🇬🇧 Led Zeppelin (レッド・ツェッペリン)

レビュー作品数: 14
  

スタジオ盤①

ハードロックの胎動

Led Zeppelin I (レッド・ツェッペリン I)

1969年 1stアルバム

 レッド・ツェッペリン、通称ZEPまたはZEPP。全世界で3億枚以上を売り上げる、ハードロック界どころかロック界でも屈指のモンスターバンドです。三大ギタリストとも呼ばれるジミー・ペイジ(Gt)と、スタジオミュージシャンとして活躍していたジョン・ポール・ジョーンズ(B/Key)(愛称:ジョンジー)、そして無名の新人ロバート・プラント(Vo)(愛称:パーシー)とジョン・ボーナム(Dr)(愛称:ボンゾ)の4人から成ります。ジミー・ペイジは三大ギタリストというたいそうな肩書きとは裏腹に演奏はヘタウマ系。但し1970年代前半頃までのリフメイカーとしての天才的な才能や、またZEPのスタジオ盤を魅力的なものに仕上げたプロデューサーとしての手腕等は素晴らしい実力です。
 燃え落ちるヒンデンブルク号を点描で描いた飛行船のジャケットがとても印象的な本作は、事前にライブ演奏を重ねて楽曲を温めていたこともあり、僅か36時間、たった9日で録音を終えています。 先人たちがブルースロックをハードに演奏しただけであるのに対し、本作は静と動のダイナミックな対比や、オリジナリティを持ち込んで「ハードロック」を形作っています。なお、このオリジナリティの解釈が問題で、原曲がわからなくなるくらいに独自アレンジされた、または一部アイディアを拝借して膨らませた楽曲について、原曲者がクレジットされていないとして盗作問題がしばしば指摘されます。

 オープニングから強烈なハードロックナンバー「Good Times Bad Times」。最初の力強い一音から、これから何が始まるんだろうとワクワクさせてくれます。全体的にブルージーでヘヴィな演奏ですが、そんな演奏にも埋もれないプラントのボーカルはZEPの大きな魅力のひとつでしょう。キンキンと甲高いギターソロや時折グルーヴィにうねるベース、激しく叩くドラムなどメンバーの個性も際立ちます。「Babe I’m Gonna Leave You」は静と動の対比が激しい楽曲。アコギの美しいアルペジオを聴かせたかと思えば、フラメンコのようなリズムでアクセントを付け、そしてボーナムの破壊的なドラムによるエネルギッシュな演奏で圧倒します。「ベイベ ベイベ」を連呼するプラントの歌も印象的ですね。ブルージーな「You Shook Me」はウィリー・ディクスンのカバー曲で、ジェフ・ベック・グループもカバーしていますね。泥臭くねちっこい楽曲で、オルガンやハーモニカなどブルージーでヘヴィな演奏をより渋く仕上げています。終盤、ペイジのギターとプラントのボーカルの絡み合いがとてもスリリング。そして前半の山場とも言える「Dazed And Confused」。この混沌とした楽曲は、静と動の対比が凄まじいんです。どよんとして不気味でヘヴィな前半パートは、音階を刻むジョーンズのベースが印象的。そして間奏の混沌とした場面ではヴァイオリンの弓でギターを弾くという試みがなされております。そしてボーナムのドラムを合図に、突如鬼神のように暴れ回るこの変貌っぷりが非常にスリリングで鳥肌もの。ここで緊張感が最高潮に達します。
 レコードでいうB面、後半1曲目の「Your Time Is Gonna Come」ではジョーンズの奏でるハモンドオルガンがフィーチャーされています。イントロから厳かな空気が漂い、アコギと合わさって穏やかで温かい雰囲気に。ですがゴスペルのようなサビメロは結構ドラマチックです。そのまま途切れなく続く「Black Mountain Side」はペイジによるアコギに焦点を当てたインストナンバー。タブゲストミュージシャンとしてヴィラム・ジャザニがラという打楽器を叩いています。そして後半の山場はノリノリのロックンロールナンバー「Communication Breakdown」でしょう。2分半の短い楽曲ですが、本作の取っ掛かりに最適な疾走ハードロック曲です。ハードなギターリフと、力強く激しいドラムが印象的ですね。シャウト気味に歌唱するプラントの歌も負けていません。キャッチーでノリも良い名曲です。そして続く「I Can’t Quit You Baby」はウィリー・ディクスンのカバー。ひたすら泥臭くブルージーな楽曲ですが、燻し銀のように渋く味があって中々良いです。ラストは8分半の大作「How Many More Times」で、場面展開が強烈でスリリングな1曲です。這うようにヘヴィなリフに、リズミカルなドラムが心地良いグルーヴを生み出しています。中盤の怪しげで混沌とした間奏に酔っていると、徐々に高まる緊張感。プラントの歌と力強い演奏の掛け合いから安定感のある演奏を始め、ラストに序盤と同じ印象的なリフで締め括ります。最後までカッコ良い。

