🇩🇪 Scorpions (スコーピオンズ)

レビュー作品数: 20
  

スタジオ盤①

デビュー

Lonesome Crow (恐怖の蠍団)

1972年 1stアルバム

 ロック不毛の地と呼ばれたドイツに、ハードロック/ヘヴィメタルを根付かせた先駆者として高い知名度を誇っており、そして結成から50年以上経つ今なお活動を続けている大ベテランバンド、スコーピオンズ。1965年にルドルフ・シェンカー(Gt)を中心に結成しました。かの有名なギタリストマイケル・シェンカー(Gt)を弟に持ち、このデビューアルバムと、後の6thアルバム『ラヴドライヴ』では兄弟で共演を果たしています。
 ハードロック/ヘヴィメタルバンドとして大成するスコーピオンズですが、本作では実験的な作風で、初期ピンク・フロイドのようです。シェンカー兄弟に加え、クラウス・マイネ(Vo)、ロター・ハインベルク(B)、ヴォルフガング・ヅィオニー(Dr)の5人体制で制作されました。コニー・プランクによるプロデュース。なお、マイケルは録音時16歳だったとか。しかし切れのあるリードギターを披露します。

 オープニング曲「I’m Goin’ Mad」から怪しさ全開の、ヘヴィなサイケというかプログレ。音が悪くてどんよりとしており、コーラスも不気味。ギターやグルーヴ感のあるベースが中々カッコ良いですけどね。続く「It All Depends」はノリの良いロックンロール。しかし間奏は長尺で、即興的な演奏が繰り広げられます。どことなくディープ・パープルにも通じる気がします。「Leave Me」は電子音のようなサウンドが全体に響き、ブルージーな演奏をバックにダークな歌が始まります。儀式のような怪しげな雰囲気が全体に漂います。終盤テンポアップして、マイケルの切れ味のあるギターに酔いしれることができます。「In Search Of The Peace Of Mind」は哀愁漂う1曲。強烈な哀愁がわざとらしいイントロを過ぎると、アコギを主体としたサウンドに乗せて湿っぽい歌を聴かせます。
 レコード時代のB面、アルバム後半は「Inheritance」で幕開け。サウンドは全体的にジャジーで渋さを感じる一方、ヘヴィで切れ味のあるギターは中々スリリングです。クラウスのダウナーな歌も、このサウンドに合っていて聴き浸らせてくれます。終盤はエコーがかかったコーラスにより怪しさが倍増します。「Action」は渋カッコ良い序盤から徐々にアグレッシブになっていきますが、中盤で一気に雰囲気を変えてきます。ジャジーでリズミカル。そして最後に控える表題曲「Lonesome Crow」は13分半の大曲。メロウでダウナーな雰囲気でしっとりと始まりますが、切れ味のあるギターが加わるとグルーヴ感のあるスリリングな楽曲に。中盤は強烈に歪めたスペイシーなギター等をバックに、リズム隊がスリリングな演奏を繰り広げます。終盤は一気にテンポを落として、呪術的な歌をはじめ怪しげな雰囲気に。聴き進めていくと、マイケルのスリリングなギターを聴けます。所々スリリングですが、全体的に難解な印象は否めず…。

 メロディアスでキャッチーな後の作品に比べると、暗くて難解です。しかし初期ピンク・フロイドに通じる実験的で怪しい楽曲の数々は、スコーピオンズらしさは無いものの、これはこれで聴きごたえがあります。

恐怖の蠍団
Scorpions
 

ハードロック時代① (ウルリッヒ・ロート時代)

Fly To The Rainbow (電撃の蠍団~フライ・トゥ・ザ・レインボウ)

1974年 2ndアルバム

 実験的なプログレ作品の前作『恐怖の蠍団』のあと、ハードロックに転換して制作されたのが本作です。マイケル・シェンカーはUFOの失踪したギタリスト、ミック・ボルトンに代わりUFOに加入するため脱退。ロター・ハインベルク(B)、ヴォルフガング・ヅィオニー(Dr)も脱退しています。本作録音時のメンバーはクラウス・マイネ(Vo)、リズムギター担当のルドルフ・シェンカー(Gt)、リードギター担当のウルリッヒ・ロート(Gt)、フランシス・ブッフホルツ(B)、ユルゲン・ローゼンタル(Dr)。プロデューサーにはフランク・ボーネマンが就きました。スコーピオンズの初期作品は総じて音が悪いのが少し残念。

