🇺🇸 Soundgarden (サウンドガーデン)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

Badmotorfinger (バッドモーターフィンガー)

1991年 3rdアルバム

 米国ワシントン州シアトル出身のオルタナティヴロックバンド、サウンドガーデン。1990年代グランジムーブメントを牽引した代表的なバンドですが、結成は1984年と古く、また1985年にはレコードデビューを果たしています。ニルヴァーナパール・ジャムアリス・イン・チェインズら後発バンドがグランジブームで大成功を収める中、サウンドガーデンはグランジの先駆者でありながらも先を越され、商業的に成功するのは『スーパーアンノウン』まで待つことになります。
 本作はメジャー2作目、通算3枚目のアルバムです。サウンドガーデンはメタルとオルタナの架け橋とも評されたようで、本作では重苦しくドロドロとした演奏を展開します。メンバーはクリス・コーネル(Vo/Gt)、キム・セイル(Gt)、ベン・シェパード(B)、マット・キャメロン(Dr)。テリー・デイトとサウンドガーデンの共同プロデュース作。

 オープニング曲は「Rusty Cage」。うねるようなベースと、奇妙なんだけどクセになるギターリフで疾走します。変速も組み込まれており、かなりひねくれているんですがカッコ良いんです。そしてクリスのボーカルはデヴィッド・カヴァーデイルに似た、渋くてとても魅力的な声質です。これが良い。続く「Outshined」は引きずるように鈍重なリフで叩きつけてきます。演奏は重苦しく、そして気だるげだけどシャウト気味の歌メロは一癖も二癖もあり変態的。ですがクリスの魅力的なボーカルが、この楽曲を良いと思わせるんです。「Slaves & Bulldozers」もスローテンポで引きずるような重低音を唸らせます。そしてクリスのシャウトはどこまでもパワーアップしていき、底知れないエネルギーを感じさせるのでとてもスリリングです。「Jesus Christ Pose」はカッコ良い1曲。ヒス気味のノイジーなギターと非常にヘヴィなベース、そして焦燥感を煽るドラムが不穏な空気を放ちながらも疾走。ドロドロとした演奏に怒りをぶつけるかのようなクリスの怒号もスリリングです。そして警告音のようなギターを鳴らすと緊張感は最高潮に。恐ろしいほど緊迫した名曲です。続く「Face Pollution」も非常にスリリング。疾走メタル曲で、戦車のように鈍重なサウンドで強烈に爆走します。更に後半はリズムチェンジを交えた変態的な展開で先が読めません。「Somewhere」はゆったりとしたテンポでヘヴィな演奏を展開します。トリッキーなリズムはプログレ的ですね。更に終盤はテンポアップしていきます。そしてノイジーな演奏にナレーション付で始まる「Searching With My Good Eye Closed」。6分半に渡る楽曲で、鈍器で殴るかのような重たいサウンドですが、気だるげな歌メロはどこか心地良かったりします。終盤はドロドロと渦巻くような演奏に強烈なシャウトを放ちます。続く「Room A Thousand Years Wide」では鈍重なリフがズズズンと響きます。そしてクリスのシャウトが強烈なこと。アクセントとしてサックスが騒ぎ立てています。「Mind Riot」はヘヴィさにエスニックな香りがプラスされ、怪しげな雰囲気が漂います。緊張感も強く、不穏な感じです。「Drawing Files」はリズミカルで楽しい1曲。リズム隊はヘヴィで強烈にうねりますが、グルーヴ感が爽快です。そしてサックスが適度に荒らしていきます。ダーティで怪しげですが、ノリの良さはヤミツキになりますね。「Holy Water」は鈍重でドロドロとしていますが、ブルージーでもあります。歌唱は迫力がありますが、気だるく心地良い感覚もあります。最後の「New Damage」はどんどん沈んでいくようなヘヴィなリフが不気味な感覚を与えます。混沌として重苦しいですね。

 声質が魅力的な上に、一癖も二癖もあるヘヴィな楽曲群は強烈なフックをかけてきます。グランジだけでなくメタルファンにも刺さる名盤です。ブラック・サバスにブラック・アルバム期メタリカ、そこにホワイトスネイクのデヴィッド・カヴァーデイルを加えたようなイメージです。

Badmotorfinger (2CD Deluxe Edition)
(25th Anniversary)
Soundgarden
Badmotorfinger (25th Anniversary)
Soundgarden
 
Superunknown (スーパーアンノウン)

