🇩🇪 Scorpions (スコーピオンズ)

スタジオ盤③

ヘヴィメタル回帰

Unbreakable (反撃の蠍団)

2004年 15thアルバム

 ルドルフ・シェンカー(Gt)、クラウス・マイネ(Vo)、マティアス・ヤプス(Gt)、ジェイムス・コタック(Dr)に加え、2004年にパウエル・マチヴォダ(B)が加入。1990年代はベースとドラムが流動的でしたが、ここでようやくメンバーが固定化され、2016年のジェイムス脱退までこの編成が続きます。
 『ピュア・インスティンクト~蠍の本能』を手掛けたエルヴィン・ムスパーがプロデュース。前作が不評だったこともあってか、本作ではヘヴィメタルに回帰しています。

 「New Generation」でオープニング。ひんやりとした静寂のサウンドから一転してヘヴィなサウンドが表れ、そこからクラウスの哀愁の歌声が響きます。ゆっくりとしたテンポで重低音が効いており、どっしりと重厚な雰囲気です。「Love ‘Em Or Leave ‘Em」は地を這うようにヘヴィなリフがカッコ良い1曲。重たいのですがノリの良いリズムが爽快。メロディアスな歌は哀愁を纏っていて、少ししゃがれ気味のクラウスの歌声が渋さを醸し出します。「Deep And Dark」はシリアスで緊迫感のある楽曲。メロディアスですが、ダークでスリリングです。続く「Borderline」は1980年代ヘヴィメタル曲のような印象。強烈なリフを持ちながらもシンプルでキャッチーな、ミドルテンポのロック曲です。コーラスのノリがアメリカンっぽい。「Blood Too Hot」は縦ノリの爽快なロックンロール。勢いがある1曲ですが、ヘヴィな重低音を響かせるルドルフのリフがアクセントになっています。マティアスのギターソロも良いですね。「Maybe I Maybe You」はピアノをバックにクラウスが悲壮感のある歌を披露するバラード。暗鬱な雰囲気ですが、終盤にヘヴィなサウンドが突如表れ、ドラマチックな終焉を迎えます。名曲です。続いて「Someday Is Now」は爽やかさと程よい哀愁の合わさった楽曲。前曲がかなり暗いので、この明るさが救いですね。「My City My Town」も爽やかな1曲。ポップで甘いメロディラインはとても魅力的です。続く「Through My Eyes」は哀愁に溢れた1曲で、お得意のパワーバラード。サビではヘヴィなリフが強烈です。頭サビの「Can You Feel It」はアメリカンな感じで、トーキング・モジュレーターでワウワウ唸るところとか、1980年代ヘヴィメタルのノリですね。少ししゃがれたクラウスの歌声に渋さを感じます。「This Time」は目の覚めるようなダーティでヘヴィなサウンド。ヘヴィなリフがカッコ良いです。「She Said」はメロウでまったりとした1曲。アルバムにヘヴィな楽曲が多いため、この穏やかなサウンドに癒されます。ラスト曲「Remember The Good Times (Retro Garage Mix)」はキャッチーなメロディラインが魅力的。爽やかにアルバムを締め括ります。

 ヘヴィメタル回帰どころか、サウンドに限って言えば、これまでのどの作品よりヘヴィな気がします。クラウスの歌声に渋さが出て、単なる劣化ではなくそれが違った魅力を生み出しています。

Unbreakable
Scorpions
 
Humanity: Hour I (蠍団の警鐘 - ヒューマニティー:アワーI)

2007年 16thアルバム

 ボン・ジョヴィエアロスミスらのヒット曲を手がけたデズモンド・チャイルドと、モトリー・クルーらのプロデュース経験のあるジェイムス・マイケルによる両名のプロデュース。また、デズモンド・チャイルドとリアム・カールの書いた「人間と機械の間で起きた戦争により分断された世界」という物語をベースにしたコンセプトアルバムだそうです。これが(ほぼ)リアルタイム蠍団体験だったので、個人的には思い入れのある作品です。

