🇮🇪 Thin Lizzy (シン・リジィ)

レビュー作品数: 4
  

スタジオ盤

Jailbreak (脱獄)

1976年 6thアルバム

 アイルランドの国民的ロックバンド、シン・リジィ。創設メンバーの2人、フィル・ライノット(Vo/B)とブライアン・ダウニー(Dr)を中心に1969年に結成されました。アイリッシュフォークとロックを融合した演奏スタイルを展開、メンバーチェンジを経ながら1974年にはゲイリー・ムーアがレコーディング参加するも、同年中に脱退。その後ブライアン・ロバートソン(Gt)とスコット・ゴーハム(Gt)が加わり、フィルとブライアンと合わせた4人体制、そしてシン・リジィの特徴でもあるツインリードギター体制がここに確立しました。
 本作はシン・リジィの名を広めたヒット作で、全英10位、全米18位を獲得。代表曲も多く詰まった好盤です。ジョン・オールコックのプロデュース。

 表題曲「Jailbreak」で開幕。シンプルながら骨太なリフは耳に残りますね。フィルのしゃがれた歌声も渋くてカッコ良いです。「Breakout!」の掛け声とともに緊迫感を増す後半の展開も良い。オープニングに相応しい名曲です。「Angel From The Coast」はファンキーな楽曲で、軽快なノリで楽しませてくれます。後半のチャカチャカ鳴るギターや躍動感のあるドラムが爽快です。「Running Back」はまったりとした雰囲気で、エレピやサックスが落ち着いたムードを演出。それをヘヴィなギターが引き締めます。フィルの歌は語りのような感じですね。「Romeo And The Lonely Girl」はフィルの渋くてメロディアスな歌が印象的です。また演奏は跳ねるように軽快で、エレキとアコースティックを織り交ぜたギターに加え、ブライアンの刻むビートが心地良い。「Warriors」はメロディが弱い分、ギターやベースが繰り広げるハードな演奏がカッコ良い1曲です。間奏ではキンキンとしたギターソロからのドラムソロ展開がスリリングで楽しめます。
 レコード時代のB面、アルバム後半は「The Boys Are Back In Town」で幕を開けます。ノリノリな演奏のおかげで自然と身体がリズムを取ってしまいます。渋いながらも比較的キャッチーな歌メロも魅力的で、取っつきやすい楽曲ですね。「Fight Or Fall」は渋くてまったりとした空気の中に、郷愁や懐かしさのような憂いが漂います。落ち着いたギターソロにも癒やされますね。派手さはありませんが中々魅力的です。「Cowboy Song」では音数少なく静かで穏やかな歌を聴かせますが、存在感のあるベースとともにテンポアップ。骨太なリフを響かせながら哀愁漂う歌を披露。この歌がまた渋くて良いんです。そしてツインリードギターがメロディアスな音を聴かせたり、5分強の演奏時間に様々な顔を見せてくれます。最後に名曲「Emerald」が控えます。3連符を駆使したヘヴィでスリリングな演奏で、手数の多いドラムは緊張を高め、ギターは口ずさみたくなるような耳に残るフレーズを繰り広げます。そしてどんどんテンションが高まっていき、ギターはエモーショナルに、ドラムはダイナミックに聴かせます。これは痺れますね。

 ライブでこそ真価を発揮するバンドではありますが、スタジオ録音も質は高く、何より名曲が多いのでオススメできる作品です。

Jailbreak
Thin Lizzy
 
Black Rose: A Rock Legend (ブラック・ローズ)

1979年 9thアルバム

 8thアルバム『バッド・レピュテイション〜悪名』、ライブ盤『ライヴ・アンド・デンジャラス』リリース後にブライアン・ロバートソン(Gt)が脱退。その後ゲイリー・ムーアがメンバーに正式加入します。ですが本作リリース後のツアー中に、バンド内トラブルが原因でゲイリーが失踪したことから一作限りのラインナップとなりました。人気の高い作品で、スタジオ盤最高傑作の呼び声も高いです。デヴィッド・ボウイらを手掛けたトニー・ヴィスコンティのプロデュース。

