🇺🇸 Kiss (キッス)

ライブ盤

Alive! (アライヴ!~地獄の狂獣)

1975年

 ライブバンド キッスの人気に火をつけた、傑作ライブ盤です。それまでセールスに恵まれなかったキッスは『地獄への接吻』リリースに伴い田舎町を中心としたツアー回りをしていたそうですが、デトロイトで人気を得ていることを察知してツアー予定を変更。デトロイトで行った公演を中心にオーバーダビングとミキシングを施して本作をリリースしました。100万枚以上の売上を記録した本作によって、ライブバンドとして知名度を大きく上げ、キッスをアメリカン・ハードロックを代表するバンドへと押し上げることになります。プロデューサーにはジミ・ヘンドリックスレッド・ツェッペリンを手掛けたエディ・クレイマーを起用、本作での成功もあってかオリジナルアルバムでもキッスと一緒に仕事をすることになります。
 
 
 ライブは「Deuce」で開幕。ジーン・シモンズの野太いシャウトが響き渡ります。間奏で悠々ソロを弾くエース・フレーリーのプレイもカッコ良いです。続く「Strutter」からしばらくはポール・スタンレーがボーカルを取ります。この楽曲はキャッチーなメロディのアップテンポ曲で、ノリが良く明るいですね。低音で刻むベースリフが魅力的。「Got To Choose」はイントロから反復するヘヴィなリフが良い。ノリも良くて自然と身体が動き出します。「Hotter Than Hell」はシンプルな楽曲ですが、キレのある演奏とスタンレーのアツい歌唱によってスタジオ版より魅力的に仕上がっています。そのまま続く「Firehouse」は歓声が凄い。ミドルテンポですがヘヴィなサウンドで、特にベースが唸りまくっています。この楽曲の途中でシモンズが火吹きのパフォーマンスをするのが定番なのだそうですが、終盤一瞬静かになる場面がそれでしょうか?ラストは消防車のサイレンが響き渡ります。「Nothin’ To Lose」はピーター・クリスとシモンズがボーカルを担当する、昔ながらのロックンロールですね。陽気な雰囲気で心地良く聴けます。クリスのドラムも中々良い。続く「C’mon And Love Me」はイントロからパワフル。スタンレーの歌う楽曲で、少しメロディアスなロックンロールです。シモンズの歌う「Parasite」は、低音で地を這うようなリフがダーティで、終始カッコ良い。「She」はミドルテンポですが、引きずるようにヘヴィな雰囲気。パワフルなドラムに、重苦しい重低音が響きます。後半テンポアップして、フレーリーのギターソロとともに激しく疾走します。

 ライブ後半は「Watchin’ You」で幕開け。シモンズが唸るように歌います。ダーティなリフが印象に残ります。「100,000 Years」では、途中クリスのドラムソロをバックにスタンレーが会場を煽るパフォーマンスを行うので、アドリブ込で本作最長の12分超となっています。会場の盛り上がりも凄まじく、ライブ会場にいるかのような一体感があってとても楽しいです。「Black Diamond」はイントロの哀愁漂うアルペジオが切ない。バラードでも始まりそうな雰囲気を見せるのですが、イントロを終えるとクリスがシャウトする激しいロック曲へと変貌。メロディに憂いは帯びつつも、それをかき消すノリの良さがあります。ラストは何度も爆破音が鳴り響きます。
 ここからはアンコールのようです。「Rock Bottom」は哀愁のイントロを聴かせますが、歌が始まると骨太なロックンロールに。これも前曲同様イントロと本体が一致してないですね。笑 スタンレーが会場を煽った後は「Cold Gin」へ繋ぎ、シモンズへボーカル交代します。3分過ぎたあたりからのツインギターの絡み合うリフがカッコ良い。ここから2回目のアンコール(か、別の公演のアンコール)の「Rock And Roll All Nite」。ライブバージョンのこの楽曲はシングルカットされ、ヒットを飛ばしました。リードボーカルのシモンズを中心として、メンバーがコーラスを奏でるサビメロはとてもキャッチーで耳に残ります。会場の手拍子に乗せて始まるラスト曲「Let Me Go, Rock ‘N’ Roll」。疾走感が心地良いロックンロールで、ノリノリの演奏に会場の手拍子と楽しい雰囲気がよく伝わってきます。
 
 
 初期3作品の集大成。スタジオ盤よりも迫力があるため、これだけでも十分ですね。ライブバンドとしての実力を見せつけてくれます。なお全78分でCD1枚に収まりそうですが、レコード当時を踏襲してかCDでも2枚組構成です。

Alive!
Kiss
 
Alive II (アライヴ2)

1977年

 キッスのライブ盤第2弾。『アライヴ!~地獄の狂獣』の続編として制作され、『地獄の軍団』~『ラヴ・ガン』の楽曲をセレクトし、選曲が被らないよう初期作品の楽曲は意図的に省かれています。また、レコードD面(CDだとDisc2後半)はスタジオ録音の新曲が収録されており、変則的なライブ盤となっています。エディ・クレイマーとキッスの共同プロデュース。
 