 「Hour I」で開幕。ジェイムス・コタックのパワフルなドラムを皮切りに、イントロから非常にヘヴィなサウンドで圧倒。リフも強烈ですね。クラウス・マイネの歌うメロディは緊迫感に溢れています。「The Game Of Life」は哀愁たっぷりの楽曲。ピリピリと緊張感が漂う、スリリングでシリアスな雰囲気です。メロディアスな歌に浸る楽曲だと思いますが、ビート感のあるサウンドは自然と身体がリズムを刻みます。「We Were Born To Fly」も重厚でシリアスな楽曲。静的なヴァースとダイナミックなサビの対比が強烈です。続く「The Future Never Dies」は名バラード。序盤はピアノをバックに、クラウスが悲壮感のあるシリアスな歌を展開。そして途中から加わるバンドサウンドが哀愁をより際立たせますが、この演出が鳥肌ものです。壮大で、そして感動的な1曲です。「You’re Lovin’ Me To Death」はヘヴィなサウンドと裏腹にキャッチーな歌メロが耳に残ります。ルドルフ・シェンカーのヘヴィなギターリフの後ろで動き回る、パウエル・マチヴォダのベースも中々良い。続く「321」は地を這うようにリフが重たい1曲で、ルドルフの刻むリフがとてもカッコ良い。間奏ではマティアス・ヤプスがご機嫌なギターソロを披露。そして歌はメロディアスですが、緊迫感に溢れています。「Love Will Keep Us Alive」は優しくも哀愁を纏ったイントロから名曲の予感。そして蓋を開けると、やはり哀愁のメロディラインがとても魅力的なバラードです。スコーピオンズはバラードを作らせると一級ですね。メロディセンスは衰えないどころか、往年の名曲に匹敵するくらい魅力的です。「We Will Rise Again」は張り詰めたイントロから一転、静かに展開。そしてサビで盛り上げます。とてもヘヴィなサウンドですが、哀愁のメロディは中々刺さります。続く「Your Last Song」も哀愁を醸す1曲。達観したような、渋さを感じさせます。「Love Is War」はブルージーなギターが印象的。切ないメロディですが、アメリカンのようなカラッとした感じもあるような。そして「The Cross」は重低音でザクザク切り込んでくるヘヴィな楽曲。開放的なサビは哀愁を纏っています。ラスト曲は哀愁バラード「Humanity」。序盤はしっとりとしていますが、途中からヘヴィなサウンドで彩ります。メロディは切ない。最後までメロディアスな楽曲が並ぶ隙のない作品です。

 全編を覆う緊迫感とヘヴィなサウンド、そしてメロディアスな名曲の数々。全盛期に匹敵するレベルの名盤だと思います。

Humanity: Hour I
Scorpions
 

解散宣言と撤回

Sting In The Tail (蠍団とどめの一撃)

2010年 17thアルバム

 スコーピオンズは本作制作中、これがラストアルバムで、本作を伴うツアーをもって解散するという旨のコメントを発表。邦題『蠍団とどめの一撃』にも、ラストアルバム感が出ていますね。結果的にはツアーが好評だったため解散は撤回され、彼らの活動は続くことになります。
 ミカエル・ノード・アンダーソンとマーティン・ハンセンのプロデュース作。前作は重厚でとてもシリアスな雰囲気でしたが、本作はロックの楽しさを伝えてくれる爽快なヘヴィメタルです。