 オープニング曲「Do Anything You Want To」は、イントロからいきなりフィル・ライノットのベースとブライアン・ダウニーがダイナミックで躍動感のあるビートを刻みます。そしてノリノリの演奏にツインリードギターが絡みますが、これがメロディアスで魅力的なんです。続く「Toughest Street In Town」は爽快なロックンロール。疾走感のある演奏にキャッチーな歌メロは爽やかですね。間奏ではハードなギターソロを展開、これでもかと見せつけてきます。「S & M」はファンキーな楽曲。抜群のグルーヴ感を持つ演奏に乗せて、女性コーラスや漢臭い野太い喘ぎなど色気に満ちた(?)楽曲です。そしてずば抜けた名曲「Waiting For An Alibi」。ブイブイ唸るベースに気を取られていると束の間、とてもメロディアスなギターに魅せられるんです。ゲイリーとスコット・ゴーハムの織り成すツインギターが耳に残る良質なフレーズを奏でてくれます。そして歌メロもキャッチーで、これまた強く印象に残るんですよね。個人的にはシン・リジィで一番好きな楽曲です。「Sarah」はスリリングな前曲とは対照的に、まったりとリラックスできるバラードです。優しいこの楽曲は、フィルが、生まれたばかりの自分の娘について歌ったのだとか。
 アルバムは後半に入ります。「Got To Give It Up」は骨太だけど哀愁も漂う楽曲です。ヘヴィなリフはパンチがあり、またフィルの歌もドスが利いています。アウトロでの泣きのギターソロも良いですね。「Get Out Of Here」は勢いのある疾走曲で、硬質なベースがとてもカッコ良い。緊張感のある演奏で駆け抜け、サビで爽やかに弾ける感じ。終盤のテンションの高さもスリリングで楽しいです。続く「With Love」は演奏は力強いですが、歌はメランコリックで哀愁に満ちています。泣きのギターソロも良い。そしてラストはタイトル曲「Róisín Dubh (Black Rose): A Rock Legend」。アイルランド民謡をベースにした複数の楽曲から成る組曲で、全4部・トータル7分に渡ります。開幕は3連符を少しトリッキーにした演奏で、力強くもメロディアスなフレーズとフィルの渋い歌は郷愁を誘います。2分半頃からメロディが変わり、民謡をアレンジした演奏を披露。4分過ぎからテンポアップし、速弾きを駆使したスリリングな演奏バトルが勃発。5分過ぎからフィルの伸びやかな歌が入り、序盤のフレーズが舞い戻ってきて組曲の終わりを感じさせると、スリリングな演奏とノスタルジックな歌で楽曲を締め括ります。

 彼らの魅力の一つであるメロディアスな側面も勿論ありますが、本作は疾走曲の割合が多くて取っつきやすいです。ブイブイと存在感のあるベースもカッコ良くて魅力的です。

Black Rose: A Rock Legend
Thin Lizzy
 
Thunder And Lightning (サンダー・アンド・ライトニング)

1983年 12thアルバム

 ジョン・サイクスが参加したことで知られるシン・リジィのラストアルバムです。『ブラック・ローズ』リリース後にバンド人気は低下、メンバーからフィル・ライノットへ解散の提案がされていましたが、NWOBHMムーブメントに光明を見出したフィルはジョンを引き入れて起死回生を図ります。
 最終ラインナップはフィル・ライノット(Vo/B)、ブライアン・ダウニー(Dr)、スコット・ゴーハム(Gt)、ダーレン・ワートン(Key)、そしてジョン・サイクス(Gt)。プロデューサーにはクリス・ダンガリーディス。

