🇺🇸 Ramones (ラモーンズ)
レビュー作品数: 7
スタジオ盤
1976年 1stアルバム
1974年に結成された米国ニューヨークのパンクバンド、ラモーンズ。メンバー全員がラモーン姓を名乗ったことがバンド名の由来です(芸名です)。ジョーイ・ラモーン(Vo)、ジョニー・ラモーン(Gt)、ディー・ディー・ラモーン(B)、トミー・ラモーン(Dr)の4人組。このラモーン姓は、ポール・マッカートニーがビートルズの前身のバンドでポール・ラモーンを名乗ったことに由来するそうです。ビートルズやビーチ・ボーイズに強い影響を受け、シンプルなロックンロールに回帰した音楽性は、決まったスタイルのなかったパンクというジャンルの音楽性を形作るのに一役買いました。不況に対する不満と複雑で長大化したロックシーンに飽々していた英国の若者に大いに受け、ロンドンパンクムーブメントの火付け役となりました。本国米国よりも英国での人気が高いそうです。
クレイグ・レオンによってプロデュースされた本作は、僅か6400ドルという制作費のなかで、丹念に音を重ねて制作されたようです。しかし制作費の3分の1を要して制作したジャケットはボツ。代わりに雑誌に掲載された写真を僅か125ドルで買い取って今のジャケット写真になったのだとか。写真に写った革ジャンにジーンズというスタイルは、ラモーンズのトレードマークとなりました。
オープニング曲は彼らの代表曲「Blitzkrieg Bop」。荒々しいリフから始まる「Hey ho, let’s go!」の軽快な掛け声。ジョーイの歌はヘタクソだし音もスッカスカですが、キャッチーで耳に残りやすく、サウンドもノリが良くて楽しいです。1曲目から僅か2分強でさくっと終わってしまいます。続く「Beat On The Brat」もキャッチーな歌メロが魅力的。サビは口ずさみたくなりますね。「Judy Is A Punk」は僅か1分半の本作最短ナンバー。勢い任せで楽しい1曲です。このシリーズ(?)は後の作品にも引き継がれていて、「Suzy Is A Headbanger」とか「Sheena Is A Punk Rocker」などがあります。笑 話題は本作に戻って「I Wanna Be Your Boyfriend」は歌メロ重視のゆったりとした1曲。とてもポップでほのぼのしています。続く「Chain Saw」はいきなりチェーンソーのSEで始まるのでメタリックな印象ですが、その後はワンパターンのサウンド(褒め言葉)。「Now I Wanna Sniff Some Glue」は1分半の短い楽曲。キャッチーな歌から始まるので取っつきやすいです。カウントからのヘヴィなサウンドも良いですね。「I Don’t Wanna Go Down To The Basement」は、メロディを作り上げるディー・ディーのベースが良い味を出しています。
レコードB面は「Loudmouth」で始まります。少しだけ変則的なリズムでフックをかけてきます。「Havana Affair」はトミーのスリリングなドラムに、ディストーションの効いたジョニーのギター、明るい楽曲の中で少し影を感じさせるディー・ディーのベースラインなど魅力満載です。続く「Listen To My Heart」はハンドクラップも入ってノリノリです。歌はキャッチーで口ずさみたくなります。「53rd & 3rd」でジョーイに負けず劣らずヘタクソなボーカルを披露するのはディー・ディー。でも嫌いじゃない。全編通してヘタクソなので慣れてしまうのかもしれませんね。笑 続く「Let’s Dance」はクリス・モンテスのカバー曲。パンキッシュなサウンドは軽快でノリが良いです。疾走曲「I Don’t Wanna Walk Around With You」を挟んで、カウントから始まる「Today Your Love, Tomorrow The World」はベースが主導します。勢い任せですが、最後はアルバムを締めるように歌を盛り上げて終わります。最後までノリが良い作品でした。
本作で奏でられる楽曲群は正直どれも似たアレンジで、しかもヘタクソなんです。個々の楽曲の特徴を語ろうとすると難しい。ただ根本はポップなのでメロディが良く、またノリの良い楽曲が多いので、たとえ下手でも似たり寄ったりの楽曲でも魅力的に感じてしまうのです。シンプルでアップテンポな楽曲の宝庫で、テンションを上げるのにもってこいの作品だと気づかされます。
楽曲も短いものばかりで14曲も入って30分満たず、再発盤なんて8曲のボーナストラックがついてようやく43分。さくっと聴ける手軽さも本作の魅力でしょう。
1977年 2ndアルバム
トニー・ボンジョヴィと、トミー・ラモーンの共同プロデュース。トミーはドラマーですがプロデューサー志向で、本作から兼任します。
