりと変わるも、あまりに素晴らしい作品を提供してくれました。でもジャケットのダサさは変わらずですね。

 オープニングを飾る表題曲「Painkiller」、これがあまりに凄まじい攻撃力を持った楽曲なのです。ジューダス・プリーストの最高傑作だけでなく、ヘヴィメタル界でも5本の指に入るレベルの超名曲。イントロからツーバス連打の強烈なドラムに、攻撃的なギターが加わる展開が鳥肌もの。そしてロブ・ハルフォードの、終始ハイトーンでシャウト気味のボーカルに圧倒されます。キンキン唸りを上げるギターソロも凄まじいし、終盤に向けて更にエネルギッシュになっていきます。たった1曲に濃縮されていて、聴き終えた後にドッと疲れが襲ってきます。続く「Hell Patrol」は3連符のリズムに乗せて、ヘヴィなサウンドを叩きつけてきます。前曲との対比もあって劣って見えるものの、単曲ではかなり完成度の高い楽曲です。「All Guns Blazing」は出だしからロブのシャウトから始まるパワフルな1曲。インパクトがあるのは歌だけでなく、間奏のギターソロパートもあまりに強烈。全体的にダークな雰囲気です。「Leather Rebel」は驚異的な超速ツーバス連打が強烈な1曲。サビの歌メロもキャッチーで耳に残ります。続いて「Metal Meltdown」は速弾きギターソロから始まります。叩きつけるかのような強烈なサウンドに、哀愁というかダークさのある歌メロ。ラストに向けてどんどんハイトーンになるボーカルも含めてインパクトのある楽曲です。「Night Crawler」ではロブのハイトーンは控えめ。力強い演奏は変わらずに、強烈な哀愁を漂わせるメロディアスな楽曲です。中盤に語りが入るのが特徴的。続く「Between The Hammer & The Anvil」は疾走曲。これは間奏のギターソロがヤバい。語彙を失うくらいに凄まじいです。「A Touch Of Evil」は終始荘厳な雰囲気の楽曲です。キーボードはレインボー等で活躍したドン・エイリーが弾いています。1分足らずのインストゥルメンタル「Battle Hymn」、そしてメドレーで繋ぐラスト曲「One Shot At Glory」。哀愁漂う楽曲で、ザクザクと切り込むギターにメロディアスな歌。大仰ですが感動的です。ラストのハイトーンボイスが凄まじい。

 バンド結成から21年、スタジオ盤としては12作目。…ということで、一般のバンドならとっくに衰えが見え始めてもおかしくない時期の作品ですが、ジューダス・プリーストはこのタイミングで脂の乗った最高傑作を叩きつけてくるのだから脱帽です。

 本作のあと1993年にロブ・ハルフォードが脱退。ボーカリスト不在の危機を迎えながらティム”リッパー”オーウェンズを新任ボーカリストに迎えて継続、そして2003年にはロブが復帰します。2011年にK・K・ダウニングが脱退しますが、2018年に新譜をリリースするなど、今なおヘヴィメタル界の重鎮としてジューダス・プリーストは君臨しています。

Painkiller
Judas Priest
 
 

ライブ盤

'98 Live Meltdown ('98 ライヴ・メルトダウン)

1998å¹´

 ロブ・ハルフォードが脱退してティム”リッパー”オーウェンズがボーカリストを務めていた時期のライブ盤です。リッパーに加えて、K・K・ダウニング(Gt)とグレン・ティプトン(Gt)、イアン・ヒル(B)、スコット・トラヴィス(Dr)のラインナップ。2枚組で全24曲、2時間強の大ボリュームです。

 まずはディスク1枚目。観客の大歓声に迎え入れられて始まる「The Hellion」と「Electric Eye」の最強メドレーで開幕。前任者と比較されがちのリッパーですが、ロニー・ジェイムズ・ディオを荒々しくしたような声で、シャウトが凄まじい迫力です。続くはバンドのテーマ曲的な「Metal Gods」。ミドルテンポのずっしりとヘヴィで、そしてメタリックなサウンドには痺れます。サビではトーンが下がるという珍しい楽曲ですが、ドスの効いた野太い声は聴く者を震え上がらせる迫力があり、そして観客の合唱もあって盛り上がります。少しテンポを上げて「Grinder」。ノリの良いサウンドですが、ドスの利いた声が引き締めます。そして「Rapid Fire」で気持ち良いくらいに疾走。強烈なシャウトに圧倒されます。この楽曲についてはロブを超えているのではないでしょうか。ドラムも凄いんですよね。『ブリティッシュ・スティール』から3曲続けざまでしたが、続いてリッパー時代の『ジャギュレイター』から「Blood Stained」。ツインギターがヘヴィでダークな世界を築き、ドラムも迫力満点。そこに怒っているかのような野太い声が響き渡ります。そして「The Sentinel」では哀愁を纏って暗い雰囲気のイントロから一気に疾走。最後の鬼気迫るシャウト等々、非常にカッコ良い楽曲です。重苦しい雰囲気の「A Touch Of Evil」を挟んで、「Burn In Hell」は呪術的な怪しさがある1曲。スタートは鈍重ですが徐々にスピードを上げていきます。観客との掛け合いもアツい。そしてリッパーの歌う「The Ripper」。笑 リッパー加入より遙か前、最初期の楽曲です。そしてスコットのドラムが非常に強烈な「Bullet Train」、強烈な哀愁が漂うドラマチックな「Beyond The Realms Of Death」と続いた後は、目の覚めるような非常にパワフルなサウンドの「Death Row」と続きます。会場の熱気も凄まじいです。

 ディスク2枚目は「Metal Meltdown」で開幕。疾走パワーメタルを披露します。後半に差し掛かってもまだまだパワフルで強靭なシャウトや、ギターソロに圧倒されます。続く「Night Crawler」も疾走感は変わらず、シャウトから解放された歌だけが少し休まった感じでしょうか(後半はまたシャウトの嵐ですが…)。「Abductors」はダークで鈍重なサウンドにシャウトの嵐で、持久力に感服です。そして中盤の疾走パートは非常にスリリング。8分半に渡る「Victim Of Changes」はツインリードギターのイントロがスリリング。また、中盤の観客との掛け合いも聴きどころです。でも少し長いかな…。続いて「Diamonds & Rust」ではアコギでしっとりと聴かせます。そして「Breaking The Law」が素晴らしい。ヘヴィだけどキャッチーなギターリフや、メタリックなベースにゾクゾクします。フリートウッド・マックのカバー曲「The Green Manilishi (With The Two-Pronged Down)」ではどっしりとした力強いサウンドを響かせます。会場が盛り上がったところで「Painkiller」。凄まじいドラムに始まり、金切音を立てるメタリックなギター。流石にライブ終盤ということもあってシャウト尽くしのボーカルは辛そうですが、それでも尋常でない攻撃力に圧倒されます。リフはヘヴィながらもメロディがキャッチーな「You’ve Got Another Thing Comin’」では観客との掛け合いで盛り上がり、続く「Hell Bent For Leather」ではダークな雰囲気で疾走。ラストは「Living After Midnight」。キャッチーな歌を観客が大合唱。熱気を感じさせながらライブを終えるのでした。

 新任ボーカリスト、ティム”リッパー”オーウェンズのスタジオ盤の評価はイマイチなようですが、本作は偉大な前任ロブ・ハルフォードにも引けを取らない強烈なボーカルを披露した迫力のライブ盤です。2枚続けて聴くには少し体力が要りますが、凄まじいパワーに満足の1枚です。

’98 Live Meltdown
Judas Priest
 
 
 類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。