 オープニング曲は「Raised On Rock」。スコーピオンズ健在と伝えてくれる、明るくノリの良いロックンロールで「Rock You Like A Hurricane」にも通じる雰囲気です。結成から45年も経つのに、若くて生き生きした印象。続いて表題曲「Sting In The Tail」は縦ノリロックンロール。クラウス・マイネの高音の歌声やマティアス・ヤプスのギターソロが爽快ですが、時折入るだみ声のような低い声も印象的です。「Slave Me」はヘヴィなリフが効きつつも「間」を活かした楽曲。コーラス等はアメリカンなノリですね。「The Good Die Young」は哀愁漂うバラード。元ナイトウィッシュのターヤ・トゥルネンをゲストに招き、ヘヴィなサウンドにターヤ嬢の神々しさをブレンドした独特の仕上がりになっています。「No Limit」は緊迫感に溢れる疾走曲。ダイナミックなジェイムス・コタックのドラムが楽曲に勢いをつけ、ルドルフ・シェンカーのリズムギターがザクザクと刻むスリリングな楽曲です。「Rock Zone」もイントロからぶちかましてくれます。歌が始まると、ダーティな雰囲気を内包したノリの良いロックンロールで、とても爽快です。一転して「Lorelei」は神秘的な雰囲気を纏った哀愁のバラード。メランコリックなメロディが染み入ります。クラウスの憂いのある歌声は艶があって老いを感じさせません。「Turn You On」はノリの良いキャッチーな1曲。でも、少し哀愁のあるメロディがスコーピオンズらしくて良いですね。続く「Let’s Rock!」もノリノリ。1980年代の楽曲群に混じっていても違和感のない、そんな若さを感じます。「SLY」はメロウなバラード。クラウスの哀愁の歌声が切なく、特に終盤の感情たっぷりの歌唱は熱くこみ上げるものがあります。「Spirit Of Rock」は力強くキレのあるサウンドでノリの良い楽曲。パウエル・マチヴォダのベースが光ります。メロディアスな歌はキャッチーなのですが、もうすぐ終わりかのような寂しさを感じさせます。ラスト曲「The Best Is Yet To Come」はやはり哀愁バラードで締め括ります。1980年代の雰囲気のコーラスは「涙拭けよ」って励ましてくれるような感じがします。ヘヴィメタル全盛期の空気感を2010年に再現した名盤です。

 メンバーは爺さん揃いだというのにとても元気で若々しく、聴いているこちらにも楽しさが伝わってきます。1980年代の名盤群の延長線上にある作風で、これらが好きなファンには嬉しいですね。ラストアルバムのつもりで作った気合いの入った本作、素晴らしい1枚です。

Sting In The Tail
Scorpions
 
Return To Forever (祝杯の蠍団~リターン・トゥ・フォエヴァー)

2015年 18thアルバム

 解散を撤回したことで、めでたく結成50周年を迎えることができたスコーピオンズ。これまでの作品の総売上枚数は1億枚以上とも言われ、名実ともにヘヴィメタル界の重鎮ですね。1965年の結成から50年、よくぞここまで来ましたって感じです。前作に引き続きミカエル・ノード・アンダーソンとマーティン・ハンセンのプロデュース作。

 オープニング曲「Going Out With A Bang」ディープ・パープルのようなイントロから繰り広げられる爽快な疾走曲。ギターが1970年代ハードロックを洗練したような感じで、これまでのスコーピオンズには無かったタイプの1曲です。「We Built This House」はメロディアスな1曲です。でもクラウス・マイネの歌声は分厚いコーラスに支えられて、あまりスコーピオンズらしさを感じません。てか、少し毛色の違うオープニング2曲ともにプロデューサーが書いた曲なのね…。ルドルフ・シェンカー作曲の「Rock My Car」はパワフルな1曲で、個人的には本作のハイライト。ジェイムス・コタックの力強いドラムがノリの良いリズムを刻み、ルドルフとマティアス・ヤプスのギターがダーティな雰囲気。キャッチーなメロディと、ちょいワルな感じの楽しそうなヘヴィメタルサウンドが爽快です。一転して「House Of Cards」はアコギとエレキが織り成す、しっとりとした哀愁バラード。切ない雰囲気を伝えるクラウスの歌声は、衰えることを知りませんね。軽快な1曲「All For One」を挟んで、縦ノリの爽快なロックンロール「Rock ‘N’ Roll Band」。ダーティなギターリフがカッコ良いです。「Catch Your Luck And Play」はルドルフの切れ味鋭いリフが強烈。アメリカンでカラッとして陽気な雰囲気です。「Rollin’ Home」は終始手拍子のようなリズムを刻むのが印象的。分厚いコーラスは古臭さを感じます。アップテンポ曲「Hard Rockin’ The Place」を挟み、しっとりとしたバラード「Eye Of The Storm」。円熟味を感じさせます。続く「The Scratch」はリズミカルで爽快なロックンロール。ジェイムスのドラムと合わせ、パウエル・マチヴォダのベースが唸ります。最後に「Gypsy Life」、ラスト曲に哀愁バラードを持ってくるのはスコーピオンズの様式美ですね。