 衝撃の1stアルバムとも評される、ハードロック時代の幕開けを飾った作品です。非常に完成度が高く、レッド・ツェッペリンは本作から順に聴いていっても良いでしょう。

Led Zeppelin I
Deluxe Edition (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin I
(2014 Remastered)
Led Zeppelin
 
Led Zeppelin II (レッド・ツェッペリン II)

1969年 2ndアルバム

 ライブツアーの過密スケジュールの合間を縫ってレコーディングされた本作。劣悪な環境下での録音のため音は荒々しいですが、混沌としてブルージーな前作からブルース臭が若干薄れ、より尖ったサウンドによってハードロックの基本形を確立しました。ハードロックの聖典として非常に人気の高い作品で、ビートルズの『アビイ・ロード』を蹴落として全米1位を獲得、全英でも1位を獲得しました。ジミー・ペイジのプロデューサーとしての手腕は勿論、エンジニアのエディ・クレイマーの貢献も大きいです。
 ジャケットはドイツ帝国陸軍航空隊の写真にメンバーの顔写真をコラージュしたものです。なお、ロバート・プラントが作詞に挑むものの、先人からの引用で盗作問題が持ち上がります。「Whole Lotta Love」ではウィリー・ディクスン、「The Lemon Song」ではハウリン・ウルフに訴えられる事態に。次作以降は完全オリジナルとなるのですが…。

