🇺🇸 The Stooges (ザ・ストゥージズ)

レビュー作品数: 3
  

スタジオ盤

The Stooges (イギー・ポップ・アンド・ストゥージズ)

1969年 1stアルバム

 ストゥージズは米国ミシガン州出身のガレージロックバンドです。1967年に、イギー・ポップ(Vo)、ロン・アシュトン(Gt)、スコット・アシュトン(Dr)、デイヴ・アレクサンダー(B)の4人で結成。フロントマンのイギー・ポップを冠してIggy And The Stooges (イギー・アンド・ザ・ストゥージズ)、Iggy Pop & The Stooges (イギー・ポップ・アンド・ストゥージズ)とも呼ばれます。このストゥージズとは「ボケ役達、笑われもの達」という意味。過激なパフォーマンスと激しい音楽で、パンクの元祖とも言われています。
 本作はヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがプロデュースしています。しかしジョン・ケイルのミックスが気に入らなかったようで、イギーはリリース前にギター音を上げたのだとか。

 「1969」でスッカスカで淡々とした音楽が始まったかと思えば、途中から加わる荒々しいギターの音色。最後の一瞬の絶叫にイギー・ポップの本性が見えたような気がします。「I Wanna Be Your Dog」でギターをはじめとして音の悪い荒々しいサウンド。そして10分に渡る大作「We Will Fall」は長いわりに場面展開はなく冗長気味。ただ、オリエンタルな異国風の香りがする怪しいサイケデリックな楽曲です。そして「No Fun」ではツインギターが荒々しいサウンドを奏でて、発狂するかのように叫び散らすイギー。激しい1曲で強烈です。「Real Cool Time」でも、歪んでメタリックなギターが際立ちます。グワングワン唸っています。「Ann」は終盤でイギーが叫んでから暴力的なサウンドに。もっと続けば良いのですが、あっさり終わります。実は元々7分以上の楽曲だったのをばっさり切ったようですね。そして「Not Right」はベースとドラムがクールでカッコよく、ヘヴィなギターも印象深いです。そして「Little Doll」もカッコいいリズム隊で始まり、荒いギターが強烈。

 サイケデリックロックの要素とガレージロックの要素を合わせ持つ作品です。しかし後の作品に比べると、メロディが弱い印象があります。

The Stooges (Deluxe Edition)
The Stooges
 
Fun House (ファンハウス)

1970年 2ndアルバム

 本作のみスティーヴ・マッケイがサックスプレイヤーとして参加しています。この頃メンバーチェンジが激しく、デイヴ・アレクサンダー(B)はアルコール中毒で演奏できないほどだったため本作のあと解雇。その後、ジーク・ゼトナー、ジミー・レッカとベーシストは転々。そのためロン・アシュトンがギターからベースに持ち替えることになりました。またビリー・チータムが2人目のギタリストとして加入するも、同年ジェームズ・ウィリアムソンに変更。またロン・アシュトンを除いたメンバーがヘロイン中毒に陥ってしまい、しばらく活動休止になってしまいます。
 そんなゴタゴタのあった本作は混沌という言葉が似つかわしい作品で、後半に進むにつれて収拾がつかなくなっていく印象です。ドン・ガルーチのプロデュース。

 「Down On The Street」から音質の悪いサウンドをバックにイギー・ポップが吠えます。続く「Loose」でスピード感を増します。この辺はそれでもまだまともな方ですが、「T.V.Eye」はイギーの絶叫から始まります。絶叫した挙げ句に咳き込む音まで入っているカオスな感じ。尋常でない空気を感じますが、そんな中で何気にベースがカッコいい1曲です。続いて7分に渡る「Dirt」。前曲と同じくベースが光る楽曲で、ギターはメタリックなサウンドを奏でます。「1970」ではひたすら反復される単調なギターリフをバックに、イギーの歌はどんどんと激しさを増していきます。そしてサックスまで現れて激しくアツい演奏。しかし混沌極まります。8分近い「Fun House」はサックスが主導するフリージャズ的な要素を持つ1曲です。歪んだギターがサックスに張り合っていて、イギーも吠える…とても混沌とした1曲です。そしてその混沌を更に極めたラスト曲「L.A. Blues」。もうめちゃくちゃで、曲として成り立っていません。

