🇯🇵 Liz Triangle (リズ トライアングル)

同人作品:東方アレンジ②

S4U

2010年 11thアルバム

 冬のコミケC79で頒布された作品です。2010年のLiz Triangleは実に4作品も発表しており、相変わらずハイペースでの制作ですね。同人サークルCrestのJeetSinghがアレンジに参加しています。なお、タイトルの『S4U』は「song for you」の意味。

 「天地無想」は「有頂天変 ~ Wonderful Heaven」を疾走感溢れるハードロックに仕上げました。kaztoraとebaが共同アレンジ。骨太でとてもカッコ良いベースソロと跳ねるようなドラムに、激しいギターやオルガンが演奏が加わり、イントロからスリリングで高揚感を煽ります。騒がしくも切れ味鋭い演奏に加えて、色気を纏った声でlily-anが迷いなく歌います。自信たっぷりな比那名居天子のキャラクターイメージにピッタリで、カッコ良い上にキャッチーなメロディラインで耳に残りますね。本作では突出して大好きな1曲です。
 続く「Ready Lady Girl」は「上海紅茶館 ~ Chinese Tea」のアレンジで、イントロからパワフルな演奏を展開。ヘヴィなバンド演奏を華やかなホーンセクションが彩って賑やかです。歌は可愛らしさを前面に出していますが、1番はかなりテンポが速くて駆け足気味。2番はリズムチェンジしてテンポを少しだけ落としますが、リズミカルで躍動感に溢れています。これも前曲に次いで好みです。
 そして「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」をアレンジした「Pori molica C’set la vie」。ダンスミュージックを軸に、フレンチポップのような甘く柔らかな質感を加えています。演奏はリズミカルで小気味良いですね。
 「大切な歴史」は「プレインエイジア」のアレンジ。ゆったりとメロディアスな歌はR&Bっぽくて、そしてPecoのラップパートがフィーチャーされています。ラップを取り入れた楽曲としては前作の「Pandemic」が思い浮かびますが、切れ味鋭い演奏にラップが映えるミクスチャーロックだった「Pandemic」とは異なり、こちらは歌よりもラップを前面に出して、ストリングスと打ち込みドラムで引き立てるアレンジ。個人的にはあまり好みではありません…。
 続いて「子守唄-song for you-」は「もう歌しか聞こえない」をしっとりとしたピアノバラードにアレンジ。シンプルな演奏ゆえにlily-anの歌が引き立ちますね。サビ直前の力強いkaztoraのピアノが感傷的な気分を誘い、感情たっぷりの歌をドラマチックな印象に仕上げます。メロディアスな良アレンジです。
 最後は「東方萃夢想」をアレンジした「命の降る郷」。冒頭はしっとりとして郷愁を誘いますが、そこからラテンのノリを取り入れ、陽気でパーカッシブな楽曲に変貌。サンバのように賑やかですが、メランコリックなメロディラインに和の香りが漂います。

 前作がボス戦BGMオンリーで統一感があったというのもありますが、アルバムとしては統一感が欠ける印象で、楽曲の出来も正直バラつきがある気がします。ですがジャケットアートに象徴される「天地無想」が突出してカッコ良く、また「Ready Lady Girl」も良いのでオープニング2曲のために本作を聴く感じです。

S4U
Liz Triangle
 
Mémoire

2011年 12thアルバム

 夏のコミケC80にて『HIEROGLYPH』と同時頒布された、東方アレンジとしては10作目。先行版CD『refrain/shall we dance?』の楽曲を収録しています。前作に引き続き、同人サークルCrestのJeetSingh(Gt)が参加しています。いくつかの楽曲は、過去にも一度アレンジした原曲をポップ寄りの別アプローチで再編曲しています。

