🇮🇹 Premiata Forneria Marconi (プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ)

レビュー作品数: 2
  

スタジオ盤

Photos Of Ghosts (幻の映像)

1973年 3rdアルバム

 プレミアータ・フォルネリア・マルコーニはイタリアのプログレッシヴロックバンドで、1970年に結成しました。ちなみにバンド名は、バンドの出身地の近くにあったパン屋の名前だとか。
 『幻想物語』、『友よ』というイタリア語の作品をリリースし、その最中にELPの前座を務めたことがキッカケでグレッグ・レイクに見出されて英国に招かれます。そしてELPの立ち上げたマンティコア・レーベルより、『友よ』をベースにした英語詞版で、世界デビュー盤となる本作がリリースされました。なお英語詞は元キング・クリムゾンのピート・シンフィールドが提供。ピート・シンフィールドの発案で、バンド名もシンプルに「PFM」を名乗るようになります。以下、PFMで統一します。
 本作のラインナップはフランコ・ムッシーダ(Vo/Gt)、フラヴィオ・プレーモリ(Key/ Vo)、マウロ・パガーニ(Vn/Fl/Vo)、ジョルジオ・ピアッツァ(B/Vo)、フランツ・ディ・チョッチョ(Dr/Vo)。プロデューサーにはピート・シンフィールド。本作はイタリアのバンドではじめて米国のチャート入りした作品だそうです。

 オープニング曲「River Of Life」は、「人生は川のようなもの」という美しい邦題が付けられました。バロック調のギターにフルートが加わり、優しく幻想的なイントロは突如としてヘヴィな演奏に蹂躙されます。歌が始まるまでの2分のイントロが凄まじくドラマチックで鳥肌ものです。歌が始まると穏やかな印象ですが、穏やかな雰囲気を飲み込む壮絶なキーボードとメロトロン。展開がめまぐるしいです。そして上辺を彩る音色も魅力的なのですが、ヘヴィに唸る主張の強いベースや手数の多いドラム等、リズム隊も負けていません。プログレ界でも有数の名曲だと思います。続く「Celebration」はご機嫌な1曲です。ELPばりのスペイシーなキーボードが華やかですが、ノリの良いリズム隊にポップなメロディも明るい気分にさせてくれます。イタリア人元来の陽気な気質がこの1曲に表れている気がします。表題曲「Photos Of Ghosts」は難解な1曲。前半は静かなトーンでインプロヴィゼーションを展開。徐々に演奏は激しくなっていきますが、キャッチーさには欠けるため中々取っつきにくいです。「Old Rain」は美しいヴァイオリンやフルートが主導する優美なインストゥルメンタル。ジャズに影響を受けたドラムがしっとりとした大人びた雰囲気を演出します。
 レコードでいうB面、アルバム後半は「Il Banchetto」で幕開け。8分半に渡る本作最長の1曲で、序盤は牧歌的。メロディアスなコーラスワークも良いですね。中盤に向けてスペイシーなキーボードを中心に、スリリングな演奏を披露します。終盤は優美だけれどもシリアスさもあるピアノソロから、最後に吹っ切れたように牧歌的なパートに戻ります。展開がめまぐるしい1曲です。「Mr. 9 ‘Til 5」は非常にスリリングな楽曲で、手数の多いドラムが複雑なリズムを刻み、乗っかるキーボードやギターも先の読めない演奏。高い緊張感に満ちた1曲です。ラストは「Promenade The Puzzle」。グルーヴィなベースをはじめ重低音が強烈です。序盤は牧歌的でポップな雰囲気もありますが、後半は狂気じみてカオスです。

 キング・クリムゾンやELPに影響を受けつつも、独自色を打ち出したイタリアンプログレの名盤です。5大バンドをひと通り聴いた後の次の一手として、おすすめできる作品です。

Photos Of Ghosts (Expanded+Remastered)
Premiata Forneria Marconi
 
L'isola Di Niente / The World Became The World (甦る世界)

1974年 4thアルバム

 イタリア語盤『L’isola Di Niente』と英語盤『The World Became The World』が作られ、イタリア語盤はジャケットが緑基調で英語盤は青基調。また、英語盤の方が1曲多いです。邦題はどちらも『甦る世界』。
 前作同様に英語詞は元キング・クリムゾンのピート・シンフィールドが提供。なお前作から本作までの間にメンバーチェンジがあり、ジョルジオ・ピアッツァ(B/Vo)が脱退して、元アレアのヤン・パトリック・ジヴァス(B/Vo)が加入しています。プロデューサーにはクラウディオ・ファビ。
 ちなみに紙ジャケだと山の部分を切り離して組み立て、立体的な山を作れる…という工作ができる仕掛けになっています。

 手元にあるのが英語盤なので、こちらをレビューします。
 「The Mountain」で開幕。11分近い大作です。オペラのような荘厳なコーラスから一転、陰鬱さを帯びたダークなギターリフ。縦横無尽に暴れるベースや力強いドラムがシリアスな雰囲気を助長。ボーカルも荒々しいです。しかしキーボードが加わる頃には晴れやかになって…その後もころころと展開が変わります。続く「Just Look Away」はアコースティック基調のゆったりとしたサウンドで、フルートの音色に癒されます。ポップなメロディラインは甘く優しい。表題曲「The World Became The World」は英語盤のみの収録で、イタリア語盤1st『幻想物語』収録曲のリメイク。盛り上がり方や展開、悲壮感を煽るような過剰なメロトロンの演出など、キング・クリムゾンの「Epitaph」を強く想起させます。でも所々でゾクッとするし、やはり名曲だと思います。
 アルバム後半は「Four Holes In The Ground」で開幕。前半は華やかで陽気なキーボードを中心に展開します。上辺は華やかですが、下支えするベースは終始バキバキと唸っていて、やけにカッコ良い。後半はヘヴィなギターが主導する、ロックの躍動感に満ちたノリの良い楽曲に変貌します。スリリングな1曲です。「Is My Face On Straight」は展開がころころと変わるので変化に満ちていますが、唐突な場面変化が多すぎて少し散漫な印象。でもポップなメロディは良いです。そして、ラスト曲「Have Your Cake And Beat It」では1分半ほど静寂が占め、ベース等が静かに鳴っています。そして突如ヘヴィでジャジーな、スリリングな演奏バトルが開幕。インプロヴィゼーションがしばらく続きますが、終盤は荘厳なオルガンを中心に見事なアンサンブルで纏め上げます。ギターが味があって良い。

 『幻の映像』と並んで人気の高い作品です。個人的には『幻の映像』が好みで、そちらばかり聴いていましたが、久々に本作を聴くと聴きごたえがあって中々良いと思いました。
 本項レビューは英語盤ですが、Spotifyにはイタリア語盤しかないため、そちらをリンクとしました。英語盤「The Mountain」に対応するイタリア語曲「L’isola Di Niente」です。

左:英語版。
右:イタリア語版。

The World Became The World
(The 2010 Expanded Edition)
Premiata Forneria Marconi
L’isola Di Niente
Premiata Forneria Marconi
 
 

関連アーティスト

 マウロ・パガーニ(Vn/Fl/Vo)のソロ。

 
 ヤン・パトリック・ジヴァス(B/Vo)の古巣。
 
 
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