🇺🇸 Pearl Jam (パール・ジャム)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Ten

1991年 1stアルバム

 パール・ジャムは米国ワシントン州シアトル出身のオルタナティヴロックバンドです。同郷のサウンドガーデンニルヴァーナとともにグランジ・オルタナムーブメントを牽引した立役者です。米国をはじめ欧米圏では高い人気を誇り、後発のアーティストにも大きな影響を与えていますが、一方アジア圏での人気はあまり高くないようです。個人的にもボーカルが若干苦手だったり…。
 マザー・ラブ・ボーンというバンドで活動していたストーン・ゴッサード(Gt)とジェフ・アメン(B)、しかしバンドのデビュー直後に当時のボーカルが薬物中毒死してしまいます。マイク・マクレディ(Gt)を迎えて活動を続ける中ボーカリストを募集し、エディ・ヴェダー(Vo)が加わって1990年にパール・ジャムを結成するに至ります。ちなみにバンド名はヴェダーの祖母の作るジャムが美味だったことが由来だとか。
 本作のレコーディングにはデイヴ・クルーセン(Dr)が参加していますが、レコーディング直後に脱退。後任にはデイヴ・アブラジーズ(Dr)が加入しています。本作は米国だけで1300万枚以上(2009年時点)を売り上げる大ヒットとなりました。リック・パラシャーとパール・ジャムの共同プロデュース。

 オープニング曲「Once」は神秘的な雰囲気のイントロで始まりますが、それを引き裂くヘヴィでダーティなギターリフ。そこからヴェダーの唸るような叫びが中々に強烈なインパクトです。全体的に重苦しい空気が漂っています。「Even Flow」はヘヴィでワルっぽいイントロがカッコ良い。間奏の即興的な演奏も中々魅力的。歌には独特の倦怠感があって少し単調な印象を抱きますが、同時に不思議と中毒性をも持ち合わせています。続く「Alive」はメロディアスな1曲。エレキとアコギが絡み合う穏やかなサウンドに、気だるくメランコリックな歌が乗ります。間奏のハードロック的なギターソロがカッコ良い。「Why Go」ではイントロから躍動感のあるドラムと跳ねるようなベースが、ノリノリのリズムを刻みます。特にアメンのベース、とてもカッコ良い…。「Black」は哀愁漂うメロディアスな1曲です。ヘヴィさは控えめに、優しく憂いのあるサウンドで歌メロをじっくりと聴かせてくれます。ヴェダーの声質は個人的に苦手ですが、それでもこの美しさには惹かれるものがあります。「Jeremy」はバンドの代表曲。爽やかなメロディですが、やや引きずり気味のヘヴィなサウンドと、癖のあるボーカルによってダーティな印象も合わせ持ちます。「Oceans」は強い哀愁が漂います。ドラムレスで静かに哀愁を漂わせるパートと、ドラムと力強いティンパニで焦燥感を煽るパートを交互に繰り返し、3分足らずながらもドラマチックな展開を見せてくれます。続く「Porch」は本作では数少ない疾走曲。勢いのある演奏ですが、晴れやかな感じは少なく、どこか暗い影を背負っているような雰囲気があります。「Garden」は重厚なバラード。静と動の強い対比、そしてサビメロはかなりヘヴィです。軸を作るアメンのベースが中々魅力的。「Deep」は本作中最もヘヴィに歪んでいますね。静と動のメリハリのついたサウンドは、盛り上がる場面ではかなり重苦しいサウンドを展開。ヴェダーのシャウトも強烈です。それに加えて3拍子のリズムが、不気味で奇妙な感覚を生み出します。最後の「Release」はゆったりとしてメロウな雰囲気が漂います。歌は渋くて、年齢の割に老成した円熟味のある印象。

 欧米では高い評価を得ていますが、ボーカルが苦手なのとスローな楽曲が多くてメリハリに欠ける印象があり、個人的にはそこまで好みではなかったり…。でも所々で良いメロディが聴けるんですよね。

Ten (Deluxe Edition 2CD+DVD)
Pearl Jam
Ten (Legacy Edition 2CD)
Pearl Jam
 
Vs.

1993年 2ndアルバム

 エディ・ヴェダー(Vo)、ストーン・ゴッサード(Gt)、マイク・マクレディ(Gt)、ジェフ・アメン(B)、デイヴ・アブラジーズ(Dr)と、『Ten』発表後のメンバーラインナップで臨んだ本作。プロデューサーにはブレンダン・オブライエンを迎えています。米国では発売初週に95万枚以上を売り上げて、ビルボード史最速売上というギネス記録を打ち立てました(その後2000年にリンプ・ビズキットに破られます)。2008年までに米国で累計700万枚以上を売り上げました。
 バラエティ豊富になり、かつ明るい雰囲気の楽曲が増えたことで前作よりも取っつきやすさが増した印象です。アルパカ(?)のジャケットもインパクトがありますね。

 オープニング曲「Go」が強烈。パンキッシュで躍動感に溢れていますが、全体的に不穏な空気が支配して、サビでは怒りを爆発させるようなシャウト。とてもスリリングです。アメンのゴリゴリと刻むベースがとにかくカッコ良い。「Animal」はファンク色も少し取り入れ、ノリが良いもののサウンドはヘヴィです。アブラジーズのパーカッションが武骨でアグレッシブです。続く「Daughter」はアコースティックに振った晴れやかなナンバー。毒が少なく、比較的爽やかな印象の佳曲です。続く「Glorified G」は明るいロックナンバーで、躍動感のあるドラム、心地良い低音を鳴らすベースがとても爽快。マクレディの弾くギターが晴れやかな雰囲気を作る「Dissident」を挟んで、「W.M.A.」はアブラジーズのパーカッションが印象的。ヘッドフォンを左右にパタパタパタパタと目まぐるしく動いています。ひたすら反復するベースも中毒性がありますね。「Blood」はメタリックで攻撃的なイントロから強烈です。ヴェダーのシャウトも凄まじくてヘヴィ。でも炸裂するようなドラムなど激しい演奏を繰り広げますが、ファンクっぽいノリの良さも兼ね備えています。続く「Rearviewmirror」はパンキッシュな楽曲。シンプル骨太な演奏に乗せてキャッチーでメロディアスな歌を展開します。しかし終盤になると陰りを見せ、暗く焦燥感を煽る楽曲へと変わっていきます。「Rats」はクールでワルっぽい感じ。洗練された余裕のある演奏がカッコ良いです。アコギを掻き鳴らす「Elderly Woman Behind The Counter In A Small Town」で落ち着いた雰囲気になり、ヴェダーの渋い歌声もあってほっと一息つけますが、続く「Leash」ではヘヴィさが前面に出てきています。シャウト気味のボーカルに、重低音を轟かせるサウンドやドラムの一撃一撃が重たく響きます。最後はハードロック的なギターソロで魅せます。そしてラスト曲「Indifference」。オルガンの音色が旧き良きロックを想起させます。渋くて大人びた雰囲気で、特に大きな盛り上がりもありませんが、リラックスした空気でアルバムを静かに締め括ります。

 ロックの躍動感に満ちた楽曲が増え、前作より格段に取っつきやすくなりました。個人的には『Ten』よりこちらの方が好みですね。

Vs. (Remastered & Expanded)
Pearl Jam
 
 

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 サウンドガーデン解散後、マット・キャメロン(Dr)がパール・ジャムに加入。

 
 
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