 オープニング曲の「Speedy’s Coming」は疾走感があり、前作に比べるとメロディもキャッチー。クラウスの伸びやかな声が特徴的です。但しドラムは、メンバーが交代したことで前作に比べ単調になってしまい、少し味気ないです。続く「They Need A Million」は、前半がアコギ主体のしっとり聴かせるナンバー。ルドルフがボーカルを取る後半は雰囲気が一転し、ヘヴィなサウンドでフラメンコのようなメロディを奏でます。続く「Drifting Sun」はサイケデリックで怪しげな…というかヘンテコな雰囲気です。ボーカルはウルリッヒとルドルフが担当しています。結構退屈な楽曲ですが、8分近いのがやや辛いです…。続く「Fly People Fly」はまるで演歌のようです。哀愁漂う楽曲はスコーピオンズの十八番で、ブルージーなサウンドに強烈な哀愁の歌メロが渋いです。ウルリッヒの泣きのギターも聴きどころ。
 アルバム後半は「This Is My Song」でフェードインしながら幕開け。フランシスの唸るベースが強烈です。そして哀愁を纏った切なくメロディアスな歌メロが美しい。地味な本作の中では光る佳曲です。「Far Away」はメロトロン等によって幻想的な雰囲気で始まります。…が、途中からハードロックテイストに変貌。最後まで序盤の雰囲気を保っていた方が良かった気もします。ラストに10分近い表題曲「Fly To The Rainbow」。アコギ主体のサウンドにポップな歌メロでこじんまりと始まりますが、途中からバンドサウンドになり、哀愁のメロディを引き立てます。終盤はドラマチックに盛り上げます。

 次作以降ハードロックバンドとしてより洗練されるので、本作ではまだ地味な感じも否めません。歌メロとしては発展して所々光るものはありますが、難解な前作の方が演奏を聴かせるという点では軍配が上がるかも(特にドラムの力量)。なおドラマーのユルゲンは本作限りの参加となります。脱退か解雇か…。

電撃の蠍団~フライ・トゥ・ザ・レインボウ
Scorpions
 

In Trance (復讐の蠍団~イン・トランス)

1975年 3rdアルバム

 発禁ジャケの常習犯であるスコーピオンズ。その歴史は本作から始まりました。笑 ギターに跨がって喘ぐ女性のジャケットは一部で差し替えに。また、お馴染みのバンドロゴも本作からスタートしました。スコーピオンズの定番という点では『**の蠍団』というお馴染みの邦題も、1stからしばらく続くんですよね。原題とかけ離れすぎてどれがどの作品の邦題かよく分からないし、ダサい…でも蠍団という文字にほっとするという不思議。
 プロデューサーにディーター・ダークスを迎えており、以降『サヴェイジ・アミューズメント』までディーター・ダークス体制は続きます。また、ドラマーもルディ・レナーズに交替しています。

 ウルリッヒ・ロート在籍時は彼のボーカル曲が1つはあるのですが、それが「Dark Lady」でいきなり1曲目を飾ります。ウルリッヒ、泣きのギターは凄まじいですが歌はヘタウマ系という…。ギュインギュインと荒々しくヘヴィなロックンロール楽曲は楽しめます。続く表題曲「In Trance」は強烈な哀愁が漂います。クラウス・マイネが綺麗な声で哀愁のメロディを歌いますが、初期スコーピオンズはこのダークさが売りのひとつです。そして盛り上げるところではルドルフ・シェンカーの切れ味鋭いリズムギターがザクザクとヘヴィなサウンドを刻みます。「Life’s Like A River」はイントロや間奏で聴けるウルリッヒのギターが凄い。そして暗くて哀愁のある歌は湿っぽいバラードを歌います。「Top Of The Bill」はダークさを纏ったハードロック。テンポも速いし演奏も激しいのですが、どんよりと重たい空気が漂います。そして狂ったように叫び散らすクラウスの歌唱が強烈です。「Living And Dying」もイントロから重厚で暗鬱な雰囲気。歌も強い哀愁があります。
 レコード後半はストレートなロック「Robot Man」で開幕。シャカシャカと奏でるギターと、ルディのバタバタしたドラムが、ロボットのガチャガチャとした機械音を表現しているかのようです。そして「ウーウウ ウーウウ アイムァロボマーン」と、キャッチーで分かりやすい歌メロも妙に耳に残るんです。続く「Evening Wind」はブルージーな1曲。ウルリッヒが哀愁漂うギターを奏で、フランシス・ブッフホルツのベースもメタリックに響き渡ります。「Sun In My Hand」は再びウルリッヒのボーカル曲。ブルージーなサウンドに、とても奇妙な歌メロが乗ります。少しひねたメロディをヘタウマボーカルで歌うので、ヘンテコという印象しかありません。笑 「Longing For Fire」はアップテンポ気味の1曲。相変わらず哀愁は感じるものの、軽快なサウンドは本作中最も爽やかな印象です。ラストはインストゥルメンタル「Night Lights」でメロウな演奏を聴かせてアルバムを締めます。

