🇺🇸 Sonny Rollins (ソニー・ロリンズ)

レビュー作品数: 1
  

スタジオ盤

Saxophone Colossus (サキソフォン・コロッサス)

1956年

 米国ニューヨーク州出身のジャズ・サックス奏者、ソニー・ロリンズ。本名はセオドア・ウォルター・ロリンズといい、1930年9月7日生まれ。
 本作は「サキコロ」の愛称で親しまれるジャズの超有名盤にして、定番中の定番だそうです。ジャケット写真が渋くてカッコ良い。ちなみにロリンズの25歳のときの演奏だそうで意外と若いんですね(写真が暗いせいもありますが、貫禄があるというか老けて見えるというか…笑)。ロリンズ(T.Sax)とともに演奏を繰り広げるのはトミー・フラナガン(Pf)、ダグ・ワトキンス(B)、マックス・ローチ(Dr)。
 本作はジャズをほとんど知らない私が愛聴する、数少ないジャズ作品です。ジャズを深めようと思い立って一度買ったものの馴染めないまま売ってしまい、数年後にふと思い出したようにハマって買い戻すという勿体ない買い物をしたこともあって、過ち(?)を繰り返さないようこの作品については今後も長く付き合うつもりでいます。

 オープニングを飾る「St. Thomas」が本作のハイライト。カリプソと呼ばれるカリブ海の音楽スタイルをジャズに持ち込んだ最初の作品だそうです。ロリンズ作として知られるものの、ベースとなるのは英国トラッドをルーツにもつヴァージン諸島の子守唄。この子守唄をヴァージン諸島出身の母から聞いて育ったロリンズが、独自の感覚でジャズとして表現したのだとか。ロリンズのサックスが奏でるキャッチーでご機嫌なメロディは、聴いているととても楽しい気分になります。また、タムやハイハットを多用するドラミングが気持ち良い。中盤にはドラムソロの見せ場もあります。終盤は軽快なピアノに主導権を渡しますが、最後にサックスのキャッチーなメロディで締め括ります。続く「You Don’t Know What Love Is」は大人びた雰囲気でメロウな1曲。ゆったりとしたテンポで、渋くて色っぽいサックスをじっくり聴かせます。テナーサックスの低音は色気に満ち溢れていて、惚れ惚れしますね。「Strode Rode」は出だしからキャッチーなフレーズが耳に残ります。ハイハットで心地良い疾走感を生み出し、タムをバタバタと叩いて躍動感を生むドラムが魅力的。また中盤からドラムはどんどん勢いを増しますが、ドラムに煽られながらも気ままに軽やかな音色を奏でるピアノソロや、ドラムと息の合った掛け合いを行うサックスソロ等、とてもスリリングな演奏です。
 ここからはレコード時代のB面、アルバムの後半パートへ。「Moritat」はベルトルト・ブレヒトによる戯曲『三文オペラ』の挿入歌のアレンジ。10分に渡る演奏の前半は比較的単調な印象で、BGMとして聞き流すくらいでちょうど良い心地良さなのですが、後半からはドラムが変化を見せてきてスリリングに楽しませてくれます。時折音が飛ぶの録音状態の悪さが少し難点でしょうか。ベースソロで始まるラスト曲「Blue 7」は11分超の演奏です。比較的ゆったりめのリズムをバックに、ロリンズのサックスは探り探り始まり、徐々に饒舌になっていく感じ。中盤はローチのドラムの独壇場で、ドラムソロで魅せます。終盤はベースが主体となって心地良いリズムで揺さぶりながら各楽器が纏まっていきますが、最後は呆気ないというか、やや唐突に終焉が訪れる印象です。

 「St. Thomas」のキャッチーなメロディがとても魅力的ですが、他の楽曲も良曲揃い。ジャズ入門としても挙がる必聴作品ですので、ジャズに興味のある方は聴いてみると良いでしょう。

Saxophone Colossus
Sonny Rollins
 
 
 類似アーティストの開拓はこちらからどうぞ。