🇯🇵 Liz Triangle (リズ トライアングル)

レビュー作品数: 19
  

同人作品:東方アレンジ①

SYMPATHY QUARTETTO

2008年 2ndアルバム

 同人音楽サークルのLiz Triangleは2008年に結成しました。2008年6月に森羅万象というサークルを結成、そのメンバーのうちkaztora(Arr)と、ほぼ全てのジャケットイラストも手掛けるlily-an(Vo)の2人によるサークルLiz Triangleが同年7月に立ち上がります。当初は森羅万象と同一(後継)サークルという立ち位置でしたが、2012年にはLiz Triangleと並行して森羅万象も復活。以降、両サークルは別物(姉妹サークル)として扱われるようになります。
 なお東方アレンジにおいてはLiz Triangleの二人に、azuki(Lyrics)、eba(Gt)、中島岬(Str)、Peco(Vo)、aspir(Gt)、akari(Vo)らを加えた「りすとら」名義のサークルで活動しています。東方アレンジのサークル名義は「りすとら」なのですが、CD発行名義は「Liz Triangle」というのがややこしい…。
 10月にオリジナルの同人1stアルバム『Ein』を頒布、そして11月に東方アレンジ第1弾となる本作を頒布しました。

 「讃えよ桜、憂いよ胡蝶、集う御霊は雪月花」は後に『B1』にも再録された名曲です。ですが私はより洗練された『B1』バージョンを先に聴いていたので、こちらのアレンジはかなり粗削りな印象でした。和風な雰囲気が漂う「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」を軸にした楽曲を終えた後、スリリングな「ボーダーオブライフ」パートが始まるという組曲形式で意表をついてくるのですが、これが『東方妖々夢』のボス戦を想起させるとても秀逸なアレンジだと思います。
 「哀愁のドール師」は「the Grimoire of Alice」と「ブクレシュティの人形師」、「人形裁判 ~ 人の形弄びし少女」の3曲を混ぜたアレンジです。オルゴールやストリングスが不穏でダークな空気を生み出します。そこからテンポアップしてややゴシック感が増し、演奏は毒気を薄めたALI PROJECTと言った感じですね。lily-anの歌は探り探りで初々しいです。
 続いて「U.N.オーエンは彼女なのか?」をアレンジした「Scarlet night Secret girl」。演奏はチキチキと高速の打ち込みをバックに、不穏な空気を醸し出します。なおakariがボーカルを務めますが、歌で楽曲の狂気性を出しているのではないかと思うくらいに、かなり不安定で下手ウマです(他の楽曲を聴くに、意図的ではなく素のようです)。
 最後に「Sun’s Of Liberty」。「業火マントル」と「霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion」の混合アレンジです。akariの歌う電波ソングアレンジで、不安定な歌唱をおふざけな歌詞で茶化します。「幻想郷よ、私は帰ってきた」はガンダムネタですね。笑 後に同楽曲の混合アレンジで「RIA」(『B2』収録)という素晴らしい名曲を生み出しますので、本楽曲は埋もれ気味です…。

 僅か4曲入りですが、名曲「讃えよ桜、憂いよ胡蝶、集う御霊は雪月花」が入っているのがポイント高いです。ですが同楽曲は『B1』版の方が数段上で、この時点では演奏も歌唱も粗削りな感じ。

SYMPATHY QUARTETTO
Liz Triangle
 
散花

2009年 3rdアルバム

 2009年3月の東方オンリーイベント博麗神社例大祭6で頒布された、東方アレンジとしては2作目となる本作。なお合同では前月にLike a rabbitとの共作『LR First Strike!』を頒布しており、非常に速いペースで精力的に活動しています。この後も制作ペースは速くて多作ですが、クオリティもどんどん上がり洗練されていきます。本作では様々なスタイルのアレンジが試されていますが、どれも良い方向に機能していると思います。