 本作あたりから1970年代ハードロックの良作として楽しんで聴けるかと思います。表題曲と「Robot Man」が特に好みです。
 これまでも本国西ドイツ(まだドイツが東西分裂してた頃ですね)や、ヨーロッパでもライブを行っていましたが、本作のプロモーションで英国でもライブデビュー。スコーピオンズはその知名度を上げていくことになります。

復讐の蠍団~イン・トランス
Scorpions
 

Virgin Killer (狂熱の蠍団~ヴァージン・キラー)

1976年 4thアルバム

 発禁ジャケ第二弾で、スコーピオンズの発禁ジャケでは最も有名な本作。全裸の少女、その股間にガラスのヒビが入ったジャケットは児童ポルノの問題もあり発禁処分。そしてメンバー5人が並んでいる無難なジャケットに差し替えられました。日本では長らくオリジナルジャケットで売られていましたが、時勢柄、最近では差替版ジャケットになっています。この発禁ジャケ、Wikipediaで画像が掲載されていたばかりに、Wikipediaがインターネット監視財団のブラックリストに載るという騒動もあったそうです。
 楽曲の出来云々よりもジャケットアートで語られることが多い作品ですが、楽曲のクオリティもかなり上がってきています。但し本作まで音質が悪いのが難点という…次作から音の悪さは改善します。

 初期の名曲「Pictured Life」で幕を開けます。ウルリッヒ・ロートによる泣きのギターがあまりにもカッコ良い。粘っこくて強烈な哀愁を纏っています。そしてクラウス・マイネの高音で歌われるメロディも哀愁とキャッチーさが良い具合で混ざり合っています。やはりこれが本作のハイライトですね。ルディのドラムも変化に満ちていて、楽曲にメリハリを付けてくれます。続く「Catch Your Train」は疾走感のあるハードロック曲。ウルリッヒのリードギターに負けじと、ルドルフ・シェンカーのリズムギターはザクザクと刻んできます。またフランシス・ブッフホルツのうねるベース、金切り声のようなクラウスの歌など、勢いがあって爽快な1曲です。「In Your Park」はスローテンポで哀愁漂う、メロディアスな1曲です。間奏のウルリッヒのギターが強烈。切れ味の鋭いロックンロール「Backstage Queen」を挟んで、表題曲「Virgin Killer」はヘヴィメタルばりにハードな楽曲です。切れ味抜群だけどノリの良いサウンドに、金切り声のようなクラウスの鋭い叫びが突き刺さります。ダーティな雰囲気を伴いながらも疾走感があって、これがカッコ良いのです。
 アルバム後半は「Hell-Cat」で幕開け。本作におけるウルリッヒの歌唱コーナーはこの楽曲です。飛び抜けてヘンテコな楽曲に、ヘタクソな歌唱で異彩を放っています。一聴すると駄曲なのですが、悪い意味で強烈なインパクトを残すメロディは、いつの間にかやみつきになってしまうんですよね。続く「Crying Days」はかなりヘヴィな哀愁のバラードです。力強く鋭いサウンドでダークなメロディを奏でます。「Polar Nights」は緊迫感に溢れたスリリングなサウンドで圧倒します。…が、ウルリッヒのヘタなボーカルが唯一残念な点でしょうか。笑 最後は「Yellow Raven」。メロウなサウンドをバックに哀愁のバラードを展開します。悲哀に満ちていて鬱々としています。終盤は劇的にダークです。

 ドイツが生んだ名ハードロック作品です。楽曲では「Pictured Life」が突出しているものの、全体の水準は高めです。ウルリッヒ時代の名盤は本作か次作をどうぞ。

左:差し替え後のジャケット。
右:問題となったジャケットアートはこちらの旧盤。

狂熱の蠍団~ヴァージン・キラー
Scorpions
狂熱の蠍団
Scorpions
 

Taken By Force (暴虐の蠍団~テイクン・バイ・フォース)

1977年 5thアルバム

 毎度お馴染み今回の発禁ジャケは、墓場で撃ち合いというのがテロを想起させるからという理由でした。日本では話題にすら上がりませんでしたが、一部の国ではメンバー5人が写った地味なジャケットに差し替えられています。
 本作制作前にドラマーのルディ・レナーズが心臓病を患い、ハーマン・ラレベルに交替します。また本作を最後に、ウルリッヒ・ロートが脱退。脱退したあとはウリ・ジョン・ロートを名乗ってソロ活動に専念。そしてスコーピオンズはコマーシャルな方向に徐々にシフトしていきます。

