🇯🇵 Tommy february6 (トミー・フェブラリー) / Tommy heavenly6 (トミー・ヘヴンリー)

レビュー作品数: 10
  

Tommy february6 & heavenly6紹介動画

動画にまとめていますので、ぜひご視聴ください!

 
 

スタジオ盤①

Tommy february6名義

Tommy february6

2002年 1stアルバム

 the brilliant greenの川瀬智子(Vo)によるソロプロジェクト、Tommy february6。2001年にソロ始動しました。名前の由来は、川瀬の愛称トミー(Tommy)と、誕生日である2月6日の組み合わせです。Tommy february6はユーロビートやニューウェイヴのような1980年代風ダンス楽曲を展開し、ブリットポップやオルタナ志向の本家the brilliant greenとは明確に区別しています。でも実は奥田俊作と松井亮がソロプロジェクトのサポートをしており、看板を変えたthe brilliant greenなんですね。1stフルアルバムとなる本作は、2月6日にリリースされました。

 オープニング曲「T.O.M.M.Y」は1分足らずの短い楽曲で、次曲のイントロ的な位置づけです。ダンサブルな打ち込みに1980年代風のシンセが昔懐かしい感じ。そのまま「EVERYDAY AT THE BUS STOP」へと繋がります。チアガールを題材にした楽曲で、キラキラとした躍動感溢れるポップソングです。Tommyの歌唱は憂いを帯びて甘い感じ。「トミーフェブラッテ、マカロン。」はファンキーでカッコ良いベースやノリの良いパーカッションが楽曲に躍動感を持たせます。シンセの音色に時代を感じますね。メロディアスな歌メロとは対照的に、男性コーラスがノリノリでちょっと笑えます。そして名曲「Bloomin’!」。Tommy february6の3rdシングルで、キャッチーかつメランコリックな歌メロがとにかく良くて魅せられます。シンセサイザーはピコピコと軽いですが、リズムビートはしっかりしていて、楽曲に躍動感を与えています。ニューウェイヴ感たっぷりのダンスポップで良い感じ。「HEY BAD BOY」は時折ひねくれた感じの演奏を繰り広げますが、リズムビートはダンサブルだし、ファンク色のあるギターが楽曲を彩ります。続く「♥KISS♥ ONE MORE TIME」は2ndシングル。ヴォコーダーを通した機械的な声を、アクセントとして時折用いています。打ち込みでダンサブルな楽曲を繰り広げています。「WHERE ARE YOU? “MY HERO”」は全編英語詞の楽曲です。どこかひんやりした質感のシンセサイザーと、残響感の強いニューウェイヴ的なドラムが刹那的な疾走感を引き立てます。そしてサビメロの甘くて憂いのあるボーカルが魅力的ですね。「WALK AWAY FROM YOU MY BABE」は、リズミカルでファンキーな演奏に、Tommyが気だるげなボーカルを乗せています。中盤にラップパートを混ぜて楽曲に緩急をつけます。「恋は眠らない」は6/8拍子のリズミカルな演奏がノリノリです。歌は素朴というか、どこかノスタルジックな感じのポップソングに仕上がっています。そして「Can’t take my eyes off of you」はフランキー・ヴァリの有名曲のカバーで、原曲の邦題は「君の瞳に恋してる」。ピコピコしたノリの良い演奏ですが、歌はテンション低めの気だるい感じで進行。でもサビメロでは弾けるようなキャッチーさで魅せます。「I’LL BE YOUR ANGEL」はゆったりと落ち着いた演奏に、キラキラとした時代を感じさせるシンセサイザーを鳴らします。Tommyの憂いに満ちた歌唱が魅力的ですね。ラストは「★CANDY POP IN LOVE★」。底抜けに明るいダンサブルな演奏に、英語詞と日本語詞を織り交ぜた語感重視な歌が心地良いですね。

 キラキラポップで、キャッチーかつメロディアスな楽曲が揃っています。個人的にニューウェイヴが好みなのもあり、作風が刺さります。
 本作リリースの翌月にはTommy february6の活動を休止し、the brilliant greenの活動を再開しています。