 「人恋し、夢悟り」で幕開け。「さとり」と「こいし」の古明地姉妹をタイトルに示した本楽曲は、「少女さとり ~ 3rd eye」を軸に「ハルトマンの妖怪少女」の要素を少し加えています。憂いのあるストリングスから、ALI PROJECTばりのゴシックで怪しげな演奏を展開。初っ端からヴォコーダーを通した歌で狂気性を表現したり、可愛らしく歌ったりと表情豊かに歌います。そして原曲の持つメランコリックなメロディを活かしており魅力的なんです。
 続いて「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」のアレンジとなる名曲「Ficus glomerata」。タイトルはウドンゲ(フサナリイチジク)の学名で、鈴仙・優曇華院・イナバをイメージしたのでしょう。アコースティックな頭サビから、攻撃的なギターを鳴らしてテンションを高めます。何重にも重ねた音色豊かなギターが魅力を放ち、そしてメロディアスな歌は憂いを帯びていて切なくさせます。
 「kappaの演奏会」は「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」が原曲で、アコーディオンを活用してレトロ感溢れるオシャレなアレンジに仕上げています。アコギやウッドベース(?)が心地良く楽曲を彩ります。
 そして「Heart Of Glass」は「おてんば恋娘」のアレンジ。後に『DOUBLE NINE』でも再録。イントロから落ち着いたピアノとストリングスが、卒業式にも合いそうなノスタルジーを掻き立てます。そしてlily-anのアンニュイで優しい歌がこのノスタルジックなアレンジにピッタリで、感傷的なバラードに仕上がりました。Pecoの書く「散るの?」と「チルノ」を掛けた2番歌詞が印象的ですね。良いアレンジです。
 「東の国の眠らない夜」をアレンジした「メグルオト」は唯一のakariボーカル曲。シリアスな雰囲気ではありますが、かなり不安定な歌唱が気になります。サビ前のピアノや全体の雰囲気は何かのアニソンで聞いたことがあるような。
 ラスト曲は「幻想への御神渡り」。「神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field」をアレンジした楽曲で、後に『B2』に再録(再録版の方がキレがあってオススメです)。勇壮なドラムに、演奏と歌は和風の空気に満ちています。

 後の作品にも再録される楽曲が多く、本作から多くの名曲が生まれました。

散花
Liz Triangle
 
AQUA

2009年 5thアルバム

 夏のコミックマーケット76にて、オリジナル同人アルバム『F15H 80RN』と同時頒布された東方アレンジ第3弾です。『SYMPATHY QUARTETTO』と同様に短い4曲入りですが、本作以降は6曲入りがスタンダードになっていきます。

 「Rain After Tomorrow…」は「信仰は儚き人間の為に」のアレンジです。ゆったりとしたテンポで、アコースティックな編成にストリングスを加えた素朴で等身大な演奏と歌は、アットホームな温もりがあります。lily-anのメロディアスな歌も優しくて癒やされますね。
 続いて「楽 園 喜 劇」は「春色小径 ~ Colorful Path」をアレンジした楽曲です。哀愁を湛えたアンニュイな歌と、ジャジーでメロウな演奏で冒頭はしっとりした印象。ですがそこからテンポアップして、リズミカルな楽曲へと変わります。渋さを演出するオルガンが良い味を出していますね。
 「厄神様の通り道 ~ Dark Road」をアレンジした「運命の回り道」は、メタリックでヘヴィなギターとチープな打ち込みにギャップがありますが、全体的には原曲譲りのダークな雰囲気。そしてPecoが初めてボーカルを務めますが、個人的にはこの楽曲とラップの組み合わせに違和感があります。
 そして「恋色マスタースパーク」をアレンジした「Material Star」。優しい歌唱の頭サビで、耳馴染みのメロディを歌います。そこからヘヴィなギターと、チキチキとした高速の打ち込みで楽曲を牽引。ギターはカッコ良いですが、リズムの軽さがどうにもミスマッチな感じがして、ロックアレンジに徹してくれたら…なんて思ってしまいます。

 前作に引き続きアレンジの幅をどこまで広げられるか模索している感じですが、楽曲によっては合わないものも。個人的には落ち着いた前半2曲は好みなのですが、後半2曲がピンときませんでした。

AQUA
Liz Triangle
 
White Lotus...