前作同様に3分を超える楽曲は1曲もなく、14曲入りですが30分に満たない短い作品です。下手な印象は本作でもさほど変わりませんが、キャッチーな楽曲の宝庫で、前作にハマった人は安心して聴ける作品です。
「Glad To See You Go」で開幕。ノリの良い軽快なサウンドに、ジョーイ・ラモーンの歌う爽やかでどこか切ないメロディ。「go go go go goodbye」の連呼はとてもキャッチーで耳に残ります。「Gimme Gimme Shock Treatment」は少しだけトリッキーなリズムを取り入れています。歌はキャッチーでポップですが、ギュイーンと唸りを上げるジョニー・ラモーンのギターなどヘヴィさも持ち合わせています。「I Remember You」はメロディアスな歌をフィーチャーした楽曲です。ハミングする心地良い歌で、ラモーンズのポップな世界に浸ることができます。「Oh Oh I Love Her So」はタイトルの連呼がとてもキャッチー。ノイジーなサウンドをかき消すほどの、ポップな歌とハミングの浮遊感が心地良いです。「Carbona Not Glue」はディストーションの効いたギターが荒々しい。トミーのドラムもシンバル中心で、全体的にシャリシャリとざらついた質感です。「Suzy Is A Headbanger」はメロディラインが魅力的で、浮遊感のある歌も良いのですが、歌が終わるとメリハリをつけるロックンロールなサウンドも魅力的です。終盤に展開が変わる点も良いですね。続く「Pinhead」は変則リズムの楽曲で、妙な中毒性があります。終盤は色々な効果音でガヤガヤと騒がしくなります。
レコードB面、アルバム後半は「Now I Wanna Be A Good Boy」で開幕。イントロのギターリフが強烈なインパクトです。このリフが続けばハードロックだったでしょうが、シンプルな演奏に変貌。でも間奏でトリッキーなドラムやリズムチェンジを入れたりと、展開が目まぐるしく一筋縄ではいかない、面白い楽曲です。「Swallow My Pride」は荒々しいサウンドの先にポップなメロディが光ります。自身の「Beat On The Brat」にも似ているような…(似通っているという意味ではどれも似てますが。笑)。少し哀愁のあるメロディに浸れる「What’s Your Game」を挟んで、ジョー・ジョーンズのカバー「California Sun」。カウントから始まる軽快な楽曲で、歌と掛け合いをするギターが印象的。ポップなメロディも耳に残ります。「Commando」もカウントから始まる疾走曲。野太い掛け声がアツいですね。「You’re Gonna Kill That Girl」はエンディングに向けた感じで、ノリは良いもののメロディに少し切なさを感じます。ラストは爽やかな「You Should Never Have Opened That Door」で締めます。荒々しいサウンドですが、楽しい雰囲気です。
荒々しいサウンドにポップなメロディが映えます。全体的にキャッチーで爽やか。そして跳ねたくなるようなノリの良い楽曲も多く、聴いていて心地良い作品です。
1977年 3rdアルバム
ジャケットアートが似ているだけでなく、14曲入で、全曲が3分足らずというところも1stアルバム『ラモーンズの激情』とそっくりですが、トータルは30分超えました。ジャケットが似ているので1stと間違って手に取ってしまった人も、キャッチーで楽しめる内容になっています。個人的には最高傑作。
前作同様にトニー・ボンジョヴィと、トミー・ラモーンの共同プロデュース。なおツアー疲れもあり、プロデューサー業に専念するということでトミーは本作で脱退、次に加入するドラマーはマーキー・ラモーン。ラモーン姓は受け継がれていくのでした。
まずは2分足らずの疾走曲「Cretin Hop」でノリ良く始まります。ディストーションの効いたジョニー・ラモーンのギターを中心に荒々しいサウンドを展開しますが、歌はキャッチーで取っつきやすいですね。「1, 2, 3, 4, …」と掛け声の後に「4, 5, 6, 7, …」と続くので何で?という違和感が残りますが、「cretin」というのがばか、白痴という意味らしいので、狙っての歌詞なのでしょう。続く「Rockaway Beach」は個人的に本作のハイライト。これも僅か2分の楽曲で、気持ちの良いロックンロールナンバーです。「Rock-rock, Rockaway Beach」の連呼は、思わず口ずさみたくなるようなキャッチーさ。コーラスも駆使したポップなメロディが心地良い1曲です。