🇬🇧 Ride (ライド)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

Nowhere (ノーホエア)

1990年 1stアルバム

 ライドはイングランド・オックスフォード出身のオルタナティヴロックバンドで、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインスロウダイヴとともにシューゲイザーの御三家に数えられます。1988年にマーク・ガードナー(Vo/Gt)、アンディ・ベル(Vo/Gt)、スティーヴ・ケラルト(B)、ローレンス・コルバート(Dr)の4人が出会い結成しました。1990年初頭に1st EP、同4月に2nd EPをリリースして話題になり、周囲の期待を背負ってリリースされた本作はシューゲイザーを代表する傑作アルバムとして知られます。大半の楽曲がアンディの作ですが、マークや全員で作曲した楽曲も含まれます。マーク・ウォーターマンのプロデュース。

 オープニング曲は6分超の名曲「Seagull」。イントロから様々な音が飛び交い、サイケデリックな感覚でグワングワンと頭を揺さぶってきます。速いテンポで、サイケ的な感覚もあるものの明瞭さも持ち合わせていて爽快です。マークとアンディの歌は轟音に埋もれがちですが、そのメロディはポップセンスに溢れています。どこか合っていないようなコーラスワークやポップな歌メロは心地良く、跳ねるようなベースラインなども含めて、サイケ期ビートルズを発展させたような印象を受けます。「Kaleidoscope」は疾走感のあるロックンロール。ギターは鋭利ですが、強い残響音でぼやけて空間に拡散するような感じ。マークの歌い方はストーン・ローゼズにも通じます。ベースもドラムも暴れ回っていて気持ち良いですね。続く「In A Different Place」はメロディアスでゆったりとした雰囲気ですが、ローレンスのドラムは力強いですね。気だるい歌唱にゆったりと浸っていると、時折心地良い轟音に包まれます。「Polar Bear」はシンバルの連打にタムを多用したローレンスのドラムが印象的。ギターはゆらゆらと波打つような心地良い音色を響かせ、小気味良いアコギがアクセントとして加わります。6分に渡る「Dreams Burn Down」はキラキラと心地良い音色と、やや耳障りな轟音ノイズが交互に主導権を取ります。気だるく心地良い歌も相まって優しく心地良い感覚と、それとは対照的に全てを呑み込む轟音というスリルを味わえます。そして「Decay」はイントロからパワフルなドラムを中心に、輪郭のはっきりとした演奏を繰り広げます。気だるいマークの歌やエスニックのようなフレーズに浸っていると、つんざくようなノイズまみれのギターが襲ってきます。終盤に向けてどんどん焦燥感を煽ってくるスリリングな展開。続く「Paralysed」でアンディにボーカル交代。楽曲は哀愁漂う切ない雰囲気で、消え入りそうな歌をドラマチックな演奏で盛り上げます。アコギの響きが哀愁ムードを和らげてくれますね。終盤は憂いが増して暗い雰囲気に。そしてライドの代表曲「Vapour Trail」。リズミカルなドラムに乗せて、幻覚的なギターやアンディの気だるげな歌が包み込むように、心地良い浮遊感を生み出しています。終盤はひたすら反復する単調な演奏にストリングスが絡んで、いつまでも心地良さを継続。レコードではここで終わりですが、CDだともう3曲続きます。「Taste」は清涼感溢れるアップテンポ曲。明瞭で爽やかな演奏を前面に出して、マークの歌は演奏に埋もれそうです。アンディの歌う「Here And Now」は、やや暗鬱なストーン・ローゼズといった趣。サイケっぽいサウンドが隙間なくが敷き詰められていますが、不思議と透明感があります。気だるい歌や、グルーヴ感抜群のスティーヴのベースも心地良い。ラストは表題曲「Nowhere」。序盤は大きな盛り上がりもなく淡々と進行しますが、中盤から不協和音が轟音で襲いかかります。終盤はまた淡々としますが、強い緊張が支配していてスリリングです。最後は波打つ音とカモメの鳴き声で海を感じさせて終了。