 解散するつもりで気合いの入った前作に比べると、本作は正直楽曲の出来にバラつきがあるのは否めませんが、そんな中で「Rock My Car」が素晴らしい。50年経っても元気な彼らに『祝杯の蠍団』の邦題が似つかわしいです。

Return To Forever
Scorpions
 
Rock Believer (ロック・ビリーヴァー)

2022年 19thアルバム

 前作リリースに伴うツアー後に、ジェイムス・コタック(Dr)がアルコール依存のリハビリのため脱退。元モーターヘッドのミッキー・ディー(Dr)を後任に迎えています。
 新たな顔ぶれで2019年頃から作曲を始め、パンデミック下でレコーディングを進めた本作。オリジナルアルバムとしては7年ぶりとなりますが、ブランク期間は過去最長なのだとか。ルドルフ・シェンカーとクラウス・マイネは70代に突入し、他メンバーも50〜60代ですが老いを感じさせず、全盛期の作品にも比肩する傑作に仕上がりました。ジャケットアートはローリング・ストーンズの『山羊の頭のスープ』みたいですね。

 オープニングを飾る「Gas In The Tank」は、マティアス・ヤプスのギターがギュインギュイン唸りを上げ、リズムギターやベース、ドラムがタイトに刻むイントロから、80年代の彼らを彷彿とさせます。クラウスの声も年齢を感じさせません。明るくてメロディアスでもある佳曲です。続く「Roots In My Boots」はハイテンションの疾走ロックンロールで、渋みは増したものの『蠍魔宮〜ブラックアウト』の頃を彷彿とさせる仕上がりです。ルドルフの刻むリフも切れ味鋭く爽快です。「Knock ‘Em Dead」はイントロからドラムが高揚感を掻き立て、リズミカルな演奏に乗せられます。ノリが良いですが、サビメロの哀愁も魅力的です。そして表題曲「Rock Believer」。アグレッシブなイントロから突如、アコースティックな雰囲気でしっとりした歌が始まります。そしてメタリックな演奏に戻して緩急つけす。哀愁漂う楽曲ですね。「Shining Of Your Soul」はシリアスな雰囲気で緊張が張り詰めます。歌が始まると音を間引いて緊張を弱めつつもダウナーな感じで、そしてまた緊張を高めていきます。続く「Seventh Sun」はパウエル・マチヴォダのベースが重低音を刻み、鈍重な演奏を展開します。クラウスのクリアーな歌声は対照的ですね。緊張感があって聴き入ってしまいます。「Hot And Cold」は、鋭利なリズムギターと鈍器のようなベースが重低音を響かせます。ヘヴィな演奏ながらも、躍動感に溢れていて結構ノリが良いです。そして「When I Lay My Bones To Rest」は爽快なアップテンポ曲で、クラウスが常にハイテンション。本当に70代なの?ってくらいにノリノリです。笑 ゴリゴリとしたベースがカッコ良い。続く「Peacemaker」勢いあるキャッチーな楽曲で、リフが高揚感を煽ります。「ピースメーカー ピースメーカー」の連呼が耳に残りますね。「Call Of The Wild」はゆったりとしたスローテンポの楽曲です。反復が印象的。そしてラスト曲「When You Know (Where You Come From)」。イントロから哀愁たっぷりで、しっとり聴かせるメロディアスなバラードです。クラウスの歌も渋くて良いし、間奏のマティアスのギターも滲みます。

 『蠍魔宮〜ブラックアウト』から『クレイジー・ワールド』の頃に戻ったような作風です。カッコ良い。

 2025年で結成60周年を迎える彼ら。ぜひこれからも元気に活動してほしいものです。

Rock Believer
Deluxe Edition (2CD)
Scorpions
Rock Believer
Scorpions
 
 

ライブ盤

Tokyo Tapes (蠍団爆発!!スコーピオンズ・ライヴ~トーキョー・テープス)