 混沌とした作品ですが、多くのバンドにカバーされており人気も高い作品です。ただ個人的にはイマイチでした…。

Fun House
The Stooges
 
Raw Power (ロー・パワー(淫力魔人))

1973年 3rdアルバム ※Iggy And The Stooges (イギー・アンド・ザ・ストゥージズ) 名義

 ジャケットを飾るイギー・ポップは写真家のミック・ロックによるものですが、この写真が捉えたようにイギーはステージ上でも上半身裸だったそう。一見すると鍛え上げられた肉体美を惜しげもなく披露するイケメンですが、ステージではナイフで自身を刻んだり、ガラスの破片の上を転がったりと奇行に走る過激なパフォーマーだったようです。
 そして本作はスピーカーがぶっ壊れたのではないかと思うような、あまりに狂暴で破壊的なサウンドなので衝撃的です。叫び散らすというか咆哮という表現が合いそうな激しいボーカルに、時に金切音をあげる乱雑なギター。そしてあちこちで音の割れたあまりに耳障りなサウンド。後発のパンクバンドよりもよっぽど攻撃的で、破壊力があります。ちなみにプロデューサー兼サウンドミックスはデヴィッド・ボウイが担当しましたが、後に大人しすぎるということでイギー自身でミックスをし直しました。音量を最大まで上げたとのことで、音の割れた荒々しいサウンドに圧倒されます。なおデヴィッド・ボウイのミックスしたものはレガシーエディションという形で聴くことができます。Spotifyで聴き比べると、デヴィッド・ボウイのミックスの方がボーカルをフィーチャーしている感じで、イギーのミックスはバンドサウンドを重視している印象を受けます。私の持っている音源がイギーミックスなので、こちらをレビューします。あまりに酷い音質ですが、前2作に比べるとキャッチーなメロディで、音の悪さの割には意外と聴きやすかったりもします。

 音の割れた「Search And Destroy」で強烈なオープニング。サウンドは酷く荒々しいんですが、キャッチーさがあります。「Gimme Danger」ではアコースティックギターで、大人しいスタート。しかし後半はやはり荒れたサウンドを聴かせます。続いて、音質劣悪でサウンドが爆裂している「Your Pretty Face Is Going To Hell」。これがノリノリなロックンロールで、あまりに酷く汚い耳障りな音なのに、何故か楽しい気分にさせてくれるのです。そして違和感の塊とも言うべき「Penetration」。荒々しいサウンドに不釣り合いな綺麗なグロッケンのような音色。これはチェレスタという楽器だそうで、イギーが弾いています。そしてボーカルは囁くような歌い方を大音量で流すので、色々とすっきりしないフックを引っ掻けます。
 アルバム後半に入り「Raw Power」はメタリックなサウンドが耳に残ります。序盤のキンキン鳴る音や、終盤のギターの金切音が強烈な表題曲です。「I Need Somebody」はゆったりとしたテンポで進みますが、ギターの金切音が凄まじい。異様なハイテンションで叫び散らすロックンロール「Shake Appeal」、そして耳障りなサウンドの「Death Trip」で終えます。

 サウンドもパフォーマンスに見るエピソードも、あまりにぶっ飛んでいる。滅多にない壊れ具合だからこそ、嫌悪ではなく逆に魅かれてしまう、そんな作品です。
 そしてストゥージズはイギーのヘロイン中毒などもあり1974年に解散します。イギーはデヴィッド・ボウイの力添えもあってソロで復活し、商業的な成功を手にします。そして2003年にストゥージズは再結成を果たすことになるのでした。

左:イギー・ポップによるリミックス。
右:デヴィッド・ボウイのミックスしたレガシーエディション。

Raw Power
Iggy And The Stooges
Raw Power (Legacy Edition)
Iggy And The Stooges
 
 

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 ストゥージズ解散後のソロ活動。

 
 
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