🇬🇧 The Damned (ザ・ダムド)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

Damned Damned Damned (地獄に堕ちた野郎ども)

1977年 1stアルバム

 ロンドンパンクのうち一番乗りでアルバムリリースを果たした、最速デビューのパンクバンド、ダムド。ちなみに解散して最速の再結成を果たしたパンクバンドもダムドだそうで。笑 楽曲も最速…かどうかはわかりませんが、疾走曲ばかりで勢いを感じます。後のハードコアパンクにも大きな影響を与えました。
 メンバーはデイヴ・ヴァニアン(Vo)、ブライアン・ジェイムス(Gt)、キャプテン・センシブル(B)、ラット・スケイビーズ(Dr)の4人。1976年に結成してセックス・ピストルズのサポートを務めながら、同年10月にロンドンパンク初のシングルリリース、そして1977年にはニック・ロウのプロデュースの下でロンドンパンク初のアルバムリリースを果たします。ケーキまみれの汚いおふざけジャケットが強烈ですね。

 アルバムは「Neat Neat Neat」で勢いよく始まります。渋くてダーティなキャプテンのベースからブライアンの荒々しいギターが加わり、そしてシンバルが炸裂するラットの激しいドラム。そして何より歌メロの「ニニニッ!」が強烈なインパクトです。ここで連呼される「Neat」とは無職のニートではなくて「素敵なこと」という意味だそうで、本作ではこの楽曲が一番良いです。ちなみにシングルだと紙袋を被ったメンバーのジャケットが印象的ですが、秘密結社KKKをおちょくっているんでしょうか。続く「Fan Club」はブルージーなサウンドを激しいドラムが荒らします。そしてメロディを軽視した下手な歌がパンクですね。続く「I Fall」はパンキッシュな疾走曲。シンプルだけど激しくて荒々しく、金属的なギターも良い。「Born To Kill」は激しい演奏と対照的に、デイヴのボーカルは冷めていて気だるげです。このギャップが印象的。続いて「Stab Yor Back」は8回連続でタイトルを連呼するという歌メロがとてもキャッチーで耳に残ります。そして勢いも凄まじく、1分足らずのこの楽曲は強烈なインパクトを残しつつも、あっという間に終わります。ゲリラ豪雨にでも見舞われた気分です。そして「Feel The Pain」は疾走曲続きの本作では珍しくゆっくりした楽曲です…終盤でやはり加速しますが。ルー・リードっぽい歌唱にヴェルヴェット・アンダーグラウンドからの影響があるような気もします。
 後半は疾走曲尽くしで一気に駆け抜けます。まずは「New Rose」で幕開け。ロンドンパンク初のシングルリリースとなった1曲で、ダイナミックなドラムから始まる、疾走感がとても爽快なロックンロールです。続く「Fish」も疾走曲で、バタバタと畳み込むように勢いづいていきます。更に「See Her Tonite」でどんどん勢いを増していきます…それはもう笑えるくらいに。爽快です。「1 Of The 2」は疾走気味のロックンロール。前曲よりスピードは落としていますが、それでも速いですね。「So Messed Up」も爽快なロックンロール。勢いがあって楽しませてくれます。最後にストゥージズのカバー曲「I Feel Alright」で締めますが、パンクバンドに影響を与えたガレージロックの雄ストゥージズを選ぶあたりに、ダムドもまた彼らの影響を受けたことを感じさせます。

 勢いに圧倒されますが、その本質はロックンロール。パンクとはロックンロールへの回帰だというのがよくわかる作品です。
 高速で奏でられるロックンロールが勢揃いで、休息という言葉を知らないかのように疾走曲のオンパレード。サウンドは粗削りなものの、ヘヴィさとノリの良さを持ち合わせていて、トータル31分とサクッと聴けるのも魅力です。何も考えずに勢いで聴ける、楽しい作品です。

Damned Damned Damned
The Damned
 
Music For Pleasure (ミュージック・フォー・プレジャー)

1977年 2ndアルバム

 デイヴ・ヴァニアン(Vo)、ブライアン・ジェイムス(Gt)、キャプテン・センシブル(B)、ラット・スケイビーズ(Dr)の4人に加えて”ルー” ロバート・エドモンズ(Gt)が加わり5人体制となったダムド。
 本作はピンク・フロイドのニック・メイスンによりプロデュースされました。元々はシド・バレットに依頼しようとしたものの果たせず、ニック・メイスンに依頼したのだとか。ピンク・フロイドと言えば「I hate Pink Floyd (ピンク・フロイドなんて大嫌いだ)」のTシャツを着たセックス・ピストルズをはじめ、パンク勢が「オールドウェイヴ」とレッテル貼りして毛嫌いしているイメージがあるのですが、ダムドにはそういうのは無いのでしょうか?ちなみに本作、世間的な評価はかなり不評です…。