1978年

 ウルリッヒ・ロート在籍時の集大成、傑作ライブ盤です。初来日公演を収録してくれたのが嬉しいですね。
 選曲は初期スコーピオンズの良いとこ取りで、音もクッキリしていて聴きやすいので、オリジナルアルバムではなく本作で初期の名曲を押さえても良いかと思います。一部に即興はありますが、楽曲の多くはオリジナルに忠実なので、その辺も聴きやすい要因の一つでしょう。メンバー編成はクラウス・マイネ(Vo)、ルドルフ・シェンカー(Gt)、ウルリッヒ・ロート(Gt)、フランシス・ブッフホルツ(B)、ハーマン・ラレベル(Dr)。

 ライブは「All Night Long」で開幕。ルドルフの切れ味の鋭いギターリフと、フランシスのヘヴィなベースが強烈なハードロック曲。ウルリッヒのリードギターも間奏で暴れ回っています。続くは名曲「Pictured Life」。ウルリッヒの泣きのギターも当然魅力的ですが、ヘヴィなリズム隊も音の分離が良く、その魅力を遺憾なく発揮しています。そしてライブでも歌のブレないクラウス、上手いですね。「Backstage Queen」は観客の手拍子に支えられ、ヘヴィで荒々しいギターがダーティな雰囲気を作ります。このあとレコード時代は「Polar Nights」が続きますが、私の持っているCD音源では省かれているので割愛。ここまでアップテンポ気味でしたが、続く「In Trance」は気だるく、そして強烈な哀愁ムードに変えます。演奏はヘヴィで陰鬱ですが、クラウスのメランコリックな歌声が切ない気分にさせます。「We’ll Burn The Sky」も哀愁のアルペジオが切ないですが、途中からテンポアップして、哀愁は保ちつつもノリの良い1曲に変貌。中々スリリングです。続いてハーマンのリズミカルなドラムに手拍子が合わさって「Suspender Love」へ。サビの哀愁のメロディは中々良いですが、それ以外は結構単調です。しんみりとして陰鬱な「In Search Of The Peace Of Mind」を挟んで、10分近い本作最長の「Fly To The Rainbow」。強烈な哀愁漂うクラウスの歌声も良いですが、なんといってもウルリッヒのギターソロでしょう。味のある渋い音でじっくり聴かせますが、終盤は実験的でスペイシーな音色を奏でています。続いてキャッチーな「He’s A Woman, She’s A Man」。ノリの良いリズムにキャッチーな歌メロが爽快です。そして元から速いのに、後半は更にテンポアップ。「Speedy’s Coming」も疾走感のある爽快な1曲。ライブも盛り上がってきました。ヘヴィだけどノリの良い「Top Of The Bill」は、途中にハーマンのダイナミックなドラムソロを挟んでいます。ライブならではの演出ですね。シンプルで軽快なロックンロール「Hound Dog」「Long Tall Sally」がメドレーのように演奏され、大歓声の中「Steamrock Fever」へ。終始金属的なシンバルが印象的です。クラウスの歌い方がかなりラフですが、開放的でキャッチーなサビはきちんと歌っていますね。「Dark Lady」はヘタウマのウルリッヒと美声のクラウスが交互に歌う楽曲。勢いがあるのでウルリッヒのヘタさはご愛嬌。笑
 そしてアンコールへ。日本のファンのために日本語の歌を勉強してきたスコーピオンズが披露するのは「Kōjō No Tsuki (荒城の月)」…まさかの滝廉太郎です。日本の曲なのに歌える日本人が少なく(ロックファンなら尚更聴く人は少ないでしょう…)、若干戸惑い気味のファンの反応はスコーピオンズ側も予想外だったのではないでしょうか?日本語で歌うクラウスの歌もなかなか味がありますが、それ以上に哀愁あるこの楽曲を奏でるバンドサウンドが意外とスコーピオンズに合っている気もします。最後に「Robot Man」。こっちは前曲と違って非常に盛り上がっています。笑 勢いがあってキャッチーなメロディは一緒に歌いたくなりますね。