 アルバムは表題曲「Thunder And Lightning」で幕開け。ヘヴィなサウンドで疾走するヘヴィメタル曲です。ドラッグにまみれたフィルの歌は苦しそうですが、エッジの効いた切れ味抜群の演奏は非常に高いテンションを保っていてとてもスリリング。ジョンによるギターソロも、キンキンとしてメタリックな速弾きでカッコ良いです。「This Is The One」はブライアンのリズミカルなドラムが爽快。サビメロは彼ららしくメロディアスなのですが、1980年代ヘヴィメタル特有のギラついた演奏によって渋さは薄らぎました。「 The Sun Goes Down」は6分を超える楽曲。哀愁漂う楽曲で、比較的シンプルで落ち着いたサウンドと憂いのある歌声が切なさを誘います。フィルの骨太なベースや、スコットによるギターソロがカッコ良い。「The Holy War」はこれまたカッコ良い楽曲。シリアスな雰囲気で、メリハリの効いた演奏を聴いていると気が引き締まります。ピリピリした空気が支配する中、響き渡るギターソロは鳥肌もののカッコ良さ。
 「Cold Sweat」は本作中唯一ジョンがペンを取った楽曲です。明快なロックンロールで、メロディは若干弱いものの、ノリの良さや自己主張の激しいギターのカッコ良さでグイグイと牽引します。清涼飲料水のように爽快です。「Someday She Is Going To Hit Back」はシンバルが炸裂する重苦しいイントロを経て、躍動感溢れる疾走ロックンロールを展開。全体的にブライアンのドラムが強烈で、またダーレンのキーボードソロやジョンのギターソロなど、激しく火花を散らす演奏は聴きごたえがあります。「Baby Please Don’t Go」はダーティでリズミカルなロックンロール。フィルの歌は苦しそうで痛々しいですが、演奏はとてもアグレッシブで、特に後半怒涛のギターソロが強烈です。「Bad Habits」はギラギラとメタリックな楽曲が並ぶ本作において唯一、これまでのシン・リジィを感じさせるキャッチーなハードロックナンバー。ギターも比較的優しい雰囲気です。そしてラスト曲「Heart Attack」は疾走ロックンロールで締めます。グルーヴィな重低音が効いていて、リズムビートも爽快です。

 ドラッグでヘロヘロなフィルの歌を若々しい演奏でカバー。メタリックでギラギラしたサウンドはこれまでのシン・リジィとはまるで別物ですが、ジョン・サイクスによるとてもカッコ良いギターソロが随所で聴けます。ホワイトスネイクの『白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス』を求める人にオススメできる作品ですね。
 本作後のライブをもってシン・リジィは1983年に解散しました。そして1986年にはフィル・ライノットがヘロイン摂取による敗血症で急死するという悲劇が襲います。1996年には残ったメンバーを中心に再結成を果たすも、オリジナルアルバムはリリースしていません。

Thunder And Lightning
Thin Lizzy
 
 

ライブ盤

Live And Dangerous (ライヴ・アンド・デンジャラス)

1978年

 HR/ HM界隈にはスタジオ録音を遥かに上回る出来・迫力の名ライブ盤がいくつもありますが、本作も巷での評価が特に高い傑作ライブ盤です。7thアルバム『サギ師ジョニー』リリース後のツアー模様を収録したライブ盤で、メンバーはブライアン・ロバートソン(Gt)、スコット・ゴーハム(Gt)、フィル・ライノット(Vo/B)、ブライアン・ダウニー(Dr)。また、デヴィッド・ボウイT・レックスを手掛けたトニー・ヴィスコンティがプロデュースしています。

