🇬🇧 Rainbow (レインボー)

レビュー作品数: 6
  

スタジオ盤

三頭政治時代

Ritchie Blackmore's Rainbow (銀嶺の覇者)

1975年 1stアルバム ※Ritchie Blackmore’s Rainbow (リッチー・ブラックモアズ・レインボー) 名義

 ディープ・パープルを脱退したリッチー・ブラックモア(Gt)が、ソロ名義で結成したバンドです。アメリカのバンド「エルフ (Elf)」のロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)を気に入ったリッチーが、エルフを吸収し「リッチー・ブラックモアズ・レインボー (Ritchie Blackmore’s Rainbow)」を名乗ってデビューしました。当初のラインナップはリッチーとディオ、そして元エルフのメンバーのミッキー・リー・ソウル(Key)、クレイグ・グルーバー(B)、ゲイリー・ドリスコール(Dr)でしたが、ディオを除いた元エルフメンバーは本作のあと解雇されます。後にハードロック界屈指のボーカリストとして名を馳せる、ディオを引き抜くための乗っ取りだったのでしょうか…。

 本作はリッチーがディープ・パープル在籍中から録音を進めていた作品で、1975年6月の脱退後、8月には本作がリリースされました。マーティン・バーチのプロデュース。後の作品と比べるとおとなしい印象で、楽曲もしっとり聴かせるミドルテンポ中心です。ロニーの力強い歌唱は1曲目の「Man Of The Silver Mountain」から既に表れています。メロウな4曲目「Catch The Rainbow」は、ロニーの表現力も相まって哀愁漂う名曲ですね。あまり主張せずムード作りに徹するギターも良い味を出しています。シンプルなサウンドでハードロックとは縁遠い「The Temple Of The King」が、実はなかなか良かったりします。ロニーの中世的な趣味が溢れている楽曲です。
 しかし後のハードロックバンドとしてのキャリアを期待して聴くと肩透かしを食らうというか、眠くなる楽曲が多いというのが第一印象です。しっとり聴かせるメロディアスな楽曲群はライブで化けますので、ライブ盤の方がおすすめだったりします。

Ritchie Blackmore’s Rainbow
Ritchie Blackmore’s Rainbow
 
Rising (虹を翔る覇者)

1976年 2ndアルバム

 リッチー・ブラックモア(Gt)、ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)に、ハードロック界の名ドラマー、コージー・パウエル(Dr)が加わり、リッチー、ディオ、コージーの3人を指して「三頭政治」とも呼ばれます。またジミー・ベイン(B)、トニー・カレイ(Key)もメンバーに加わりますが、本作限りで解雇されます。メンバーチェンジの激しいバンドというか、基本的にはリッチー・ブラックモアのワンマンプロジェクトなんでしょうね。プロデューサーには前作に引き続きマーティン・バーチ。

 キーボードソロで始まる「Tarot Woman」はオープニングに相応しくパワフルなサウンドが展開されます。ロニーの歌唱も本当上手い。「Run With The Wolf」はイマイチですが、ノリの良いドラムのリズムが心地よい「Starstruck」と続き、本当中最もキャッチーな「Do You Close Your Eyes」
 そして本作のハイライトはなんと言っても後半に控える「Stargazer」と「A Light In The Black」の2つの大曲でしょう。「Stargazer」レッド・ツェッペリンの名曲「Kashmir」に影響を受けたものと言われています。オーケストラはミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が担当。そしてラストの「A Light In The Black」はコージーの名演。ツーバスでドコドコ刻むパワフルなドラムがめちゃめちゃカッコいいです。アップテンポで、ギターソロやキーボードソロも用意されたハードロックの名曲です。

 30分強の短さゆえに聴きやすいんですよね。レインボーの入門盤におすすめです。

Rising
Rainbow
 
Long Live Rock 'N' Roll (バビロンの城門)

1978年 3rdアルバム

 リッチー・ブラックモア、ロニー・ジェイムズ・ディオコージー・パウエルの3人を正式メンバーとして、セッションミュージシャン扱いとしてデヴィッド・ストーン(Key)、ボブ・デイズリー(B)を加えて制作されました。本作までマーティン・バーチがプロデューサーを務めました。正直イマイチな楽曲もある本作ですが、いくつか必殺のキラーチューンがあり、それを目当てに聴くことも多いです。

 「Gates Of Babylon」は中東風の楽曲です。レッド・ツェッペリンの「Kashmir」に影響を受けた楽曲ですが、あちらが中東のエッセンスを抽出して昇華しているのに対し、「Gates Of Babylon」はもろに中東風な感じ。でもジャケットの砂っぽいイメージも相まって、意外としっくりくるんです。どこか怪しさを纏った雰囲気の中で繰り広げられるスリリングな展開が好きですね。
 そしてレインボー屈指の名曲「Kill The King」。スピードメタルの元祖とも言われる楽曲です。ロニーの中世的な趣味が溢れた世界観にどこまでも伸びる歌唱、ドコドコと鳴るツーバスにドタバタ忙しいコージーのドラミング、そして間奏でピロピロ鳴らすリッチーの超高速ギターと、「三頭政治」時代の看板プレーヤー3人が輝く楽曲です。

 正直この2曲があれば良いという感もあります。キャッチーでわかりやすいアップテンポ曲「Long Live Rock ‘N’ Roll」だったり、しっとり聴かせる「Rainbow Eyes」とかも悪くないんですけどね。

Long Live Rock ‘N’ Roll
Rainbow
 

グラハム・ボネット時代

Down To Earth (ダウン・トゥ・アース)

