🇬🇧 Led Zeppelin (レッド・ツェッペリン)

レビュー作品数: 11
  

スタジオ盤

Led Zeppelin I (レッド・ツェッペリン I)

1969年 1stアルバム

 レッド・ツェッペリン、通称ZEPまたはZEPP。全世界で3億枚以上を売り上げる、ハードロック界どころかロック界でも屈指のモンスターバンドです。
 三大ギタリストとも呼ばれるジミー・ペイジ(Gt)と、スタジオミュージシャンとして活躍していたジョン・ポール・ジョーンズ(B/Key)(愛称:ジョンジー)、そして無名の新人ロバート・プラント(Vo)(愛称:パーシー)とジョン・ボーナム(Dr)(愛称:ボンゾ)の4人から成ります。ジミー・ペイジは三大ギタリストというたいそうな肩書きとは裏腹に演奏はヘタウマ系。但し70年代前半頃までのリフメイカーとしての天才的な才能や、またZEPのスタジオ盤を魅力的なものに仕上げたプロデューサーとしての手腕等は素晴らしい実力です。

 燃え落ちるヒンデンブルク号を点描で描いた飛行船のジャケットがとても印象的な本作は、事前にライブ演奏を重ねて楽曲を温めていたこともあり、僅か36時間、たった9日で録音を終えています。 先人たちがブルースロックをハードに演奏しただけであるのに対し、本作は静と動のダイナミックな対比や、オリジナリティを持ち込んで「ハードロック」を形作っています。なお、このオリジナリティの解釈が問題で、原曲がわからなくなるくらいに独自アレンジされた、または一部アイディアを拝借して膨らませた楽曲について、原曲者がクレジットされていないとして盗作問題がしばしば指摘されます。

 最初の一音から、これから何が始まるんだろうとワクワクさせてくれる「Good Times Bad Times」。オープニングから強烈なハードロックナンバーです。「Babe I’m Gonna Leave You」で更に激しさを増した後、ブルージーに奏でられるウィリー・ディクスンのカバー曲「You Shook Me」ではペイジのギターとプラントのボーカルが絡み合う魅力的な楽曲です。そして前半の山場「Dazed And Confused」。この混沌とした楽曲は、静と動の対比が凄まじいんです。暗く不気味でヘヴィな前半パート、そして間奏の混沌とした場面ではヴァイオリンの弓でギターを弾くという試みがなされております。そしてボーナムのドラムを合図に、突如鬼神のように暴れ回るこの変貌っぷりが非常にスリリング。緊張感が最高潮に達します。
 レコードでいうB面、後半1曲目の「Your Time Is Gonna Come」ではジョーンズの奏でるハモンドオルガンがフィーチャーされます。途切れなく続く「Black Mountain Side」はペイジによるアコギに焦点を当てたインストナンバー。そして後半の山場はノリノリのロックンロールナンバー「Communication Breakdown」でしょう。印象的なギターリフ、激しいリズム隊。プラントの歌唱も負けていません。2分半の短い楽曲ですが、取っ掛かりに最適な疾走曲です。そしてウィリー・ディクスンのカバー「I Can’t Quit You Baby」を挟んで8分半の大作「How Many More Times」。場面展開が強烈でスリルがあります。

 衝撃の1stアルバムとも評される、ハードロック時代の幕開けを飾った作品です。非常に完成度が高く、レッド・ツェッペリンは本作から順に聴いていっても良いでしょう。

Led Zeppelin I (Deluxe Edition) (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin I (2014 Remastered)
Led Zeppelin
 

Led Zeppelin II (レッド・ツェッペリン II)

1969年 2ndアルバム

 ライブツアーの過密スケジュールの合間を縫ってレコーディングされた本作。劣悪な環境下での録音のため音は荒々しいですが、混沌としてブルージーな前作からブルース臭が若干薄れ、より尖ったサウンドによってハードロックの基本形を確立しました。ハードロックの聖典として非常に人気の高い作品で、ビートルズの『アビイ・ロード』を蹴落として全米1位を獲得、全英でも1位を獲得しました。
 ジャケットはドイツ帝国陸軍航空隊の写真にメンバーの顔写真をコラージュしたものです。なお、ロバート・プラントが作詞に挑むものの、先人からの引用で盗作問題が持ち上がります。「Whole Lotta Love」ではウィリー・ディクスン、「The Lemon Song」ではハウリン・ウルフに訴えられる事態に。次作以降は完全オリジナルとなるのですが…。