 観客の熱狂に包まれて「Jailbreak」で幕開け。フィルのヘヴィなベースリフと、ブライアンの躍動感あるドラムがテンションを高めていきます。渋い歌声もカッコ良いですよね。後半ギターソロを聴かせた後、観客の手拍子が加わって臨場感に溢れています。ライブ1曲目からワクワクさせてくれます。「Emerald」はトリルを駆使したパワフルな演奏が魅力的。特にドラムや重低音の響きが凄くて、スタジオ録音よりも数段上の迫力です。ブライアンとスコットのツインギターが絡み合うソロパートも非常にスリリング。続く「Southbound」はイントロからメロディアスなツインギターを美しく響かせます。歌は渋くて憂いを帯びています。「Rosalie / Cowgirl’s Song」はイントロからキレのあるギターがザクザク切り込んできます。跳ねるようなビートも爽快。歌よりも演奏に耳を奪われますね。そして「Dancing In The Moonlight (It’s Caught Me In Its Spotlight)」はリズミカルな楽曲。ノリは良いもののどことなく哀愁が漂っており、そこにサポートのジョン・アールがメロウなサックスを吹いて渋さを増しています。続く「Massacre」アイアン・メイデンがカバーしたことで知られる1曲。ダイナミックなドラムとメロディアスなツインギターが高揚感を誘います。凄まじい緊張に満ちた疾走曲で、シリアスな雰囲気の歌はシャウト気味で焦燥感を煽るよう。とてもスリリングでカッコ良いです。続く「Still In Love With You」で一気に哀愁ムードに。スローでメロディアスなバラードで、フィルの歌が渋くて良いメロディなんです。間奏のギターソロも胸に染みる好演で、思わずため息が出てしまいます。「Johnny The Fox Meets Jimmy The Weed」でまた雰囲気を変え、ファンキーで躍動感のあるビートに乗せて語りのような歌を披露します。終始ファンクのグルーヴィなノリが続く心地良い楽曲です。「Cowboy Song」は牧歌的で素朴な歌で開幕。そこからバンド演奏が加わって一気に高揚感を煽ります。ノリノリのロックンロールですが、渋い声で歌うフィルの歌やギターの奏でるメロディはメロディアスで憂いを帯びています。そのままリズミカルな「The Boys Are Back In Town」が続きます。キャッチーなメロディは耳に残りますね。間奏でのダイナミックな演奏や、歌うようなベースラインもカッコ良いです。続いて2分強という本作最短の楽曲「Don’t Believe A Word」。これもリズミカルな演奏が楽しい楽曲で、間奏ではギターソロを堪能できます。「Warriors」は骨太な演奏がカッコ良く、ギターに負けじとヘヴィなベースが際立ちます。歌よりも演奏メインの楽曲で、中盤火花を散らす演奏バトルはとてもスリリング。そして「Are You Ready」はスリリングな疾走曲。細かく刻むリズムギターとベースが緊張を高め、勢いのある演奏はグイグイと引っ張っていきます。続く「Suicide」ではテンポは落とすものの、跳ねるようなビートでリズミカルな演奏を展開。ブライアンのドラムのノリが良くて爽快です。「She La La」はベースとドラムが畳み掛けるかのように焦燥感を煽り、ギターはファンキーな音を奏でています。また、終盤には強烈なドラムソロをぶち込んで、スリリングな演奏で楽しませてくれます。続いて「Baby Drives Me Crazy」はノリノリな演奏に加えて、フィルが観客を煽って掛け合いを繰り広げたりします。観客の手拍子も含めてライブならではの演出が楽しいロックンロールが繰り広げられます。ちなみにハーモニカを吹くのはサポートのヒューイ・ルイス。その後フィルによるメンバー紹介も聞けます。どんどんテンションを上げて、会場の熱狂は最高潮に。そして最後は「The Rocker」。前曲の熱狂を引き継いだテンションの高い演奏を繰り広げます。ノリの良いラスト曲でライブを爽快に締め括ります。ラストは観客のアンコールも。

 シン・リジィ入門にも向いた名ベスト盤です。出来が良いので、スタジオ盤を聴かずにいきなり手にとっても良いかと思います。

Live And Dangerous
Thin Lizzy
 
 

関連アーティスト

 同郷のミュージシャンで、名盤『ブラック・ローズ』に参加。

 
 シン・リジィ解散後、ジョン・サイクスが名盤『白蛇の紋章〜サーペンス・アルバス』に参加。
 
 ジョン・サイクスのソロプロジェクト。
 
 
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