 お手本のようなハードロック曲「Whole Lotta Love」で幕開け。シンプルかつヘヴィなギターリフで始まり、ベースリフが下支えし、ボーカルそしてドラムと順に楽器が増えていきます。ハードロックの王道パターンを形作った、高揚感を煽る素晴らしいイントロです。とにかくリフが超カッコ良いのですが、ジョン・ボーナムのドラムもワクワクさせてくれます。また間奏は実験的で、音が左右あちこちに行き来して脳を掻き乱し、プラントの官能的なボーカルも響き渡ります。ヘッドホンやイヤホンで聴くとトリップできますね。続く「What And Is What Should Never Be」は囁くように静かに始まります。メロウでまったりとしていますが、サビではパワフルな歌唱と荒っぽい演奏を繰り広げる、静と動の対比が見事な楽曲です。動の部分はスリル溢れる演奏で、音質の悪さが逆にプラスに作用していますね。「The Lemon Song」はヘヴィなリフが心地良いグルーヴを生みます。ミドルテンポで緩く展開しますが、途中からギアが入ったかのように加速。ペイジの鋭いギターがキンキンと鳴り響くスリリングな演奏を繰り広げます。切れ味鋭いギターと破壊力のあるドラムが目立ちますが、そんな中ジョン・ポール・ジョーンズのベースも凄く良い仕事をしてるんですよね。ベースラインが心地良いです。「Thank You」はプラントが当時の妻に捧げた楽曲。ペイジの12弦ギターとジョーンズのハモンドオルガンが温もり溢れるフォーキーな音を奏でます。プラントの歌うメロディアスな歌も優しくて癒されますね。
 後半は名曲「Heartbreaker」で始まります。これも「Whole Lotta Love」に匹敵するカッコ良さ。イントロのギターリフから鳥肌ものですが、ジョーンズのバキバキ唸るベースにも痺れます。間奏で気まぐれなギターソロを披露したかと思えば、そこから荒々しくもノリの良いグルーヴィな演奏を展開。後半パートもカッコ良いです。間髪入れず続く「Living Loving Maid (She’s Just A Woman)」はノリの良いアップテンポ曲で、勢いがあって爽快。跳ねるように軽快なリズムに乗せて、耳に残るギターリフとキャッチーな歌メロで口ずさみたくなります。「Ramble On」はアコギが心地良くて牧歌的な印象を抱きますが、サビは力強いですね。歌詞は『指輪物語』に影響を受けているそうです。続いてドラムをフィーチャーした「Moby Dick」。ボーナムのドラムソロをペイジのギターリフで挟み込む構成で、ヘヴィで渋いリフがカッコ良い。ドラムはソロパートも良いのですが、ギターやベースと張り合っているときの方がよりダイナミックでスリリングな気がします。そしてラスト曲「Bring It On Home」はベースとハーモニカで静かに始まります。このまま静かにブルージーに終えるのかと思いきや、中盤から突如ヘヴィに変わりカッコ良いハードロックを展開。最後まで展開の面白い作品です。

 前作に負けず劣らず人気の本作(前作以上に人気かも…)。ジミー・ペイジのリフメイカーとしての本領発揮で、ハードロックのお手本となりました。駄作のないレッド・ツェッペリン、こちらもおすすめできる作品です。

Led Zeppelin II
Deluxe Edition (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin II
(2014 Remastered)
Led Zeppelin
 

トラッドとハードロックの融合

Led Zeppelin III (レッド・ツェッペリン III)

1970年 3rdアルバム

 デビューからライブ続きで、その合間合間では過酷なレコーディングと、メンバーの疲労はピークに達していました。そこでウェールズの大自然に囲まれたコテージ、ブロン・イ・アーで長期間の休息に入ります。心身ともにリフレッシュし、またブロン・イ・アーの休息期間中に強いインスピレーションを培い、それが本作の制作に大きく影響したと言われています。本作はケルト音楽に影響を受けて、ブリティッシュトラッド/アコースティックに寄った作りになっております。ファンは戸惑ったものの商業的には成功を果たし、しかし批評家からは酷評されました。次作でこのアコースティック路線の集大成とも言える大傑作を作り上げたことから、その布石としての本作も後に再評価され、今では傑作のひとつに数えられています。
 ジャケットアートはくるくる回転する仕掛けが施されていて、内側に仕込んだ円盤を回すと、表ジャケットに空いたいくつかの穴から絵が代わる代わる出てきます。ブロン・イ・アーで感じた大自然の営みや生命の流転を表現しているのだそうです。