 オープニング曲は「Problem Child」。シンプルなリフが強調されていますが、クリアーでかつ音の分離が良いためか、逆にスカスカな印象を強く抱きます。歌はポップな感じで、前作で見せた荒々しさは控えめです。「Don’t Cry Wolf」は軽快なロックンロール。ヘヴィに反復するフレーズが耳に残ります。「One Way Love」は高速で煽るドラムとは裏腹に、キャプテンの奏でるスライドギターはまったりとリラックスした雰囲気で心地良い。キャッチーな歌も耳に残ります。「Politics」は疾走感のあるパンキッシュな1曲。ラットのドラムが弾けていて爽快です。「Stretcher Case」もヘヴィなドラムと、そしてキャプテンのベースが奏でる重低音が響きます。「Idiot Box」はシンプルなギターリフから少しずつ楽器を増やしていきます。シンバルが炸裂し、ダーティなベースもカッコ良い。終盤は展開が複雑でパンクらしくないですが、聴きごたえがあります。
 アルバム後半は「You Take My Money」で開幕。怒気を含んだようなボーカルを強調しつつ、サウンドもかなりヘヴィです。続く「Alone」はうねるようなベースの反復が強烈でカッコ良い。でもボーカルはヤケクソ気味です。シンプルなロックンロール「Your Eyes」を挟んで、「Creep (You Can’t Fool Me)」はキレのあるパンキッシュな疾走曲。ノリが良くて、自然と身体がリズムを刻みます。ラスト曲「You Know」はひたすら反復するヘヴィなリフが強烈な中毒性を持つ楽曲。サポートのロル・コクスヒルによるサックスが自由に吹いています。楽曲だけ聞くと全然パンクらしくないのですが、実験的なアプローチはパンクのDIY精神を受け継いで、ポストパンク的ですね。

 少し取っ散らかった印象は否めず、また突出した楽曲もありません。でも実験的な「You Know」とか、ポップセンスの光るいくつかの楽曲とか、いくつか聴きどころがあります。
 本作のあとラットが脱退、続いてブライアンも脱退し、1978年春にダムドは解散。しかし同年中に最速の再結成を果たします。但しブライアンは復帰しませんでした。

Music For Pleasure
The Damned
 
Machine Gun Etiquette (マシンガン・エチケット)

1979年 3rdアルバム

 1978年に再結成し、ロンドンパンクバンドでは初めて再結成を果たしたバンドになりました。デイヴ・ヴァニアン(Vo)、ラット・スケイビーズ(Dr)、ベースからギターに担当が変わったキャプテン・センシブル(Gt)、そして新メンバーのアルジー・ワード(B)の4人で再結成。作曲の大半を担っていたブライアン・ジェイムスは再結成時に復帰せず、逆にそのことがダムドの音楽性を広げることに繋がったようです。
 本作はダムドの中でも『地獄に堕ちた野郎ども』に匹敵する人気を誇る作品です。その音楽性はハードコアパンクへ影響を与えたようです。ダムドと、ロジャー・アームストロングによるプロデュース。ほどよくエコーの効いたサウンドは1980年代のサウンドに近づいていますが、前作に比べ荒々しさや勢いは削がれずスリルを与えてくれます。

 オープニングを飾る「Love Song」。アルジーのメタリックなベースソロから弾ける、ノリの良い疾走曲です。ヘヴィなサウンドですが、ポップで甘いメロディは聴きやすく、1曲目に相応しい名曲です。そのまま雪崩れ込むように始まる表題曲「Machine Gun Etiquette」はヘヴィメタルにも通じるサウンド。金属的な重さと、それでいながらスピード感のあるサウンドは、後のハードコアパンクの誕生にも影響を与えていると思います。そしてスパッと潔く終わるという。続く「I Just Can’t Be Happy Today」はキャプテンがキーボードを弾いていて、音楽性の変化を感じます。でもサウンドの荒さとポップなメロディという部分はそのまま変わらずですね。「Melody Lee」はエレピが美しい音色を奏で、バラードでも始まるかのようで一気に変えてきました。…と思わせたところで、途中から疾走パンク曲に変貌します。パンクパートはかなり攻撃性があり、鋭利なサウンドが切り込んできます。「Anti-Pope」もヘヴィなサウンドの疾走曲。キャプテンのベースソロが聴けたり、激しかったり賑やかだったりと変化するラットのドラムが聴きどころでしょう。「There Hands」はオルガンが鳴り響き3拍子のリズムが心地良い、中世のようなファンタジックな楽曲です。デイヴは高笑いしていますね。
 アルバム後半のオープニングを飾る「Plan 9 Channel 7」は、ダークなイントロから惹き込まれます。ゴシックロック的なメロディアスな楽曲で、歌は上手いわけではないものの、サウンドの雰囲気でじっくりと浸らせてくれます。そして構成も練り込まれていて、単調なロックンロールを奏でていたダムドはどこへ行った?って感じで意外な驚きを与えてくれます。「Noise, Noise, Noise」はイントロから激しいロックンロール。アルジーの強靭なベースやキャプテンの速弾きギターがカッコ良い。歌はノリが良くて賑やかなので、楽しませてくれます。続く「Looking At You」も疾走曲。勢いで圧倒するパンキッシュな楽曲ですが、長尺のギターソロを聴かせるあたりHR/HM的でもあります。「Liar」はシンプルなパンク曲。他の楽曲が結構凝っているので、元祖パンク的なシンプルなこの楽曲が意外と浮いていたり?聴いていて楽しいですけどね。そして最後に「Smash It Up Part 1 & 2」。ギターもベースもじっくり聴かせる凝ったイントロ。そしてしっとりとした雰囲気を演出するドラム。パンクバンドと思えない技術力で、メロディアスな音色に浸らせてくれます。そして後半のPart 2にあたる部分は、テンポアップして、ポップでキャッチーな歌を聴かせます。最後は楽しく締めます。