 お手本のようなハードロック曲「Whole Lotta Love」で幕開け。渋いギターリフで始まり、ベースが加わり、ボーカル、そしてドラムと順に楽器が増えていきます。ヘッドホンやイヤホンで聴くと顕著ですが、間奏では音が左右あちこちに行き来して脳を掻き乱します。そして官能的なボーカル。続く「What And Is What Should Never Be」では静かながらサビで爆発します。キンキンと鋭いギターが鳴り響く「The Lemon Song」、神聖なオルガンが鳴り響く「Thank You」と続きます。「Thank You」はプラントが奥さんに捧げた楽曲だそうです。
 後半は「Heartbreaker」で始まります。これも「Whole Lotta Love」に匹敵するカッコ良さ。ギターもカッコいいですが、ジョン・ポール・ジョーンズのバキバキのベースに痺れます。続く「Living Loving Maid (She’s Just A Woman)」もノリがよい楽曲です。「Ramble On」を挟んで、ジョン・ボーナムをフィーチャーした「Moby Dick」でドラムソロを披露。そしてラスト曲「Bring It On Home」は静かに始まります。このまま静かに終えるのかと思いきや、後半で突如ヘヴィに。最後まで展開の面白い作品です。

 前作に負けず劣らず人気の本作(前作以上に人気かも…)。駄作のないレッド・ツェッペリン、こちらもおすすめできる作品です。

Led Zeppelin II (Deluxe Edition) (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin II (2014 Remastered)
Led Zeppelin
 

Led Zeppelin III (レッド・ツェッペリン III)

1970年 3rdアルバム

 デビューからライブ続きで、合間の過酷なレコーディングと、披疲労もピークに達していた彼ら。ウェールズの大自然に囲まれたコテージ、ブロン・イ・アーで長期間の休息を取ってリフレッシュしたメンバーは、その中で強いインスピレーションを培い、本作の制作に大きく影響したと言われています。ケルト音楽に影響を受けてアコースティックに寄った作りになっております。ファンは戸惑ったものの商業的には成功を果たし、しかし批評家からは酷評された作品です。しかし次作でこのアコースティック路線の集大成とも言える大傑作を作り上げたことから、その布石としての本作だったと位置づけられ再評価されたという経緯があります。

 ロバート・プラントの作詞力も向上し、ケルト民話や北欧神話等を題材にしています。その歌詞の変化が表れているヴァイキングを描いた楽曲「Immigrant Song」が有名で、取っ掛かりには良いかもしれませんが、本作における魅力は「Since I’ve Been Loving You」に尽きるでしょう。ブルージーで官能的。プラントの色気のあるボーカル、間奏のギターソロ、ここぞというときのドラム、味付けのオルガンもいい味を出しています。とても渋くて、完成度の高い1曲だと思います。
 後半はアコースティック楽曲の比率が多いですが、レコードB面の1曲目「Out On The Tiles」は、ライブではイントロだけ切り取られて次作の「Black Dog」に繋ぐという演出がなされています。「That’s The Way」はアコースティック楽曲の中でも特に美しいメロディを持つ楽曲です。しんみり聴かせてくれます。

 前の2作に比べるとハードさやスリリングな展開は後退し、アコースティックの和やかな雰囲気の楽曲が増えました。少しクオリティにばらつきがあるものの、美しいメロディを味わうことのできる作品ではあります。

Led Zeppelin III (Deluxe Edition) (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin III (2014 Remastered)
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Led Zeppelin IV (レッド・ツェッペリン IV)

1971年 4thアルバム

 「天国への階段 (Stairway To Heaven)」を収録していることでも有名な、レッド・ツェッペリンの最高傑作と名高い本作。アメリカで大人気となったこの楽曲はシングルカットされず、結果としてシングル感覚で『レッド・ツェッペリン IV』がバカ売れすることとなり、全米で2300万枚以上、全世界で3000万枚以上のセールスを記録しました。なお本作は便宜上『IV』と呼ばれていますが、正式なタイトルが無く、4つの不思議なシンボルが描かれているだけ。そのため『フォーシンボルズ』とか、シンボルのデザインから『Zoso』と呼ばれることもあります。
 前作を酷評した批評家たちを黙らせてやろうという意気込みを感じられ、アコースティックをうまく取り入れたハードロックで、高い緊張感を強いてくる作品です。結果、非の打ち所のない作品が出来上がって批評家も大絶賛したので御の字でしょう。