 先行版CDにも収録された「refrain」は「六十年目の東方裁判 ~ Fate of Sixty Years」のアレンジ。ダンスミュージックを取り入れた爽やかなポップソングになっており、lily-anの歌唱も柔らかい印象を与えます。
 「第二十三号」は「芥川龍之介の河童 ~ Candid Friend」のアレンジです。原曲のイメージに近かった「kappaの演奏会」よりもワルツの要素を強めたというか、ストリングスによって彩られた楽曲は舞踏会のような感じです。
 「クライクライ」は「厄神様の通り道 ~ Dark Road」をハードロックアレンジ。和風要素も強いですが、怨念の籠もったおどろおどろしい感じがします。サビメロだけは怪しさを保ちつつもキャッチーなメロディで、大サビでは突き抜けた爽やかさすら感じられます。
 続く「白刃」はイントロから勇壮な感じ。少しダーティで躍動感のあるバンド演奏をホーンセクションが彩ります。個人的に東方風神録でも特に好きな原曲「フォールオブフォール ~ 秋めく滝」をクールなロックアレンジにしてくれたのは嬉しいところで、キャッチーなメロディラインを引き締まったバンド演奏で聴かせます。
 「Shall We Dance?」は「亡き王女の為のセプテット」のアレンジ。同楽曲を荘厳なメタルにアレンジした「紅薔薇へ捧げる小夜曲」と比べると、ダンサブルなポップに仕上った本楽曲はかなり軽い印象。ふわふわと浮遊感のある可愛らしい歌唱は、ポップで跳ねるような楽曲に合っていますね。
 最後の「Familiar」は「少女幻葬 ~ Necro-Fantasy」と「 ティアオイエツォン(withered leaf)」の混合アレンジで、素朴で等身大な優しい楽曲です。リラックスした演奏と優しい歌はアットホームな親しみを覚えます。本作では「白刃」に次いで好きです。

 引き締まったハードロック楽曲が減り、優しいポップ曲が増えました。個人的にはやや物足りなさも感じたりしますが、そんな人の受け皿となるのが同時頒布のバンド生演奏アレンジ『HIEROGLYPH』で、ニーズに合わせて選べます。笑

Mémoire
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HIEROGLYPH

2011年 13thアルバム

 『Mémoire』と同時頒布された作品で、『LR First Strike!』や『散花』などの過去作品の収録曲をバンド生演奏でリアレンジ。新曲として「SanSara」を加えています。kaztoraとlily-anのほか、JeetSingh(Gt/Key)、有田和成(Gt)、翔(B)、持冨旬(Dr)が参加。ジャケットアートは だいん が手掛けています。

 オープニングを飾る「SanSara」は唯一の新曲。「東方妖々夢 ~ Ancient Temple」をアレンジしたもので、イントロから鈍重でメタリックなギターが重低音を轟かせます。ヘヴィですが、原曲のメロディをなぞるピアノが良いアクセントとなっていて、また原曲譲りのキャッチーなメロディラインを歌うlily-anの歌も良い。
 続く「夜が明けるまで」は「シンデレラケージ ~ kagome-kagome」のアレンジ。メロコアのような疾走感ある演奏に、それとはミスマッチなアニメ声のような可愛らしい歌唱が、ギャップを与えつつも個性を発揮しています。終盤メロディアスにハモるギターも魅力的。
 「妖魔夜行」をアレンジした「moon light step」はオルタナ的な、寂寥感のある哀愁を醸し出します。フワッとした柔らかい歌唱が優しい。リズム隊が中々気持ちの良いビートを刻んでいて、楽曲の持つ哀愁とは対照的に爽やかさがあります。
 イントロからドライブ感のある「春風」は「天空の花の都」のアレンジ。爽やかなのにどこか寂寥感のあるバンド演奏がとても魅力的で、原曲がパッと出てこないくらい自然に流れる楽曲は、自分たちのものにしている感じがします。メランコリックだけど口ずさみたくなる歌メロも良いですね。
 続いて、「信仰は儚き人間の為に」を素朴で優しいバラードにアレンジした「Rain After Tomorrow…」。優しい歌メロはもちろん、リラックスした演奏がゆったりと揺さぶられるような心地良さを生み出しています。歌を支えるベースや、落ち着いているもののリズミカルなドラム、優しいアコギにアクセントとしてのオルガン…演奏が心地良くて魅力的なんです。『AQUA』収録版よりもこちらの方が好きです。
 続く「Ficus glomerata」は「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」のアレンジ。個人的には『散花』収録版の演奏のノリの方が好みなのですが、こちらは奥行きというかライブ感のある演奏で違った良さがあります。lily-anの大人びた歌声はこなれた感じです。
 「ネイティブフェイス」をアレンジした「プライマリーフェイス」は、ポップなダンス曲なのでバンド演奏のイメージが薄いですが、これが意外に良いんです。パーカッションを交えた生ドラムに変わったこともあり、丁寧な演奏にするためか若干テンポを落としていますが、このドラムがリズミカルで気持ち良いんです。また、多重録音の歌はより輪郭がハッキリしたような、聴き取りやすい感じがします。
 そして最後に「神風」。「風神少女」を和風ロックアレンジにした楽曲ですが、三味線のような音色は無くなり、純粋なハードロック構成です。でも拍のとり方やメロディ、歌詞など和風要素は健在。ヘヴィで疾走感があってカッコ良いですね。

