🇬🇧 Rod Stewart (ロッド・スチュワート)

レビュー作品数: 6
  

スタジオ盤

Gasoline Alley (ガソリン・アレイ)

1970年 2ndアルバム

 ロッド・スチュワートは英国スコットランドで1945年1月10日生まれ。本名はサー・ロデリック・デイヴィッド・“ロッド”・スチュワート。2016年に英国政府よりナイト爵位を与えられました。
 元サッカー選手であり、また音楽活動を始めてからはジェフ・ベック・グループフェイセズで活躍しました。フェイセズ結成後に発表したソロアルバム第一弾はあまり売れませんでしたが、フェイセズが軌道に乗るなか発表したソロ第二弾の本作『ガソリン・アレイ』は成功を得ました。

 ジェフ・ベック・グループ、フェイセズを共にしたロン・ウッド(後にローリング・ストーンズに加入)が、全編に渡りギターを奏でています。他にもフェイセズメンバーが所々に参加しています。全体的にアコースティックな雰囲気ですが、フェイセズではエレキをバックに歌い、ソロではアコギをバックに歌うという住み分けをしていました。ルー・レイズナーによってプロデュースされた本作はオリジナル3曲とカバー6曲から成ります。カバー曲を自分流にアレンジするセンスが評論家の評価ポイントのようです。

 「Gasoline Alley」はオリジナル曲ですが、民族音楽的なギターが印象的。でも表題曲とするには少し弱い印象です。他には「Lady Day」「Jo’s Lament」がオリジナル曲となりますが、前者はパワー不足感は否めません。後者の「Jo’s Lament」はしっとりとした演奏で、ロッドのハスキー声が渋さを生み出している佳曲だと思います。カバー曲ではボブ・ディランやエルトン・ジョン、フェイセズの前身スモール・フェイセスのカバー等を披露しています。これらカバー曲の方がノリノリで演奏し歌っている気がします。ピアノが弾む「It’s All Over Now」は軽快なロックンロールで、ロッドのハスキーな声が響き渡る佳曲です。「Cut Across Shorty」もノリが良くて耳に残ります。

 カバー元の曲を知らないのですが、アコースティックな雰囲気で聴き心地の良い作品です。

Gasoline Alley
Rod Stewart
 
Every Picture Tells A Story (エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー)

1971年 3rdアルバム

 全米/全英でそれぞれ1位を記録した大ヒット作品です。アルバムだけでなく、シングルカットされた「Maggie May」も英米ともに1位を記録。またキャッチーな表題曲など、勝負できるオリジナル曲が増えて飛躍的な成長を感じます。バックの演奏陣は、フェイセズやジェフ・ベック・グループ人脈を中心に多くのミュージシャンが参加しています。

 セルフプロデュース作となる本作は、穏やかなアコギと爆裂ドラムで始まる「Every Picture Tells A Story」がオープニングを飾ります。1曲目にピッタリのノリの良いアップテンポ曲です。女性ボーカルと掛け合いを行うキャッチーな歌メロも印象に残ります。アコギ1本でシンプルに歌う「Amazing Grace」も、元曲のメロディの良さとロッドのハスキー声がいい味を出しています。私の手元のCDだと「That’s All Right」という曲に内包されていますが、この曲の後半で「Amazing Grace」が流れます。
 そして本作のハイライトでロッド・スチュワートの代表曲「Maggie May」。アコースティックギターの音色がとても心地よく、トラッドに影響を受けたサウンドです。そしてロッドの歌も良いですね。続く「Mandolin Wind」はマンドリンとエレキの絡み合いが心地よい、牧歌的で穏やかな1曲です。ラスト2曲はカバー曲ですが、ミック・ウォラーのドラムがドタバタと騒がしく本作では最もハードな「(I Know) I’m Losing You」、少し古臭さを感じるサウンドですがメロディが優しい「(Find A) Reason To Believe」。全編を通して聴き所の多い作品になっています。

 ブリティッシュ・トラッドの優しいサウンドは田舎の光景を想起させ、どことなく懐かしさを感じさせます。

Every Picture Tells A Story
Rod Stewart
 
Never A Dull Moment (ネヴァー・ア・ダル・モーメント)

