🇬🇧 Mike Rutherford (マイク・ラザフォード)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Smallcreep's Day (スモールクリープス・デイ)

1980年 1stアルバム

 マイク・ラザフォード、フルネームはマイケル・ジョン・クロート・クロフォード・ラザフォード。1950年10月2日生まれ。英国のプログレバンドジェネシスのオリジナルメンバーでベーシストとして活躍、また3人体制になってからはリードギターも兼任。12弦ギターとベースのダブルネックを駆使しています。また1985年にはサイドプロジェクトとしてマイク・アンド・ザ・メカニックスを結成、全米1位獲得シングルを生み出すなど大きな成功を獲得しました。
 本作はマイク・アンド・ザ・メカニックス結成前の、マイク・ラザフォード名義でのソロ作品になります。プロデューサーにはジェネシス作品を手がけたデヴィッド・ヘンチェル。ジェネシス結成前からの友人アンソニー・フィリップス(Key)と、またサイモン・フィリップス(Dr)、モリス・パート(Perc)が参加しています。またボーカルに起用したノエル・マッカーラ(Vo)は、ピーター・ガブリエル脱退後ジェネシスのボーカルオーディションの候補者だったそうです。なおギターシンセを導入しており、大半の演奏はラザフォード自身によるものだそうです。

 表題曲「Smallcreep’s Day」は7パートから成る組曲で、レコード時代のA面を丸々占める25分近い大作です。シンセが折り重なり、神秘的な音色や、ジェネシスっぽいメランコリックな音色を奏でます。ノエル・マッカーラの歌は加工されているのか輪郭がぼんやりして、幻想的なサウンドにうまく溶け込んでいます。4分辺りからアコギをかき鳴らし、リズミカルな演奏とともにキャッチーでポップな歌が始まります。ラザフォードもまたポップセンスが優れているんですよね。ワクワクした気分になります。7分辺りから落ち着いて幻想的な雰囲気になり、心地良い浮遊感に包まれます。9分辺りからポップな歌メロに。カラフルな音色で歌もキャッチーですが、リズムは少し複雑です。13分半過ぎた頃からパートが変わり、分厚いシンセが幻想的な音色を奏でます。15分過ぎからが本作の聴きどころで、「Duke’s Travel」にも似た心地良い疾走感を持つスリリングなインストパートで楽しませてくれます。鳥肌が立つほど緊張が高まりますが、そこからラストパートへ繋がり、ゆったりとしたバラードを展開。優しい音色に癒されます。終盤のギターも美しく、込み上げるものがあります。
 アルバム後半のオープニング曲「Moonshine」。メリハリのあるビートを刻み、シンセがキャッチーな音を鳴らします。サウンドだけならジェネシス的ですが、ノエル・マッカーラのカラッとした歌唱がTOTOっぽくてアメリカンな印象を抱きます。続いて「Time And Time Again」は憂いのある楽曲。重厚なシンセがメロディアスな歌を引き立てています。シンセが中心ですが、終盤で良いギターを弾くんですよね。「Romani」は華やかなシンセで開幕するポップな楽曲。歌と伴奏が異なるポリリズムでフックを掛け、その後雰囲気を変えて晴れやかに駆け抜けます。「Every Road」はゆったりとした雰囲気。ギターをジャカジャカかき鳴らし、またシンセも含めて心地良い音色を奏でます。最後の「Overnight Job」はメリハリのあるビートを刻みます。歌メロも含めて明るくキャッチーですね。後半でリズムを変え、緊張を高めて盛り上がっていきます。聴きごたえのあるラスト曲でした。

 ピーター・カレル・ブラウンによる同名小説をテーマにした組曲「Smallcreep’s Day」がとにかく素晴らしく、その出来はジェネシスにも引けを取りません。他にもキャッチーな佳曲揃いで、アルバムトータルでも勿論楽しめます。ラザフォードが優れたポップセンスでジェネシスに貢献していたのだと分かる作品です。

Smallcreep’s Day
Mike Rutherford
 
 

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 マイク・ラザフォードの本家バンド活動。ベーシスト兼ギタリストとして活躍。

 
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