Tommy february6
Tommy february6
 
Tommy airline

2004年 2ndアルバム

 2002年はthe brilliant greenの活動に軸足を置いており、Tommy february6は2003年に再始動します。このときに、もう一人の悪しき別人格という設定でTommy heavenly6が誕生、両プロジェクトで走ることになります。
 さて本作ですが、作風としては前作の路線を引き継ぎつつ、Tommyの歌唱はキュートさを増してより魅力的になりました。

 短いイントロ的な「AttenTion pLEasE」で幕開け。ダンサブルな楽曲に、飛行機内のアナウンスのようなトークを乗せています。そのまま続く名曲「je t’aime★je t’aime」。復帰第1弾シングルです。ピコピコとしたシンセサイザーにビートの強いドラムなど、前作同様に1980年代ニューウェイヴ的な空気が漂い、そして全体的にメランコリックな感覚が覆っています。そしてTommyのアンニュイな歌唱と、ポップで甘いメロディがとても魅力的。「sEpia memory」はリズムビートを強調してノリノリで、シンセが晴れやかな音色で盛り上げます。憂いのあるメロディや楽器の音色全般が少し古臭くて時代を感じるものの(意図的でしょうけどね)、キュートで焦がれるような歌唱やダンサブルな演奏は気持ち良いです。そして「ふたりのシーサイド」はピコピコサウンドに、可愛らしい歌唱を乗せます。機械的な感覚を取り入れつつも、温もりに溢れるポップソングに仕上がりました。「CAndY EyEs doLLS ∵」は派手なシンセブラスが楽曲を華やかに盛り上げます。あどけなく歌うTommyの歌が、楽曲を甘くポップなものに仕立てています。「ChOOSe mE or Die」はシーケンサーを活用したチープな音色が逆に真新しいかも。ベースがガッチリ支えています。楽曲はダンサブル、歌はテンション低めですが、後半に向かうにつれて起伏が激しくなります。「daNCin’ bABY」はリズムビートを強調したノリノリの演奏で、思わず踊りたくなります。ミニマルなフレーズを繰り返すことで中毒性が高いですね。そして「SwEEt dREAM」ではトーンを少し変え、ひんやりとして暗いムードが漂います。途中から幻覚的な感覚を強めて、トリップ感や酔うような感じに。「ThE RoSe fraGranCe」はリズムビートの強烈なダンス曲を展開しますが、Tommyは素朴であまり飾らずに淡々と歌っています。続いて後半のハイライト的な「MaGic in youR Eyes」。先行シングルで、憂いを帯びたキャッチーなメロディとキュートな歌唱が魅力的です。演奏よりも歌メロの良さを引き立てた楽曲で、メロディラインも耳に残りますね。「I still love you boy」はメロウな演奏に、Tommyは媚びないシリアスなトーンで歌います。メロディアスかつスケール感があって、シンセ等の演奏楽器をバンドサウンドに差し替えれば本家the brilliant greenとしても十分通じる気がします。そしてラスト曲「Love is forever」はピコピコサウンドに乗せて、可愛らしい歌唱でポップに歌います。サウンドは華やかですが、エンディング曲らしく、程良い哀愁や切なさを内包しています。

 メリハリのある演奏と甘くポップな歌唱で、キャッチーな楽曲が揃っています。Tommy february6入門盤にどうぞ。

Tommy airline
Tommy february6
 
TOMMY CANDY SHOP ♡ SUGAR ♡ ME

2012年 3rdアルバム

 川瀬智子デビュー15周年企画の一環でリリースされた、Tommy february6名義では9年ぶりとなるオリジナルアルバムです。半年後にリリースされたTommy heavenly6名義の『TOMMY ♡ ICE CREAM HEAVEN ♡ FOREVER』と対になっています。ユーロビートやニューウェイヴ的なレトロな作風から変化し、EDMを取り入れたモダンなサウンドになっています。多くが英語詞ですが、Tommy february6がTommy heavenly6の人格へとシフトしていく様子が歌詞に描かれているのだとか。