 スタジオライブ盤的な感じでしょうか。ロック色が強くて、ポップ寄りの『Mémoire』と大きく差別化しています。バンド演奏に際して解釈を少し変えた部分が、良い方向に作用している楽曲も多くて、魅力的な作品に仕上がりました。

 本作の翌月には『LO』と題して、同人サークルA-Oneとのツーマンライブを実現。東京公演はライブハウスに観に行ったのが思い出深いです。

HIEROGLYPH
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reunion

2011年 14thアルバム

 冬のコミケC81で頒布された、東方神霊廟オンリーのボーカルアレンジアルバムです。個人的に東方神霊廟の原曲を知らない(この頃から東方の原作ゲームを追いかけなくなっていた)ので、せっかくの魅力を十二分に味わうことができていないというのが正直なところですが、「The Starry true」は名曲だと思います。
 編曲はkaztoraだけでなくeba(Gt)も全面協力し、M1〜M4までは共同アレンジです(M5とM6はkaztora単独アレンジ)。

 「デザイアドライブ」をアレンジした「My Desire」で幕開け。ピコピコとしたダンサブルな演奏で、力強くビートを刻みます。晴れやかで弾けるような演奏ですが、lily-anの歌は落ち着きというか丁寧な感じです。
 続く「明神変化」は、祭囃子のような和風ロックにアレンジした「佐渡の二ッ岩」です。ピアノと歌だけのしっとりとした頭サビから一転して、「サァー! ソレソレソレソレ!」と野太い声や、和太鼓のようなドラムでお祭りのような賑やかさに。ギターの奏でるメロディも和風ですね。終盤はテンポアップしてとてもスリリングに。全体的にノリが良いのですが、メロディラインはどこか哀愁が漂います。
 「Veda」は「リジッドパラダイス」のアレンジ。中東風の怪しげなイントロから、怪しさは残しつつも強烈なシンセで派手な演奏に変わり、ダンス色を増します。リズミカルなパーカッションも気持ち良い。
 そして「ゴーストリード」をメタルアレンジした「ネクロジカライズ」。悲壮感のあるピアノから、メタリックでスリリングな演奏が繰り広げられます。テンポの速い演奏は鋭い切れ味で焦燥感を煽り、メランコリックな歌は切ない気分にさせます。メロディアスに突き抜けるサビメロも印象的。間奏で3拍子にリズムチェンジしたりとドラマチックな仕上がりです。
 続いて「ライン」は「大神神話伝」のアレンジ。ピアノだけのシンプルな演奏をバックに、lily-anが可愛らしく歌います。そして途中からシンセサイザーなどのダンサブルな演奏が加わり、ポップに弾けるような印象に。華やかですが清涼感も併せ持っています。
 最後に、「聖徳伝説 ~ True Administrator」をアレンジした「The Starry true」。冒頭から高揚感を煽ります。テクノポップのようなピコピコサウンドを取り入れ、リズムチェンジで楽曲にメリハリをつけています。爽やかで可愛らしさもあるポップ曲で、とても心地良い名曲です。