 ロバート・プラントの作詞力も向上し、ケルト民話や北欧神話等を題材にしています。その歌詞の変化が表れているヴァイキングを描いた楽曲「Immigrant Song」が有名で、取っ掛かりには良いかもしれませんね。ジミー・ペイジのヘヴィでカッコ良いギターリフに、プラントによる「アアアー アー」のシャウトは強烈なインパクトです。ジョン・ポール・ジョーンズの硬質なベースもカッコ良い。「Friends」はジャカジャカかき鳴らすアコギを主体として、ストリングスが楽曲を彩ります。ですがボーカルやストリングスが怪しげな空気を作り、アコースティックながら不思議と緊張に満ちています。「Celebration Day」は陽気なギターリフに、やたら動き回るベースがノリノリ。グルーヴィで軽快な印象です。そして名曲「Since I’ve Been Loving You」。本作の最大の魅力はブルージーで官能的なこの楽曲の存在でしょう。哀愁に満ちた泣きのギターと、プラントの色気のあるボーカルが大人びた雰囲気を作ります。ジョン・ボーナムのドラムもここぞという場面でドラマチックに盛り上げてくれます。ジョーンズによるオルガンの味付けも良い味を出していますね。渋くて哀愁たっぷりの、完成度の高い1曲です。「Out On The Tiles」は、メインリフがヘヴィで、そしてバタバタと激しいドラムも印象的。本作で最もハードな楽曲でしょう。ライブではこの楽曲のイントロだけ切り取られて「Black Dog」(次作に収録)に繋ぐという演出がなされています。
 アルバム後半はアコースティック楽曲の比率が多いです。「Gallows Pole」はトラッド曲のアレンジ。アコースティックなサウンドにプラントの歌が響きます。序盤は寂寥感に満ちていますが、中盤からは農村のお祭りような牧歌的で陽気な雰囲気に。ノリの良さを保ちつつ、パワフルなドラムを中心にヘヴィさを徐々に増していきます。「Tangerine」は憂いのある楽曲です。スティールギターが心地良い音を奏でますが、メロディは切ない。「That’s The Way」はアコースティック楽曲の中でも特に美しいメロディを持つ楽曲です。大自然を感じさせる心地良いサウンドに、プラントの優しいボーカルが癒してくれます。「Bron-Y-Aur Stomp」は小気味良いアコギとノリの良いドラムが軽快な空気を作ります。途中加わるハンドクラップもノリの良さを助長しますね。歌メロもキャッチーで楽しげです。ラストの「Hats Off To (Roy) Harper」はイントロだけインパクト大。楽曲はアコースティックなのに、エフェクトをかけたボーカルのせいか若干サイケな感じを醸し出しています。

 前の2作に比べるとハードさやスリリングな展開は後退し、アコースティックの和やかな雰囲気の楽曲が増えました。少しクオリティにばらつきがあるものの、美しいメロディを味わうことのできる作品ではあります。

Led Zeppelin III
Deluxe Edition (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin III
(2014 Remastered)
Led Zeppelin
 
Led Zeppelin IV (レッド・ツェッペリン IV)

1971年 4thアルバム

 「天国への階段 (Stairway To Heaven)」を収録していることでも有名な、レッド・ツェッペリンの最高傑作と名高い本作。アメリカで大人気となったこの楽曲はシングルカットされず、結果としてシングル感覚で『レッド・ツェッペリン IV』がバカ売れすることとなり、全米で2300万枚以上、全世界で3000万枚以上のセールスを記録しました。なお本作は便宜上『IV』と呼ばれていますが、正式なタイトルが無く、4つの不思議なシンボルが描かれているだけ。そのため『フォーシンボルズ』とか、シンボルのデザインから『Zoso』と呼ばれることもあります。
 前作を酷評した批評家たちを黙らせてやろうという意気込みを感じられ、アコースティックをうまく取り入れたハードロックで、高い緊張感を強いてくる作品です。結果、非の打ち所のない作品が出来上がって批評家も大絶賛したので御の字でしょう。