 オープニング曲は「FAIRY DUST」。シンセを幾重にも重ねた分厚いサウンドに、これまでと違ってチープじゃない打ち込み、媚びない歌唱など、前作からの変化が窺えます。「SUGAR ♥ ME」はアルバムタイトルを冠した本作のリード曲。ビートの強いメリハリのあるサウンドに乗せて、メロディがキャッチーで明るい感じです。キュートかつメランコリックな歌唱が魅力的。続く「RUNAWAY」はデジタルなノイズを散りばめながら、サビメロでは派手に飾り立てます。甘く色っぽいTommyの歌は、滑舌よく英語詞を歌って海外のアーティストみたい。「ANGEL FADE」は冷たいピアノに哀愁の歌メロがあってひんやりした質感ですが、途中から躍動感のあるビートが楽曲を盛り上げます。続く「SPACEY COWGIRL」はメリハリのあるノリの良いダンサブルなビートに、キュートな歌声を乗せています。サビメロはスペイシーなシンセを鳴らすのでトリップ感があります。「PINK ARMY」はゆったりとしたテンポで強烈なグルーヴを発するリズムトラックに、小気味良い歌声が合わさってリズミカルな感じ。歌メロは少しゴシックっぽくて怪しげです。そして「AI NO ♥ AI NO HOSHI」the brilliant green「愛の♥愛の星」のセルフカバー。個人的には原曲の方が好みですが、シンセサイザーを活用したダンスアレンジも意外によく馴染んでいます。メロディの良さも大いにありますね。アルバムの他楽曲が高めのキー中心/英語詞中心なのに対して、本楽曲は低めのキーが中心/日本語詞ということもあって、一際目立っています。続く「MY VACATION」も日本語詞で、リズミカルなビートも相まってキャッチーな印象です。メランコリックな歌唱が魅力的ですね。「SUMMER BUBBLES」はピコピコしたダンサブルなビートが気持ち良いですね。甘い歌唱で英語詞を歌いながら、キーボードがドリーミーに演出。そして最後は「BE MY VALENTINE」。パーカッションと力強いベースがリズミカルな演奏を刻み、華やかなホーンが彩るモータウンサウンド風に仕上がっています。演奏はノリノリですが、歌は憂いに溢れています。

 これまでは時代遅れの古臭いサウンドが逆に魅力だったのですが、最新のサウンドになってしまったことで個人的には魅力半減した感じは否めません。なおほぼ全編英語詞のため洋楽っぽさを増していますが、終盤に出てくる数少ない日本語曲の方が魅力的です。

TOMMY CANDY SHOP ♡ SUGAR ♡ ME
初回限定盤 (CD+DVD)
Tommy february6
TOMMY CANDY SHOP ♡ SUGAR ♡ ME
通常盤 (CD)
Tommy february6
 

Tommy heavenly6名義

Tommy heavenly6

2005年 1stアルバム

 Tommy february6の悪しき人格として生み出されたもう一つのペルソナ、Tommy heavenly6。いずれも川瀬智子がセルフプロデュースしています。2003年にシングル「Wait till I can dream」でデビューし、2005年にフルアルバムとなる本作をリリースします。Tommy february6が1980年代ユーロビート基調の楽曲を展開するのに対して、Tommy heavenly6はバンドサウンドを用いてグランジ・オルタナティヴに影響を受けた楽曲を展開。マリリン・マンソンやスマッシング・パンプキンズを意識したのだそうですが、風貌も歌唱もアヴリル・ラヴィーンそっくりです。

