🇬🇧 Mogwai (モグワイ)

　スコットランド出身のポストロックバンド、モグワイ。バンド名は広東語の「魔怪 (悪霊や鬼の意味)」を英語に置き換えたものになります。スチュアート・ブレイスウェイト(Gt)、ジョン・カミングス(Gt)、ドミニク・アイチソン(B)、マーティン・ブロック(Dr)の4人で1995年に結成しました。1997年には、元ティーンエイジ・ファンクラブのブレンダン・オヘア(Key)が一時加入しています。
　轟音を用いた本作は、ポストロックの名盤と言われています。全編ほぼインストゥルメンタルですが、テレビ等のナレーションをサンプリングしたものが、随所に用いられています。ポール・サヴェージとアンディ・ミラーによるプロデュース。
　ジャケットに写る「富士銀行」の文字が強烈ですが、かつて実在した富士銀行 恵比寿支店(現:みずほ銀行 恵比寿支店)の写真だそうです。

　アルバムは「Yes! I Am A Long Way From Home」で幕開け。輪郭のぼやけた重低音と穏やかなギターが、どこか陰りがあるものの心地良い空間を作り出します。前半は起伏が少ないですが、後半は少しずつ音量を上げて、やがて轟音に成長。続く「Like Herod」は12分近い大作です。テンション低く始まり、2分過ぎには静寂が訪れます。かと思えばノイジーな轟音を鳴らして極端な緩急をつけるので、驚かされます。とは言え轟音を鳴らしている間も淡々としている印象。「Katrien」は静かに鬱々とした雰囲気を醸しながら、徐々に轟音ノイズになっていくさまがスリリングで、そしてサイケデリックなトリップ感も持ち合わせています。ブツブツと呟くような歌(？)があるので、演奏オンリーの他曲に比べると聴きやすいかも。テンションを高めたところで、フッと演奏が無くなるラストも印象的です。小曲「Radar Maker」では、ピアノが冷たい演奏を行って楽曲を繋ぎます。「Tracy」はひんやりとした暗さを持つものの、透明感があって美しい楽曲です。鉄琴がアクセントになってドリーミーな感覚もあります。「Summer (Priority Version)」は暗鬱な雰囲気に満ち溢れた6/8拍子を刻みます。リズミカルなのに鬱々として閉塞感のある楽曲を聴き進めていると、突如暴力的な轟音が襲いかかってきます。轟音ノイズが過ぎ去った後の静寂は、暗いのに不思議と安心感があります。「With Portfolio」はローファイながら美しいピアノの音色が響き、そこに環境音をノイズとして加えています。ノイズはスピーカーの左右を行ったり来たりするので酔いそうだし、後半はピアノの音すら消えてノイズだけなので、聴く人をかなり選びそうです。7分を超える「R U Still In 2 It」は、一転してまどろむような穏やかな雰囲気。歌がありますが、同郷のバンド アラブ・ストラップのエイダン・モファットがゲスト参加して歌っています。激しさはないものの、終盤はどこか不穏な空気が漂います。僅か2分強の「A Cheery Wave From Stranded Youngsters」は強めにエフェクトをかけた演奏のせいで、ノイズ混じりの残響にゾワッとします。不気味な緊張が張り詰めています。そして最後に、16分を超える「Mogwai Fear Satan」。モグワイの代表曲です。ミニマルなフレーズを繰り返しながら、最初は晴れやかに、徐々にノイズと轟音にまみれてヒリつきながら盛り上がっていきます。落ち着いたかと思えば、5分過ぎから突如爆音で緩急をつけてきます。10分辺りからはフルートも加わって美しい表情も見せます。

　静寂と轟音ノイズの極端な緩急が強烈で、美しさとヒリついた感覚を味わえる作品です。

Mogwai Young Team

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