🇺🇸 Red Hot Chili Peppers (レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)

レビュー作品数: 6
  

スタジオ盤

The Abbey Road E.P. (アビイ・ロード E.P.)

1988年 EP

 レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、通称レッチリ(海外だとRHCPなど)。米国カリフォルニア州出身のバンドです。アンソニー・キーディス(Vo)、フリー(B)、ヒレル・スロヴァク(Gt)、ジャック・アイアンズ(Dr)の4人で1983年に結成しました。

 本作はビートルズになぞらえたアビイ・ロードのパロディですが、チン○ソックスがあまりに衝撃的。楽曲よりもジャケットが独り歩きしている感はあります。かく言う私もジャケットでとりあえず聞いてみようと思ったクチです。笑

 ジミ・ヘンドリックスのカバー曲「Fire」で始まります。原曲もノリの良いハードロック的な楽曲ですが、レッチリ版はかなりスピードアップしたパンク曲に仕上がっています。続く「Backwoods」ではフリーの弾くベースがめちゃめちゃカッコいいファンク曲です。疾走感とグルーヴ感のある「Catholic School Girls Rule」は2分満たない短さですが、そこはかとなく感じる頭の悪さとカッコよさが入り混じった面白い楽曲です。ファンクバンド、ミーターズの楽曲をカバーした「Holywood (Africa)」を挟んで、ラスト曲「True Men Don’t Kill Coyotes」。グルーヴ感のある演奏はカッコよいのですが、歌のノリにバカ騒ぎ感というか、頭の悪そうな感じがします。笑

 英国ツアーを前にファンに向けた入門盤としてリリースされたようで、1stアルバム『レッド・ホット・チリ・ペッパーズ』、2nd『フリーキー・スタイリー』、3rd『ジ・アップリフト・モフォ・パーティ・プラン』からの選曲に加えて、新曲として「Fire」を加えた全5曲入り。僅か15分強の短い作品です。

The Abbey Road E.P.
Red Hot Chili Peppers
 
Mother's Milk (母乳)

1989年 4thアルバム

 初期のレッチリは破天荒なふるまいを繰り返していましたが、ヘロインの過剰摂取でヒレル・スロヴァク(Gt)が1988年に死去、それに伴ってジャック・アイアンズ(Dr)が離脱するという悲劇に見舞われます。オーディションの末に、ジョン・フルシアンテ(Gt)とチャド・スミス(Dr)が加入しました。なお、アンソニー・キーディス(Vo)もヘロイン中毒でしたが、ヒレルの死を機に薬物を止めたようです。

 マイケル・バインホーンのプロデュース。ただしアンソニーと意見が合わずに決裂。更にプロモーション戦略に大いに不満があり、レーベルのキャピトル・レコードとも決裂することになりました。
 オープニング曲「Good Time Boys」ではイントロからフリー(B)の弾くメタリックでファンキーなベースと、ジョンの緊張感の溢れるギターで始まります。ファンクのようでいて、ヘヴィメタルのようでもある。ラップやメタルを組み合わせたミクスチャーロックを展開します。楽曲の中盤では再生機器が壊れたのかと思うような、唐突に異なるメロディをサンプリングしたパートが訪れます。続いてスティーヴィー・ワンダーのカバー曲「Higher Ground」。ベースがめちゃめちゃカッコいい。ハードロック的なパワフルなドラムもあってノリの良さは抜群です。「Subway To Venus」でアホっぽくも心地の良いグルーヴ感。妙に耳に残ります。頭の悪そうな感じは「Magic Johnson」で更にパワーアップ。滅茶苦茶に疾走する気持ちの良い楽曲で、身体が自然にリズムに乗ってしまいます。バスケチームのことを歌った楽曲だそうです。スラップするベースがあまりにもカッコいい「Nobody Weird Like Me」、本作随一のメロディアスな1曲「Knock Me Down」等が続き、そして本作最強の疾走曲「Stone Cold Bush」。メタリックなファンクというべきか、凄まじいグルーヴ感と疾走感。そしてお馬鹿な感じがとても楽しい!笑 間奏のフリーのベースがやはりカッコいい。『アビイ・ロード E.P.』にも収録された、ジミ・ヘンドリックスのカバー「Fire」。亡きヒレルが弾いています。また、パンク曲「Punk Rock Classic」では無茶苦茶に疾走した後、脈絡もなく唐突にガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet Child O’ Mine」のリフが使われて終わります。ラスト曲「Johnny, Kick A Hole In The Sky」がこれまた頭の悪そうな感じ。ベースがファンキーで気持ち良いです。