 
 スタッフのエディ・バランダスが野太い声でキッスを紹介すると、オープニング曲「Detroit Rock City」が始まります。爆発音が何度も鳴り響き、演奏もとてもスリリング。ポール・スタンレーの咆哮のようなハイテンションな歌はカッコ良く、それでいてメロディはキャッチーで聴きやすい。間奏のメロディアスなギターも素晴らしいですね。スタジオ録音よりもこちらの方が良いです。そのまま続く「Kind Of The Night Time World」は軽快でノリの良いロックンロールですね。引き続きスタンレーがボーカルを担当。ピーター・クリスのタッタカタッタカ小気味良いドラムが爽快です。「Ladies Room」はジーン・シモンズが歌います。パワフルなロックンロールを披露し、再びスタンレーがボーカルに。「Makin’ Love」は切れ味抜群のギターリフがカッコ良い。後半はエース・フレーリーの神がかったギターソロに魅せられます。「Love Gun」は重低音(特にベース)が響き渡りスリリングですね。リズミカルな演奏とメロディアスな歌が心地良い1曲です。大歓声に包まれ、「Rock ‘n’ Roll!」を連呼した後「Calling Dr. Love」へ。唸るようなシモンズの歌声がカッコ良い。グルーヴィでノリも良いです。「Christine Sixteen」はカラッとしたロックンロール。語感の良い歌詞が耳に残ります。そして「Shock Me」は本作唯一のフレーリーが歌う楽曲。メイクはイカツイですが、ヘタウマで脱力系の歌というギャップ。でもなんとなく憎めないんですよね。後半はギターソロの見せ場もあり、ここぞとばかりにフレーリーにスポットライトを当てています。続いてクリスの歌う「Hard Luck Woman」。まったりとして優しい楽曲です。「Tomorrow And Tonight」はスタンレーの歌う脳天気なロックンロール。雰囲気は古臭いですが、キャッチーなので楽しめます。

 ライブ後半は「I Stole Your Love」で開幕。勢いに満ちた爽快なロックンロールで、少し緊迫した空気が中々スリリング。スタンレーの歌うキャッチーなメロディが耳に残りますね。カッコ良いです。「Beth」は名バラード。ピアノとストリングス、そして会場の手拍子に支えられて、クリスのしゃがれた歌声が哀愁を誘います。大歓声で人気の高さが窺える1曲です。続く「God Of Thunder」はずっしりとヘヴィな楽曲で、シモンズのドスの効いただみ声がヘヴィさを引き立てます。途中ドラムソロパートがあって会場が白熱しています。スタンレーの歌う「I Want You」は冒頭だけ哀愁を醸し出していますが、すぐさま力強くヘヴィなロックへと変わります。自然とリズムを取りたくなるようなノリの良い演奏が魅力的です。そしてライブパートのラスト「Shout It Out Loud」。明るいロックンロールです。会場を煽って観客とともに歌うサビメロは、コーラスも相まってとてもキャッチー。思わず口ずさみたくなりますね。大歓声に包まれてライブ終了。
 ここからはスタジオ録音の新曲です。スタンレーの歌う「All American Man」はヘヴィなリフが印象的。歌声だけはライブ感がありますが、スタジオ録音なので前曲と続けて聴くと違和感はあります。「Rockin’ In The U.S.A.」はハードなロックンロール。カラッと陽気な演奏に、シモンズの野太い声がキャッチーなメロディを歌います。「Larger Than Life」は残響感のあるドラムを中心に鈍重な演奏を展開します。どこかレッド・ツェッペリンっぽい。「Rocket Ride」はフレーリーの歌う1曲。歪んだギターがワウワウ唸り、歌メロも同じフレーズを繰り返すのが印象的です。最後は「Any Way You Want It」で、このタイトルを見るとジャーニーの名曲が思い浮かぶのですが、全く別のデイヴ・クラーク・ファイヴというバンドのカバー。古臭い雰囲気ですが、コーラスワークによってキャッチーな歌メロを奏でます。
 
 
 ライブパートは『アライヴ!~地獄の狂獣』にも引けを取らない魅力があります。逆にスタジオ録音の新曲はそこまでパッとせず、あえて変則的な構成にしなくても良かったのではないかと思ったり。

Alive II
Kiss
 
 

編集盤

Greatest Kiss (グレイテストKISS)

1997年

 キッスのベスト盤。オリジナルメンバーが在籍した1974年から1980年までのヒット曲からセレクトされていますが、1曲だけ、白塗りメイクを封印したノーメイク時代のヒット曲「God Gave Rock ‘N’ Roll To You II」も含んでいます。
 米国盤と、欧州/豪州盤、日本盤、メキシコ盤で曲目が異なるようです。私は欧州盤を購入しましたのでこちらをレビューします。