 オープニング曲「2Bfree」はディストーションを効かせた歪んだギターに、攻撃性と小悪魔的な要素を混ぜた歌唱を乗せています。緩急ついたグランジ風の1曲で、ノイジーな演奏の中でもキーの高い歌は存在感を発揮します。続く「Ready?」はパンキッシュな1曲。勢いに溢れる演奏が爽快です。そして、洋楽っぽいTommyの歌唱も相まって、アヴリル・ラヴィーンにとてもよく似ています。そして1stシングル「Wait till I can dream」。エフェクトがかかったダーティなギターを鳴らしながら、ノイジーかつ爽快なドラムはダンサブルでもあります。エフェクトのかかった歌はノイジーな演奏に同化しがちですが、楽曲としてはカッコ良くて魅力的です。「fell in love with you」は隙間のある素朴なサウンドで進行しますが、サビメロの分厚さで緩急をつけます。歌メロは哀愁が漂う感じ。「♥Wanna be your idol♥」はヘヴィなイントロが複雑なリズムを刻んでインパクトを与えますが、舌足らずでキュートな歌が始まると、難解さよりもメロディの良さが上回ります。そして「+gothic Pink+」はダークな楽曲です。冒頭は暗鬱で淡々としていますが、不気味な空気が漂います。そしてサビメロでは激しくノイジーな演奏に、メランコリックでヒステリー気味の歌唱を繰り広げます。緩急が激しくてスリリングな楽曲です。「Swear」は爆音で重低音を唸らせるギターがグランジーで、そこにTommyのダウナーでテンション低い歌がたまらなく魅力的です。他の楽曲と違って歌は盛り上がらず終始低いテンションですが、歪んだギターにベース、力強く叩きつけるドラムなど、演奏がとてもスリリングです。「Lost my pieces」はヒップホップ的なリズムパターンがヘヴィに楽曲を支え、鈍重なメタル曲っぽくもあります。ねちっこく歌いますが、サビメロはメランコリックで哀愁たっぷり。「GIMME ALL OF YOUR LOVE !!」は漫画『NANA』へのトリビュートアルバムに寄稿した楽曲です。クールで大人びた歌唱は他の楽曲と少し雰囲気が違いますが、ヘヴィで疾走感ある演奏と合わさって中々カッコ良いですね。終盤ひたすら反復する展開が耳に残ります。「LCDD」は、寂寥感と爽やかさを併せ持つ演奏にオルタナ感が溢れています。メロディアスで艶のある歌が、ノイジーな演奏と対照的で引き立っています。最後に「Hey my friend」。アコギもアクセントとして用いて、アンニュイで諦念のある楽曲を繰り広げます。他の楽曲と比べてもそこまで激しくないので、本家the brilliant greenにも通じる感触です。メロディアスなサビメロが耳に残りますね。

 グランジ全開の激しい演奏と、メランコリックなメロディでダークな世界観を繰り広げます。Tommy february6ともthe brilliant greenとも異なるスタイルで、この頃は明確に使い分けていますね。

Tommy heavenly6
初回限定盤 (CD+DVD)
Tommy heavenly6
Tommy heavenly6
通常盤 (CD)
Tommy heavenly6
 
Heavy Starry Heavenly

2007年 2ndアルバム

 Tommy february6も、本家the brilliant greenも活動を休止しており、この時期はTommy heavenly6一本に軸足を置いて活動していました。前作はオルタナ志向のサウンドでしたが、本作ではゴシックメタルやパンクなど様々取り入れています。

 オープニング曲「Heavy Starry Chain」でアルバムの幕開け。重低音を効かせながらも陰りのあるメロディを展開する、メタリックな演奏もカッコ良いですが、メランコリックで憂いたっぷりのTommyの歌唱がとても魅力的なんです。ブリッジではダーティな雰囲気も醸し出します。「stay away from me」はメロコア風の疾走曲。切れ味鋭いながらも勢いがあってノリの良い楽曲で、息継ぎが色っぽい。そして「I’m Gonna SCREAM+」では、イントロからヘヴィなギターが歪んだ重低音を鳴らします。歌が始まると大人しくなりますが、サビでの演奏は激しいですね。力強くも艶のある歌唱が良い。続いて「my bloody knee-high-socks」は、音数少ない演奏で歌を引き立てつつも、トリッキーなリズムでフックをかけてきます。サビメロではノイジーなギターをかき鳴らすグランジっぽい側面もあり、緩急あって面白い楽曲です。終盤のヒステリックな歌唱も強烈。「DOOR MAT」は重低音を効かせたヘヴィメタルですが、Tommyの色気のあるメランコリックな歌唱は、ヘヴィな演奏にも埋もれずに魅力を放ちます。そして「Lollipop Candy♥BAD♥girl [album version]」はハロウィンにちなんだ楽曲です。本アルバム版は5分足らずですが、シングル版だと10分31秒というハロウィン仕様のプログレメタル曲です。ゴシック風の若干怪しげなムードを放つ演奏に、洋楽っぽい歌唱を披露します。「THE CASE」は陽気なシャウトで幕開け。極端にアクセントをつけた独特の歌メロが耳に残りますね。続く「ABOUT U」はダウナーで比較的抑えめの演奏で、はっきりした歌唱で歌メロをフィーチャーしています。ノスタルジックで切ないメロディが魅力的です。「I ♥ XMAS」はヘヴィですがリズミカルな演奏に、メランコリックな歌唱で切ないメロディを歌います。途中までクリスマス感は薄いですが、終盤のコーラスや透明感あるギターはクリスマスっぽいかも。続いて終盤のハイライトとも言える「Pray」。アニメ『銀魂』のOP曲で、メロコア風の疾走感ある演奏に乗せて、メロディアスな歌が際立っています。ノイジーな演奏でも、強弱つけた歌唱は終始引き立っているんですよね。「GOING 2 MY WAY !」は6/8拍子のダウナーな演奏に乗せて、ダークで憂いを帯びつつ焦がれるような歌唱で切なさを誘います。盛り上がってきた終盤には珍しくギターソロもあります。そしてラスト曲「Lucky me」はヘヴィかつ疾走感のあるメタリックな楽曲です。寂寥感あふれる歌メロは感傷的で込み上げてくるものがありますが、でもスカッとした爽やかさも併せ持っています。名曲です。