1979年 4thアルバム

 中世的な音楽にこだわったロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)と、アメリカでの成功を目指してポップ化を志向したリッチー・ブラックモア(Gt)が対立し、ロニーが脱退。デヴィッド・ストーン(Key)、ボブ・デイズリー(B)も相次いで脱退。当初プロデューサーとして招かれた元ディープ・パープルのロジャー・グローヴァーがベーシストも兼任、コージー・パウエルの推薦でドン・エイリー(Key)が加入、リッチーが発掘したグラハム・ボネット(Vo)がメンバーに招かれました。
 グラハム・ボネットは、ロングヘアに革ジャンが常識だったハードロック界において、リーゼントやオールバックにスーツという風貌の異端児でした。横山やすしに似ているということで、日本の一部ファンからは「やっさん」と呼ばれています。笑 凄まじい声量でハイトーンもこなせるけど、がなり声。ポップ化を目指したレインボーの楽曲とがなり声というアンマッチな組合せが、妙にやみつきになるんです。

 1曲目からポップ化を遂げた楽曲「All Night Long」。キャッチーですが、血管がぶち切れそうなパワフルな歌唱。ポップさではカバー曲の「Since You Been Gone」も負けていません。コーラスも含めて明るい感じで、ハードポップな名曲に仕上がっています。ハードロック的な楽曲だと「Eyes Of The World」がなかなか良い感じです。そしてグラハム派の人が満場一致で推すであろう疾走曲「Lost In Hollywood」。コージーのドラムソロから一気に爆裂するように始まるイントロが高揚感を煽ります。どこまでも伸びる強烈なボーカル、メインフレーズとなるギターリフもとても印象的。間奏のキーボードとギターの掛け合いも完璧です。

 このラインナップは本作限りでしたが、グラハム派の私としては、レインボーの最高傑作としては本作を推します。正直、名曲と凡曲の差が激しい作品ではありますが、レインボー最強の楽曲「Lost In Hollywood」があること、そしてグラハムのがなり声とポップな楽曲のアンマッチ感が魅力的な傑作です。

Down To Earth
Rainbow
 

ハードポップ時代

Difficult To Cure (アイ・サレンダー)

1981年 5thアルバム

 元々『ダウン・トゥ・アース』の頃から脱退意思を表明していたコージー・パウエル(Dr)が脱退、次いでグラハム・ボネット(Vo)も脱退しました。代わってボビー・ロンディネリ(Dr)と、ジョー・リン・ターナー(Vo)が加入し、前作同様ロジャー・グローヴァーがプロデューサーを兼任してリリースされました。本作は産業ロック的というか、メロディアスなハードポップといった作品に仕上がっています。本作は1981年の作品ですが、音作りというか空気感が1970年代の音から1980年代の音に変わった感じです。

 「I Surrender」は、日本人好みの、哀愁を纏ったそれでいてキャッチーな楽曲です。このアルバムでずば抜けた名曲でしょう。「Magic」もキャッチーで、1980年代ハードポップといった出来です。でもこの2曲ともカバー曲という…。オリジナル曲はそこまでパッとする楽曲がないのは残念。
 なおインストゥルメンタルを2曲収録しており、ひとつが哀愁漂う「Vielleicht Das Nachste Mal (Maybe Next Time)」、そしてもうひとつが表題曲「Difficult To Cure」。この「Difficult To Cure」はベートーヴェンの「喜びの歌」をカバーしたインストゥルメンタルです。手術前のようなジャケットに、喜びの歌を流しながらラストの不気味な笑い声。そのタイトルが「Difficult To Cure (邦題:治療不可)」とはいささかブラックですね。

 これまでのレインボーとはだいぶ変わってしまいましたが、1980年代ハードポップが好きな人にはたまらない作品でしょう。

Difficult To Cure
Rainbow
 
 

ライブ盤

On Stage (レインボー・オン・ステージ)

1977年

 『虹を翔る覇者』のラインナップで行われたライブを収録した作品で、初来日公演の楽曲をベースに、ドイツ公演の楽曲を加えたものになります。『銀嶺の覇者』からの選曲が多いのが特徴です。

 初っぱなから「Kill The King」をぶちかましてくれます。ロニー・ジェイムズ・ディオのパワフルな歌声に、ツーバスを刻むコージー・パウエルの同じくパワフルなドラム、間奏のリッチー・ブラックモアの高速ギターリフ、キーボードも良い味を出しています。『バビロンの城門』発売前で、これが初出でした。続くメドレーは3曲を続けざまに演じたものですが、メドレー1曲目「Man Of The Silver Mountain」では原曲よりテンポアップしていて、スタジオ盤を上回る迫力です。インストゥルメンタルパート「Blues」を挟んで、インストへの反動かアカペラパートが用意された、ロックンロール的なノリの「Starstruck」でメドレーを終えます。15分に引き伸ばされた「Catch The Rainbow」と、続くディープ・パープル時代の名曲「Mistreated」。「Mistreated」はロニーが歌っても様になるんですよね。デヴィッド・カヴァーデイルに負けずとも劣らない。そして「Sixteenth Century Greensleeves」とヤードバーズのカバー曲でノリノリの「Still I’m Sad」で終わります。即興も含めて1曲あたり10~15分くらいに引き延ばされた全6曲。

 実力は伝わってきますが、ハードロックの名盤『虹を翔る覇者』からの選曲が少ないのが少し残念でもあったり。

On Stage
Rainbow
 
 

関連アーティスト

 リッチー・ブラックモア(Gt)、ロジャー・グローヴァー(B)の古巣。

 
 ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)が一時在籍。
 
 ロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo)が結成したヘヴィメタルバンド。
 
 ドン・エイリー(Key)、コージー・パウエル(Dr)、グラハム・ボネット(Vo)らが一時期参加。
 
 コージー・パウエル(Dr)のソロ活動。
 
 
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