🇺🇸 Rage Against The Machine (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Rage Against The Machine (レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)

1992年 1stアルバム

 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(通称レイジ、またはRATM)は米国のバンドで、ザック・デ・ラ・ロッチャ(Vo)、トム・モレロ(Gt)、ティム・コマーフォード(B)、ブラッド・ウィルク(Dr)の4人組です。1991年に結成しました。『プレゼンス』の頃のレッド・ツェッペリン的なサウンドに、攻撃的なラップを乗せたような楽曲です。
 音楽は政治的声明を伝える手段と割り切っている彼ら。英語で歌われるため日本人としてはピンと来ないのですが、反政府的で猛烈な社会批判を込めたメッセージ性の強い歌詞が特徴で、彼らの3rdアルバムは発売早々に米国当局から「要注意著作物リスト」に載ってしまうほど。
 アメリカの傀儡である南ベトナム政権へ抗議し、1963年にアメリカ大使館前で焼身自殺した僧侶。この写真をジャケット写真に使用しており、ジャケットだけでなく歌詞の内容も政治色の強いものとなっています。ガース・リチャードソンとバンドの共同プロデュース。

 オープニングを飾る「Bombtrack」から強烈なパワーを感じます。硬質でヘヴィなリフを中心とするサウンドをバックに、ザックのラップの嵐。怒りのこもった「Burn, burn, yes ya gonna burn」の連呼が強烈です。そして続くのは本作のベストトラック「Killing In The Name Of」。メタリックなベースに、引きずるようにヘヴィでカッコいいギターリフは鳥肌が立ちます。怒りを感じる歌い方のラップは、歌っている内容も怒りに満ちていて、警察による大義名分のもとに行う残虐行為を批判した内容となっています。「ナゲット割って父ちゃん…ナゲット割って父ちゃん…」という空耳も有名。笑 この空耳の後ろで奏でられるヘヴィなリフと力強いドラムの演奏も相まって、その迫力を増します。続いてティムの弾くファンキーなベースが強烈な「Take The Power Back」を挟み、「Settle For Nothing」が続きます。静かに始まりますが、サビではゴリゴリとしたサウンドをバックに、ザックは怒り散らすかのような歌唱。静と動の対比が強烈です。そして「Bullet In The Head」はグルーヴ感に満ちた楽曲。前半は比較的おとなしいものの、トムの弾く変態的なギターが聴きどころ。後半はメタリックなベースを中心に力強さを増します。終盤のひたすら反復するギターリフと力強いドラムが印象的で好みです。続く「Know Your Enemy」ではラストの「All of which are American dreams」の反復が強烈なインパクトですが、「お前の敵を知れ」の答えとして「自分自身と戦えと教えた教師・妥協・協調・同化・服従・無知・偽善・蛮行・エリート」、「それらはつまりアメリカンドリームのことだ」と歌います。強烈な社会批判ですね。そして続く「Wake Up」は、映画『マトリックス』でも使用された楽曲です。レッド・ツェッペリンの「Kashmir」を想起させるイントロで印象が強いです。ラストのぶち切れボーカルも強烈。強烈なギターリフがカッコ良い「Fistful Of Steel」を挟んで、ファンキーな「Township Rebellion」。軽快なパーカッションで抜群にグルーヴ感のあるパートと、引きずるような硬質なギターリフを中心としたヘヴィなパートが交互に訪れます。ラスト曲は「Freedom」。ザックの唸るような声と、それを煽り立てるヘヴィなサウンドは強烈。最後はぶち切れたように「Freedom」を連呼。自由を求める強烈な意思表示で終わります。

 ヘヴィなサウンドと、怒りに満ちたラップの歌唱。ミクスチャーの先駆者の放った本作は、歌詞を理解せずに上辺だけ聴くと非常にカッコ良い作品です。しかし歌詞を読み解くと、社会批判と革命精神に溢れた、好戦的で少し怖いバンドであることもわかります。

Rage Against The Machine – XX (20th Anniversary)
Rage Against The Machine
 
Evil Empire (イーヴィル・エンパイア)

1996年 2ndアルバム

 米国の元大統領ロナルド・レーガンの、旧ソ連に対する「Evil Empire (悪の帝国)」発言が本作のタイトルの由来。しかしアメコミヒーロー風の衣装に身を包む少年の胸に描かれた「e」が示すように、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンにとっては「米国こそ悪の帝国」という表明なのでしょう。ライブでは星条旗を逆さに吊して燃やすパフォーマンスを行い、徹底した反体制の姿勢を貫きます。
 次作とともにブレンダン・オブライエンがプロデュースしました。