 オープニング曲「Steamrock Fever」は歯車のような効果音が終始バックで鳴り響き、スチームパンクな世界観でしょうか?リフは相変わらずヘヴィなのですが、メロディはキャッチーで、また子どもの声でのコーラスや熱狂的な歓声などのSEも印象的です。ポップセンスとヘヴィなサウンドのバランスが取れた名曲です。続く「We’ll Burn The Sky」は哀愁漂う楽曲。メロディアスなバラードですが、疾走パートを上手く織り込んで緩急メリハリのある楽曲です。クラウス・マイネの美声と哀愁のメロディに合わせて泣きのギターがしんみりとさせますが、テンポアップして切れ味の鋭いギターリフがザクザクと切り刻むという、スリリングな一面も持ち合わせています。ウルリッヒとルドルフ・シェンカーによるツインギターの絡み合いも中々良いです。「I’ve Got To Be Free」はキレのあるロックンロール。ハードボイルドなサウンドでスリリングな疾走曲です。続いて、緊迫した雰囲気が漂う「The Riot Of Your Time」。本作で最も緊張感に満ちた楽曲です。フラメンコのように小気味良いアコギとダークな雰囲気を持つエレキが、ピリピリとした緊張感を生み出しています。そして盛り上がってくる場面では、細かく刻むドラムやコーラスワークを駆使して焦燥感を煽り、これがダークなサウンドによって増幅させられています。終盤のリズム隊も見事で、全体通してとてもスリリングです。
 アルバム後半に入り、本作のハイライトと言える名曲「The Sail Of Charon」。スコーピオンズにおけるウルリッヒのギターのベストプレイでしょう。ルドルフのヘヴィなリズムギターやリズム隊に支えられ、ミステリアスなメロディを奏でるウルリッヒのリードギターが素晴らしい。そしてクラウスという上手なボーカリストが歌うのも何気にポイントが高いです。笑 歌よりもウルリッヒのギターがメインの楽曲ですけどね。続く「Your Light」は怪しげな雰囲気で、ファンキーなリズムが心地良い1曲です。でも本作の中では少し地味な印象です。「He’s A Woman – She’s A Man」はパンチのある激しいサウンドですが、メロディはかなりキャッチーで取っつきやすいです。「彼は女で、彼女は男だ」という歌は昨今ならやり玉に挙げられそう…とか考えてしまうのですが、でも歌詞を見るとオカマとかそういう話ではなく、この世のものではない何かに出会ったような衝撃を歌っているような感じです。そしてラスト曲は「Born To Touch Your Feeling」。哀愁漂うメロディアスな楽曲です。この楽曲は終盤に他言語(多言語)で詩が朗読され、その中には日本語も。これが中々のインパクトです。

 音が洗練されていて音質の悪さも大きく改善。ウルリッヒ時代では最も聴きやすいサウンドです。また楽曲もキャッチーな名曲揃いで取っつきやすいです。

Taken By Force (2015 Remastered)
Scorpions
 

ハードロック時代② (ウルリッヒ・ロート脱退後)

Lovedrive (ラヴドライヴ)

1979年 6thアルバム

 ウルリッヒ・ロート(Gt)の脱退後、マティアス・ヤプス(Gt)が加入。メンバーはルドルフ・シェンカー(Gt)、クラウス・マイネ(Vo)、フランシス・ブッフホルツ(B)、ハーマン・ラレベル(Dr)とマティアスの5人体制です。また、UFOを脱退したマイケル・シェンカー(Gt)が復帰します。でもマイケルはゲスト参加扱いだったようで、3曲のみ参加しています。そして本作のあと、マイケル・シェンカー・グループを結成するのでした。
 本作で邦題の『**の蠍団』の伝統が一旦途絶えます。何十年か後に復活しますけどね。笑 なお、ヒプノシスを起用したセクハラジャケットはやはり発禁となり、一部で差し替えて販売されました。