 原曲を知っていたらもっと楽しめたんだろうなという、良質な楽曲が詰まっています。ebaがアレンジに関与していることからロック/メタル曲もありますが、ダンサブルな楽曲が多い印象です。

reunion
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夏凛

2012年 15thアルバム

 夏のコミケC82で頒布された作品で、タイトルは「かりん」と読みます。原曲ベースで見ると過去にアレンジを試みているものが何曲もありますが、今回は頒布時期に合わせて「夏」というテーマで再アレンジされています。収録曲数が7曲と、いつもより1曲多いですね。
 制作陣はkaztora、lily-an、azukiの3人以外は顔ぶれが異なり、本作からPira(B)がレギュラー参加になったほか、ゲストとしてyuta(Gt)、炭酸(Gt)、鷹(Gt)、kaz(A.Gt)が参加しています。
 前年から制作ペースが落ちますが、kaztoraが主宰する同人サークル森羅万象がこの年に復活し、Liz Triangleと並行して活動を始めたためでしょう。東方オンリーイベントの博麗神社例大祭は森羅万象、夏冬のコミックマーケットはLiz Triangleというかたちで並行した活動が進んでいきます。

 「Sunset Somebady」は「月まで届け、不死の煙」と「エクステンドアッシュ」の混合アレンジ。ファンファーレのような壮大なイントロは野球応援歌のように変わり、カキーンとヒット音に歓声が沸き立つ演出。骨太なベースやヘヴィなオルガンなどのパワフルな演奏は魅力的なのですが、野球と組み合わせたところにギャグっぽさを感じて正直戸惑いました。でもこれが一番インパクトがあるのも事実ですね。はっちゃけています。
 「キャプテン・ムラサ」と「幽霊客船の時空を越えた旅」を組み合わせた「渚のバタフライ」は気だるくて暑苦しい雰囲気が夏を感じさせます。リズミカルかつどっしりとした演奏が心地良い楽曲です。日本昔ばなしの曲みたいなフレーズにニヤリ。
 続く「Unlocked Weaker」は「ラクトガール ~ 少女密室」のアレンジ。ノイズっぽく加工されたボーカルに、重くパワフルな演奏で、原曲が思い浮かばない意外なヘヴィロックアレンジで楽しませます。サビメロに原曲が垣間見えますが、鈍重でメタリックなバックの演奏がかき消します。
 「グラスホッパー」は「桜花之恋塚 ~ Flower of Japan」をアレンジした楽曲で、ホーンが賑やかに鳴り響きます。全体に漂う気だるさが夏っぽさを感じさせます。アンニュイさと可愛さを両立した歌に色気がありますね。
 そして「神々が恋した幻想郷」をアレンジした「盟友」。演奏と歌唱法が沖縄民謡のようで、アコースティックな楽曲構成によって落ち着いてまったりとした印象です。どこか懐かしくて優しい楽曲は沖縄を強く想起させ、良い意味で原曲の影をほとんど感じさせません。
 「蓮華花火」は「感情の摩天楼 ~ Cosmic Mind」を爽やかにアレンジ。夏と言っても「うだるような暑さ」のような楽曲が並ぶ中、テンポも速くてひときわ清涼感に溢れています。同楽曲のアレンジは自身の「White Lotus…」や「Cosmic Mind」といった名曲がハードルを上げますが、それらとも違った爽やかで魅力的なロック曲に仕上げ、アルバムの流れにメリハリをつけています。
 ラスト曲「℃」は「おてんば恋娘」のアレンジ。アクセントとして時折入るハーモニカがファンタジックなものの、全体的には素朴な雰囲気で、躍動感があって軽快な作風です。涼しく快適な印象でアルバムの最後を締め括ります。

 原作キャラクターをイメージした原曲踏襲のアレンジ楽曲は息を潜め、原曲がわからないくらいに独自性を持たせた楽曲が増えました。意欲的な作品ですが、前者のスタイルが好みだったので戸惑ったのを覚えています。

夏凛
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冬蛍

2012年 16thアルバム

 前作『夏凛』と対になるような作品で、頒布時期(冬コミ)に寄せて冬をテーマにしたアレンジがなされています。収録曲数も前作同様に7曲入り。何作ぶりかeba(Gt)が参加しており、ヘヴィに引き締まったロックが聴けるのも嬉しいところです。