2009年 6thアルバム

 東方星蓮船オンリーのボーカルアルバムで、「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」アレンジと言えばLiz Triangleという図式を打ち立てた名曲「White Lotus…」を収録しています。lily-anの描く、聖白蓮のジャケットアートもこのイメージに大きく貢献しています。

 Liz Triangleの代表曲でアルバムタイトルに冠した「White Lotus…」は「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」をアレンジした楽曲です。原曲を収録した『東方星蓮船 〜 Undefined Fantastic Object.』頒布の僅か1ヶ月足らずで本楽曲がニコニコ動画に投稿されました。スピード制作にも関わらず丁寧かつ高品質なアレンジで、Liz Triangleと言えば「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」というイメージを打ち立てました。優しく落ち着いたピアノに、シンセと打ち込みのビートが程良いポップさを加えます。そしてazukiによる原作を意識した歌詞を、lily-anがメロディアスに歌い上げます(これの原曲をlily-anが大好きなのだとか)。歌だけでなくコーラスワークも素晴らしい、文句のない名アレンジです。
 続く「錨の羅針盤」は「キャプテン・ムラサ」のアレンジ。大海原へ冒険に出るかのような勇壮なイントロで、カモメの鳴き声も港っぽさを感じられます。ですが歌が始まると少しダークな雰囲気へと変わり緊張が高まります。スリリングですが、原曲譲りのキャッチーなメロディで楽しませてくれます。
 「宝塔の微笑む先に」は「小さな小さな賢将」が原曲。しっとりとしたピアノと憂いを帯びた歌をゆったりとした3拍子に乗せて、メロディアスなバラードに仕上げました。ストリングスも楽曲を引き立てます。ブリッジでは少しテンポを上げ、ドラマチックな印象にしたあと、またしっとりとした歌をフィーチャー。
 「神楽」は和風ロックに仕上げた「平安のエイリアン」アレンジでカッコ良いんです。リズミカルでかつ拍のとり方で「和」の空気を醸し出し、祭囃子のようなノリノリな演奏で楽しませます。三味線のような音にヘヴィなギターを絡めてメリハリをつけ、和風の歌詞を大人びた歌唱で歌います。2番を終えた辺りでリズムチェンジして緊張を高めますが、再びリズミカルな演奏を取り戻して終わります。
 そして「万年置き傘にご注意を」をアレンジした「エンジョイ★なう!」は、強烈なインパクトを放つ異色の電波ソング。唯一akariが歌いますが、akariの不安定な歌唱をおふざけソングにすることで良い方向に活かします。超早口な語りパートに野太い合いの手が入って面白可笑しく、そして歌メロのちょっと残念な感じが、逆に多々良小傘のイメージにピッタリ。中毒性があります。
 最後にリプライズ的に「White Lotus…〜Piano」。メロディや歌詞を「White Lotus…」と少し変え、キーを少し下げて落ち着いたアレンジに仕上げています。Aメロはまるで違うので、そこだけ一聴する限りは普通にJ-POPのよう。

 キャラクターのイメージを大切にした、個性豊かな楽曲が並びます。東方星蓮船ファンは必聴の名盤だと思います。私はこれの出来が良かったので星蓮船アレンジはほとんど開拓しませんでしたが、星蓮船オンリーアレンジの決定盤だと勝手に思い込んでいます。

WHITE LOTUS…
Liz Triangle
 
神風

2009年 7thアルバム

 Liz Triangleのメンバーに新たにeba(Gt)と、同人サークルMiddleIslandの主宰である中島岬(Str)が加わりました。編曲にはkaztoraだけでなくebaと中島岬が貢献しており、本作から楽曲の幅も更に広がり魅力を増したと思います。本作は2009年12月のコミックマーケット77で頒布されましたが、2009年中にLiz Triangleはオリジナル/東方アレンジ合わせて5作品も制作、非常にエネルギッシュな1年でした。