1994年 4thアルバム

 初の全米1位を獲得した、サウンドガーデンの出世作です。最高傑作に挙げられることも多い作品で、代表曲「Black Hole Sun」を収録しています。マイケル・ベインホーンをプロデューサーに迎えてアルバム制作を始めましたが、ニール・ヤングのツアーに帯同してアルバム制作を中断、ツアーでいくつかの新曲を披露したそうです。そんな活動も追い風になったのか、最終的には全米だけで500万枚以上、全世界で900万枚以上を売り上げる大成功を収めました。メンバーは引き続きクリス・コーネル(Vo/Gt)、キム・セイル(Gt)、ベン・シェパード(B)、マット・キャメロン(Dr)。

 アルバムは「Let Me Drown」で開幕。ヘヴィにうねる演奏はとてもグルーヴィで、リフは重いのに心地良い中毒性もあります。クリスのブルージーな歌声も渋くてカッコ良い。終盤には激しさを増し、スリリングです。「My Wave」は骨太なロック曲。カッコ良いリフで牽引する楽曲で、リズミカルな演奏で身体が思わずリズムに乗せられます。終盤は混沌としており幻覚的な感覚を生み出しています。続く「Fell On Black Days」はヘヴィでダウナーな雰囲気のリフによって気持ちが沈んでいく感じがします。クリスの歌は淡々として渋い哀愁を醸しますが、時折激しく歌いメリハリをつけます。「Mailman」はスローテンポで、引きずるように重たいリフが強烈です。そんな中でメロトロンがアクセントになっています。「Superunknown」は疾走感のある楽曲です。サウンドは重くうねっていますけどね。ハイテンションなクリスのボーカルはロニー・ジェイムズ・ディオっぽくもあり、ハードロックの遺伝子を感じさせる迫力ある1曲です。「Head Down」は一気にテンションを落とし、アコギを聴かせると、ヘヴィでエスニックなフレーズで怪しげな雰囲気を出してきます。ダウナーな歌はメロディアスでもあります。終盤はドラム・パーカッションが混沌としてスリリングな感じ。そしてサウンドガーデンの代表曲「Black Hole Sun」。哀愁たっぷりのメロディアスな歌が良く、クリスの渋い歌声も合わさってとても魅力的です。前半はドロドロとした感覚は比較的少ないですが、間奏ではダーティでヘヴィな演奏が全面に出てきますし、終盤は他の楽曲同様にドロドロとした感覚を抱きます。「Spoonman」はヘヴィですがグルーヴ感のある楽曲。ゴリゴリとしたリフに、パタパタと鳴るパーカッションがリズミカルで心地良いです。よりヘヴィにしたレッド・ツェッペリンといった感じ。「Limo Wreck」はとても重く暗い1曲。ブラック・サバスばりにリフが暗くて不気味です。そして力強いシャウトで反復するサビは妙に印象に残ります。「The Day I Tried To Live」はクリスの力強い歌が魅力的です。そして演奏は相変わらずヘヴィですが、気だるくグルーヴィなサウンドに心地良く揺られます。「Kickstand」は鈍重なのに疾走する楽曲です。本作中最も爽快で、僅か1分半ですが気分を変えてくれます。「Fresh Tendrils」はリズムの取り方が独特で、名曲ではないものの違和感という名のフックをかけてきます。奇妙な中毒性がありますね。続く「4th Of July」は地を這うように重苦しいリフが、終始不気味な雰囲気を作り出します。これでもかと鈍重でドロドロしているのに奇妙な心地良さがあり、そして歌は渋くて魅力的なんです。僅か2分強の「Half」は民族音楽っぽい演奏に、遠くからこだまするかのような加工されたボーカルで、どこかレッド・ツェッペリン(III~IVあたり)っぽさを感じます。最後は7分強の「Like Suicide」。スローテンポでゆったりとして渋いのですが、序盤は淡々としていて少し冗長な印象。中盤からマットのドラムがダイナミックになり、終盤ではキムの魅力的なギターソロなど結構聴かせる部分が増えてきます。ラストはクリスの力強い歌唱で締め括ります。

 重苦しい演奏が70分続くので、聴き通すのは少し辛いかも。魅力的な楽曲は多いので、単曲単位で聴いてみるのも良いでしょう。

Superunknown (2CD Deluxe Edition)
(20th Anniversary)
Soundgarden
Superunknown (20th Anniversary)
Soundgarden
 