 轟音やノイズまみれではあるものの明瞭かつ爽快で、そして気だるげな歌にはポップセンスを感じます。マイブラの『ラヴレス』と双璧をなすシューゲイザー名盤ですが、件の作品よりも取っつきやすさは上だと思います。

Nowhere
(Remastered)
Ride
 
Going Blank Again (ゴーイング・ブランク・アゲイン)

1992年 2ndアルバム

 ジャケットが気持ち悪くて、夢に出てきそうなほど強いインパクトですね。ですが中身は素晴らしくて、1st『ノーホエア』に並ぶ人気作です。シューゲイザー色は若干薄まりましたが、鍵盤の本格導入でバラエティ豊かになり、ポップさも増しています。後のキャリアを通しても自身最高位となる全英5位を記録(次作も最高位タイ)。マーク・ガードナーとアンディ・ベルのツインボーカル体制ですが、揃って歌う楽曲も多いです。アラン・モウルダーとバンドの共同プロデュース。

 オープニングから8分を超える大曲「Leave Them All Behind」。スペイシーなキーボードが浮遊感を生み出しますが、スティーヴ・ケラルトの存在感のあるベースやローレンス・コルバートの力強いドラムが、楽曲をしっかりと支えます。ギターが轟音で響いてしばらく演奏を聴かせると、2分過ぎた頃からマークとアンディによる歌が始まります。重厚長大で風格を感じさせる楽曲です。続く「Twisterella」は一転して、軽やかで爽やかなギターポップに仕上がっています。マークの歌は演奏に埋もれそうなほど控えめですが、でもメロディは甘くポップです。躍動感のある演奏も魅力的。「Not Fazed」はハードなイントロからメリハリをつけてくれます。スティーヴの骨太なベースが強烈ですが、キャッチーなリフを刻むギターが明るく爽やかな印象を与えます。アンディの弾くオルガンも良いアクセントになっていて、ポップさを感じさせます。演奏は明瞭ですが、気だるく消え入りそうな歌にシューゲイザー要素を若干残していますね。「Chrome Waves」はアコギをかき鳴らしますが、軽快なアコギの音色を打ち消すほどの強い哀愁が漂います。分厚いシンセや、アンディの歌うメランコリックなメロディは憂いに満ちています。歌をじっくり聴かせる良曲です。「Mouse Trap」はハードかつ清涼感のある疾走曲です。ギターが切れ味鋭く刻んだかと思うと、轟音を繰り広げてノイズで埋め尽くします。でもノイズの中にキレのある演奏が聴こえるので爽快なんですよね。歌は僅かにありますが、ほぼインストゥルメンタルのような演奏メインの楽曲です。「Time Of Her Time」もイントロから躍動感があって、騒がしいけど爽やかです。アンディの歌はヘタウマな感じですが、メロディはキャッチーで聴きやすいですね。続いて「Cool Your Boots」は6分に渡る楽曲です。ノイジーにギターをかき鳴らし、シンバルをキンキンシャリシャリ鳴らすドラムも騒がしいですね。ですが優しい歌メロもあるからか、轟音でも不思議と心地良く身を委ねられます。続く「Making Judy Smile」はスティーヴのベースが唸るイントロからスリリングですが、歌が始まるととてもポップで甘いです。ギターの鳴らし方やメロディが、旧き良きサイケデリックロックな風合いです。「Time Machine」はゴリゴリ爆音ベースが重低音を鳴らして土台を作り、キーボードとアコギが柔らかい音でダンサブルな演奏へと仕立て上げます。でも歌はメランコリックで哀愁たっぷり。そしてラスト曲「OX4」は7分の大作。2分ほど鍵盤で緩やかに漂ったあと、迫り来るノイズを経て、明るい演奏が繰り広げられます。どこか気だるげな歌をノイジーなギターやカラフルな鍵盤で引き立て、爽やかにアルバムを締めます。