 ウルリッヒ時代のベスト選曲で音質も良く、緩急つけた構成も聴きやすいです。初期スコーピオンズの入門としても向いている作品です。時折日本語の挨拶が嬉しいところ。
 なお日本盤のジャケットの裏面には、薔薇の花に突き立てた日本刀、その刀から密が滴る隠喩的なデザイン。これも発禁なのか、あるいは日本独自デザインという扱いなのか、海外盤は違うデザインとなっています。なお2015年リマスターで海外盤とデザインが統一されました。

 下記は2015年リマスター。本レビューは1つ前のリマスター盤なので収録曲数が少ないですが、今から買うなら曲数も多いこちらの最新リマスターが良いと思います。

Tokyo Tapes (2CD) (2015 Remastered)
Scorpions
 
World Wide Live (ワールド・ワイド・ライヴ)

1985年

 1984年から1985年にかけて行われたワールドツアーの模様を収録したライブ盤です。ちなみに来日も果たしています。『ラヴドライヴ』以降の作品からの選曲で、名曲揃い。このライブ時点のメンバーは、ルドルフ・シェンカー(Gt)、クラウス・マイネ(Vo)、マティアス・ヤプス(Gt)、フランシス・ブッフホルツ(B)、ハーマン・ラレベル(Dr)。迫力の1枚ですが、歌が上手くて魅力的なバンド故に、一部でキーを下げてたりキーが届いていない歌メロが若干気になります。

 オープニングSE「Countdown」から「Coming Home」で大歓声で迎えられて開幕。原曲とは異なり、美しいアルペジオをしっとり聴かせるパートを省き、切れ味の鋭い疾走パートで始まるため勢いに満ちたオープニングです。ルドルフのザクザク切り込むギター、ハーマンのパワフルなドラムが印象的です。会場が広いのか少し音が遠いのか、エコーの響く録音です。続く「Blackout」も切れ味抜群の鋭いサウンドがとてもスリリングです。但しクラウスの歌は少しラフというか、オリジナルのキーに届いていないのが残念。「Bad Boys Running Wild」はイントロの緊迫感のあるギターから、重低音の効いたサウンドとメロディアスな歌が展開されます。ノリの良いリズムが爽快な「Loving You Sunday Morning」は、個人的にオリジナルより好みです。マティアスの伸び伸びとしたギターと、クラウスのシリアスな(そしてコミカルな?)歌メロの対比が面白い。カンサスの某名曲そっくりな「Make It Real」を挟んで、メロディアスな1曲「Big City Nights」。哀愁漂うメロディを、ヘヴィだけどノリの良いサウンドに乗せて届けます。会場との掛け合いも、ライブならではの演出で楽しいですね。鈍重なインストゥルメンタル「Coast To Coast」を聴かせたあとは、バラード曲「Holiday」。哀愁のメロディが切ないこの楽曲では、会場の合唱パートもあります。続く「Still Loving You」も名バラード。強烈な哀愁がたまりません。そして名曲「Rock You Like A Hurricane」は、キャッチーなイントロから高揚感を煽ってきます。口ずさみたくなるメロディも魅力的ですね。疾走曲「Can’t Live Without You」はオリジナルより前のめり気味。歌はラフですが、勢いがあって爽快です。続く「Another Piece Of Meat」もノリノリのロックンロール。ライブ終盤に向けてどんどん盛り上がっていきます。そして「Dynamite」はオリジナルに比べるとだいぶラフですが、凄まじい勢いで楽しませてくれます。「The Zoo」はミドルテンポに落として、獣が跋扈するような怪しげなリズム。そしてトーキング・モジュレーターがワウワウ唸っています。そしてキャッチーな「No One Like You」へ。マティアスのご機嫌なリードギターが爽快です。続いてハーマンのドラムが煽り立てる「Catch Get Enough Pt. 1」、マティアスのギターソロ「Six String Sting」を挟んで、最後に「Catch Get Enough Pt. 2」で再び勢いのある楽曲でライブを締め括ります。

 ウルリッヒ時代よりもキャッチーで、それでいて切れ味の鋭い楽曲が並びます。選曲が好みですが、一部の楽曲はキーを下げてないスタジオ盤の方が好みかも。

World Wide Live (CD+DVD) (2015 Remastered)
Scorpions
 
 

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 ルドルフ・シェンカーの実弟、マイケル・シェンカーのソロプロジェクト。
 
 
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