 オープニング曲は「People Of The Sun」。トム・モレロの弾くギターは非常に独特で変態的。そしてティム・コマーフォードのメタリックなベースも強烈です。ザック・デ・ラ・ロッチャのラップは1曲目から好戦的ですね。続いて本作のハイライト「Bulls On Parade」。ゴリゴリと爆音で迫る硬質なリフに圧倒されます。リフが非常にカッコ良くて、いつまででも浸っていられそうです。続く「Vietnow」はグルーヴ感が強烈な1曲。ブラッド・ウィルクのドラムが作るリズム感が心地良く、またベースは爆音で唸りを上げます。「Revolver」はスペイシーなサウンドの後に引きずるようなヘヴィなリフで始まります。途中から疾走パートが顔を出す、静と動の対比がスリリングな1曲で、抜群のグルーヴ感があります。ノリの良いドラムが心地良い疾走曲「Snakecharmer」を挟んで、ゴリゴリの爆音ベースが主導する疾走曲「Tire Me」。非常にパンキッシュでカッコ良い1曲です。続く「Down Rodeo」は変な楽曲です。リズム隊はバシッと締めるのですが、ギターが色々試しているのか聴いたこともない音色が飛び交います。変態的で、妙な中毒性のある楽曲です。「Without A Face」ではサウンドは控えめで、ザックのラップをフィーチャーしたような楽曲。終盤はゴリゴリとしたサウンドが迫ります。続く「Wind Below」は爆音リフが非常にカッコ良い1曲で、ヘヴィメタル的。静と動の対比が強烈で、強烈なリフが去ると静けさが訪れます。「Roll Right」もリフがカッコ良い。ギターとベースによるリフが終わると、強烈なベースが主導します。ラスト曲「Year Of Tha Boomerang」はゆったりとしたテンポでラップを展開しますが、途中から強烈に疾走するスリリングな1曲です。

 トム・モレロのギターは実験的なアプローチを行い、ベースとドラムがサウンドを主導します。そのせいかヘヴィメタル色は若干薄れ、グルーヴ感の強いファンキーな作品に仕上がっています。ただ、後半はやや一本調子な感じもします。

Evil Empire
Rage Against The Machine
 
The Battle Of Los Angeles (バトル・オブ・ロサンゼルス)

1999年 3rdアルバム

 1992年に起きた、人種差別に端を発したロサンゼルス暴動をタイトルに冠した本作。反米的な過激な歌詞もあってか、発売早々に米国当局から「要注意著作物リスト」に載ってしまいました。
 ブレンダン・オブライエンのプロデュース作。

 「Testify」で開幕。金属音が鳴り響き、強烈なリフをぶちかまします。トム・モレロの変幻自在なギター、ティム・コマーフォードのゴリゴリとしたベース、ブラッド・ウィルクの叩きつけるようなドラムに、ザック・デ・ラ・ロッチャの超攻撃的なラップが乗ります。凄まじい緊張感に満ちていて、非常にスリリングで痺れる1曲です。歌詞を読むと、石油等を巡る中東での殺戮に対する米国への怒りが見えます。続いて人気曲「Guerrilla Radio」。リフがカッコ良いです。歌が始まると、ファンキーなサウンドに乗るザックのラップが絶好調。2曲目にキラーチューンを持ってくるのはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの伝統でしょうか。不思議な音色を奏でるギターが特徴的な「Calm Like A Bomb」を挟んで、「Mic Check」は神秘的で不穏なサウンドで始まります。ざらついたドラムが強烈ですが、それ以上に強烈なのは後半のスクラッチのようなギターソロ。凄い。続いて「Sleep Now In The Fire」ではPVにマイケル・ムーア監督を起用。しかしゲリラ的に撮影を行ったことからニューヨーク市警に逮捕されるというハプニングも。グランジ的なヘヴィネスを持ちつつ軽快なノリもあって(ボーカルは怒り狂っていますが)、取っつきやすい1曲です。「Born Of A Broken Man」は静と動の対比が強烈で、ヘヴィで強烈なリフに乗せて怒りのラップが炸裂します。ギューンと唸るリフがカッコ良い「Born As Ghosts」を挟んで、「Maria」は不快な高音が鳴り響きます。そんな中で低音のヘヴィなリフがカッコ良い。静と動の対比が強烈な「Voice Of The Voiceless」を挟んで、「New Millennium Homes」で奏でられるのは単調で無機質なリフですが、終盤にピコピコ音が出てきて驚きます。そしてその驚きを更に強めるのが「Ashes In The Fall」。電子音のような音を奏でるギターは変態としか言いようがありません。衝撃的です。そして終盤に向けて緊張感をどんどん高めます。最後は「War Within A Breath」。武骨なサウンドで最後まで好戦的な作品でした。

 トム・モレロの変態的なギターは健在ですが、1stのようなメタリックなサウンドが戻ってきました。キラーチューンもあってオススメできます。

 2000年にザック・デ・ラ・ロッチャが脱退し、脱退直後にカバーアルバム『レネゲイズ』をリリース。しかし同年にバンドは解散しました。残された3人は、元サウンドガーデンのクリス・コーネルを迎えてオーディオスレイヴを結成。2007年にはオーディオスレイヴが活動停止し、再びレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの活動を再開するも、今に至るまで新作はありません。

The Battle Of Los Angeles
Rage Against The Machine
 
 
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