 「Black Dog」、そして続く軽快な「Rock And Roll」はよくテレビでも流れている代表曲ですね。どちらもハードロックの名曲でカッコいい。続く「Battle Of Evermore」はアコースティック楽曲ですが、前作のアコースティック楽曲と比べると幾分か緊張感があります。
 そして4曲目「Stairway To Heaven」。これが凄まじい名曲で、イントロのアルペジオ、同じ歌メロを反復しながら徐々にテンポアップし盛り上がる展開、そしてラストサビ直前の驚異的なギターソロ等魅力たっぷりな8分の大作です。抽象的な歌詞も注目されました。クラシック界の巨匠ヘルベルト・フォン・カラヤンも絶賛した名曲です。アルバムラストにこそ相応しいであろうこの楽曲がアルバムの真ん中に来ているのに疑問が湧きますが、実はレコード時代はA面の最終曲を飾っていたんですよね。CDやデジタル音楽になってA面/B面という切れ目の概念がなくなったため、最終曲ではなくなってしまったのでした。
 前半にバンドの代表曲が固まっていますが、後半も佳曲揃いです。ヘヴィなドラムが印象的でそして意外とポップな「Misty Mountain Hop」、トラッド的な雰囲気が漂う「Four Sticks」。そして本作唯一の癒し曲「Going To California」では優しく美しいメロディを聴くことができます。ラストは「When The Levee Breaks」ですが、ジョン・ボーナムのパワフルなドラムが強烈です。これもカッコいいんです。

 完成度の高さは文句なしですが、「名盤だぞ聴いてみろ」という風格やオーラを音からビシビシ感じ取れ、聴く者に緊張感を強いてきます。真剣に向き合うと聴き疲れする作品でもあります。

Led Zeppelin IV (Deluxe Edition) (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Led Zeppelin IV (2014 Remastered)
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Houses Of The Holy (聖なる館)

1973年 5thアルバム

 あまりハードではないロックアルバムなので、ハードロックバンドのレッド・ツェッペリンの名盤として本作が紹介されることはないのですが、個人的にはこれが最高傑作だと思っています。バラードあり、ファンクやレゲエ風音楽あり、そして正統派ハードロックもありと、バラエティの豊富さではバンド史上群を抜いています。前作が良くも悪くも「いかにも名盤」といった風格を醸し出して聴く側にも緊張を強いるものでしたが、全体的に明るく陽気な楽曲の多い本作は敷居の高さは感じず、リラックスして聴けるのも特徴です。
 デザイナー集団であるヒプノシスによって製作されたジャケットは、アイルランドの世界遺産ジャイアンツ・コーズウェーで撮影された写真を加工したものになります。

 ギターが高らかに始まりを告げる名曲「The Song Remains The Same (邦題:永遠の詩)」は、優れたギターリフを聴かせてくれるハードロックの名曲です。本サイトのサイト名もこの楽曲から取らせて頂きました。天にも昇るようなギターサウンドに、ロバート・プラントの超ハイトーンボイスも聴けます。そのままの流れで続く名バラード「The Rain Song」。ゆったりとしたこの楽曲を彩りを与えるオーケストラのような音色は「メロトロン」という楽器になります。ドラマチックな楽曲です。
 この2曲の超名曲でもお腹いっぱいですが、そこからは陽気な楽曲が続きます。アコギで奏でられるイントロから徐々に盛り上がっていく「Over The Hills And Far Away」はサビのプラントの歌メロもキャッチーです。続く「The Crunge」は、ファンクなのに踊れないような変拍子。グルーヴィなベースとパワフルなドラムがインパクト大で、ノリも良い楽曲です。明るい「Dancing Days」を挟んで、レゲエ風の楽曲「D’yer Mak’er」。この「D’yer Mak’er」という単語は英国人が発音すると「ジャマイカ」と聞こえるのだそうです。そしてジョン・ポール・ジョーンズの趣味で溢れた、プログレ風の静かでスペイシーな「No Quarter」でこのアルバムにアクセントを与え、そして正統派ロックナンバー「The Ocean」で締めます。なお表題曲「Houses Of The Holy」はアルバムの流れにそぐわないからか、次作『フィジカル・グラフィティ』に収録されることになりました。

 バラエティ豊かな楽曲群ですが、寄せ集めではなく違和感なく聴かせるアルバムの流れにも強いこだわりを感じます。穏やかな休日に聴くもよし、「The Rain Song」が映える雨の日に聴いてもよし。個人的にレッド・ツェッペリンを好きになるキッカケになった作品なので、思い入れも強いです。