ゆったりとしたテンポで歌をじっくり聴かせる「Here Today, Gone Tomorrow」で一息ついたあと、ノリの良い「Locket Love」が続きますが、2曲前の「Rockaway Beach」の亜種のような印象があります。サウンドや展開が似ている…。ギターの荒々しさが前面に出た「I Don’t Care」を挟んで、「シーナはパンクロッカー」の邦題で知られるヒット曲「Sheena Is A Punk Rocker」。これも名曲です。跳ねたくなるようなノリノリで爽やかなサウンドに乗せて、タイトルを連呼する歌詞の反復が耳に残りますね。続く「We’re A Happy Family」は少しトリッキーなリズムを刻むリフや、ヘンテコポップな歌が耳に残ります。終盤に犬の鳴き声やら色々と騒々しいですが、これも良曲だと思います。
レコードB面に入り、「Teenage Lobotomy」はトミーのドラムソロからディー・ディーのベースが加わり、ジョニーのギターと楽器が増えていくイントロにゾクゾクします。トリッキーなリズムは前曲と似通った印象です。続く「Do You Wanna Dance?」はボビー・フリーマンのカバー曲ですが、ラモーンズ作の楽曲群に違和感なく溶け込んでいます。キャッチーな歌メロはコーラスも含めて気持ち良い。「I Wanna Be Well」もポップな1曲で、下手さは残るものの攻撃性がなくて、パンクバンドだということを忘れさせます。「I Can’t Give You Anything」は爽快なサウンドに、歌詞の反復とキャッチーな歌メロで耳に残ります。ハミングが気持ち良い「Ramona」で少し切なさも出しつつ、ザ・トラッシュメンのカバー「Surfin’ Bird」で陽気なロックンロールを展開。最後にアップテンポの「Why Is It Always This Way?」で爽やかにアルバムを終えます。
荒々しいサウンドは残しつつも、ポップなメロディが前面に出てきて、パンクというよりポップアルバムといった印象です。マンネリズムが売り(?)のラモーンズだから似たような楽曲が多いですが、その中でも個性を発揮したキャッチーな名曲の数々。とても聴き心地が良くて大好きな作品です。
「Sheena Is A Punk Rocker」のヒットにより、商業的成功も狙えたのですが、間の悪いことにジョーイ・ラモーンが大火傷で入院してツアーはキャンセル。そうこうしている間にセックス・ピストルズが解散してロンドンパンクの熱狂は冷めてしまい、成功のチャンスを逃してしまいました。
1978年 4thアルバム
マーキー・ラモーン(Dr)が加入した本作。脱退したトミー・ラモーンはエド・スタジアムとともに本作のプロデューサーを担当。メンバーが代わって心機一転といった意味合いもあるかもしれませんが、サウンド的にはこれまでの延長上にあります。ただ、楽曲バラエティは少し豊富になってきました。
メンバーをデフォルメしたコミカルなジャケットアートは、漫画家ジョン・ホルムストロームによる作。
オープニング曲「I Just Want To Have Something To Do」はエッジの効いたサウンドで、ミドルテンポながらもこれまでより攻撃性を増した印象があります。新加入のマーキーはタイトなドラムで引き締める感じ。続く「I Wanted Everything」は疾走曲です。軽快なテンポですが焦燥感も合わせ持つサウンドに乗せて、歌は相変わらずキャッチーでポップな印象。反復される歌詞も耳に残ります。「Don’t Come Close」はジョニー・ラモーンのギターとディー・ディー・ラモーンのベースの音色ゆえか、南国リゾートを満喫するかのようなまったりとした空気が漂います。「I Don’t Want You」は一転して少しシリアスさというか、張り詰めた感じの漂うヘヴィなサウンドです。「Needles And Pins」はザ・サーチャーズのカバー曲。ゆったりとしたテンポで優しく、そしてどこか切なさを感じるメロディ。ジョーイ・ラモーンの感傷的な歌が良いですね。「I’m Against It」はパンクバンドとしてのラモーンズを強く感じる1曲です。攻撃的で、そして勢いに満ちた爽快なサウンド。歌メロも含めて印象的で、何も考えずに聴ける楽しい楽曲です。
レコードB面、アルバム後半は「I Wanna Be Sedated」で幕開け。ラモーンズの代表曲の一つです。縦ノリの気持ち良いサウンドに、とてもポップなメロディは聴き心地がよいですね。終盤、ハンドクラップに乗せて「バンバンババーン…」ととてもキャッチーです。続いて「Go Mental」はディストーションの効いたヘヴィなギターを中心に、スピード感のあるパンク曲を展開します。ギターリフが印象的で、脳内を反復する中毒性があります。ゆったりとしたアコースティックサウンドの「Questioningly」で一息ついたあとは、「She’s The One」で再び疾走曲に。ただ勢い任せなだけでなく、アクセントとなるピアノの音色によって切なさを交えています。続く「Bad Brain」は更に加速して疾走感が凄まじい。後半はひたすら「Bad bad brain」の連呼で、どうしたって耳に残りますね。最後は「It’s A Long Way Back」。緊張感のあるサウンドに、エンディングらしく少し切ない感じがあります。
