🇺🇸 Pixies (ピクシーズ)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Come On Pilgrim (カム・オン・ピルグリム)

1987年 1stミニアルバム

 ピクシーズは米国ボストン出身のオルタナティヴロックバンドで、インディーシーンで活躍し、数多くのミュージシャンに影響を与えました。ブラック・フランシス(Vo/Gt)がジョーイ・サンティアゴ(Gt)をバンドに誘い、またメンバー募集広告を見たデイヴィッド・ラヴァリング(Dr)と紅一点キム・ディール(B/Vo)がバンドに加わって1985年に結成します。
 本作はゲイリー・スミスのプロデュース作。曲数は8曲入りですが、トータル20分なのでミニアルバム扱いです。ジャケットに写る女装した男は、背中が毛だらけ…。

 倦怠感溢れる「Caribou」ですが、金切音のようなブラックの叫びが時たま緊張感を与えています。続く「Vamos」は『サーファー・ローザ』にも収録されることになる楽曲です。『サーファー・ローザ』版は異様な緊張感とめちゃめちゃな演奏ですが、本作のバージョンはアコースティックギターが主体で奏でられ、荒さも控えめです。焦燥感を煽るドラムだけは共通していますね。そのノリや空気感を保ったまま始まる「Isla De Encanta」は楽しい雰囲気です。また「The Holiday Song」はとてもキャッチー。メロディアスなギターに乗るブラックの歌はメロディ無視なのですが、それでも不思議とポップ感があります。「Nimrod’s Son」はアコギが小気味よく楽しげなのですが、エレキが全面に出てくると一転して異常な緊張感を放ちます。静かなヴァースと激しいコーラスというニルヴァーナに影響を与えたそのスタイルは「I’ve Been Tired」に見ることができます。サビメロは激しく叫び散らします。ラスト曲「Levitate Me」は歌をフィーチャーしている感じですが、やはりメロディはない。笑

 短い楽曲が並び、サクッと終わります。フルアルバム『サーファー・ローザ』に比べるとサウンドの荒々しさはやや控えめで、彼らの不思議なポップセンスを味わえます。

Come On Pilgrim
Pixies
 

Surfer Rosa (サーファー・ローザ)

1988年 1stアルバム

 ミニアルバム『カム・オン・ピルグリム』発表後、ピクシーズは本作でデビューしました。スティーヴ・アルビニのプロデュース作です。スティーヴ・アルビニは生のバンドサウンドを活かし、極力音に加工を施さないローファイ志向のプロデューサーです。本作も荒々しいサウンドが強烈な1枚に仕上がりました。なお、挑発的なヌードジャケは写真家のサイモン・ラーバレスティアによるもの。

 オープニングを飾る「Bone Machine」。男女混声はブラック・フランシスとキム・ディールの歌唱。この2人が時にはデュエット、時には片方がボーカルを取りながら本作を奏でていきます。序盤で耳に残るのは激しいインストゥルメンタル「Something Against You」。スピード感のある荒々しいギターやドラム、そして耳に優しくない荒い雑音。その勢いを保ったまま流れ込む「Broken Face」も荒くて、歌もメロディなんて無視。強烈なインパクトがありながら1分半で流れ去っていきます。キムが歌う「Gigantic」は、歌にトゲが無いからか、ノイジーなサウンドをバックに可愛らしさすら感じます。彼女の奏でるベースラインも中々良いんですよね。続いてブラックの激しい叫び声とキムの優しい声の対比が印象に残る「River Euphrates」。「ライライライラ…」と妙に耳に残ります。また、ノリの良い「Tony’s Theme」は、勢いやテンションの高さなど、ラフながらライブ感のある1曲です。そのノリを継続したまま「Oh My Golly!」になだれ込みます。いずれも2分足らずの、勢い任せなだけの楽曲ですが楽しい。ドラムが焦燥感を掻き立てる「Vamos」は、そのドラムが楽曲を支え、それ以外は収拾がつかない滅茶苦茶な演奏が繰り広げられます。

 メロディなんてあったもんじゃないんですが、不思議とポップさを感じます。ノイジーなサウンドをバックに楽しげに歌う姿も、この作品に魅力を与えているのかもしれません。

左:『サーファー・ローザ』単品。
右:『カム・オン・ピルグリム』と『サーファー・ローザ』がセットになった作品。私はこちらで両作品を聴きました。

Surfer Rosa
Pixies
Surfer Rosa / Come On Pilgrim
Pixies
 

Doolittle (ドリトル)

1989年 2ndアルバム

 ギル・ノートンのプロデュース作。本国米国よりも英国で成功し、全英では8位を記録しました。

 オープニングを飾る「Debaser」は、イントロから明るく楽しげな雰囲気を醸し出しますが、ブラック・フランシスの耳障りな叫びがギャップを生み出しています。キムのコーラスは綺麗なんですけどね。笑 ニルヴァーナの名曲「Smells Like Teen Spirit」を生み出すきっかけになった1曲と言われています。続く「Tame」では猫が鳴き叫ぶかのようなブラックの叫び声に圧倒されます。バックの演奏陣も非常にノイジーです。「Wave Of Mutilation」でヘヴィながらもキャッチーなメロディを聴かせます。そして続く「I Bleed」はベースがカッコいい1曲。ブラックとキムがデュエットしてますね。後半になるにつれて演奏は激しくなっていきます。1970年代くらいのギターを聴かせる「Here Comes Your Man」は穏やかで優しい楽曲です。ノイジーな作りにしなければポップなバンドになっていただろうと、この楽曲を聴いていると思います。まあ、そのノイジーさやひねたところがピクシーズらしさなんですけどね。シングルヒットした「Monkey Gone To Heaven」はベースが目立つ1曲です。歌メロは比較的メロディアス。そして口笛を吹いて「I Love You」を連呼する「La La Love You」も耳に残ります。低く渋い声はドラマーのデイヴィッド・ラヴァリングが歌っています。「No. 13 Baby」はブラックの絞り出すような歌が少し気になりますが、ベースラインがとてもカッコいい1曲です。ノイジーなギターとヘヴィなベース、そして3連符を刻むドラムが印象的な「There Goes My Gun」、激しいしノイジーだけどキャッチーさもあるラスト曲「Gouge Away」等、聴きごたえがあります。全15曲ですが、1曲1曲が短いんですよね。

 ノイジーなサウンドと、聞き苦しさすらある(笑)ブラックの叫び声。それと対照的な、キムの可愛らしいコーラスと、ポップでキャッチーなメロディが織りなすアンバランス感。そんなピクシーズの特徴を捉えた1枚です。

Doolittle
Pixies
 
 
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