 なんちゃって洋楽ではなく、今回は日本語詞に重きを置いているのも嬉しいところ。ヘヴィな楽曲でカッコ良いです。

 なお本作リリース後、4年半ぶりにthe brilliant greenが再始動することに。本家ブリグリにも、Tommy heavenly6のような音楽性が反映されることになりました。

Heavy Starry Heavenly
初回限定盤 (CD+DVD)
Tommy heavenly6
Heavy Starry Heavenly
通常盤 (CD)
Tommy heavenly6
 
I KILL MY HEART

2009年 3rdアルバム

 Tommy february6とTommy heavenly6でベスト盤を同時リリースし、僅か2ヶ月で間髪入れずにリリースしたのが本作です。グランジ・オルタナ色を再び強めた作風ですが、Tommy heavenly6の1stとも違い、歌が引き立つ点ではthe brilliant greenにも少し近づいたような感じもします。

 アルバムは「Wait For Me There」で幕開け。重低音を唸らせるヘヴィでダウナーな演奏ですが、気だるくも小悪魔的な歌唱が引き立つミックスになっており、歌で魅了します。続く「Leaving You」は歪んだ音色を鳴らすギターが、オルタナっぽい雰囲気。途中からドラムが加わって盛り上がりますが、ゆったりとしたテンポで終始ダウナーで気だるげです。良い意味で、本家ブリグリをヘヴィに焼き直したような感じで、メロディアスの歌にも浸れます。「Do You Know My Heart?」は躍動感あるドラムが楽曲を牽引。爽やかさも感じられるものの、どことなく陰りがあり、途中からグランジ風の歪んだギターが重低音を唸らせます。「Sad End To A Fairy Tale」は、メロディアスでアンニュイな歌唱が魅力的で、小悪魔的な色気を放ちます。ダウナーな演奏は、サビメロでヘヴィにかき乱すのでスリリングですね。ヘヴィなリフやバタバタと暴れるドラムもカッコ良い。そして「Shut Up」はパワフルかつ緊迫感ある演奏で勢いに溢れています。途中に5拍子を混ぜたトリッキーな側面もありますが、ドラムは叩きつけるような粗暴な感じ。歌い方はアンニュイな感じで、キュートで可愛い。「Flower Crown」は低く重たい音を鳴らすギターがダウナーで、どこまでも沈んでいきます。歌メロも救いのないダークさで、ダウナーでねちっこいんですが、これがカッコ良いんですよね。そんなダークさを払拭するような「Surely」はアコギも部分的に用いて、ギターポップ的な清涼感を持っています。でも歌には陰りがあって感傷的な気分を誘います。「Gonna Change My Way Of Life」は、爆音ベースと粗暴なドラムによる武骨な演奏がカッコ良く、そこに乗るアンニュイな歌は色気たっぷり。キレッキレでロックしています。「Playground」はイントロもなく始まり、グランジ風のノイジーで歪んだ演奏が暴れ回り、対照的にテンション低めで気だるげに歌います。とてもカッコ良い。「Things I Can Do」は疾走感のあるノイジーな楽曲です。バタバタと忙しない演奏に、アンニュイかつ色っぽい声で魅せてくれます。最後の「You Should Live In The Sunny Light」はダウナーかつローファイな音色を奏でる歪んだギターと、Tommyの鬱々とした気だるい歌唱が暗い気分にさせます。これがたまらない。