 本作はレッチリのお馬鹿バンド時代最後の作品です。楽曲からは頭の悪さが感じられますが(誉め言葉)、あまりのノリの良さに身体が自然にリズムを刻みだすんですよね。なんだかんだでレッチリはこれを一番聴いています。

Mother’s Milk
Red Hot Chili Peppers
 
Blood Sugar Sex Magik (ブラッド・シュガー・セックス・マジック)

1991年 5thアルバム

 レッチリの最高傑作に挙げる人も多い本作。『母乳』のような疾走感はなくて、『カリフォルニケイション』のようにメロディアスな楽曲も少ない。でも強烈なグルーヴ感を持っていて、そこに魅力を見出だせるかどうかで評価が変わる気がします。個人的にはこれあまり合わないんですよね。所々に「これは名曲だ!」と思う楽曲があるものの、曲数の多さ(全17曲、約74分)も相まって、アルバムトータルだと冗長な印象が強いです。曲数をもっと絞れば良かったのに…というのが率直な感想。

 本作ではリック・ルービンをプロデューサーに迎えています。本作から10th『アイム・ウィズ・ユー』まで、リック・ルービンがプロデュースしています。
 「The Power Of Equality」はメロディなんてないヒップホップ的なボーカルの印象が強いですが、バックの演奏、特に非常にグルーヴィなベースが強烈です。非常にグルーヴ感の強い「Funk Monks」は中々面白いですね。ベースがブイブイ唸り、ドラムも手数が少ない分、一発が重い。淡々としたギターはそんなリズム隊を引き立てます。「Suck My Kiss」がイントロから非常に強烈で、爆音ベースによる低音がズズンと響きます。カッコいい1曲です。「Mellowship Slinky In B Major」はギターリフがディープ・パープルっぽいですが、かなりファンキーな感じ。「Give It Away」はとてもファンキーな1曲で、トリップできそうです。アンソニーの巻き舌が耳に残ります。続く表題曲「Blood Sugar Sex Magik」は前後を名曲に挟まれていて、タイトルを背負ってる割に印象が薄いです…。そして続く「Under The Bridge」は本作のハイライト。アコギがしっとりと響き渡り、途中からエレキにバトンを渡して感情を煽ります。哀愁を纏った優しい歌が心に染みる名バラードです。とても良いメロディで、本作においては異色の存在ですね。この楽曲が終わると、またゴリゴリでグルーヴ感の強い楽曲が並びます。その中では疾走感のある「The Greeting Song」が爽快です。

 やや冗長さは感じるので入門向きではありませんが、その中で光る「Under The Bridge」や「Suck My Kiss」といった名曲。これら名曲を目当てに聴いてみても良いかもしれません。

Blood Sugar Sex Magik
Red Hot Chili Peppers
 
One Hot Minute (ワン・ホット・ミニット)