 オープニング曲は「Loving You Sunday Morning」。ノリは良いもののあまりぱっとしない印象。そのためオープニング向きではない気もしますが、中盤の「フゥーッ アーバババババ…」と暗い感じは妙に耳に残ります。続く疾走ナンバー「Another Piece Of Meat」では爽快に駆け抜けます。ヘヴィで鋭いギターリフがカッコ良く、こちらの方がオープニングに向いているのではないかと思ったりもします。クラウスのシャウト気味の歌声も爽快です。また間奏ではマイケルのギターソロが炸裂。良い楽曲です。「Always Somewhere」はまったりとしつつ哀愁を漂わせたバラード。続いてヘヴィなインストゥルメンタル「Coast To Coast」はマイケルのリードギターを兄ルドルフのリズムギターが支えます。フランシスのヘヴィなベースが作る重低音が中々良い感じ。
 後半のオープニングは「Can’t Get Enough」。3分に満たない、激しくも軽快な疾走曲です。続く「Is There Anybody There?」はレゲエのリズムを取り入れた1曲です。当時一番尖った音楽がレゲエとパンクだったそうで、時代の潮流に従ったんですね。ヘヴィなサウンドで刻むレゲエのリズム。そして哀愁のメロディというミスマッチ感がインパクト大。でもこれが意外とクセになるんです。続いて表題曲「Lovedrive」はタッタカタッタカと小気味良いリズムが気持ち良い。硬質なギターリフがカッコいい、メタリックな1曲です。そしてラスト曲「Holiday」が名曲。アコギをバックにクラウスがしっとりと歌い上げる、哀愁漂うメロディアスな曲です。このまましっとり終わらせるかと思いきや、中盤からハーマンの力強いドラムを中心に、どっしりとしたサウンドで盛り上げます。そして終盤は再びしっとりとしたサウンドで締め括るのでした。

 ウルリッヒ時代のダークなハードロックから、アメリカナイズされたキャッチーなヘヴィメタルへの移行期にあたり、まだ模索している感じです。マイケル・シェンカー加入という話題性で牽引したものの、UFOで見せた鬼神のようなプレイと比べるとそこまでぱっとせず、楽曲の出来もまちまちでパンチ力に欠ける気がします。

Lovedrive (CD+DVD) (2015 Remastered)
Scorpions
 
Animal Magnetism (電獣~アニマル・マグネティズム)

1980年 7thアルバム

 ゲスト扱いですがマイケル・シェンカーが参加して話題性のあった前作と、アメリカナイズされて大成功した次作に挟まれて地味な作品です。昔本作が馴染めなくて手放してしまったのですが、レビューにあたり久しぶりに聴いています。でもやはり改めて聴いた印象は地味でした。ただ、埋もれていた名曲に出会えたのは発見でした。聴いてみるものですね。
 そして本作でも伝統芸のジャケット発禁による差し替えがありました。差し替え前ジャケットでは犬の頭部が男の股間のあたりにあり、卑猥とのことで発禁をくらったそうです。

 オープニングの「Make It Real」はポップなメロディラインで、サビ以外のメロディはカンサスの「Carry On Wayward Son」にそっくりです。哀愁漂うクラウス・マイネの歌が響きますが、地味な印象は否めません。続く「Don’t Make No Promises (Your Body Can’t Keep)」はヘヴィな疾走曲。ルドルフ・シェンカーのザクザクと刻むギターに、ハーマン・ラレベルの爽快なドラムが気持ち良い疾走感を生み出します。「Hold Me Tight」はイントロからヘヴィなギター、そしてフランシス・ブッフホルツのヘヴィなベースがずしんと響き渡ります。残念ながらメロディが弱く、そのせいか重低音を響かせるサウンドに意識がいきます。淡々として地味な「Twentieth Century Man」を挟んで、本作のハイライトであるバラード曲「Lady Starlight」。哀愁のバラードはスコーピオンズの十八番ですが、こんなに美しい楽曲があったとは。クラウスの透き通って優しい声に、アコギを中心にストリングスやオーボエで引き立てる演奏は、聴いていると心穏やかな気分になります。そして後半を盛り上げるメロウなギターソロはルドルフによるもの。普段リズムギターを担うルドルフですが、ここでのギターソロはとても美しいです。
 アルバム後半の幕開けは「Falling In Love」で、アッパーなハードロックを展開。パンチの効いたリズム隊がキレのあるギターとともにヘヴィなサウンドを繰り広げますが、歌メロはキャッチーで聴きやすいです。続いて「Only A Man」はアカペラから開幕。怪しげだけどキャッチーなメロディで、そしてダンサブルなリズムはノリが良いです。そして「The Zoo」。イントロから強烈なギターリフを展開します。のっしのっしと動物が歩くかのような、ゆっくりとしてヘヴィなサウンドですが、人気曲の割には盛り上がりに欠ける印象です。最後に表題曲「Animal Magnetism」。ドロドロとしていて、かなりダーク。サウンドも歌声も歪めて、不気味な雰囲気に仕上げています。

 あまりパッとしない本作ですが、唯一輝く名曲「Lady Starlight」。この美しい1曲を聴くためのアルバムです。

Animal Magnetism (2015 Remastered)
Scorpions