🇬🇧 The Teardrop Explodes (ティアドロップ・エクスプローズ)
レビュー作品数: 1
スタジオ盤
1980年 1stアルバム
ティアドロップ・エクスプローズはイングランドのポストパンク/ネオサイケバンドです。1978年に結成し、1982年に解散と短命なバンドでした。
イアン・マッカロク、ピート・ワイリー、ジュリアン・コープの3人で結成したバンド、クルーシャル・スリー。このバンドは長続きせず3人はバラバラに活動を始めますが、この3名をリヴァプール御三家とかネオサイケ御三家とか呼ぶようです。イアン・マッカロクはエコー&ザ・バニーメンを結成、ピート・ワイリーはWah!というバンドからソロプロジェクトへ移行しますが、残るジュリアン・コープ(Vo/B)擁するバンドがティアドロップ・エクスプローズです(バンド名はマーベルコミック『デアデビル』より)。ジュリアンに加えゲイリー・“ロッキー”・ドワイヤー(Dr)、ポール・シンプソン(Key)、ミック・フィンクラー(Gt)の4人で1978年に結成。ポールが翌年脱退しデヴィッド・バルフェ(Key)に交代、また1980年にはミックを解雇してアラン・ギル(Gt)が加わっています。
アルバムは「Ha Ha I’m Drowning」で幕開け。ゲストミュージシャンのノーマン・スミスとレイ・マルティネスによる華やかなトランペットと、ジュリアンの存在感あるベースが楽曲をリードします。楽曲はキャッチーな印象ですが、ジュリアンの歌声にはキャッチーさが若干足りないかも。フェードインで始まる「Sleeping Gas」もトランペットが華やかに開幕を告げます。ギターやオルガンが幻覚的で不安を煽る不協和音を奏でながら、淡々としたリズムと抑揚のないメロディが不思議な中毒性を生みます。「Treason」は哀愁の歌メロがどこか古臭くて垢抜けない雰囲気です。シンセの彩りも時代を感じますね。「Second Head」は疾走感のあるリズム隊やシリアスな歌によって緊張を高めます。歌も演奏もうまくはないものの、怪しげな演奏は嫌いではありません。「Poppies In The Field」は輪郭のくっきりしたベースを主軸に、サイケ色の強いギターが幻覚的な感覚を生み出します。ベースラインが強く耳に残り、中毒性があるんですよね。
ここからアルバム後半。「Went Crazy」は刺さるようなトランペットで幕を開けると、どこか古臭さを感じさせつつもノリの良いベースがグルーヴで楽しませてくれます。途中エキゾチックな香りもうっすら漂います。「Brave Boys Keep Their Promises」はノリの良い楽しげなリズム隊と、払拭しきれない暗さが入り混じって、怪しげな雰囲気を醸し出します。「Bouncing Babies」はやや悲壮感のある演奏と、下手すぎて暗さが伝わらないジュリアンの歌が妙に可笑しいです。途中のドラムパターンが耳に残りますね。続く「Books」は元々は前身となるクルーシャル・スリーの楽曲で、エコー&ザ・バニーメンも「Read It In Books」というタイトルで発表しています。ベースが強い存在感を放ち、ホーンが華やかに彩っています。「The Thief Of Baghdad」はデヴィッドのひんやりとしたシンセサイザーが存在感を放ちます。東洋風の香りも漂う、怪しげで神秘的な雰囲気。時折ドラムが引き締めます。ラスト曲「When I Dream」はキーボードがペコポコと楽しげな音を鳴らし、語感の良い歌を幾重にも重ねてエコーをかけて幻覚的な雰囲気を演出。中毒性があります。タムタムを鳴らすドラムも心地良い。但し終盤には不協和音も響かせ、ダークな側面も内包しています。
全体的に垢抜けないのですが、中毒性の高い楽曲がいくつか入っていて侮れません。名盤と推すほどではありませんが、この時代特有の面白さがあって中々悪くないです。
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ジュリアン・コープの古巣クルーシャル・スリーより、元メンバーのイアン・マッカロクが結成。
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