1995年 6thアルバム

 ジョン・フルシアンテが脱退し、ギタリストにデイヴ・ナヴァロを迎えて制作されました。

 オープニングを飾る「Warped」は、出だしから静かな歌のバックでメタリックなベースが響きます。そして轟音が鳴り響きますが、そこからのデイヴのギターリフがカッコいいこと。間奏の切れ味の鋭いサウンドも痺れます。ドラムも暴れ回っていて楽しい。名曲だと思います。アウトロでは急に優しい演奏になり、そのまま続く「Aeroplane」。哀愁を纏ったメロディアスな歌もキャッチーで良いのですが、この曲はなんと言ってもフリーのベース。ゴリゴリと強烈な存在感を放ちます。「Deep Kick」はナレーションが少し冗長ですが、そのあと突如始まる轟音が強烈。疾走感がありますが、終盤でテンポを落としてメロディアスな歌で締めます。アコギでしっとりと聴かせる「My Friends」を挟んで、アップテンポの「Coffee Shop」。メタリックなリフがカッコいいです。そして一気にトーンを落として、フリーがアコースティックベースで静かに弾き語りをする「Pea」。そして「One Big Mob」でまた急激にテンションを上げていく。この楽曲の中でも緩急あって非常にスリリング。アルバムの流れも緩急つけた展開が良い感じです。「Walkabout」を挟んで奏でられる「Tearjerker」は、ニルヴァーナの故カート・コバーンに捧げた1曲。しっとりとした雰囲気で歌をじっくり聴かせる名曲です。続く表題曲「One Hot Minute」は暗い雰囲気で、引き摺るように重たいサウンド。ばか騒ぎしてるイメージの強いレッチリ、この楽曲は彼ららしくない重たさを感じます。デュエットの「Falling Into Grace」でオリエンタルな雰囲気を醸しながら癒しを与えたあと、アグレッシブな「Shallow Be Thy Game」でまた勢いづきます。タイトルがアイアン・メイデンの某名曲っぽい。笑 そしてラスト曲「Transcending」はアンソニー・キーディスとフリーの親友であり、若くして薬物中毒死した俳優リヴァー・フェニックスに捧げられた1曲です。前半は大人しいのに後半に表れるノイジーさにグランジっぽさを感じます。

 デイヴ・ナヴァロはこの1作限りの参加となりましたが、ハードロック的なアプローチで異色の仕上がりとなったことからか、ヒレル・スロヴァクやジョン・フルシアンテと比較されて何かと批判が多い作品で、駄作という評価も多いです。でも疾走感とグルーヴ感のあるヘヴィメタルといった感じで爽快な楽曲が多く、緩急つけた構成もあってアルバムの完成度もかなり高いため、個人的には好みです。ジャケットアートも可愛らしくて良いですよね(作品のイメージとは一致してませんが笑)。

One Hot Minute
Red Hot Chili Peppers
 
Californication (カリフォルニケイション)

1999年 7thアルバム

 デイヴ・ナヴァロが脱退し、薬物中毒を克服したジョン・フルシアンテが復帰した作品です。レッチリ最大のヒット作で、全世界で1500万枚以上を売り上げました。これまでの作風と異なり、メロディアスな楽曲が並びます。

 オープニング曲「Around The World」では、イントロから重低音を響かせるベースと金切音を立てるギターが強烈で、メタリック。ラップが始まると、ファンキーなリフを刻むジョンの復帰を感じさせます。サビではまた雰囲気が変わって、メロディアスな歌を聴かせます。メタルとラップとメロディアスな歌という、異なる要素を強引にくっつけた無茶苦茶な楽曲ですが、カッコいいんです。続く「Parallel Universe」では高速で細かく刻まれるヘヴィなリフが強烈。自然と身体がリズムを刻みたくなる心地よいグルーヴ感です。「Scar Tissue」は一転して、ゆったりとした哀愁漂うメロディアスな楽曲。メロウな演奏は、お馬鹿バンド時代の面影などありません。「Otherside」も前曲同様に切ない雰囲気が漂います。そんな切ない雰囲気を吹き飛ばすかのように、「Get On Top」ではノリの良いラップを見せつけます。しかしそれも束の間、表題曲「Californication」ではイントロから哀愁が漂います。しっとりとしたメロディアスなバラードで、演奏に派手さはないものの、アンソニー・キーディスの歌うメロディの良さが際立ちます。切なくも美しい。アルバムタイトルを背負うに相応しい名曲です。続く「Easily」でテンポは上がりますが、切ない雰囲気は消えず、感傷的な気分にさせます。「Porcelain」では静かな演奏をバックに、囁くような優しくも哀愁を纏った歌。ベースリフが強烈な「Emit Remmus」では重苦しい雰囲気になります。ここまでの切なく重たい雰囲気を少しでも和らげようと「I Like Dirt」では、軽快なラップを聴かせます。それでも根底に哀愁を感じますが…。「This Velvet Glove」ではイントロからメロディアス。激しいんだけど切ない。続いて「Savior」は重厚な雰囲気。これはチャド・スミスのドラムが良い味を出してると思います。「Purple Stain」「Right On Time」というラップ曲を挟んで、ラスト曲「Road Trippin’」。アコギとベースをバックにしっとりとした歌を聴かせます。アコギが奏でる哀愁漂うメロディが美しい。ストリングスによる演出はありますが、比較的シンプルにアルバムを締めます。