 表題曲「神風」は「風神少女」を和風ロックにアレンジ。これが実にカッコ良いんです。三味線や筝のような音もアクセントとして入っていますが、あくまで分厚いギターとゴリゴリベースにパワフルなドラムが主導するハードロックです。でもリズムの取り方なのか、歌詞や歌唱、あるいはメロディか、和の雰囲気を強く感じます。ちなみに私は「天津神」や「国津神」をこの楽曲の歌詞で初めて知りました。汗
 「月へ、幻想へ」は「天空のグリニッジ」をオシャレなジャズにアレンジ。サックスにYoshi Miyata、トランペットにyusukeが参加しています。ジャズですがスウィングするような心地良い感覚で、テンポも良くノリノリ。lily-anの色っぽい歌唱も楽曲に合っていますね。結構カッコ良くて好きなアレンジです。
 続いて「コイスル♥レシピ」。「ヴワル魔法図書館」と「ラクトガール ~ 少女密室」の混合アレンジで、甘々ポップな雰囲気です。lily-anも歌い方を変え、ふわふわと可愛らしさを全面に出しており、そしてピコピコシンセも浮遊感に溢れています。軽快なドラムが爽快。
 「スカイルーイン」をアレンジした「Der hermonische Traum」は、前曲とガラリと変わってタイトで疾走感のあるハードロック/ヘヴィメタルに仕上げました。メタリックなギターはebaの貢献も大きいでしょう。シンセもメタル感を増強します。そしてlily-anもカッコ良い系の歌唱で対峙するため、ヘヴィな重低音を鳴らすギターと高音で力強い歌唱が対照的です。
 「緑眼の獣」はkaztoraと中島岬による「緑眼のジェラシー」のアレンジです。ピアノやストリングスが彩るイントロはドラマチックですが、歌が始まると音数を減らしてしっとりとした感じに。3拍子に乗せて暗く沈んだ歌メロをじっくり聴かせます。何気にベースが良い仕事をしているんですよね。
 最後は「稲田姫様に叱られるから」をアレンジした「優しさの風音」。原曲の良さを引き立てた、ゆったりと落ち着いた和風アレンジで郷愁を誘います。どこか民謡っぽい歌はとてもノスタルジックで、秋めく『東方風神録』のイメージを踏襲しつつ、日本の田舎の風景が目に浮かびます。

 アレンジの幅が広がり、バラエティ豊かな楽曲が並びます。lily-anの歌も表現力を増し、キャラクターを演じ分けるように歌唱スタイルを変えたりしています。これらの試みが次作で結実します。

神風 -KAMIKAZE-
Liz Triangle
 
B1

2010年 8thアルバム

 東方紅魔郷、妖々夢、永夜抄の6面ボス/EXボスのテーマ曲をアレンジした作品です。原曲が人気曲揃いなことに加えて、キャラクターのイメージに合わせた楽曲アレンジが秀逸で、個人的にはLiz Triangle最高傑作です。IRON ATTACK!のまいなすいょん(Vo)と、君の美術館の黒岩サトシ(Lyrics)がゲスト参加。
 ちなみにlily-anの描くジャケットイラストはレミリアとフランドールのスカーレット姉妹が描かれていますが、ジャケットを広げるとテーマアップされた6ボス/EXボスの7名が並んでいます。