 全編を支配するやるせなさ、そして後味の悪さ。スロー〜ミドルテンポも多いですが、ノイジーかつダウナーな楽曲が魅力的なんです。突出した楽曲には欠けるものの佳曲揃いで、バランスが良い好盤です。

I KILL MY HEART
初回限定盤 (CD+DVD)
Tommy heavenly6
 
TOMMY ♡ ICE CREAM HEAVEN ♡ FOREVER

2013年 4thアルバム

 川瀬智子デビュー15周年企画の一環としてリリースされた作品です。Tommy february6名義の『TOMMY CANDY SHOP ♡ SUGAR ♡ ME』から半年ほど遅れてリリースされましたが、ジャケットも対照的になっています。

 まずは短いインストゥルメンタル「-Intro- CUPCAKE CASTLE 【Dark Sugar Storm】」。ダークゴシックで悲壮感が漂います。続く「I WANT YOUR BLOOD†」はバッキバキの疾走メタル曲。スラッシュメタル的なザクザク刻むギターに、鈍器のようにゴリゴリしたベース、激しいドラムが焦燥感を掻き立てます。そんな荒々しい演奏とは対照的に、Tommyの歌は切なくてメロディアスです。ちなみに「Heavy Starry Chain」の続編なんだとか。「LET ME SCREAM」もアグレッシブです。パワフルなドラムが躍動感を与えるものの、楽曲全体で見るとダウナーな感じも併せ持っていて、Tommyの洋楽っぽい歌唱は力強くも冷たく突き放すような印象。「LOVIN’ YOU」は冒頭からダウナーなコーラスと、勢い溢れる正統派メタルな演奏が対照的。サビメロでの焦がれるような歌唱が魅力を放ちます。「forever and anywhere」は、ダイナミズム溢れるプリミティブなドラムが躍動感を煽ります。全体的にダークな雰囲気が漂い、サビでは大仰な演奏によってドラマチックかつ悲壮感たっぷりに仕立てています。一転して「Can you hear me?」はメタル色のない素朴な楽曲を展開。アコギの音色が柔らかいですね。メランコリックなメロディラインが際立つので、本家the brilliant greenのよう。「-Intro- CUPCAKE CASTLE 【Sugar Snow】」は短いインストゥルメンタルで、ゴシックな雰囲気漂うオーケストラが怪しげです。そのまま続く「Ruby eyes」は配信限定の先行シングルで、疾走感たっぷりのヘヴィメタル曲です。高速ドラムや間奏のややトリッキーなギターリフなど、勢い溢れる演奏もカッコ良いですが、Tommyのメランコリックな歌唱がクールで魅力的です。そして「Ash Like Snow (English version)」は本家the brilliant greenのセルフカバーですが、アレンジはかなり原曲踏襲な感じ。ブリグリがTommy heavenly6の音楽性に寄せてきたのが本楽曲なので、全く違和感なくアルバムに馴染んでいます。「MILK TEA」は本作では珍しいメロコア曲。疾走感溢れるパンキッシュな演奏に、アヴリル・ラヴィーンにも通じる歌唱が特徴的です。短いインスト曲「-Intro- Gelato Mountains Fight」でゴシック風の怪しげな空気を醸し出したあとは、アルバムタイトルを冠したラスト曲「ICE CREAM HEAVEN FOREVER」。デジタルなノイズを織り交ぜたメタリックな楽曲で、ヒップホップやクラブミュージック的な要素も薄っすら感じられます。

 全作品中最もヘヴィメタルに振り切っている印象です。時折ゴシックなインストゥルメンタルを挟んでアルバムの流れに緩急つけています。

TOMMY ♡ ICE CREAM HEAVEN ♡ FOREVER
初回限定盤 (CD+DVD)
Tommy heavenly6
TOMMY ♡ ICE CREAM HEAVEN ♡ FOREVER
通常盤 (CD)
Tommy heavenly6