1972年 4thアルバム

 前作『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』に引き続き、全英1位を記録したヒット作です。前作と本作の制作の間で、バンド活動のフェイセズも『馬の耳に念仏』がヒットし、この時期はソロでもバンドでも絶好調でした。
 本作もロッド・スチュワート自身のセルフプロデュース作です。前作よりもロック色が強まり、それでいてアコースティックな雰囲気も失っていない本作はバランスが良いです。33分とサクッと終わってしまいますが、名曲佳曲盛り沢山の充実した全9曲です。

 イントロもなくいきなり始まる「True Blue」は、ロッドのハスキーボイスが渋さを感じさせながら、メロディラインはこの上なくキャッチー。フェイセズメンバーが揃って演奏したこの楽曲は、エレキもほどよくハードに、聴き心地のよい雰囲気を提供します。そして終盤、バイクの音から楽曲は加速して爽やかに駆け抜けていきます。続く「Lost Paraguayos」はアコースティック基調ですが、タンバリン等賑やかなサウンドで、やはり心地よいです。途中からトランペットも加わり、ローリング・ストーンズ的な雰囲気です。牧歌的で和やかな「Mama You Been On My Mind」はボブ・ディランのカバー。続いてピアノが弾む軽快な「Italian Girls」
 アルバム後半に入って始まるのはジミ・ヘンドリックスの名曲カバー「Angel」、これがとても良い。原曲の良さはジミ・ヘンドリックスの賜物ですが、ボーカリストとして優れた声を持つロッド・スチュワートによって魅力的に歌われています。そして「Interludings」と繋がって始まる「You Wear It Well」。この楽曲は自身のヒット曲「Maggie May」にも通じますが、私個人としては「You Wear It Well」を先に聴いていたこともあって、「Maggie May」よりもこちらが好みです。渋さと色気のあるボーカルは惚れ惚れしますね。ラスト2曲はカバー曲ですが、ブルージーな「I’d Rather Go Blind」のあと「Twistin’ The Night Away」でノリ良くカラッと爽やかに締めていきます。

 個人的にはロッド・スチュワートとの出会いが本作なので思い入れも深いです。名曲が多く、最高傑作は文句なくこれでしょう。

Never A Dull Moment
Rod Stewart
 
Smiler (スマイラー)

1974年 5thアルバム

 12曲中オリジナル曲はわずか3曲という本作。バンド活動のフェイセズは、レーベル側の方針でロッド・スチュワートのバックバンド的な扱いとなり、メンバー関係が最悪になって1975年についに解散。そんなゴタゴタを抱えながらのソロ活動ですが、本作も例に漏れず全英1位を獲得していて、実に4作連続です。
 ロッド・スチュワートのソロ活動を支え、共にいくつか作曲し、ギターも奏でてきたロン・ウッド。フェイセズ解散後はローリング・ストーンズに加わることになり、そちらの活動に専念することになります。

 犬の鳴き声から突如軽快なロックンロールが始まる「Sweet Little Rock ‘N’ Roller」。チャック・ベリーのカバー曲です。ギターもボーカルも軽快なんですが、それ以上にものすごくご機嫌なピアノが印象的です。ロッド・スチュワートとロン・ウッド共作の「Sailor」はピアノに加えホーン・セクションも加わった豪華な1曲。またエルトン・ジョンから提供された「Let Me Be Your Car」も軽快なロックンロールといった感じで爽やかに流れていきます。賑やかなサウンド。賑やかな楽曲の中にふとしっとりとしたインストゥルメンタル「I’ve Grown Accustomed To Her Face」が光ります。そしてラストはポール・マッカートニー&リンダ・マッカートニーが提供した「Mine For Me」で終わります。

 カバー曲が並ぶのは以前の作品もそうでしたが、アコースティック主体のシンプルな味付けにハスキーボイスが響くスタイルだったのが、本作ではホーン・セクションやヴァイオリンなどバックがやけに豪華になってしまいました。この変化のせいなのか、あまりぐっとくるものがなくて個人的にはほとんど聴かなかったり。

Smiler
Rod Stewart
 
Atlantic Crossing (アトランティック・クロッシング)

1975年 6thアルバム

 英国の重税逃れのために、大西洋を隔てた米国に渡ったロッド・スチュワート。それがタイトルにも表れ、またジャケットアートも大西洋を渡るロッド・スチュワートが描かれていて、手にはサッカーボールとシャンパン。このジャケットアートは好みです。これまではセルフプロデュースでしたが、ワーナー・ブラザース・レコードへの移籍を機に、トム・ダウドがプロデューサーに就きました。

