🇬🇧 Motörhead (モーターヘッド)
レビュー作品数: 4
スタジオ盤
1977年 1stアルバム
イングランド出身のハードロックバンド、モーターヘッド。大音量で爆走するロックンロールというスタイルに徹し、後に誕生するスラッシュメタルやハードコアパンクにも大きな影響を与えました。HR/HM勢だけでなくパンク・ハードコアパンク勢からも高い支持を得ています。
プログレバンドのホークウインドを解雇されたレミー・キルミスター(Vo/B)が、1975年にモーターヘッドを結成。最初の1年でメンバー交代を経て、”ファスト”・エディ・クラーク(Gt)とフィル・”フィルシー・アニマル”・テイラー(Dr)を迎えたスリーピース体制でしばらく続くことになります。そしてこのラインナップでセルフタイトルとなる本作でデビューを果たします。
バンド名を関した疾走曲「Motörhead」で幕開け。ゴリゴリのベースを唸らせ、パワフルなドラムで圧倒しながら、パンキッシュな演奏を繰り広げます。そしてレミーがしゃがれ声で終始シャウトをする激しい歌唱が強烈です。間奏ではキンキンとしたリードギターが強い存在感。「Vibrator」は力強くてノリの良いロックンロールで、重低音が響く演奏はカッコ良い。荒っぽい音もシンプルな楽曲もパンクっぽいんですが、間奏ではエディのギターが暴れ回ってハードロック的な雰囲気も出しています。「Lost Johnny」は独特のヘヴィなリフが、渋くてワイルドな感じ。間奏ではブルージーなギターに浸れます。「Iron Horse/Born To Lose」はブルージーかつ鈍重なギターに加えて、若干の音質の悪さが古っぽい印象を与えます。後半はブルージーなギターを軸とした長尺の演奏が占めています。
レコードでいうB面、アルバム後半は「White Line Fever」で開幕。渋くメタリックな重低音と、レミーのしゃがれた高音が対照的ですね。続く「Keep Us On The Road」は6分近くあり、本作では最長の1曲です。比較的音の輪郭がはっきりして聴きやすい印象。また間奏で聴けるエディのギターはメロディアスで浸れますね。「The Watcher」は硬質でワイルドなロックンロールで、ヘヴィでメリハリのある演奏を繰り広げます。ラストは「Train Kept A-Rollin’」。疾走感のあるパンキッシュなロックンロールで、反復する歌詞も耳に残りますね。
ハードロックとパンクをかけ合わせたような、ダーティでワイルドなロックンロールが詰まっています。
1979年 2ndアルバム
モーターヘッドの出世作として知られる本作はローリング・ストーンズを手掛けたジミー・ミラーがプロデュースを手掛けました。前作も含めてジョー・ペタグノがジャケットデザインを手掛けており、そこに描かれた豚(「ウォー・ピッグ」や「スナグルトゥース」と様々呼ばれているそう)はモーターヘッドのマスコットキャラクターになりました。
ぶっ飛んだタイトル曲「Overkill」でアルバムの幕開け。フィル・”フィルシー・アニマル”・テイラーのドラムは激しくて、ツーバスがドコドコ鳴り、シンバルも炸裂音を鳴らし続けます。ギターもエッジが鋭くてアグレッシブですね。疾走感の溢れる演奏はとてもスリリングですが、アンコール(?)が2回もあるという…笑 続く「Stay Clean」はダーティなギターと骨太なベースが、ハードボイルドなロックを繰り広げます。レミー・キルミスターの弾くぶっといベースソロがアツいです。「(I Won’t) Pay Your Price」はリズミカルなドラムの上で、”ファスト”・エディ・クラークの弾く、キンキンとしたギターが気ままに弾いている印象。ベースも太いですね。「I’ll Be Your Sister」ベースリフからドラムにギターが加わって盛り上がるイントロが、王道ハードロックでとてもカッコ良い。レミーのしゃがれたシャウトも荒々しい演奏によく合っています。「Capricorn」はダーティで緊張感のある演奏で、エコーが特徴的です。ボーカルにエコーをかけるだけでなくギターソロにもエフェクトがかかって、浮遊感があります。
アルバム後半は「No Class」で開幕。ワイルドでノリの良いハードロックで、大音量の演奏は激しいですが結構キャッチーです。続く「Damage Case」はベースとドラムによるリズミカルな演奏が気持ちの良い、ダーティなロックンロールです。ハードでカッコ良い。「Tear Ya Down」はベースリフ、ギターリフがひたすら反復するため耳に残りますね。カッコ良いです。そして「Metropolis」はイントロでエキゾチックな雰囲気を醸します。ミドルテンポな演奏は、ワウワウ唸るギターや爆音ベースが印象的です。最後は「Limb From Limb」。ガレージロック的な荒く骨太なサウンドで、どっしりとしたハードロックを展開します。後半はテンポアップして、スリリングだけどノリの良い楽曲で楽しませてくれます。
前作よりも更にハードさを増し、ヘヴィメタル色も強めました。印象的なリフも多くて魅力的です。
1979年 3rdアルバム