 代表曲を多く収録した本作。オープニング曲「Black Dog」も有名ですね。ロバート・プラントのシャウト気味の歌と、ジミー・ペイジによるヘヴィで耳に残るギターリフの掛け合いで始まります。リズム隊もヘヴィですね。決して速くはないですが、ハードでグルーヴ感のある演奏はカッコ良くて心地良い。そして続く軽快な「Rock And Roll」もよく耳にするZEPの代表曲ですね。ジョン・ボーナムの躍動感溢れるドラムで始まる、ハードで爽快なロックンロールです。ハイトーンで歌うメロディもキャッチーで口ずさみたくなりますね。ド直球でひねりが少ないのですが、ロックンロールの楽しさをシンプルに伝えてくれる名曲です。ピアノを弾くのはローリング・ストーンズ元メンバーのイアン・スチュワート。「Battle Of Evermore」は前作の流れを汲むアコースティック楽曲です。女性フォーク歌手のサンディ・デニーがプラントとともにボーカルを取っています。マンドリンの奏でる音色は美しいのですが、ひんやりとした質感で少し緊張感が漂います。そして4曲目「Stairway To Heaven」。これが素晴らしい名曲で、クラシック界の巨匠ヘルベルト・フォン・カラヤンも大絶賛。プラントがペンを取る抽象的な歌詞も注目されました。楽曲はイントロから魅力的で、ペイジの繊細なアルペジオと、ジョン・ポール・ジョーンズによるリコーダーが郷愁を誘います。リコーダーでこんなにも素敵な演出が出来るなら、小中学校時代に出会いたかった。笑 そして憂いに満ちた楽曲は、同じフレーズを反復しながら徐々にテンポアップし、ボレロのように盛り上がっていきます。大サビ直前の驚異的なギターソロ、大サビでのハイトーンシャウト等、全てが魅力的な8分の大作。アルバムラストにこそ相応しいであろうこの超名曲がアルバムの真ん中に来ているのに疑問が湧きますが、実はレコード時代はA面の最終曲を飾っていたんですよね。CDやデジタル音楽になってA面/B面という切れ目の概念がなくなったため、最終曲ではなくなってしまったのでした。
 前半にバンドの代表曲が固まっていますが、後半も佳曲揃いです。「Misty Mountain Hop」はポップなメロディで耳触りが良いですね。そして何と言ってもボーナムのドラム。ヘヴィですが跳ねるようにノリの良いドラムがこの楽曲の最大の魅力でしょう。反復する単調な展開ですが、中毒性があって心地良いです。続く「Four Sticks」はグルーヴィな楽曲。ヘヴィでうねるようなリフと、野性味のあるプリミティブなドラムが印象的です。時折トラッドっぽい側面も見せてくれます。そして本作随一の癒し曲「Going To California」。ペイジのアコギとジョーンズのマンドリンが美しいハーモニーを生み出すアコースティック曲で、メロディアスな歌も魅力。優しく美しいメロディは大自然を想起させ、聴いていると心が洗われるかのようです。そしてラストは「When The Levee Breaks」。全体的に緊張に満ち、ピリピリとした空気が漂います。ボーナムのパワフルなドラムがとにかく強烈ですが、ヘヴィに歪んだハーモニカやギターが絡む演奏、そしてプラントの気迫に満ちた歌唱もスリリング。最初の頃は『何でラスト曲が「Stairway To Heaven」じゃないんだ』と否定的な印象で聴いていましたが、貫禄のあるこの楽曲もとてもカッコ良く、今では大好きな楽曲の一つです。

 完成度の高さは文句なしですが、「名盤だぞ聴いてみろ」という風格やオーラを音からビシビシ感じ取れ、聴く者にも緊張を強いてきます。真剣に向き合うと聴き疲れする作品でもあります。

Led Zeppelin IV
Deluxe Edition (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin IV
(2014 Remastered)
Led Zeppelin
 

ワールドミュージックの吸収・昇華

Houses Of The Holy (聖なる館)

1973年 5thアルバム

 あまりハードではないロックアルバムなので、ハードロックバンドのレッド・ツェッペリンの名盤として本作が紹介されることはないのですが、個人的にはこれが最高傑作だと思っています。バラードあり、ファンクやレゲエ風音楽あり、そして正統派ハードロックもありと、バラエティの豊富さではバンド史上群を抜いています。前作が良くも悪くも「いかにも名盤」といった風格を醸し出して聴く側にも緊張を強いるものでしたが、全体的に明るく陽気な楽曲の多い本作は敷居の高さは感じず、リラックスして聴けるのも特徴です。
 デザイナー集団であるヒプノシスによって製作されたジャケットは、アイルランドの世界遺産ジャイアンツ・コーズウェーで撮影された写真を加工したものになります。