 レコードでいうA面(1~5曲目)は「Fast half」と表記されてアップテンポ中心、B面(6~10曲目)は「Slow half」と表記されていてバラード中心に構成されています。
 その「Fast half」と名付けられたA面の1曲目「Three Time Loser」。言うほど「Fast」じゃないじゃん!という印象を抱きます。笑 でも「Slow half」を聴いてから改めて聴くと確かに「Fast」なんですよねぇ。ノリの良いオープニングに向いた1曲です。続く「Alright For An Hour」はレゲエのリズムを取り入れた楽曲。「All In The Name Of Rock ‘N’ Roll」でアップテンポ曲が出てきました。レゲエ風のゆったりした「Drift Away」、そしてA面最後を飾る「Stone Cold Sober」はビート感がある楽しい楽曲です。
 アルバムはB面「Slow half」に入り、しっとりとした「I Don’t Want To Talk About It」。間奏のストリングスが印象的です。アコースティックギターの音色が心地よい「It’s Not The Spotlight」は初期のような作風で聴き心地が良いです。サックスの音色がメロウな雰囲気を演出する「This Old Heart Of Mine」、静かな「Still Love You」。そして本作のハイライトでロッド・スチュワートの代表曲「Sailing」。「私は船出します」と歌うこの曲は船に揺られるようなゆったりとした曲調。ストリングスによる演出は歌謡曲チックですが、コーラスもあるので一緒に歌いたくなるようなメロディですね。

 ロッド・スチュワートの名盤として挙げられることも多い本作。名曲「Sailing」を収録していて、入門にも向いているかと思います。

Atlantic Crossing
Rod Stewart
 
Blondes Have More Fun (スーパースターはブロンドがお好き)

1978年 9thアルバム

 ジャケットはタイトルと異なり黒髪美女を抱いていますが、裏ジャケットでは抱いている相手が金髪美女に変わっています。チャラい…。『スーパースターはブロンドがお好き』というふざけたタイトルですが、ジャケットをよく表していると思います。トム・ダウドがプロデュース。

 「Da Ya Think I’m Sexy?」で始まります。ハードロック界の名ドラマー、カーマイン・アピスと組んで作った1曲ですが、出来上がったのはハードロック的な楽曲ではなく、異色のディスコ風。当時、このタッグにハードロックを期待して驚いた人も多かったようです。このダンサブルなビートが癖になり、個人的にはロッド・スチュワート屈指の名曲だと思っています。しかしながら、ブラジルのミュージシャン、ジョルジ・ベンジョールの盗作だったようです…あら残念。
 続いて「Dirty Weekend」、これもドラムが強調されてビート感のある1曲です。「Ain’t Love A Bitch」を挟んで、アコースティック主体でメロディの美しい「The Best Days Of My Life」、重たいドラムと少し哀愁を纏ったメロディが印象的な「Is That The Thanks I Get?」と続きます。
 メロディは弱いものの、ドラムが惹きつけて離さない「Attractive Female Wanted」、表題曲でノリの良いロックンロールナンバー「Blondes (Have More Fun)」も賑やかなサウンドの中でドラムが光ります。南国風の雰囲気を演出する「Last Summer」もなかなか良い。そして伸びやかな空気から一気に気を引き締める「Standin’ In The Shadows Of Love」は緊張感溢れる1曲です。フォー・トップスというグループのカバー曲ですが、なんとなく「Da Ya Think I’m Sexy?」をシリアスにしたかのような、兄弟曲のような感じも抱きます。そしてラスト曲「Scarred And Scared」はしっとりとした、メロディアスな1曲です。これも名曲だと思います。

 名曲「Da Ya Think I’m Sexy?」が時たま無性に聴きたくなり、これだけを聴くことも多いのですが、アルバム全体でも名曲が多くて聴きどころの多い作品だと思います。全体的にドラムが強烈なビートを利かせていて、実はドラムだけ聴いても楽しめる作品かもしれません。笑

Blondes Have More Fun
Rod Stewart
 
 

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 ロッド・スチュワートは第1期ジェフ・ベック・グループでその名を上げました。

 
 ロッド・スチュワートのバンド活動先。フロントマンとして活躍。
 
 
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