 オープニングを飾る「Nightmaretic Pleasure」は「竹取飛翔 ~ Lunatic Princess」と「月まで届け、不死の煙」の混合アレンジ。落ち着いた歌声のlily-anが蓬莱山輝夜を、ハスキー声のまいなすいょんが藤原妹紅をそれぞれ演じています(声質的には逆のイメージですが)。アンニュイで色気ある二人のデュエットがとても魅力的ですね。そしてメタリックなギターをはじめハードな演奏に、アクセントとしてピアノでメリハリをつけて楽曲を盛り上げています。
 続く「讃えよ桜、憂いよ胡蝶、集う御霊は雪月花」は『SYMPATHY QUARTETTO』収録曲の再録ですが、ebaの貢献もあってより洗練されたこちらのバージョンの方が数段魅力的に仕上がっています。「幽雅に咲かせ、墨染の桜 ~ Border of Life」を軸に、色気のある和風で優雅な歌を繰り広げます。ebaのエモーショナルなギターもアツいですね。そして終盤、アウトロで楽曲が終わったかと思いきや、突如スリリングなピアノで始まる「ボーダーオブライフ」パート。この楽曲展開が実に見事で、初めて聴いたときに東方妖々夢の6面ボス戦(西行寺幽々子)が目に浮かんで感動したことを覚えています。そうでなくても美しくスリリングな展開にはハッとさせられますね。
 「千年の時と存在の意味」は、八意永琳のテーマ曲「千年幻想郷 ~ History of the Moon」のアレンジ。パーカッションが特徴的で、ゆったりと幽玄な演奏は遠く異国の地を想像します。
 「紅薔薇へ捧げる小夜曲」はレミリア・スカーレットのテーマ曲「亡き王女の為のセプテット」を、kaztoraと中島岬が共同でアレンジ。イントロから雷雨のSEやクワイアを用いてダークさを演出。仰々しいのですが、その中でピアノやヴァイオリンの綺麗な音色がアクセントとして活きています。そして屈指の良メロディを持つ原曲を踏襲した、メランコリックな歌メロも魅力たっぷりです。
 続いて「Who Killed U.N.Owen」ALI PROJECTのようなダークゴシック風に打ち込みアレンジされた「U.N.オーエンは彼女なのか?」。幼いフランドール・スカーレットをイメージしたかのように、lily-anはいつもよりあどけなく可愛らしく歌います。ですが歌詞には原曲の持つ狂気性が表れており、チャーチオルガンやリズムチェンジを駆使したダークな楽曲で狂気を増幅します。
 そしてLiz Triangle最強の神曲「Phantasmagoria」。原曲は東方でも屈指の人気曲「ネクロファンタジア」で、個人的には同楽曲のアレンジで一番好きです(Liz Triangleの楽曲でも一番好き)。azukiの描く、八雲紫視点で描かれる歌詞がとかく秀逸なのです。満開の桜を背に「名前を教えて」という問いかけから始まった、生前の西行寺幽々子との友情以上の深い親交。その後の幽々子との死別に、紫は強烈なトラウマを抱いてもがき苦しみます。そして生前の記憶のない、死後の別人格の幽々子と再開した紫は、生前の幽々子との思い出に縛られて戸惑います。ですが紫は死後の幽々子と再び関係を築く決心をして、知っているけど知らない彼女に「名前を教えて」と再び問いかけて楽曲を締め括ります。原作を再現し補完したストーリーは涙無しに聴けません。そんな素晴らしい歌詞を大人びた声で聴かせるlily-anの歌や、kaztoraとebaの二人によるパンキッシュで躍動感に溢れるロックアレンジ、間奏でのとてもアツいギターソロなども魅力的で、全体的にとても完成度の高いアレンジに仕上がっています。余談ですが、個人的には丁度この楽曲に触れる直前くらいに、幽々子と紫の関係性を描いた同人誌『隣り合って二人、向かい合って三人』(PERSONAL COLORという別サークルの作品)に感動した体験が重なって、同人誌のストーリーと本楽曲の歌詞がリンクし、より一層の愛着が湧いているというのもあります。だからこの「Phantasmagoria」こそが「ネクロファンタジア」の最強アレンジだと思うんです。

 このクオリティの高さなら5ボス曲も聴きたかった。笑 本作でLiz Triangleを知り、東方アレンジの同人サークルでは一番深くハマっていました。今では聴く回数もだいぶ減りましたが、時折聴きたくなる魅力があります。

B1
Liz Triangle
 
DOUBLE NINE

2010年 9thアルバム

 東方Project原作の上海アリス幻樂団が『妖精大戦争』を8月に頒布、その翌月にはLiz Triangleにて本作が頒布されました。相変わらずのスピード制作ですが、今回は新曲1曲と再録1曲の2曲入りというコンパクトな構成です。ジャケットに描かれた妖精チルノと、「⑨」とも呼ばれる彼女を示すような99(DOUBLE NINE)というタイトルで、チルノをフィーチャーしていることがわかりますね。

 「GiRL’s WaR!!」は「メイガスナイト」のアレンジで、パワフルなイントロから一気に惹きつけます。そして躍動感のあるメタリックなベースが非常にカッコ良い。サビではシンセサイザーの津波も押し寄せて情報量過多なのに、キャッチーな歌メロも騒がしい演奏に負けていません。勢いに溢れる爽快な楽曲です。
 続いて、「おてんば恋娘」をしっとりとしたノスタルジックなバラードに仕上げた「Heart Of Glass」。『散花』の再録で、アレンジャーに中島岬が加わっています。隙間というか余韻が魅力だった『散花』版よりは音の隙間が少なく、シンセストリングスの活用が目立ちます。またサビメロでは骨太なベースとドラムが加わって、くっきりとした輪郭でメリハリを付けていますね。個人的にはトータルでは『散花』版の方が好みですが、ベースに限ってはこちらの方がアツいです。