Houses Of The Holy (Deluxe Edition) (2014 Remastered)
Led Zeppelin
Houses Of The Holy (2014 Remastered)
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Physical Graffiti (フィジカル・グラフィティ)

1975年 6thアルバム

 スタジオ盤唯一の2枚組の大作『フィジカル・グラフィティ』。『レッド・ツェッペリン III』から『聖なる館』までのアウトテイクと、新録のヘヴィなハードロックを収録しています。そのボリュームからレッド・ツェッペリンでは比較的ハードルの高い作品ですが、名曲も多く、聴けば聴くほどその魅力が増す作品です。
 2作ごとに実験的な作品とその路線の集大成的な作品を繰り返していた彼ら。前作でレゲエなどヨーロッパを越えた音楽まで手を広げ、本作では中東音楽をエッセンスとして取り入れたハードロックの超名曲「Kashmir」を生み出しました。

 1973年の米国ツアーを大成功に収めたレッド・ツェッペリンですが、ジョン・ポール・ジョーンズが脱退を希望。マネージャーのピーター・グラントの説得によって思い止まり、1974年からレコーディングを開始しました。なお前作では驚異的な高音を聴かせたロバート・プラントは喉を痛めてしまい、高音という武器は失ってしまいました。しかし渋さが増して、色気のある魅力的な歌唱を聴かせてくれます。

 ジャケットアートはニューヨークのアパートの写真ですが、窓がくり貫かれており、メンバーの写真等が描かれたカードを差し替えることで窓から覗く光景が変わるという仕掛けが施されています。

 1枚目は硬派なハードロック作品で、これ単品でも十分に楽しめる作品に仕上がっています。ミドルテンポ中心ですが、ヘヴィなサウンドや印象的なギターリフによってカッコ良く仕上がっています。ヘヴィな「Custard Pie」で幕を開けたあと、続く「The Rover」も重厚感のある楽曲です。「In My Time Of Dying」はジョン・ボーナムのドラムがフィーチャーされた楽曲で、11分に及ぶ大作です。「Houses Of The Holy」は本来前作に収録されるはずだった楽曲で、キャッチーなメロディラインですが、ヘヴィなサウンドは確かに前作向きではないかもしれませんね。ギターリフがカッコいい「Trampled Under Foot」はB’zの名曲「BAD COMMUNICATION」の元ネタとしても知られています。笑 そして本作のハイライトであり後期ZEPの名曲「Kashmir」。中東音楽を取り入れつつ、ZEP流にうまく昇華したこの楽曲は渋くて、あまりにもカッコいい。オーケストレーションもあって荘厳な雰囲気を醸し出しています。クイーンやレインボーなど他のバンドも真似ていますが、ZEPほどうまく昇華できていない感もあります。

 2枚目はアウトテイクが中心です。1枚目に比べると纏まりは弱く楽曲も一見地味なのですが、彼らの音楽性の幅広さを知ることができ、また聴けば聴くほど味わい深い楽曲群。全体的にゆったりとしていて、緊張感を強いる1枚目の骨休めに向いているかもしれません。1曲目の「In The Light」は中東音楽やインド音楽を取り入れたエスニックな楽曲で、怪しくミステリアスな雰囲気が漂います。心が洗われるかのような美しいアコースティック曲「Bron-Yr-Aur」や、1枚目に入っていてもおかしくないヘヴィなギターリフが特徴的な「The Wanton Song」や「Sick Again」、本作中最も明るい「Boogie With Stu」等々、魅力的な楽曲が詰まっています。

 ビートルズの『ホワイトアルバム』のように、散漫ながらもアイディアの宝箱のように魅惑的な楽曲の数々。ボリューミーな作品なので最初の1枚には少しハードルが高いものの、レッド・ツェッペリンが好きな人に向いている、素晴らしい名盤です。

Physical Graffiti (Deluxe Edition) (2015 Remastered)
Led Zeppelin
Physical Graffiti (2015 Remastered)
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Presence (プレゼンス)

1976年 7thアルバム

 元々『Obelisk (オベリスク)』というタイトルで発表予定だった本作。ヒプノシスによるジャケットに描かれた、モノリスのような謎の黒い物体を囲む家族。この黒い物体のオブジェをゲリラ的に各所に配置して話題性を持たせようと計画していたところ、スタッフがメディアにリークしてしまったために計画は失敗。そしてアルバムタイトルも変更を余儀なくされますが、デザイナーの「このバンドには絶対的な存在感がある」という発言を気に入ったジミー・ペイジによって本作は『Presence (プレゼンス=存在感)』と名付けられました。
 コアなファンには最高傑作の評価を与えられることも少なくない本作は、意外なことにオリジナルアルバム8枚の中では最も売上が少ないです。それは本作の後に間もなくしてリリースされた映画サントラ兼ライブ盤の『永遠の詩(狂熱のライヴ)』に流れていってしまったためとも言われています。