 演奏はノイジーですが、ポップな佳曲が揃っていて聴きやすいです。ジャケットは苦手ですが笑、こちらも1stに負けず劣らずの名盤です。

Going Blank Again
(Remastered)
Ride
 
Carnival Of Light (カーニバル・オブ・ライト)

1994年 3rdアルバム

 1994年の英国では既にシューゲイザーブームが過ぎ去り、ブラーが人気を席巻し、オアシスがデビューするなどブリットポップ旋風が巻き起こっていました。そうした音楽シーンの変化に加え、メンバーも結婚して家庭を持つなどバンド内の変化もあり、従来のシューゲイザーサウンドは息を潜めて1960〜70年代のロックに傾倒した作品に仕上がっています。ジョン・レッキーのプロデュース。
 またマーク・ガードナー(Vo/Gt)とアンディ・ベル(Vo/Gt/Key)の音楽的価値観の違いも表面化するなど、バンドに不協和音が生じ始めます。

 1曲目から7分近くある「Moonlight Medicine」。マークの弾くエキゾチックなタンブーラにビックリですが、それ以上に張り詰めてヘヴィでドロドロとした演奏に驚かされます。歌メロはアンニュイで憂いに満ちており、じっくり浸っているとヘヴィな演奏が襲いかかってきます。アンディの弾くオルガンが渋くてカッコ良い。続く「1000 Miles」はそよ風を感じられる優しい楽曲で、アコギが牧歌的な雰囲気を作り出します。メロディアスで爽やかな歌メロも心地良くて、彼らのポップセンスが光ります。「From Time To Time」は初っ端ジャジーで落ち着いた音色ですが、すぐさま躍動感ある演奏へと切り替えます。全体的に陰のある雰囲気で、メロディも憂いに満ちています。切ない気分を誘います。「Natural Grace」はギターとオルガンが切なさを生み出しますが、ローレンス・コルバートのドラムは躍動感があります。特にアウトロはダイナミックな印象。「Only Now」はゆったりとした曲調でメロディアスな歌を聴かせます。ストリングスも用いて、メロウな楽曲を引き立てています。「Birdman」は静と動の対比が強い1曲で、緩みかけたアルバムの雰囲気をヘヴィなイントロで引き締めます。その後は静かで淡々と進行しますが、時折ヘヴィな演奏が襲いかかってきます。騒がしいギターの裏でベースが中々良い感じ。続いて「Crown Of Creation」では爽やかなアコギや優しいオルガンが牧歌的な雰囲気を作り出します。大きな盛り上がりはありませんが、柔らかい演奏に加えて語りかけるような優しい歌メロなど、温かくてノスタルジーを感じさせる良曲です。「How Does It Feel To Feel?」は一転して、ローレンスのパワフルなドラムに歪んだ金属音を鳴らすギターなど、ヘヴィでガレージ色の強い楽曲です。ザ・クリエイションというバンドのカバー曲で、ノイジーな演奏でアルバムにメリハリをつけます。そして「Endless Road」はジャジーでメロウな楽曲です。途中から楽曲を盛り上げるホーンに、オールドロックの趣を感じます。「Magical Spring」は躍動感あるドラムから高揚感を煽ります。演奏はアップテンポで明るいですが、歌は気だるげですね。そしてインストゥルメンタル「Rolling Thunder」。パーカッションやタンブーラがエスニックで怪しげな雰囲気を作ります。インド趣味っぽい演奏は1960年代サイケデリックロックへのオマージュでしょうか。ラスト曲「I Don’t Know Where It Comes From」は最初憂いを感じるのですが、徐々に明るくなっていくような気がします(でも起伏にはやや乏しい印象)。クライストチャーチ大聖堂学校合唱団による優しいコーラスが特徴的です。

 シューゲイザーでなくなっただけでなく、それ以上に初期衝動的な疾走曲が無くなるという大きな変化がありました。メロディアスで憂いに満ちた楽曲が増えましたが、若干中だるみする部分もあり、前2作と比べると差をつけられていると思います。