 キッスを代表する名曲「Detroit Rock City」で幕開け。迫りくるようなイントロから緊張が高まってワクワクさせてくれます。ポール・スタンレーがシャウト気味に歌うメロディはキャッチーで聴きやすく、ベースラインやドタバタとしたドラム、終盤のメロディアスなギターなど、カッコ良くて聴きどころ満載です。「Black Diamond」はピーター・クリスがボーカル担当。アルペジオが憂いに満ちていますが、そこから骨太なロックンロールが繰り広げられます。緊張感がありますがノリも良い演奏が楽しいです。後半はどんどんテンポを落として、「Hard Luck Woman」は優しいバラードです。スタンレーが12弦ギターの心地良い音色を響かせ、クリスがガラ声で爽やかに歌います。「Sure Know Something」はディスコ全開の楽曲で、ジーン・シモンズの弾くグルーヴィなベースや、ゲスト参加のアントン・フィグの叩くリズムビートが気持ち良い。でもスタンレーの歌は、ノリの良い演奏と対照的にメロディアスです。そして名曲「Love Gun」。優れたギターリフや、グルーヴ感のあるベースが爽快です。「ダダダダ!ダダダダ!ダダダダダダダダダダ!」と軽快なドラムも良いですね。カッコ良くてスリリングな演奏に加えて、メロディアスでキャッチーな歌も素晴らしいです。「Deuce」はシモンズが歌います。やや古臭さも感じますが、緊張感があってスリリングなロックンロールですね。「Goin’ Blind」はシモンズによる渋いバラードです。サウンドプロダクションが悪くて、音が篭もりがちなのがちょっと残念ですが、時折聴けるメロディアスなギターは良い感じ。続く「Shock Me」はエース・フレーリーが歌います。イカツい化粧なのに、ちょっと気の抜けた歌は見た目とのギャップを感じますね。ですがギターソロは流石、気合が入っています。「Do You Love Me?」はクリスの力強いドラムをバックに、スタンレーが余裕をかましながら歌います。ライブ感のあるサウンドプロダクションで、一緒に合唱したくなりますね。「She」は鈍重なヘヴィロック。ヘヴィなギターリフは印象的ですが、若干もったりしている印象。そして「I Was Made For Lovin’ You」はディスコを大胆に取り入れた名曲です。以前キヤノンのCMソングとして使われていて、私が初めて知ったキッスの楽曲がこれでした。ハミングを用いた歌メロはとてもキャッチーで耳馴染みが良く、また演奏もノリが良くてリズムビートが爽快です。ブイブイ唸るベースはここではスタンレーが弾いています。「Shout It Out Loud (Live ’96)」は唸るように野太いMCで幕開け。キャッチーで取っつきやすい歌メロ、勢いのある演奏などライブ向きの名曲ですね。観客の歓声も凄まじいです。ラストの花火の演出も盛り上がっていてアツいですね。「God Of Thunder」はシモンズが歌うヘヴィな楽曲です。ドスの利いた歌声と力強く踏みしめるようなリズム隊、そして鈍重なリフが組み合わさって、雷神のような迫力を与えます。続く「Calling Dr. Love」もシモンズのボーカル曲で、演奏はシンプルで骨太です。エフェクトをかけたコーラスが幻覚的な印象。「Beth」はクリスの歌うメロディアスなバラードです。しゃがれた歌声が哀愁を誘いますね。ロックンロールな楽曲が並ぶ中で、この楽曲はバンド演奏はなく、オーケストラを用いてメロディを引き立てています。「Strutter」はスタンレーの歌うロックンロール。ヘヴィなリフがカッコ良くて、ノリも良いですね。そして名曲「Rock And Roll All Nite」。跳ねるような演奏はノリノリで爽快なので、聴いていると踊り出したくなります。シモンズの明るくキャッチーな歌メロに加えて、メンバーの楽しそうな合唱も耳に残ります。素晴らしい楽曲です。「Cold Gin」は気だるくスローな演奏ですが、グルーヴィなベースやドスの利いたシモンズの歌が楽曲にメリハリをつけます。終盤テンポアップしてノリノリに。続いて、ドライブ感のある「Plaster Caster」もシモンズが歌います。語感の良い歌や、グルーヴが心地良いです。そしてラスト曲「God Gave Rock ‘N’ Roll To You II」はノーメイク時代の楽曲で、スタンレー(Gt/Vo)、シモンズ(B/Vo)以外のメンバーが異なります。ブルース・キューリック(Gt/Vo)、エリック・カー(Cho)(楽曲の完成直後に病死)、エリック・シンガー(Dr)がレコーディング参加。1991年の楽曲で、これだけ他の楽曲と作られた時期が離れているので、サウンドプロダクションは違っています。ゆったりとして壮大な曲調や大合唱は名曲感を醸し出しています。

 悪魔的な見た目の割にキャッチーで陽気なロックンロールが多く、結構聴きやすいんですよね。選曲が良くて、何だかんだキッスはこればかり聴いています。

Greatest Kiss
Kiss
 
 

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 YOSHIKIとコラボし、YOSHIKISS(ヨシキッス)として2019年の紅白へ出場。

 
 
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