 ペイジが強い主導権を発揮して作り上げた本作は、短期間のレコーディングで集中的に制作され、かなりヘヴィな仕上がりです。印象的なギターリフでそのまま1曲を作り上げる手法が取られていますが、ヘヴィでタイトな作風は裏を返すと単調な印象も抱きます。
 1曲目を飾る「Achilles Last Stand」は本作のハイライト。というよりこのアルバムを価値あるものにしているのは、あまりに凄まじい緊張感を放つこの楽曲の存在に依るところが大きいです。10分強の大作である本楽曲は、タイトに刻むジョン・ポール・ジョーンズの硬質なベースと、ドタバタと好き勝手暴れ回るジョン・ボーナムのドラムの上を、ペイジのメタリックなギターリフが刻みます。交通事故で大怪我を負ったロバート・プラントが、復帰明けのレコーディングでこの楽曲を聞いてひっくり返ったというエピソードから「Achilles Last Stand」という名がついたとも。とにかく凄まじい1曲で後期レッド・ツェッペリンの名曲です。続いてヘヴィなリズム隊が印象的な「For Your Life」、そしてヘヴィさを保ちながらも跳ねたリズムでノリの良い「Royal Orleans」と続きます。
 アルバム後半は「Nobody’s Fault But Mine」で始まります。これもヘヴィな演奏がカッコいいんです。「Candy Store Rock」はタイトルのとおり(?)、キャンディストアのようなポップさを内包した、でもサウンドはヘヴィなロックナンバーです。続く「Hots On For Nowhere」もキャッチーでノリの良い楽曲です。そしてラスト曲「Tea For One」、残念ながらこれが頂けない。アルバムを締めるのに相応しいブルージーなナンバーですが、どう聴いても自身の「Since I’ve Been Loving You」の焼き直しで、しかも元の曲の方が出来が良いという…。

 アルバム全体に単調な感じもあるのですが、それを吹き飛ばす強烈な衝撃を与えてくれる「Achilles Last Stand」という超強力な1曲が、本作を輝かせてくれます。

Presence (Deluxe Edition) (2015 Remastered)
Led Zeppelin
Presence (2015 Remastered)
Led Zeppelin
 
In Through The Out Door (イン・スルー・ジ・アウト・ドア)

1979年 8thアルバム

 レッド・ツェッペリンの解散前最終作。ジミー・ペイジが主導権を握った前作とはうってかわり、本作はジョン・ポール・ジョーンズ主導で制作された作品です。ハードロックではなくポップ寄りな作風で、「レッド・ツェッペリン唯一の迷作」などの不名誉な評価も見かけます。ZEPは試験的なアルバムを出した後に次作で名盤を作り上げ、試験的な前作の評価も上がるというパターンが多いのですが(『III』の後の『IV』、『聖なる館』の後の『フィジカル・グラフィティ』)、試験的な本作の発表後に、ドラマーのジョン・ボーナムの急死によってバンドは解散してしまうことになってしまいます。その結果本作の評価はイマイチのまま。
 でもそんな評価に惑わされることなかれ。とても良い作品だと思います。『聖なる館』のように、陽気でリラックスして聴ける作風が好きな人にはすんなり受け入れられる名盤だと思います。

 ヒプノシスによってデザインされたジャケットアートは全部で6種類。当時は茶色い外袋に入れて封をされていて開けてみるまで分からない…という、CD複数枚商法の走りのような、ガチャのようなアイディアで売られたようです。

