🇬🇧 The Smiths (ザ・スミス)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

The Smiths (ザ・スミス)

1984年 1stアルバム

 英国で絶大な人気を誇るバンド、スミス。モリッシー(Vo)、ジョニー・マー(Gt)、アンディ・ルーク(B)、マイク・ジョイス(Dr)の4人組で1982年に英国マンチェスターで結成しました。ニューヨーク・ドールズのファンクラブを立ち上げた、定職に就かないライターだったモリッシー。そんなモリッシーの読者でもあったミュージシャンのジョニー・マーがモリッシーに声をかけて結成したそうです。
 スミスが凄いのは、不良の音楽というかスクールカーストの頂点に立つ者の音楽だったロックを、定職に就かないゲイというスクールカースト最底辺のモリッシーが歌ったこと。サッチャー政権下の英国で、不況や失業に苦しむ若者たちに大いに希望を与えました。また、カッコ悪いことがカッコいいという考えが広まり、オルタナティヴロックの素地を作りました。

 「Reel Around The Fountain」で、静かに穏やかに幕を開けます。エコー処理をかけたドラムが奥行きを感じさせ、でもシンプルなサウンドにどことなく寂寥感があります。続く「You’ve Got Everything Now」では、ベースとドラムがグルーヴィなサウンドを演じ、とても躍動感のある1曲です。3曲目「Miserable Lie」も、途中で加速してノリの良いサウンドを奏でますが、モリッシーのボーカルはあまりノっていない気が。そしてノってきたかと思えばファルセットで延々歌い続けるという、なんというかズレています。笑 でも良くも悪くもこれが妙に耳に残ります。そしてシングルカットされた6曲目「This Charming Man」、これが本作では出色の出来で、僅か3分にも満たない短い曲ですが印象深いです。イントロから惹きつけるノリの良いサウンドをバックに、モリッシーのなよなよしたボーカルが乗ります。そしてPVでは花束をぶんぶん振り回すモリッシー、これが結構インパクトがあります。笑 続いてアコースティックギターがあまりにも美しい「Still Ill」、これは伸びやかに歌うボーカルともうまくマッチしていて聴き心地が良いです。「Hand In Glove」シリアスな空気を纏い、本作の中では比較的ハードな印象を受ける1曲です。続く「What Difference Does It Make?」もハードな1曲です。

 楽曲の出来にはばらつきはあるものの、全編を通して繊細で美しいギターが聴けます。でもそれが必ずしも癒しとならないのは、モリッシーの独特の歌唱もあるかもしれません。アンマッチ感もありますが、不思議と惹きつけます。

The Smiths (Remastered)
The Smiths
 

Meat Is Murder (ミート・イズ・マーダー)

1985年 2ndアルバム

 「食肉は殺人だ」と強烈なタイトルが付いた本作ですが、これは菜食主義者であるモリッシーからのメッセージ。攻撃的なタイトルに比例してか、スミスの全作品で最もハードな1枚に仕上がっています。とはいえハードロック的なわけではないので、ハードというよりも「ロックの躍動感を感じられる」と評価した方が適切でしょうか。小気味よいギターカッティングに、リズム隊も加えて爽やかなサウンドを奏でていますが、そこに陰を落とすのは脱力感のあるモリッシーの歌唱によるところも大きいかなと思います。ヘロヘロで、およそロックに似つかわしくないボーカルですが、この不思議な化学反応が意外とクセになったり。
 英国ではメインストリームがニューロマンティック勢をはじめニューウェイヴ全盛期で、米国ではハードロック/ヘヴィメタルが猛威を振るう中、正統派ロックを奏でる数少ない存在としてスミスは人気を誇りました。本作はオリジナルアルバム唯一の全英1位獲得作品です。 

 イントロからものすごい求心力のある「The Headmaster Ritual」で一気に引き込まれます。グルーヴィなベースとノリの良いドラムに躍動感があります。なよなよしたモリッシーのボーカルは異質ですが、でも魅力的に感じるオープニング曲です。「Rusholme Ruffians」では小気味よいギターに、ブイブイ鳴るベースが特に印象的。躍動感のある「I Want The One I Can’t Have」を挟み、小気味良いエレキギターと手数の多いドラムがハードなサウンドを生み出す「What She Said」、そして一気にトーンを落として「That Joke Isn’t Funny Anymore」では静かに、陰鬱な歌をモリッシーが歌います。ラストはあまりに美しい。続いてシリアスな空気を感じる「How Soon Is Now?」。ピンと張り詰めた緊張感溢れる重たい1曲ですが、これはCD再発時に追加された1曲だそうです。その重たい空気を吹き飛ばすかのようなアップテンポ曲「Nowhere Fast」。アコギが繊細な音色を奏でますが、陰鬱な空気を纏う「Well I Wonder」。耳に残るフレーズを刻むギターと、グルーヴ感溢れるリズム隊がめちゃめちゃカッコいいのですが、奇声を上げるボーカルが少し異質な「Barbarism Begins At Home」。そしてラスト曲「Meat Is Murder」では牛の鳴き声から始まります。悲しげな音色を奏でるピアノ、そしてどうしようもなく陰鬱な雰囲気…暗すぎるラストです。

 次作の方が最高傑作に挙げられることが多いですが、最初の1枚として聴くには、取っつきやすさは本作の方が上だと思います。

Meat Is Murder (Remastered)
The Smiths
 
The Queen Is Dead (ザ・クイーン・イズ・デッド)