基本はあくまでロックンロールですが、楽曲に幅が生まれて、アルバム全体の流れにメリハリがつきました。キャッチーさにも磨きが掛かっています。全12曲31分。相変わらずサクッと聴ける手軽さがあります。
1980年 5thアルバム
ビートルズの『レット・イット・ビー』をはじめ、ジョン・レノンや、ジョージ・ハリスンのソロなどを手掛けたフィル・スペクターによるプロデュース。なおフィル・スペクターは1970年代から麻薬中毒で奇行が目立ち、本作のプロデュースを最後に第一線から引退したそうです。キャッチーに仕上がった本作はラモーンズ最大のヒット作となりました。しかし「ウォール・オブ・サウンド(音の壁)」とも呼ばれるフィル・スペクターの分厚い音や過剰な演出は、スカスカで荒々しいサウンドを売りにするラモーンズの強みを掻き消してしまい、相性はあまり良くないように思います。それに加えてジャケット写真がダサいのもマイナス点。でも聴きやすさを重視した楽曲はメロディの良さを活かしています。
「Do You Remember Rock ‘N’ Roll Radio?」で開幕。ナレーションのあと、キャッチーなドラムに導かれて始まります。サックスやキーボード等の過剰な演出がされており、賑やかすぎて正直ラモーンズにはあまり似つかわしくありません。ただ、彼らの持つ元々のメロディセンスの良さをポップ方面に特化すると、こんなにも万人受けする聴きやすい曲になるんですね。続く「I’m Affected」は、靄のかかったようなサウンド。間奏での歌うようなギター等も良いしポップでキャッチーなのですが、トゲが無くて丸くなったサウンドには物足りなさを感じます。「Danny Says」はアコギでしっとりと聴かせ、徐々にエレキ等も加わって盛り上がっていきます。ベタベタな展開。「Chinese Rock」はヘヴィなギターリフを中心にしたロックンロール。ハードボイルドな印象で荒々しさを感じられる楽曲ですが、それすらも尖った部分を削ぎ落として聴きやすく加工されています。メロディは相変わらずキャッチーで、ラモーンズのポップセンスが活きています。「The Return Of Jackie And Judy」は陽気なロックンロール。ノリの良い1曲です。「Let’s Go」は激しい疾走曲です。マーキー・ラモーンのドラムが炸裂していて、シンバルが終始鳴り響き、ドラムソロまで用意されています。なかなかスリリング。
レコードB面の開幕は「Baby, I Love You」で、ストリングスがリードする異色な楽曲。ノリの良いロックンロール「I Can’t Make It On Time」を挟んで、これまでのようなパンク曲「This Ain’t Havana」。でも程良くエコーがかかって、荒さを抑えてまろやかな印象です。キャッチーに仕上がっています。学校のチャイムから始まる「Rock ‘N’ Roll High School」はノリの良いロックンロール。メロディアスでキャッチーな歌は一緒に歌いたくなりますね。ヘヴィなリフでごり押しする疾走曲「All The Way」を挟んで、「High Risk Insurance」は攻撃的な楽曲。演奏のトゲを削ぎ落としても落ちない攻撃力でスリリングな印象を抱きます。
これまでの彼らの作風からすると異色な作品で、万人受けするポップなサウンドはとても聴きやすいです。これまでのヘタクソで荒々しいサウンドのラモーンズに抵抗のあった人には、本作は入門に向いているかもしれません。しかしこれまでのラモーンズが好きだと、商業化した過剰演出なサウンドにやや違和感を覚えます。実際ファンからの評価は賛否がくっきり二分されるんだとか。
1981年 6thアルバム
10ccのグレアム・グールドマンによるプロデュース。前作同様にキャッチー路線を踏襲しています。パンクとして聴くと肩透かしを食らうかも。しかしキャッチー路線もむなしく、あまりヒットはしなかったのだとか…。なお、制作中にジョーイ・ラモーンとジョニー・ラモーンの対立が深まります。