 2曲入りで物足りない感はあるものの、どちらも良質な楽曲です。但し「GiRL’s WaR!!」はベスト盤『MAGENTA』でも聴けるため、本作でしか聴けないのは「Heart Of Glass」のアレンジ違いのみとなります。

DOUBLE NINE
Liz Triangle
 
B2

2010年 10thアルバム

 『B1』に続く6ボス/EXボスのテーマ曲オンリーアレンジの第2弾で、今回は東方風神録、地霊殿、星蓮船をテーマアップ。これも『B1』同様に原曲が人気曲揃いのため、ボーカルアレンジとしては取っ付きやすいでしょう。私は本作がほぼリアルタイム体験で、次作以降はLiz Triangleの新作が頒布されるたび追いかけていました。

 オープニングを飾る「プライマリーフェイス」は、洩矢諏訪子のテーマ曲「ネイティブフェイス」を爽やかなポップスにアレンジ。柔らかくそして可愛らしく歌うlily-anの歌は、サビでは別の歌詞を二重に重ねており、小気味良い演奏と合わさってノリノリです。そして何気に、グルーヴ感のあるベースがとても良い仕事をしています。
 霊烏路空をテーマアップした「RIA」は「霊知の太陽信仰 ~ Nuclear Fusion」と「業火マントル」の混合アレンジで、個人的には同楽曲のアレンジで一番好きです。エレクトロとメタルの要素を掛け合わせたような、ノイジーでスリリングな1曲で、個人的には本作のハイライト。終始警告音のような音が響き渡り、ベースがヘヴィに重低音を轟かせますが、そんな騒がしい演奏にも負けないパワフルな歌唱が圧巻です。キャッチーなメロディのおかげで聴きやすく、そしてカッコ良すぎます。
 続いて封獣ぬえのテーマ「平安のエイリアン」をミクスチャーロックにアレンジした「Pandemic」。歌メロをlily-anが、ラップパートをPecoが担当します。リズミカルな演奏もあってラップの切れ味が鋭く、そのうえebaがヘヴィなギターでメリハリを付けてスリリングに仕上げています。ホーンセクションも華やかに楽曲を飾ります。同楽曲を和風ロックにアレンジした「神楽」(『WHITE LOTUS…』収録)よりも更に魅力的なアレンジになっていると思います。
 そして古明地こいしをイメージした「Messiah」は「ハルトマンの妖怪少女」と「ラストリモート」の混合アレンジで、まさかのシンフォニックなオペラメタルを展開します。kaztora、eba、中島岬による気合の入ったアレンジで、本作では「RIA」と並んで大好きなんですよね。高音キーの歌をオペラ風のアカペラでこなして幕を開けると、クワイアも用いた荘厳で仰々しいシンフォニックメタルを展開。ザクザクしたギターに美しい歌唱で、ゾクゾクするほどスリリングです。終盤に緊張を極限まで高めると、メロディと歌唱法を変え、メランコリックに訴えるような歌唱でドラマチックな印象を与えます。
 八坂神奈子のテーマ曲「神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field」をアレンジした「幻想への御神渡り」は『散花』の再録です。『散花』版よりも演奏のキレは増しており、こちらのアレンジの方が良いです。和風の印象が強いのですが、勇壮なドラムに牽引される演奏は意外とオーケストラが目立つんですね。
 最後の「Cosmic Mind」は「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」のアレンジ。聖白蓮をイメージした同楽曲のアレンジは自身の名曲「White Lotus…」が高いハードルとして立ちはだかりますが、こちらはポップなダンスミュージックといった趣で爽やかな作風です。跳ねるような明るくポップなノリです。

 東方地霊殿のアレンジ2曲が出色の出来。他の楽曲も良質なボーカルアレンジで、『B1』と合わせてオススメしたい一作です。

B2
Liz Triangle
 
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