 ギターが高らかに始まりを告げる名曲「The Song Remains The Same (邦題:永遠の詩)」。ジミー・ペイジがご機嫌なギターリフを聴かせてくれるハードロックの名曲です。本サイトのサイト名もこの楽曲から取らせて頂きました。全編通して天にも昇るようなギターサウンドに、跳ねるようなベース、パワフルなドラムと躍動感溢れる演奏に痺れます。歌が始まると急にまったりムードになりますが、途中から勢いを取り戻し、中盤からはロバート・プラントの超ハイトーンボイスがキャッチーなメロディを届けます。高揚感を煽り立てる素晴らしい楽曲です。そのままの流れで続くのは、名バラード「The Rain Song」ビートルズジョージ・ハリスンに、ZEPにはバラードがないのが弱点と言われたことを根に持って作り上げたのがこの楽曲なのだとか。前曲のハイテンションとは対照的に、演奏はまったりしていて歌はアンニュイです。ジョン・ポール・ジョーンズが弾くメロトロン(オーケストラのような音色)が、ゆったりとしたこの楽曲を彩ります。憂いを帯びていて美しく、そして終盤の盛り上げ方はとてもドラマチック。聴いていると目頭が熱くなります。この2曲の超名曲でもお腹いっぱいですが、そこからは陽気な楽曲が続きます。「Over The Hills And Far Away」はアコギで小気味良く奏でられるイントロから徐々に盛り上がっていきます。グルーヴ感のあるファンキーなリズム隊も心地良いですね。ポップでキャッチーな歌メロと、躍動感のある演奏でとても開放的なので、気分が明るくなります。続く「The Crunge」はノリの良いファンク曲ですが、リズムに乗ろうとすると変拍子(9/8拍子+8/8拍子)が邪魔をし、軽快なのに中々すんなりリズムに乗れないのがこの曲の特徴というか魅力でしょう。笑 ジョーンズのグルーヴィなベースと、ジョン・ボーナムのパワフルなドラムがインパクト大で、陽気で楽しいです。
 アルバム後半は「Dancing Days」で幕開け。耳に残るリフをひたすら反復する、中毒性のある楽曲です。陽気で賑やかな演奏が気持ち良いですね。続いてレゲエ風の楽曲「D’yer Mak’er」。「D’yer Mak’er」は「Did you make her? (君が彼女にそうさせたのか?)」の意味。発音すると「ジャマイカ」と聞こえるのだそうで、英国に古くからあるジョークが元になっています。これにジャマイカ発祥のレゲエを掛けたのだとか。ボーナムの叩く、非常にパワフルでリズミカルなドラムを中心に、ノリノリな演奏と歌で意外にやみつきになるんです。続く「No Quarter」はジョーンズの趣味で溢れたプログレ風のスペイシーなナンバーです。どよーんとしてダークで幻想的。ジョーンズの弾くオルガンが全体を神秘的なものに仕立て、ドラムは力強いのに意外にも楽曲の雰囲気をぶち壊していません。歌も怪しげな雰囲気ですね。中盤の浮遊感に満ちた演奏パートも魅力的です。異色な雰囲気でアルバムにアクセントを与えると、ラストはボーナムのカウントで始まる正統派ロックナンバー「The Ocean」。前半は骨太なハードロックを展開、ミドルテンポですが跳ねるように爽快です。終盤はちょっと古いロックンロール調に変わりますが、前半の陽気な雰囲気は保ったまま楽しげにアルバムを締め括ります。なお表題曲「Houses Of The Holy」はアルバムの流れにそぐわないからか、次作『フィジカル・グラフィティ』に収録されることになりました。

 バラエティ豊かな楽曲群ですが、寄せ集めではなく違和感なく聴かせるアルバムの流れにも強いこだわりを感じます。穏やかな休日に聴くもよし、「The Rain Song」が映える雨の日に聴いてもよし。個人的にレッド・ツェッペリンを好きになるキッカケになった作品なので、思い入れも強いです。