オープニング曲「We Want The Airwaves」からシリアスな雰囲気がバシバシ伝わってきますが、このサウンドはパンクバンドの楽曲ではない気がします。ラモーンズはかねてよりヒット曲を渇望して、それゆえ前作から商業化が見えるのですが、この楽曲は「俺達は放送されたい(ヒット曲が欲しい)」とド直球なタイトル。ノリの良いサウンドの「All’s Quiet On The Eastern Front」を挟んで、キャッチーな「The KKK Took My Baby Away」。イントロこそヘヴィですが、ジョーイ・ラモーンの歌が始まると、口ずさみたくなるような分かりやすいポップなメロディ。メロディラインはどこか哀愁が漂っています。コーラスの味付けもポップさを増しますね。ポップな「Don’t Go」を挟んで、疾走感のある「You Should Like You’re Sick」。サウンドにはパンキッシュな雰囲気も少し残していますが、ポップなメロディが際立ち、爽やかな印象です。「It’s Not My Place (In The 9 To 5 World)」はベルの音から始まり、リズミカルなサウンドはサンバのような、どこか南国リゾートを思わせる雰囲気があります。とてもキャッチーです。
アルバム後半は「She’s A Sensation」で幕開け。イントロの荒々しく疾走感に満ちたサウンドに期待感を抱きつつも、歌が始まるとキャッチーなポップソングに変貌。コーラスに彩られた歌はニューウェイヴ的なポップさがありますが、ラモーンズ元来のポップセンスという本質は変わっていません。まったりとした雰囲気の「7-11」はシンセサイザーが彩ります。「You Didn’t Mean Anything To Me」はキャッチーな歌に、ヘヴィなリフでメリハリを付けます。爽快なサウンドに、ディー・ディー・ラモーンのベースがカッコ良い。「Come On Now」はオルガンが鳴り響き、ハンドクラップが鳴る陽気なポップソングです。この曲を聴いてもラモーンズがパンクバンドだとは微塵も感じませんが、爽やかなこの楽曲はこれはこれで良いと思います。「This Business Is Killing Me」もコミカルなポップさが映える陽気な1曲です。後半は少しシリアスな雰囲気に変わっていきます。ラスト曲は「Sitting In My Room」。エコー処理された聴きやすいギターが、程良くハードポップなサウンドを奏でます。最後は爽やかです。
商業化した本作はパンクの欠片もなく、ニューウェイヴやハードポップ寄りな作品です。アレンジは大きく変わりましたが、変わることのないポップセンスは流石なもので、聴き心地が良く爽やかな印象です。
Boxセット
外装:
内容:
価格:
総合:
収録作品
評 価 | タイトル | 商品情報 |
---|---|---|
80点 | Ramones (ラモーンズの激情) | 1976年 1stアルバム |
70点 | Leave Home (リーヴ・ホーム) | 1977年 2ndアルバム |
95点 | Rocket To Russia (ロケット・トゥ・ロシア) | 1977年 3rdアルバム |
75点 | Road To Ruin (ロード・トゥ・ルーイン) | 1978年 4thアルバム |
50点 | End Of The Century (エンド・オブ・ザ・センチュリー) | 1980年 5thアルバム |
65点 | Pleasant Dreams (プレザント・ドリームス) | 1981年 6thアルバム |
ラモーンズの廉価Boxになります。とにかく安いのが本作のウリです。
コンパクトな外箱。各作品は紙ジャケと呼ぶには紙ジャケファンに失礼でしょうか…ペラいジャケットです。その中にはCDが裸の状態で入っているので、保護スリーブは別買いしたほうが良いかもしれません。歌詞カードも解説も無し。廉価盤なのでこんなもんですね。
各作品のレビューは重複のため本項では割愛しますが、ポップセンスの光る名盤が多いです。外箱やジャケットを見ても特に表記はないものの、全作リマスター音源を用いているのだそうです。ご丁寧にボーナストラックは省かれていますが、『リーヴ・ホーム』だけは漏れたのか「Babysitter」というボーナストラック付なのもご愛嬌。
価格は2019年6月現在で最安2,000円程度。1作品あたり300円強でとてもお買い得です。3作以上買う予定のある方は、音源目当てであれば本作を買うのも良いかと思います。
気になる作品がいくつかあったので思い切って購入しましたが、知らなかった作品も良盤ばかりでとても満足のいくBoxセットでした。
関連アーティスト
ラモーンズ加入前のマーキー・ラモーン(Dr)が、マーク・ベル(Dr)名義で活動。
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