 オープニングを飾るのは「もう歌しか聞こえない ~ Flower Mix」をアレンジした「ハウリング」。緊張が張り詰めた頭サビと力強いロック演奏で、これが頭から惹きつけます。ebaのギターとPiraのベースが楽曲を骨太なものにしていて、カッコ良い演奏に負けじとlily-anのクールなボーカルスタイルも魅力的です。
 続く「マネキン姫とロクデナシ」は「U.N.オーエンは彼女なのか?」をダンスミュージックに仕上げました。ドラムンベースというか高速で繰り広げられるリズムをバックに、聴き慣れた原曲メロディで歌います。原曲は不穏なメロディ等で中毒性を生んでいましたが、この楽曲はチキチキ鳴るリズムトラックのせいでヤミツキになりそうです。
 「white snow」は、ピアノとストリングスによりしっとりと聴かせる「恋色マスタースパーク」のバラードアレンジ。原曲の面影は薄く、儚くメロディアスな歌唱が切なく胸に染み渡ります。lily-anの描くジャケットアートのイメージに合う、冬にぴったりの良アレンジです。
 そして「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」をアレンジした「呪文のちから」。カラフルなキーボードが主導するノリの良いダンスチューンで、冬っぽくキラキラした装飾もされていますが、全体的に明るく賑やかな雰囲気です。歌は可愛らしくて、賑やかで楽しい楽曲を引き立てます。
 続いて暴力的なゴリゴリベースで一気に緊張が張り詰める「念仏磔刑/ウソマコト」。「少女さとり ~ 3rd eye」をメタリックにアレンジした楽曲で、ebaとPiraの貢献によるヘヴィかつスリリングなバンド演奏がカッコ良いです。狂い気味のオルガンも高揚感を煽ります。終盤のリズムチェンジに若干のプログレメタルも感じたり。
 「Grand Spider」は「封じられた妖怪 ~ Lost Place」をアレンジした楽曲です。ひんやりとした質感のストリングスが楽曲を盛り上げ、ヘヴィでキレのあるダンスチューンを展開。悲壮感のあるメランコリックなメロディラインを壮大な演奏で引き立てます。アニメのクライマックスシーンで流れそうな、スケールの大きさを感じます。
 ラスト曲「地球儀の旅」は「日本中の不思議を集めて」をアレンジしたもの。レトロゲームのようなチープな8bit音源をバックにlily-anの歌が映えます。そして楽器が増えると、仲間が増えたかのような心強さを感じます。ほのぼのとした温もりを感じられる楽曲で、前曲からの流れで聴くと本楽曲がエンディングテーマのようなイメージを抱きます。

 前作同様、原曲の持つイメージに縛られない独自解釈のアレンジが中心ですが、バラエティに富んでいて前作より魅力的な仕上がりです。

冬蛍
Liz Triangle
 
ポーカーフェイサー

2013年 17thアルバム

 夏のコミケC84で頒布された、東方アレンジ第15弾。ファン人気の高い楽曲「ありがとう」を収録しています。楽曲制作にはkaztora、lily-an、azukiの3人に加えてeba(Gt)、Pira(B)、そして同人サークル 君の美術館 よりsassy(Gt)が参加。