前作から僅か7ヶ月のスパンでリリースされた、モーターヘッドの3rdアルバムです。全英12位を獲得しました。前作と同じラインナップで、ジミー・ミラーのプロデュース。ヘロイン中毒に陥ったプロデューサーに対する不満か、「Dead Men Tell No Tales」は反ヘロインを歌った楽曲なのだそう。
オープニングを飾るのは「Dead Men Tell No Tales」。”ファスト”・エディ・クラークの弾くダーティなギターリフが印象的な、ひりついて疾走感のある楽曲です。焦燥感を煽るスリリングな演奏はカッコ良く、僅か3分でサクッと終わる潔さも魅力です。続く「Lawman」は少しテンポを落とし、どっしりとした重心の低い楽曲ですね。レミー・キルミスターの鈍器のようなベースが強烈。「Sweet Revenge」はスローテンポな1曲です。キンキンとメタリックなギターと、鈍重なベース・ドラムによって迫力満点。間奏ではゴリゴリのベースが唸りを上げます。続いて「Sharpshooter」は躍動感のあるロックンロール。張り詰めた空気はスリリングですが、フィル・”フィルシー・アニマル”・テイラーのドラムはリズミカルで爽快です。そして「Poison」はイントロから高揚感を煽ってきます。ダーティな雰囲気で、ゴリゴリしつつも疾走感があります。
アルバムは後半に突入。「Stone Dead Forever」は緊張感のあるダーティな演奏に、レミーのパワフルなボーカルが乗ります。中盤で聴ける爆音ベースソロ、そこに絡みにいく荒っぽいギターがカッコ良いですね。「All The Aces」は重低音を唸らせながら駆け抜ける、ハードボイルドな楽曲です。そして「Step Down」はブルージーかつ荒っぽいギターをフィーチャーした、スローテンポの楽曲です。唯一エディがボーカルを務めます。「Talking Head」は攻撃的な演奏に加えてレミーのシャウトが強烈です。最後にタイトル曲「Bomber」。これが強烈でカッコ良いんです。爆音で奏でられる、野性味溢れる暴力的な演奏がスリリングで、テンポの速さも焦燥感を煽り立てるんです。
重心の低いメタリックなサウンドを繰り広げます。開幕は勢いあるもののどんどんスローダウンしていき、中盤から盛り返す感じ。表題曲が特に良いですね。
1980年 4thアルバム
1979年に2ndALと3rdALをリリースして勢いづいたモーターヘッド。そして同じ頃勃興したNWOBHMのムーブメントも追い風となり、本作は全英4位を獲得しました。そんな本作はモーターヘッドの代表作として知られます。ヴィック・マイレによるプロデュース。
オープニングを飾る表題曲「Ace Of Spades」、これが激しくてとてもカッコ良いんです。ハードコアにも通じる、疾走感溢れるメタリックでダーティな演奏は焦燥感を煽り立て、レミー・キルミスターのシャウト尽くしの歌はスリリングです。「Love Me Like A Reptile」はゴリゴリの爆音で幕を開ける疾走ロックンロール。重低音が効いているうえ、フィル・”フィルシー・アニマル”・テイラーの叩く激しいドラムも魅力的。「Shoot You In The Back」はリフが耳に残る楽曲で、ヘヴィながらも躍動感があります。「Live To Win」はレミーの凶暴なベースリフで幕開け。間奏では、”ファスト”・エディ・クラークのギターが長尺のソロを披露し暴れ回ります。「Fast And Loose」はフィルの叩く3連符のドラムがリズミカルですね。ブルージーなハードロック感覚を残しつつも、重低音を響かせるヘヴィなサウンドはメタリックです。「(We Are) The Road Crew」はヘヴィな演奏に加えて、レミーのまくし立てるような歌唱がスリリングです。終盤はギターがワウワウしてます。
アルバム後半のオープニングは「Fire, Fire」。爆音の高速ロックンロールで、激しくスリリングな演奏で焦燥感を煽ります。続いて「Jailbait」はスウィングするような、リズミカルな演奏が爽快です。単調な楽曲構成ですが、その中で変化に富んだドラムはスリル満点。時折ツーバスを轟かせます。「Dance」は耳に残る印象的なギターリフで幕を開け、躍動感あるドラムが高揚感を掻き立てます。シンプルですが分かりやすい良曲ですね。「Bite The Bullet」は凶悪な疾走曲で、僅か2分にも満たないながら、速いのでそこまで物足りなさはありません。爆音ベースを唸らせながら疾走します。そして「The Chase Is Better Than The Catch」は他の楽曲に比べると比較的テンポは遅めというか、重厚感があります。中盤はギター不在のリズム隊と歌だけの場面があって、メリハリをつけています。ラスト曲は「The Hammer」。鋭利なギターに炸裂するドラムと、爆音で暴れ回る疾走曲です。畳み掛けるようなヘヴィな演奏はスリル満点で爽快です。
疾走感のあるスピードメタルを展開。勢いがあって息をつく間もない凶暴な演奏はカッコ良いです。
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