1986年 3rdアルバム

 スミスの最高傑作と名高い作品です。例に漏れず、私も本作を最高傑作として推します。
 演奏や歌唱にそこまで攻撃性はないのですが、王室を批判したり孤独の絶望感をうたう歌詞が、不況に苦しみフラストレーションを溜めた若者たちの心を代弁する存在として、絶大な支持を得たようです。

 ジョニー・マーのクリアなギターサウンドに、モリッシーの陰のある脱力ボーカル。同じマンチェスターの後輩(結成年でいうとほぼ同輩)のストーン・ローゼズも似たようなスタイルが継がれていますが、あちらの方が透明感溢れるサウンドに仕上がっているのに対して、スミスはモリッシーの女々しくなよなよした感じが、透明感のあるサウンドにアンマッチな気もします。どちらも好きなんですけどね。
 ジャケットアートで横たわる写真は俳優のアラン・ドロン。モリッシーが彼のファンだそうです。

 「The Queen Is Dead (Take Me Back To Dear Old Brighty)」で始まります。タイトルからして強烈。1962年の映画「The L-Shaped Room」からの短い引用が流れたあと、エコーの効いたドラムが始まりを告げます。唸るベース、そしてギターもとても痺れます。なよなよボーカルですが、かなり力のこもった歌唱です。めちゃめちゃカッコいい1曲です。続く「Frankly, Mr. Shankly」は語感がとても良く、またリズミカルでなかなか愉快な印象です。しんみりとして静かな1曲「I Know It’s Over」は、ジョニー・マーの繊細なアコギが美しい。モリッシーの歌が切なげで、後半に向け徐々に盛り上がりますが、感情的な歌唱がとてもドラマチックです。そして陰鬱な「Never Had No One Ever」では救いがないくらい暗い。流れを少し変え「Cemetry Gates」では暗闇から抜けたような明るさ。でも底抜けに明るいわけではなく、そこには哀愁を感じます。そしてアップテンポ曲「Bigmouth Strikes Again」。これも非常にカッコいい1曲です。小気味良いギターがチャカチャカ鳴り、躍動感あるリズム隊。サビのヘリウムを吸ったかのようなコーラスが妙に耳に残ります。「The Boy With The Thorn In His Side」で明るくも切なさを纏ったメロディ。そしてテンポアップしてノリの良い「Vicar In A Tutu」。続いて「There Is A Light That Never Goes Out」はストリングスも加わり、あまりに美しくそして切ない1曲です。「もし二階建てバスが突っ込んできても、君のそばで死ねるならなんて最高の死に方だろう」と、なんと悲しい歌詞なのでしょうか。「Some Girls Are Bigger Than Others」でノリの良いサウンドに淡々として暗いボーカル。これがラスト?という感じもします。

 疾走感と緊張感のある「The Queen Is Dead (Take Me Back To Dear Old Brighty)」と「Bigmouth Strikes Again」が特に好みですが、全体的にはアコースティックを基調として、比較的ゆったりした楽曲が多めです。「There Is A Light That Never Goes Out」も美しいんですよね。楽曲は全体的に陰鬱で、アップテンポで明るい楽曲についても哀愁や寂寥感を振り払いきれておらず、どことなく暗さを纏っています。

左:ジャケットが一新されたデラックス・エディション。
右:通常ジャケット。

The Queen Is Dead [3CD+DVD BOX] (2017 Remastered)
The Smiths
The Queen Is Dead (Remastered)
The Smiths
 
Strangeways, Here We Come (ストレンジウェイズ・ヒア・ウィ・カム)

1987年 4thアルバム

 モリッシーとジョニー・マーの関係が悪化し、結果的に本作を最後に1987年、スミスは解散することになりました。
 ラストアルバムとなる本作は、これまでの3作品からの変化を感じます。これまでほぼ全ての楽曲をジョニー・マーが作曲し、モリッシーが作詞を担当してきました。それは変わらずなのですが、2人の関係性の悪化も少なからず影響しているのではないかと思います。繊細なアコースティックギターからエレキギター主体になった曲もいくつか見られ、曲作りもゴージャスになった感もあります。

 「A Rush And A Push And The Land Is Ours」で始まりますが、モリッシーが野太く唸る部分が良くも悪くも印象に残ります。「I Started Something I Couldn’t Finish」ではハードロック的なエレキギターが鳴り、何事かと思いました。ドラムのリズムにしても、これまでのスタイルからの大きな変化です。これはこれで出来は良いのですが、スミスの繊細さを捨ててしまったようで個人的には軽い拒否反応を覚えました。「Girlfriend In A Coma」にて、ようやく繊細なこれまでのテイストを感じられます。また、絶望的に暗い「Last Night I Dreamt That Somebody Loved Me」はインパクトがありますが、少し過剰演出気味。繊細さが失われてしまったようです。そんななか「Unhappy Birthday」はシンプルなサウンドで、明るくはないもののリズミカルで好みの1曲です。続く「Paint A Vulgar Picture」も、憂いを帯びた明るさというか、これまでのスミスらしい佳曲。「Death At One’s Elbow」では妙にコミカルな雰囲気が出ています。そしてラスト曲はシンプルに美しいアコギが奏でられる「I Won’t Share You」で終えます。

 いくつかの楽曲で見られる過剰演出気味なサウンドがどうにも馴染めず、またそこまで強烈な楽曲もないため、個人的にはほとんど聴くことがありません。でもメンバー4人それぞれお気に入りとして本作を挙げているんだとか。

 僅か5年の活動期間でしたが、ロック界に大きな影響を与えました。

Strangeways Here We Come (Remastered)
The Smiths
 
 
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