 華やかさとハードさのバランスを上手く保った「In The Evening」で幕を開けます。オリエンタルな空気を纏ったこの楽曲は、ギターリフとシンセサイザーが単調な旋律を奏でながらも、妙にクセになります。続く「South Bound Saurez」はジョーンズのピアノが跳ねていて心地の良いポップな1曲です。そして「Fool In The Rain」は同じフレーズをひたすら反復する前半パート。そして中盤、突如として賑やかなサンバが繰り広げられます。その変貌っぷりにビックリですね。終盤はまた前半と同じフレーズを繰り返します。ドラムのリズムはTOTOのジェフ・ポーカロに影響を与え、名曲「Rosanna」を生み出すに至ったんだとか。そして続くのは、ノリの良いロックンロール曲「Hot Dog」。陽気で気分が明るくなります。そういえばZEPはこういう底抜けに明るいロックンロール曲って意外と少ない気もします。
 アルバム後半は10分超の大作「Carouselambra」で幕開け。シンセサイザーを使用した、プログレハードに通じる作風です。ジョーンズの奏でる明るいシンセサイザーと対照的に、ジョン・ボーナムのドラムはかなりヘヴィで、楽曲を魅力的なものにしています。そして本作のハイライト「All My Love」。このラブバラードは、ロバート・プラントが、病気で早くに亡くなった息子カラックを想って作った楽曲です。プラントの辛い経験が切ない歌唱に表れていて、とても胸に染み涙を誘います。そしてラスト曲「I’m Gonna Crawl」は、シンセサイザーが鳴るもののブルージーな雰囲気を漂わせています。

 1977年に息子が夭逝したことにより、悲嘆にくれたプラントは表舞台から姿を消し、バンドも活動休止状態に。長い休息を経て1978年5月、再度バンドは集まって制作を再開。そして本作の制作に至ったのでした。ジョーンズによる陽気な作風が目立ちますが、それ故になおのこと「All My Love」におけるプラントの悲しみが際立って聴こえてきます。そして1980年、ジョン・ボーナムの急死という悲劇がバンドを襲い、レッド・ツェッペリンは新ドラマーを検討するも、最終的に「解散」という選択肢を選んだのでした。

In Through The Out Door (Deluxe Edition) (2015 Remastered)
Led Zeppelin
In Through The Out Door (2015 Remastered)
Led Zeppelin
 
Coda (最終楽章(コーダ))

1982年 9thアルバム

 ジョン・ボーナムの死後、解散を選んだレッド・ツェッペリン。しかし1980年の解散後も、レコード会社との契約の都合でもう1枚アルバムを出さなければならなかったため、未発表曲集として解散後に本作をリリースすることになります。亡きボーナムに捧げてかドラムが目立つようなミックスになっていて、彼のダイナミックなドラムプレイを楽しめるとともに、レッド・ツェッペリンには彼のドラム無しには続けられなかったと痛感します。

 非常にノリの良い「We’re Gonna Groove」で始まります。ジョン・ポール・ジョーンズのベースが非常に強烈なグルーヴ感を生み出しています。ベン・E・キングのカバー曲ですが、1970年のロイヤル・アルバート・ホールでのライブ音源を収録したものです。「Poor Tom」は『レッド・ツェッペリン III』のアウトテイク。ボーナムのドラムに強烈な存在感があります。その上に乗るのがアコギなので、なおのことドラムが際立ちます。続く「I Can’t Quit You Baby」もライブ音源を収録。ブルージーな雰囲気で、ジミー・ペイジの荒々しいギターやパワフルなドラムなど、とても迫力があります。「Walter’s Walk」は『聖なる館』のアウトテイク。滅茶苦茶カッコいい。尖りまくったギターにうねるようなベース、ドラムがぶち壊れるんじゃないかってくらいに破壊力抜群のドラムなど非常に強烈。ロバート・プラントの声はこの時点で既に高音が出なくなっていますが、渋さを持っていて痺れるんですよね。
 アルバム後半は「Bonzo’s Montreux」を除いた全てが『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』のアウトテイク。「Ozone Baby」はヘヴィなドラム・ベースとは裏腹に、ポップなメロディ。「ウーウー」とプラントの歌唱がキャッチーです。「Darlene」は軽快でポップな感じで聴き心地の良い1曲です。ピアノをはじめ、ご機嫌な感じが伝わってきます。続く「Bonzo’s Montreux」は1976年にスイスのモントルーのスタジオで録音したボーナムのパーカッションソロにペイジが少し加工を施したものだそうです。ラスト曲「Wearing And Tearing」は非常にグルーヴ感のある疾走曲です。音の塊が迫ってくる。そしてノリが良くて、とてもカッコいい。こんな超名曲をアルバムに収めずに未発表にしていたなんて…。終わり方もカッコいい。

 未発表曲集だからといって侮ることなかれ。エネルギーに満ち溢れた非常にパワフルな作品で、聴かないのは勿体ない出来の良さ。ベスト盤には収録されていないので、これとベスト盤を買えばひと通りの入門にはなるかと思います。

Coda (Deluxe Edition) (2015 Remastered)
Led Zeppelin
Coda (2015 Remastered)
Led Zeppelin