Carnival Of Light
(Remastered)
Ride
 
Tarantula (タランチュラ)

1996年 4thアルバム

 マーク・ガードナーとアンディ・ベルの対立が悪化し、ライドは1996年に一度解散することになりますが、本作は解散直前にリリースされました。時代に即したブリットポップを繰り広げ、シューゲイザーとは違うものの騒がしい演奏で楽しませてくれます。なお制作に際してマークが楽曲制作の意欲を失い、代わりにアンディがほぼ大半を作曲しボーカルも務めています。リチャード・スミス、ポール・モーションによるプロデュース。

 アルバムは「Black Nite Crash」で幕開け。ダーティなギターにローレンス・コルバートの騒がしいドラムが絡んで、エネルギッシュな楽曲に仕上がっています。アンディの歌は演奏のエネルギーとは対照的に冷めた印象。「Sunshine / Nowhere To Run」はリズミカルなパーカッションが心地良く響き、等身大というかリラックスした雰囲気で楽曲が進行します。気だるげな歌も緩くて良い。続く「Dead Man」はスティーヴ・ケラルトのベースが唸り、激しいドラムも含めて躍動感に溢れています。キャッチーな楽曲ですが、浸っていると中盤一気に音が消えてアンディがぼそぼそと囁きます。その後再びキャッチーな楽曲が戻ってきますが、強い強弱をつけてメリハリがありますね。「Walk On Water」もダイナミックなドラムを中心とした演奏は、力強くて躍動感があります。ノリの良い演奏のおかげでアンディの気だるい歌も心地良いですね。「Deep Inside My Pocket」は数少ないマーク作・ボーカルの楽曲。オルガンが唸り、渋くもヘヴィな楽曲です。歌メロは弱いですが、パワフルな演奏はカッコ良くて聴きごたえがあります。7分近い「Mary Anne」は出だしをアコギで落ち着いて聴かせますが、すぐさま音量の大きい演奏が絡んできます。でもアンディのやる気のないボーカルをはじめ、肩の力が抜けた楽曲ですね。中盤からラストまで渋い演奏パートが長々続きますが、リードギターがブルージーで魅力的です。続く「Castle On The Hill」はアンディによるアコギ弾き語りの優しい楽曲。後半からエレキギターもアクセントとして加わり、メロウなフレーズで魅せてくれます。一転して「Gonna Be Alright」はノイズをかき鳴らして疾走するスリリングな楽曲です。アルバムにメリハリをつける良曲ですね。勢い溢れる演奏とは対照的に、間延びした歌唱はゆったりした印象も与えます。「The Dawn Patrol」はブルージーなギターからアンディの気だるくやる気のない歌が始まり、なんともルースな雰囲気。ですがドラムはただ一人パタパタと勢いを感じさせます。続く「Ride The Wind」は数少ないマークのボーカル曲です。渋く落ち着いた演奏で、暗い空気が支配します。「Burnin’」はイントロから泥臭くて、渋くてヘヴィな演奏は1970年頃の楽曲のようです。全体的に気だるいのですが、時折リズミカルな演奏が楽しませてくれます。3分過ぎのマシンガンのようなドラム連打が強烈。そして最後は「Starlight Motel」で、フォーキーなアコギをかき鳴らしてローリング・ストーンズを大人しく歌ったような感じです。こじんまりとした雰囲気でアルバムの最後を締め括ります。

 前作よりもロックの躍動感を感じられるため、同じオールドロック路線でもアルバムの勢いは取り戻した印象です。

 ライドの解散後、アンディはハリケーン#1、オアシスビーディ・アイへ。他のメンバーもソロやサポートミュージシャンとしての活動を経て、2014年にライドは再結成を果たしました。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインスロウダイヴといった重鎮も再始動し、2010年代半ばにシューゲイザー/ドリームポップのブームを再燃させています。再結成後のライドは新作もリリースし、活動を続けています。

Tarantula
Ride
 
 

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 ライド解散後にアンディ・ベルが加入。

 
 
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