 高速でヘヴィな楽曲を軸にしながら、音楽的にも広がりを見せており、聴きごたえのある作品です。『地獄に堕ちた野郎ども』の次に聴くべき作品としてオススメできます。

Machine Gun Etiquette
The Damned
 
Phantasmagoria (ファンタスマゴリア)

1985年 6thアルバム

 ダムドがゴシックロックに転身した作品が本作です。個人的にゴシックロックが好みなのと、ファンタジックなジャケットに惹かれて聴いてみました。この頃のメンバーはデイヴ・ヴァニアン(Vo)、ラット・スケイビーズ(Dr)、ローマン・ジャグ(Gt/Key)、ブライン・メリック(B)。オリジナルメンバーはデイヴとラットだけが残っており、キャプテン・センシブルはソロ活動のため脱退したそうです(後に復帰)。デイヴはパンク時代からオールバックに白塗りの化粧でスーツという、ヴァンパイアのような格好をしていたそうですが、そんなデイヴの趣味が音楽的にも強く表れたのが本作のようです。

 オープニング曲「Street Of Dreams」がスリリングな1曲です。サポート参加のゲイリー・バーナクルによる色気のあるサックスから、バンドによるヘヴィでダークなサウンドが展開されます。ラットのドラムは荒さにメリハリをつけて、ブラインのバキバキとメタリックなベース、ギターとシンセを使い分けるローマン、そしてニューウェイヴ特有のダンディズムを強調したようなデイヴのボーカル。パンクバンドだった頃からは様変わりしたサウンドですが、これがとてもカッコ良いんです。「Shadow Of Love」はベースがサウンドの軸を組み立て、ギターはエコーをかけて御像がぼやけています。ダークファンタジー的なサウンドに乗る、デイヴのダンディな歌声が渋い。「There’ll Come A Day」もエコーが効いていて、ダークでひんやりとした空気感のあるサウンド。浮遊感もあるのですが、シンセ等によって冷たく暗鬱な、でも耽美な印象を抱きます。続く「Sanctum Sanctorum」は雷鳴や雨音のSEと、悲壮感のあるパイプオルガンによってイントロからダークな雰囲気全開です。そして静かでダウナーな歌が始まり、リズムチェンジを交えて大仰に盛り上げたりと、ドラマチックな展開は聴きごたえがあります。アルバムの折り返し地点となる「Is It A Dream」は、前半のダークな楽曲群の重たい空気を少しずつ取り払うかのように、比較的明るく爽やかな印象です。続く「Grimly Fiendish」は更に明るく、リズミカルでキラキラとしたサウンドで盛り上げます。ですがデイヴの低い歌声のせいか、飛び抜けた明るさの中にどこか影を引きずっているような感じもあります。「Edward The Bear」はローマンがボーカルを取る1曲。ポップで甘いメロディと、ヘタウマだけどほのぼのとした歌声に癒されます。続いて「The Eighth Day」。イントロでメロウで影のある雰囲気を出しますが、歌が始まるとテンポアップしてノリの良いポップな楽曲に変貌します。演奏は程よい緊迫感を放ちますが、甘くてメロディアスな歌メロに癒されます。ラスト曲「Trojans」は神秘的なサウンドに浸らせてくれるインストゥルメンタル。後半のサックスがメロウでこれがよい。終盤はスリリングな演奏で魅せてくれます。

 サウンド的にはパンクではないので、パンクバンドとしてのダムドを期待して聴くと期待外れかもしれません。ですがゴシックロックとしては傑作で、特に前半のダークでファンタジックな楽曲はとてもカッコ良いです。また、ダムドの元々持っていたポップセンスが良い具合に表現されていると思います。

Phantasmagoria (Expanded Edition)
The Damned
 
 
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