Houses Of The Holy
Deluxe Edition (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Houses Of The Holy
(2014 Remastered)
Led Zeppelin
 
Physical Graffiti (フィジカル・グラフィティ)

1975年 6thアルバム

 スタジオ盤唯一の2枚組の大作『フィジカル・グラフィティ』。『レッド・ツェッペリン III』から『聖なる館』までのアウトテイクと、新録のヘヴィなハードロックを収録しています。そのボリュームからレッド・ツェッペリンでは比較的ハードルの高い作品ですが、名曲も多く、聴けば聴くほどその魅力が増す作品です。2作ごとに実験的な作品とその路線の集大成的な作品を繰り返していた彼ら。前作でレゲエなどヨーロッパを越えた音楽まで手を広げ、本作では中東音楽をエッセンスとして取り入れたハードロックの超名曲「Kashmir」を生み出しました。
 1973年の米国ツアーを大成功に収めたレッド・ツェッペリンですが、ジョン・ポール・ジョーンズが脱退を希望。マネージャーのピーター・グラントの説得によって思い止まり、1974年から本作のレコーディングを開始しました。なお前作では驚異的な高音を聴かせたロバート・プラントは喉を痛めてしまい、高音という武器は失ってしまいました。しかし渋さが増して、色気のある魅力的な歌唱を聴かせてくれます。
 ジャケットアートはニューヨークのアパートの写真ですが、窓がくり貫かれており、メンバーの写真等が描かれた内側のカードを差し替えることで窓から覗く光景が変わるという仕掛けが施されています。
 
 
 1枚目は硬派なハードロック作品で、これ単品でも十分に楽しめる作品に仕上がっています。ミドルテンポ中心ですが、ヘヴィなサウンドや印象的なギターリフによって緊張感に満ち、スリリングでカッコ良く仕上がっています。
 レコードでいうA面(1枚目前半)はヘヴィな「Custard Pie」で幕を開けます。ヘヴィなリフをはじめ重厚なサウンドで緊張感に溢れています。ドラムも一撃一撃が実に重たい。リラックスして聴ける前作とは全く空気感が違いますね。プラントは喉を潰して声質がざらついてしまいましたが、それでもカッコ良さは変わらずです。続く「The Rover」も重厚感のある楽曲です。ジミー・ペイジのギターリフが印象的で、ブルージーかつヘヴィな音はとても粘っこい。力強いドラムもインパクトがありますね。キャッチーな歌のおかげかリズム隊かその両方か、結構グルーヴィで心地良く聴けます。実は『聖なる館』のアウトテイクだったのだとか。「In My Time Of Dying」は11分に及ぶ大作です。気だるげなスライドギターで始まり、歌もだるそうな感じ。4分手前から緊張感を増してテンポアップ。荒っぽく雑なギターが警告音のように煽ります。そして何と言ってもジョン・ボーナムのドラムが凄くて、楽曲全編を通して非常にパワフルなドラムでメリハリをつけて、楽曲がだれるのを防ぎます。終盤のハイテンションは中々スリリングです。
 レコードB面「Houses Of The Holy」は本来前作に収録されるはずだった楽曲ですが、「Dancing Days」と雰囲気が被るため省かれたのだそう。前作の流れを汲んでメロディラインはキャッチー、そしてグルーヴィでノリノリです。但しペイジのギターリフやジョーンズのベースがゴリゴリとした質感で、ヘヴィなサウンドは確かに前作向きではないかもしれませんね。キャッチーでリズミカルなのにヘヴィというアンバランスな仕上がりで個性的です。ギターリフがとてもカッコ良い「Trampled Under Foot」は、B’zの名曲「BAD COMMUNICATION」の元ネタとしても知られています。笑 ファンキーでノリは良いのですが、演奏はヘヴィで緊張感に満ちています。ジョーンズの鍵盤が活躍しており、ペイジのギターと絡んでスリルを演出しています。そして8分半に渡る「Kashmir」は本作のハイライトにして、中期ZEPの超名曲。中東音楽を取り入れつつ、ZEP流にうまく昇華したこの楽曲はスケール感があってドラマチックで、あまりにもカッコ良いんです。クイーンレインボーなど他のバンドもこの楽曲を真似て中東音楽を取り入れていますが、ZEPほどうまく昇華できていない感じがします。ズズズッ…ズズズッと単調なリフは、ストリングスの彩りによって怪しげかつ荘厳な印象に仕上がり、そしてピリピリと緊迫した空気を醸し出しています。プラントの歌は渋くて漢の哀愁が漂い、そこにブラスが加わってドラマチックに盛り上げます。終盤ではボーナムのドラムも恐ろしいほどのテンションに。ハードロック王者の貫禄を見せつける素晴らしい名曲です。