 哀愁がアルバム全体を支配していて、しっとりとしたメロディとメロウな演奏で、なんとも言えない切ない気分になります。こんなメロディアスな歌を書けたんだと驚きを与える、大人びたレッチリの渾身の1枚です。入門盤に最適でしょう。

Californication
Red Hot Chili Peppers
 
By The Way (バイ・ザ・ウェイ)

2002年 8thアルバム

 前作以上にジョン・フルシアンテの色合いが濃く出た作品です。前作の路線を推し進め、ファンク色は薄らぎ、代わりにコーラスワークの多用などメロディアスさ、ポップさが増した印象があります。

 開幕「By The Way」でメロディアスな歌で始まります。歌が終わると強烈なグルーヴ感が襲い、そこからラップの嵐。ラップが終わるとまたメロディアスな歌に変わります。聴きごたえのある1曲です。続く「Universally Speaking」ではこれまでにはなかったようなポップな1曲で、明るい気分になれます。メロウな「This Is The Place」を挟み、名曲「Dosed」。しっとりとしたサウンドに、哀愁を感じるメロディアスな歌。このメロディラインは邦楽しか聴かない人にも刺さると思います。とても美しい。ゆったりとした「Don’t Forget Me」に続き、「The Zephyr Song」もメロディラインが美しい、優しい楽曲です。続く「Can’t Stop」はイントロで高揚感を煽ります。歌が始まるとミドルテンポに。1曲目以来のラップが聴けますが、コーラスワークも入ったメロディアスな歌も健在。メロディは哀愁と優しさが入り混じっている感じですが、そんな歌とは相反してPVのおふざけ感が面白い。メロウな楽曲が2曲並んだあと、グルーヴ感満載の「Throw Away Your Television」。チャド・スミスのドラムが躍動感を生み出していて気持ち良いです。アコギで雰囲気を変えて「Cabron」。カントリー色のある優しく明るい雰囲気な楽曲で、アンソニー・キーディスの巻き舌も良い感じ。一緒に歌いたくなります。「Tear」はシンプルな演奏ながら、コーラスに彩られたメロディがとても美しい。このメロディラインは涙を誘います。そして、少しレトロな雰囲気が漂う「On Mercury」、アップテンポの「Minor Thing」等が続き、ラスト曲は「Venice Queen」。前半はしっとりとして陰鬱な雰囲気ですが、中盤からアコギの軽快な音色と共にアップテンポに様変わり。どことなく暗さはありますが、コーラスワークも加わって気持ちの良い終焉。

 円熟味のある大人びた雰囲気で、しっとりと聴かせるタイプの作品です。メロディアスな楽曲が並び、とても聴きやすいです。但し歌を中心に据えているので、これまでの疾走感やグルーブ感を期待して聴くと肩透かしを食らうかも。一部に若干冗長さを感じる部分もありますが、ポップさは抜群です。

By The Way
Red Hot Chili Peppers
 
 
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