Down On The Upside (ダウン・オン・ジ・アップサイド)

1996年 5thアルバム

 解散前最後の作品で、グラミー賞にノミネートされた代表曲「Pretty Noose」を収録しています。アルバム全体でヘヴィさは若干薄れ、バラエティ豊富になりました。アダム・キャスパーとサウンドガーデンの共同プロデュース。

 オープニング曲は「Pretty Noose」。スローテンポで怪しげなイントロを奏でますが、歌が始まるとクリス・コーネルの力強い歌唱が強烈なパワーでインパクトを与えます。ロニー・ジェイムズ・ディオにも似たボーカルはハードロックファンに刺さりますね。歌だけ聴くとキャッチーな感じもしますが、先の読めない展開はかなり変態的です。そして鈍重でグルーヴィな演奏は独特のうねりを持っています。「Rhinosaur」はヘヴィなリフが印象的。グランジ化したレッド・ツェッペリンといった感じ。鈍重ですが、後半突如として倍速くらいに疾走。そしてまた鈍重な演奏を展開します。続く「Zero Chance」はメロウな楽曲です。渋く哀愁たっぷりのクリスの歌唱が胸に染みますね。演奏はヘヴィさ抑えめで、哀愁の歌メロを引き立てています。「Dusty」はイントロからマット・キャメロンのパワフルなドラムが強烈。エレキだけでなくアコギも鳴らして、歌メロのバックでひたすら反復する変なリフが強い中毒性を生み出しています。「Ty Cobb」は極端な楽曲で、イントロはまったりとしていますが、急加速してパンキッシュでアグレッシブな疾走曲へ豹変。とても速いスリリングな演奏にはぶっ飛ばされますが、クリスの弾くマンドリンと、ベン・シェパードの弾くマンドラという楽器が独特のアクセントを加えています。「Blow Up The Outside World」はダウナーな雰囲気。ですが以前のようなドロドロとした感じは薄く、しんみりとした哀愁を漂わせています。サビの歌唱はとても力強く、そんな歌に合わせて演奏も激しく盛り上げるドラマチックな楽曲です。「Burden In My Hand」はアコースティックで比較的明るい雰囲気。クリスのボーカルにフィーチャーした、まったり落ち着ける楽曲です。後半はリズム隊が力強くリード。レッド・ツェッペリンっぽい感じで個人的に好みです。「Never Named」は軽快でノリの良い楽曲ですが、変なリズム感が妙に癖になります。「Applebite」は不気味だけどグルーヴィ、そして重くサイケデリックな幻覚的サウンドを展開します。加工されたボーカルは楽器のようです。そんなどんよりとした気分を一掃する「Never The Machine Forever」。強烈にヘヴィな演奏と力強い歌唱でぶん殴ってくるかのようです。「Tighter & Tighter」はイントロからベースを中心にうねりまくっています。グルーヴ感抜群の演奏はどんよりしてヘヴィなのに心地良く、また激しい歌唱も魅力的です。続く「No Attention」は疾走曲。重低音を響かせながらもパンキッシュに駆け抜けます。「No Attention」の連呼はカッコ良く、キム・セイルのギターソロも中々良い感じ。後半はテンポを落としてヘヴィなハードロックといった趣に変わります。「Switch Opens」はカラッとして切ない雰囲気ですが、「普通に良い楽曲」では終わらず、少しトリッキーなリズムでフックを引っかけてきます。続いて気だるげな「Overfloater」。序盤は音量控えめで静かですが、うねるベースが際立っています。後半になると激しさを増していきます。「An Unkind」はダーティな疾走曲。僅か2分で変な捻りもありませんが、抜群にノリが良くてカッコ良い楽曲です。ラスト曲「Boot Camp」はブルージーで渋い。クリスの深みのあるボーカルが魅力的ですが、盛り上がり始めたところで終わってしまい消化不良な感もあります。

 全16曲とボリューム満点で、明るい楽曲も増えました。散漫気味で、通しで聴くとダレるのが難点でしょうか。
 本作を最後に、バンドは1997年に解散。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの元メンバーとクリスでオーディオスレイヴを結成するなどの活動をしていましたが、2010年に再結成を果たします。2012年に6thアルバムをリリースしますが、2017年に突如クリスが自殺してしまいます。

Down On The Upside
Soundgarden
 
 

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 サウンドガーデン解散時期に、マット・キャメロン(Dr)が加入。

 
 
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