🇬🇧 Soft Machine (ソフト・マシーン)
レビュー作品数: 1
スタジオ盤
1970年 3rdアルバム
ソフト・マシーンはイングランドのプログレバンドで、カンタベリー出身のワイルド・フラワーズを祖とします。ワイルド・フラワーズは2つに枝分かれし、先行脱退組がソフト・マシーンを、残りがキャラヴァンを結成することになります。1966年にデヴィッド・アレン(Gt/Vo)、ケヴィン・エアーズ(B/Vo)、ロバート・ワイアット(Dr/Vo)、ラリー・ナウリン(Gt)、マイク・ラトリッジ(Key)でソフト・マシーンを結成。デビュー時はサイケデリックロックでしたが、メンバーの脱退・加入を経てジャズロック路線へシフトしていきます。一時的にアンディ・サマーズ(後にポリスを結成)も在籍していました。
本作はジャズロック路線の代表作です。オリジナルメンバーのラトリッジ(Key)、ワイアット(Dr/Vo)に加え、ヒュー・ホッパー(B)、エルトン・ディーン(Sax)、そしてサポートとしてリン・ドブソン(Sax/Fl)、ジミー・ヘイスティングス(Fl)、ラブ・スポール(Vn)、ニック・エヴァンス(Tb)が参加。CD化に際して1枚に収まりましたが、レコード2枚組で各面に1曲ずつ(いずれの楽曲も18~19分)の計4曲入りという極端な作品です。
レコード時代のA面「Facelift」。音質も悪い中で実験的な演奏(というよりノイズ?)が繰り広げられるという苦行のような5分を過ごすと、ようやくバンド演奏が纏まってメロディを奏で始めます。7分入ってから展開が変わり、緊張が張り詰めてスリリングなのですが、音がより一層悪くなっています。サックスがキンキンとした音を立てるので耳が痛いのですが、ベースラインは結構カッコ良いかも。10分半頃から既存のメロディに被せて別のメロディが始まり、そして幽玄なフルートソロを披露しますが、これが中々味があります。そこから楽器が増え、ジャジーでスリリングな演奏を繰り広げます。この演奏パートが静かにアツいんです。ラストはサイケのようにグチャグチャとした感覚が支配。前半10分は正直きついですが、後半は結構聴きごたえがあります。
レコードB面は「Slightly All The Time」。ジャジーなサックスが比較的キャッチーなメロディを奏で、ゆったりと心地良い演奏に揺られます。エレピが落ち着いた雰囲気を助長し、ベースやドラムもジャジーで気持ち良いです。6分手前から加速して演奏はスリリングに。ドラムがひたすら焦燥感を煽りますが、フルートの優しい音色が良いクッションになっています。8分頃からテンションをあえて抑えつけたような演奏が、いつ爆発するとも知れないスリルを演出。12分頃に、テープを繋ぎ合わせたと思しき強引な場面転換を経て、メロウなサックスに浸らせてくれます。そしてラスト2分でテンポアップし、緊張を極限まで高めていく魅力的な展開。良曲です。
続いてレコードC面「Moon In June」。本作で唯一ボーカルが入った楽曲ですが、ワイアットの歌はそこまで上手くないかも(声質は悪くないです)。程よくポップな歌メロとハモンドオルガンのおかげで比較的キャッチーな仕上がりです。サイケロックっぽい印象で敷居も低く、ロック畑の人はこの楽曲から入ると良いかもしれませんね。9分頃からキャッチーさを捨ててスリリングな演奏パートへ。緊張に満ち溢れたやや暴力的な演奏バトルはキング・クリムゾンにも通じ、中々カッコ良いです。14分頃から演奏は落ち着くものの、不穏な空気が支配しており、サイケで実験的です。
レコードD面、ラスト曲「Out-Bloody-Rageous」。無音から静かにフェードインする序盤は、靄のかかったような幻覚的な演奏を繰り広げます。5分過ぎからジャジーな演奏で盛り上げていきますが、ご機嫌でメロディアスなアンサンブルに乗せられ、またくっきりと明瞭なベースが心地良く揺さぶってきます。10分手前で突如静寂が訪れ、靄のかかったようなオルガンを主体としてサックスが幽玄な雰囲気を作ります。終盤は神経質なエレピが不穏に焦燥感を煽り立てて終了。
昔チャレンジしたものの難解すぎて挫折し、それ以来本作には悪いイメージしかありませんでした。レビューにあたり久しぶりに聴いた印象としては「Facelift」の苦行のような序盤を耐えると、以降はそこそこ楽しめる作品でした。但し、サイケデリックロックとジャズの両側面を持った演奏は全体的に難解です。
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