 2枚目はアウトテイクが中心です。1枚目に比べると纏まりは弱く楽曲も一見地味なのですが、彼らの音楽性の幅広さを知ることができ、また聴けば聴くほど味わい深い楽曲群。全体的にゆったりとしているので、リスナーに緊張を強いる1枚目を聴いた後の骨休めに向いているかもしれません。
 まずはレコードでいうC面(2枚目前半)、1曲目の「In The Light」は9分近い楽曲です。中東音楽やインド音楽を取り入れたエスニックな楽曲で、ジョーンズのシンセによって怪しくミステリアスな雰囲気が漂います。似た雰囲気を持つ超名曲「Kashmir」と比べると劣ってしまいますが、件の名曲よりもまったり心地良く聴けます。「Bron-Yr-Aur」はアコースティックなインストゥルメンタルで、『III』のアウトテイク。僅か2分ですが、心が洗われるかのような美しさに癒されます。続く「Down By The Seaside」は『IV』のアウトテイク。リラックスした空気が漂い、浜辺でまったりと過ごす光景が目に浮かびます。中盤だけは転調してややシリアスな雰囲気ですが、終盤またリラックスムードに戻ります。「Ten Years Gone」は憂いを帯びたバラード。序盤は派手さはないもののメインリフは印象的。中盤で泣きのギターが渋く哀愁を醸し出すと、プラントも感傷的な歌を披露して胸に染み入ります。終盤でメインリフが戻ってくると、序盤ではどうってことなく感じた印象がここではドラマチックな印象へと様変わりしているんですよね。
 ここからはレコードD面。「Night Flight」は『IV』のアウトテイクで、明るくポップな雰囲気。プラントの嬉々とした歌が楽曲をリードします。続く「The Wanton Song」はDisc1に入っていてもおかしくないヘヴィでカッコ良いギターリフが特徴的。サウンドは硬質ですが、全体的にグルーヴィで躍動感に溢れており、爽快な印象です。本作中最も明るい「Boogie With Stu」は『IV』のアウトテイクで、ローリング・ストーンズ元メンバーのイアン・スチュワートがピアノで参加。陽気でリラックスした雰囲気のロックンロールです。「Black Country Woman」は『聖なる館』のアウトテイク。カントリー調の土臭い楽曲ですが、途中からパワフルなドラムが加わって力強いロックンロールへ変わります。ハーモニカが渋いですね。そして2枚組アルバムを締め括るのは「Sick Again」。ヘヴィなハードロック曲ですが、やや気だるげな印象。ボーナムが時折放つマシンガンのようなドラムが、散漫になりがちな楽曲を引き締めていきます。
 
 
 ビートルズの『ホワイトアルバム』のように、散漫ながらもアイディアの宝箱のように魅惑的な楽曲の数々。ボリューミーな作品なので最初の1枚には少しハードルが高いものの、レッド・ツェッペリンが好きな人に向いている、素晴らしい名盤です。

Physical Graffiti
Deluxe Edition (2015 Remastered)
Led Zeppelin
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