 「狂気の瞳 ~ Invisible Full Moon」をアレンジした「Ms.Munchikin」で幕を開けます。時折シャッター音を鳴らしながら、カラフルな鍵盤が飛び交うエレクトロニックな楽曲です。サビメロで原曲がわかるという。終盤では激しく盛り上がります。
 「レイズ」は「Bad Apple!!」をアレンジしたダンスチューンです。ファンキーなベースと打ち込みのリズムトラックが強烈なグルーヴを生み出し、優雅なストリングスやホーンが華やかに彩ります。賑やかでノリノリな演奏は洒落ていますね。
 僅か2分の「星に願いを」は「ラクトガール ~ 少女密室」のインストゥルメンタルアレンジで、優雅なオーケストラが原曲を踏襲したメロディを奏でます。壮大で、短いながらも中々ドラマチックな印象を受けます。
 そしてLiz Triangleの人気曲「ありがとう」。「少女綺想曲 ~ Dream Battle」と「妖魔夜行」をアレンジした楽曲で、アカペラでしっとりと始まります。序盤はピアノだけのシンプルな演奏で歌をフィーチャーし、感情を込めつつ優しく歌うlily-anの歌はとても感傷的な気分になります。途中から楽器が増えてサビメロを支えますが、この演出がドラマチックで感動的なんです。
 続いて「亡失のエモーション」をアレンジした「ハレーション・リモーション」。骨太なバンド演奏を展開しますが、歌は落ち着いている印象。時折聴けるアコーディオンのような音が特徴的ですね。間奏では3拍子にリズムチェンジして、少しトリッキーに展開します。
 「深淵の災禍」は「少女綺想曲 ~ Dream Battle」をインストゥルメンタルアレンジ。冒頭はおどろおどろしいですが、そこから壮大なオーケストラがスリリングに楽曲をリード。時折和風の香りも漂います。
 前曲の壮大なオーケストラをそのまま引き継いで、スリリングな疾走曲を繰り広げるのは「ネガポジ」。「メイドと血の懐中時計」と「フラワリングナイト」の混合アレンジで、テンポの速い演奏は焦燥感を煽りますが、速いテンポにおいても歌には焦りはなく余裕も感じられます。Piraのゴリゴリベースがカッコ良い。
 最後に「contact」。「妖魔夜行」をベースに「少女綺想曲 ~ Dream Battle」を混ぜており、躍動感のあるロックに仕上げました。小気味良いリズムに、少し切なさを含んだ爽やかな演奏で、アクセントとしてのオルガンが良い味を出しています。

 珍しくインストゥルメンタルにも挑戦して、その結果8曲入りとLiz Triangleの作品としてはボリュームがありますが、トータルの収録時間は33分程度でサクッと聴けます。

ポーカーフェイサー
Liz Triangle
 
カラスとウサギ

2013年 18thアルバム

 東方輝針城オンリーのボーカルアレンジアルバムです。原作ゲーム未プレイのため原曲もわからないというのに購入し、当時はほとんど聴くことがありませんでしたが、レビューにあたり向き合ってみると魅力的な楽曲揃いでした。
 今回はギター担当としてスグル(Gt)、炭酸(Gt)、チャンス高田(A.Gt)が参加しています。

 アルバムは「リトルドリーマー」で幕を開けます。「輝く針の小人族 ~ Little Princess」を躍動感溢れるオルタナティヴロックにアレンジした楽曲で、疾走感があって爽快に駆け抜けます。高揚感を煽る楽曲で、アニメのオープニング曲にも向いていそうです。
 続く「Duplicity」は「リバースイデオロギー」と「空中に沈む輝針城」の混合アレンジ。和風かつ怪しげな香りたっぷりのスリリングなロック楽曲で、トリッキーな楽曲展開に加えて、シンセやオルガンなど様々に変化する鍵盤も楽曲を引き立てています。癖のある演奏ですが(それも魅力的なのですが)、lily-anは可愛らしく歌って楽曲の敷居を下げています。
 「メロウ」は「秘境のマーメイド」をバラードにアレンジ。序盤は落ち着いたアンビエントっぽい演奏の中、残響処理がなされたドラムが特徴的です。そして対照的にサビメロは激しくて、中でもPiraのベースがゴリゴリ響きます。
 「孤独なウェアウルフ」をアレンジした「シャトー・ガル」はゴシックメタルといった趣で、大仰でおどろおどろしい感じを纏いつつも速いテンポの演奏でスリリングに展開します。色気のあるlily-anのボーカルスタイルも魅力的ですね。
 続いて「雷々伝々」は「始原のビート ~ Pristine Beat」と「魔力の雷雲」の混合アレンジ。祭囃子のような和風ロックで、骨太で切れ味の鋭い演奏は高揚感を煽ります。勢いに満ちていて爽快でカッコ良い。
 ラストは「幻想浄瑠璃」をアレンジした「鎮華」。メロディアスなバラードで、しっとりとした歌の魅力はもちろんですが、和の香りのするヘヴィなバンド演奏も哀愁を引き立てます。

 アルバム通してロック色の濃い楽曲が揃っており、和風ロックも聴けます。カッコ良くて、原曲を知らなくても十分楽しめました。

カラスとウサギ
Liz Triangle