🇺🇸 Various Artists『No New York (ノー・ニューヨーク)』

レビュー作品数: 1
  

編集盤

No New York (ノー・ニューヨーク)

1978年

 本作タイトルに由来して後に「ノーウェイヴ」と呼ばれるジャンルを生み出すことになる、米国オルタナシーンの形成に大きな影響を与えた伝説的なコンピレーションアルバムです。クラブCBGB発ニューヨークパンクの系譜を継ぐ、アヴァンギャルドでノイジーなバンドに注目したのは巨匠ブライアン・イーノ。彼が4組のバンドに声をかけ、4組×4曲で全16曲(それでも45分足らず)の1枚に仕上げました。なお、バンドの生の演奏を活かそうという意図から、ブライアン・イーノはレコーディングにはほとんど口出ししなかったそうです。

 まずはジェームス・チャンス(Vo/Sax)率いるザ・コントーションズの4曲。異様なテンションの高さで圧倒する「Dish It Out」で幕開け。スカスカだけどひりついたパンキッシュなバンド演奏の上で、アヴァンギャルドなサックスが暴れ回ります。ギターもキンキンしてる。そして怒鳴り散らすジェームスの歌は、騒がしいバンド演奏よりもうるさいです。笑 続く「Flip Your Face」は低いテンションのリズム隊と、ギュワンギュワンと歪んで奇妙な音を立てるギターが独特。そして攻撃的な歌唱はバンド演奏よりもノイジーで目立ちます。「Jaded」はスローペースな楽曲で、どっしりと重心の低い爆音ベースが楽曲を支え、サックスが不快なノイズを放ちます。不協和音を奏でるキーボードもアクセント。「I Can’t Stand Myself」はタイトなドラムと爆音ベースがとてもカッコ良い。単調ですが緊迫感のある演奏の上で、がなり立てるボーカルが更にスリルを増します。コントーションズの4曲では一番聴きやすい印象です。それでも人を選びますが…。

 続いて、女性フロントマンのリディア・ランチ(Vo/Gt)を中心とした、ティーンエイジ・ジーザス・アンド・ザ・ジャークスの出番。「Burning Rubber」はノイジーなギターや爆音ベースが暴れますが、リディアの高音キーでパワフルな歌は重心の低いサウンドと対照的で、存在感を放ちます。続く「The Closet」は金属質なギターが耳障りなノイズを掻き立てます。ノイズポップの先駆けですね。そこからパワフルなボーカルが突き抜けてきますが、メロディは無いというか、力強いけど一本調子な感じ。「Red Alert」は35秒のインスト曲。パンキッシュでノイジーに疾走します。そして「I Woke Up Dreaming」へ。ザクザクしつつも、三三七拍子みたいなリズミカルな歌と演奏を聴かせます。

 そして3組目としてマーズが続きますが、彼らの音楽は特に理解しがたいです。「Helen Fordsdale」は不穏な音色を奏でるベースを軸に、奇怪な音が飛び交い(ギターでしょうか?)、太鼓のようにダイナミックなドラムと、スリル満点の演奏を繰り広げます。ですがヘロヘロでジャンキーなボーカルがちょっと残念な感じ。「Hairwaves」はメロディも無ければ規則性も見られず、実験的な音を不規則に鳴らす即興演奏を展開。「Tunnel」は大音量のノイズがザワザワと焦燥感を煽り立てます。抑揚のない、歌とも言えない歌がノイズの中で存在感を放っています。最後に「Puerto Rican Ghost」。ノイジーなサウンドをスピーカーの左右に振り分けてグワングワン揺さぶります。

 最後に、アート・リンゼイ(Gt/Vo)率いるDNAがトリを務めます。4組の中では一番カッコ良いと思いました。「Egomaniac’s Kiss」はスローテンポでのっそのっそと進むかのような演奏をバックに、ガナリ声で歌います。電子音は独特ですが、このアルバムの中では最もロックの体裁を保っている印象です。続く「Lionel」は鋭利なギターがキリキリと金属音を立てて、ダイナミックなドラムが焦燥感を煽ります。ひりついた演奏は突如シンセによる無機質な雰囲気へと変え、またスリリングな演奏へより戻します。「Not Moving」はミニマルで無機質なフレーズを騒がしいノイズで反復し、焦燥感に満ち溢れています。歌が始まると力強いドラムが更に煽り立てるようでスリル満点です。ラスト曲「Size」はザクザクしたギターをかき鳴らすスタイルに、後発のノイズロックにも通じるような気もします。全楽器が騒がしくてある意味バランスが取れており(力強いドラムのおかげかも)、比較的整然とした演奏でノイジーな割には聴きやすいです。

 衝撃度は凄まじいですが、アヴァンギャルドでノイジーな作風は聴く人をかなり選びます。ポップ要素はないので、ノイズ耐性のある人でないとかなり厳しいかも…。
 なおコントーションズ以外のバンドは短命に終わっていますが、DNAのアート・リンゼイはプロデューサーとして活躍していきます。

No New York
Various Artists
 
 
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